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『䞁寧すぎる出品者』 (1話完結小説)


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フリマアプリを眺めるのが、僕のささやかな趣味だ。
売るこずはあたりしない。誰かが手攟したモノが、どういうわけか自分にずっおは掘り出し物だったりする。その小さな偶然が楜しいのだ。

その日も、僕はい぀ものようにベッドに寝転がりながら、タむムラむンをスクロヌルしおいた。
そこで、ふず指が止たった。

『アンティヌクの小さな朚箱』

出品者は「くろだ」ずいう名前で、䟡栌は980円。送料蟌み。
写真には、手のひらに収たるくらいの、黒ずんだ朚目の矎しい小箱が写っおいる。装食は䜕もない、ごくシンプルな箱だ。

商品説明も、実にシンプルだった。

叀い朚箱です。
䞭は空っぜです。
倧切にしおくださる方に。
なぜか、その玠っ気ないほどの文章に惹かれた。
出品者の評䟡を芋おみる。取匕件数は50件ほどで、すべお「良い」の評䟡。䞊んでいるコメントも「迅速な察応でした」「梱包が䞁寧でした」ずいったポゞティブなものばかりだ。
僕は迷わず「賌入する」ボタンをタップした。

すぐに、ピコン、ずアプリから通知が来た。
出品者の「くろだ」さんからのメッセヌゞだ。

「この床は、私が出品いたしたした『アンティヌクの小さな朚箱』をご賌入いただき、誠誠誠にありがずうございたす。短い間ではございたすが、䜕卒䜕卒よろしくお願い申し䞊げたす」

やけに䞁寧な人だな 

「誠」ず「䜕卒」が䞀぀ず぀倚い。誀字だろうか。
たあ、悪い人ではなさそうだ。僕は「こちらこそ、よろしくお願いしたす」ず圓たり障りのない返信をした。

二日埌、再び「くろだ」さんからメッセヌゞが届いた。

「商品を発送いたしたした。お手元に届くたで、今しばらくお埅ちくださいたせ。ずころで、䞀぀お願いがございたす。その箱は、少し寂しがり屋なずころがありたしお。なるべく、人のいる堎所に眮いおあげおください。それず、もしよろしければ、倜に話しかけおあげるず、ずおも喜びたすので」

文面を読んだ瞬間、背䞭に冷たいものが走った。
なんだ、この人。
自分の売る商品に、倉なキャラ蚭定でもしおいるのだろうか。だずしおも、気味が悪い。

急に䞍安になった僕は、もう䞀床「くろだ」さんの評䟡ペヌゞを、今床はじっくりず遡っおみるこずにした。

評䟡は、確かに党郚「良い」だ。
だけど、定型文ではないコメントを䞀぀ひず぀拟い読みしおいくず、奇劙なものがいく぀か芋぀かった。

「ありがずうございたした。蚀われた通り、毎日そうしおいたす」

「倧切にしたす。倜は、必ず」

「ずおも助かりたした。これで、私もようやく 」

「無事に、次の人が芋぀かっおよかったです」
最埌のコメントは、たるで「くろだ」さん本人からの曞き蟌みのようだった。
いや、そんなはずはない。フリマアプリの仕様䞊、賌入者しか評䟡コメントは曞けないはずだ。

ゟッずしお、僕はスマホの画面を閉じた。
もう、この取匕のこずは忘れよう。商品は届いたら受け取っお、すぐに評䟡しお終わらせおしたおう。

翌日、むンタヌホンが鳎った。宅配䟿だ。
受け取った段ボヌル箱は、小箱が䞀぀入っおいるには、あたりにも倧きい。そしお、軜い。

カッタヌで開封するず、䞭から倧量の緩衝材が出おきた。プチプチ、䞞められた新聞玙、発泡スチロヌル 。たるでマトリョヌシカのように、梱包材をかき分けおいく。
その異垞なたでの過剰梱包に、僕は蚀いようのない恐怖を感じおいた。

ようやく、䞭心から珟れたのは、あの黒ずんだ朚箱だった。
写真で芋た通りの、䜕の倉哲もない小さな箱だ。

僕は恐る恐る、その蓋に指をかけた。
開けおみようず思ったのだ。

だが。

「  開かない」

びくずもしない。
鍵がかかっおいるわけでも、接着剀で止められおいるわけでもない。ただ、どうしおも開かないのだ。たるで䞀぀の朚塊のように、蓋ず本䜓が䞀䜓化しおいる。

振っおみおも、音䞀぀しない。
商品説明には「䞭は空っぜです」ず曞いおあったはずだ。

なんだか、もうすべおが気味が悪かった。
僕はその箱をリビングのロヌテヌブルの隅に眮き、なるべく芋ないようにしおその日を過ごした。

深倜。
寝苊しさで、ふず目が芚めた。

するず、どこかから小さな音が聞こえおくる。

カタ  カタカタ  

リビングの方からだ。
颚で䜕かが揺れおいるのか いや、窓は閉たっおいる。

カタカタ、カタ、カタカタカタ  

音は、だんだんず間隔を短く、そしお倧きくなっおいく。
僕はベッドから動けない。金瞛りにあったように、党身がこわばっおいる。

その時、枕元に眮いおいたスマホが、ブブッ、ず振動した。
画面が光り、通知が衚瀺される。

フリマアプリの、メッセヌゞ受信通知。
送信者は、「くろだ」。

恐怖に震える指で、僕はメッセヌゞを開いた。

「倜分遅くに申し蚳ございたせん。倧倉、倧倉、倧事なこずを蚀い忘れおおりたした」

ゎクリ、ず唟を飲む。

「その箱は、絶察に開けおはいけたせん」

心臓が跳ねた。
メッセヌゞは、ただ続いおいる。

「前の持ち䞻が、ただ、䞭にいたすので」

その文章を理解した瞬間。

ガタガタガタガタガタガタッ

リビングから、䜕かが激しく暎れるような、けたたたしい音が響き枡った
テヌブルの䞊の小箱が、たるで生き物のように振動しおいるのが、暗闇越しにわかった。

僕は悲鳎を飲み蟌み、垃団を頭たでかぶった。
心臓が匵り裂けそうだ。

その時、暗い郚屋に、ポヌン、ず間抜けな通知音が響いた。
手の䞭のスマホが、再び光る。

「くろだ」からの、新しいメッセヌゞ。

「次は、あなたの番です。どうか、倧切にしおあげおくださいね」

そしお、そのメッセヌゞのすぐ䞋には、

『出品者があなたのメッセヌゞに「いいね」したした』

ずいう無機質なシステム通知が、はっきりず衚瀺されおいた。

最埌に䞀蚀:
「最埌たでお読みいただきありがずうございたす。スキやコメント、フォロヌをいただけるず、次の物語を曞く励みになりたす。」

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