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0円で買ったボロ家を、そのまま貸してみた

「これは、さすがに住めないですね」

家の中を見ながら、僕もそう思った。

床も壁も設備も、あちこちが傷んでいる。
少し掃除をしたくらいでは、とても人に貸せる状態ではない。

物件価格は0円。

タダで家を手に入れたときは、大きな可能性を感じていた。

しかし、家は0円でも、直すお金は0円ではない。

住める状態までリフォームするなら、200万円以上。

その数字を聞いた瞬間、頭の中で描いていた計画が止まった。

0円で手に入れた家に、200万円をかける。

もちろん、きれいに直して入居者が決まれば、家賃収入は得られる。

でも、200万円を回収するには何年かかるだろう。
工事中に追加費用が出たらどうする。
直した後、本当に借り手が見つかる保証はあるのか。

どう考えても、簡単な投資ではなかった。

僕は、しばらくボロ家の中で立ち尽くしていた。


住めないなら、価値はないのか

古い家を見ると、多くの人はこう考える。

「リフォームして住めるようにするか」
「解体して更地にするか」

僕も最初は、その二択しかないと思っていた。

住居として貸すなら、当然、安心して生活できる状態にしなければならない。

水回りを直す。
床や壁を整える。
傷んだ設備を交換する。

一つ直せば、別の傷みが見つかる。

気がつけば、見積もりは200万円を超えていた。


「0円物件を手に入れた」という喜びより、

「これから200万円かかる」という重さのほうが大きくなっていった。

そんなとき、ふと思った。

「そもそも、この家に住んでもらう必要はあるのだろうか」

住めない家でも、物を置くことはできる。

人が生活するには厳しくても、荷物の保管場所としてなら使えるかもしれない。

家ではなく、倉庫として見る。

そう考えた瞬間、どうしようもないと思っていたボロ家が、少し違って見えた。

200万円のリフォームをやめた

僕は、この家を住居として再生することをやめた。

きれいなキッチンもつくらない。
おしゃれな壁紙にも張り替えない。
新品の設備も入れない。

ボロ家は、ボロ家のまま。

その代わり、用途を「住む場所」から「物を置く場所」へ変えた。

そして、倉庫として貸し出すことにした。

家賃は月2万円。

住居の家賃として見れば、安いかもしれない。

しかし倉庫として考えれば、借りる人にとっても使いやすい金額だ。

農機具や工具を置きたい人。
仕事の資材を保管したい人。
家に入りきらない荷物を置きたい人。
ネット販売の商品在庫を置きたい人。
趣味の道具をまとめて保管したい人。

「住みたい人」だけを探せば、対象は限られる。

でも「物を置く場所が欲しい人」まで広げれば、別の需要が見えてくる。


「そのままでいい」という借り手がいた

募集するとき、物件の状態は隠さなかった。

住居としては貸せないこと。
リフォームをしていないこと。
倉庫としての利用に限ること。

きれいに見せようとせず、できることと、できないことを伝えた。

そして、この状態でも借りたいという人が現れた。

こちらが「どうしようもない」と思っていたボロ家を、

「物を置けるなら十分」

と考える人がいたのだ。

価値は、物件だけで決まるものではない。

誰が、何のために使うかで変わる。

僕にとっては住めないボロ家。

しかし借り手にとっては、月2万円で使える広い保管場所だった。


0円のボロ家が、年間24万円を生む

家賃は月2万円。

年間にすると24万円になる。

もちろん、その24万円がすべて利益になるわけではない。

固定資産税や保険、維持管理、将来の修繕なども考える必要がある。

物件価格が0円でも、登記や税金などの諸費用はかかる。

また、倉庫として貸す場合も、建物の状態や安全性を確認し、契約書で使用目的、禁止事項、修繕の負担、保管できない物などを明確にしておくことが大切だ。

「タダでもらって、そのまま貸せば丸儲け」

という話ではない。

それでも、200万円以上をかけて住宅に直す計画と比べれば、まったく違うスタートになった。

大きなお金を投入する前に、今ある状態で使える方法を探す。

その発想によって、0円のボロ家が月2万円を生み始めた。


ボロ家を直す前に、使い道を変えてみる

古い家を手に入れると、すぐにリフォームしたくなる。

床を張り替えたい。
壁をきれいにしたい。
水回りを新品にしたい。

確かに、直せば見栄えはよくなる。

しかし、かけた費用を家賃で回収できなければ、投資としては苦しくなる。

大切なのは、

「どうすればきれいな家になるか」

だけではない。

「今の状態を必要としている人はいないか」

と考えることだ。

住居として使えないなら、倉庫にする。
広い庭があるなら、資材置き場にする。
車が置けるなら、駐車スペースとして考える。
作業音が問題にならない場所なら、趣味や作業の拠点にする。

物件を変えるのではなく、使い方を変える。

リフォーム費用をかける前に、用途をずらしてみる。

それだけで、負動産に見えた物件が、誰かに必要とされる可能性がある。

価値がないのではなく、使い道が合っていなかった

このボロ家は、住居として見れば厳しい物件だった。

リフォームに200万円以上かけなければ、人が快適に暮らすのは難しい。

だから僕も、一度は失敗したと思った。

「0円でもらったけれど、とんでもない物件を抱えてしまった」

そんな気持ちにもなった。

しかし、家として使えないことと、価値がないことは同じではなかった。

住む場所としては難しい。

でも、物を置く場所としてなら役に立つ。

問題だったのは建物そのものではなく、僕が「家は人が住むもの」と決めつけていたことだった。

0円で買ったボロ家。
リフォーム見積もりは200万円以上。
そのまま倉庫として貸して、家賃は月2万円。

新品のキッチンもない。
おしゃれな内装もない。
誰かに自慢できるような物件でもない。

それでも、必要としてくれる人がいる。

夜、窓に明かりがつくことはない。

生活の音も聞こえない。

けれど、建物の中には誰かの大切な荷物が置かれ、毎月2万円の家賃を生んでいる。

どうしようもないと思っていたボロ家は、直したから価値が生まれたのではない。

見方を変えたから、価値が見つかった。

空き家再生とは、必ずしも家をピカピカにすることではない。

その物件に合った、次の役割を見つけることなのだ。

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