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第一章 |選定の年|祝福の声(リリア編5)

 
 家の外へ出ると、

 家の前はすっかり宴の準備で賑わっていた。

 

 長机が並べられ、

 焼きたてのパンの香りが漂う。

 

 子どもたちは走り回り、

 大人たちは酒樽を運んでいる。

 

 まるで収穫祭の日みたいだった。

 

「来たぞ!」

 

「リリアだ!」

 

 誰かが声を上げる。

 

 村人たちの視線が一斉に集まった。

 

 リリアは思わず足を止める。

 

「おめでとう!」

 

「頑張るんだぞ!」

 

「応援してるからな!」

 

 次々に声が飛んでくる。

 

 リリアは笑顔を作った。

 

「ありがとうございます」

 

 それしか言えなかった。

 

 その時だった。

 

「どけどけ!」

 

「主役が見えん!」

 

 大きな声が響く。

 

 人垣が左右に割れた。

 

 ずかずかと歩いてくる男がいる。

 

 五十代半ば。

 

 日に焼けた顔。

 

 がっしりした体。

 

 そして誰よりも大きな声。

 

 
村長だった。

 

「リリア!」

 

 ばんっ!

 

 肩を叩かれる。

 

「うっ」

 

 思わず身体がよろけた。

 

「よくやった! ガハハハ!!」

 

 続けて背中も叩かれ、

 リリアは思わず咳き込んだ。

 

「い、いえ……」

 

 なんとか返事をする。

 

 村長は再び豪快に笑った。

 

「そういえば、十歳の神聖力鑑定を覚えとるか?」

 

 リリアは首を傾げる。

 

「少しだけ……」

 

「わしは覚えとる!」

 

 村長は胸を張った。

 

「お前さんがこの村で一番じゃったからな!」

 

 周囲がどっと沸く。

 

「やっぱり!」

 

「だから選ばれたのか!」

 

「すげぇな!」

 

 村長は満足そうに頷いた。

 

「わしはあの時から思っとった!
 この子はいずれ神殿へ行くとな!」

 

 村人たちが拍手する。

 

 村長はさらに続けた。

 

「村の誇りじゃ!
 いや、村の宝と言ってもいい!」

 

 拍手はさらに大きくなる。

 

 リリアは曖昧に笑った。

 

 胸の奥が少しだけ重い。

 

 宝。

 

 誇り。

 

 特別。

 

 どれも立派な言葉だった。

 

 けれど、

 

 その言葉の中にいるのが本当に自分なのか、

 

 リリアにはよく分からなかった。

 

「神殿でも立派にやるんだぞ!!」

 

 村長は力強く言う。

 

「お前さんなら大丈夫だ!!」

 

 その言葉に、

 村人たちも大きく頷いた。

 

 リリアは小さく頭を下げる。

 

 断る理由も、

 

 違うと言う理由も、

 

 見つからなかった。



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