【昼と夜の番人】第一章 |選定の年|太鼓の音(リリア編4)
「私、村長さん呼んでくる!」
妹が勢いよく立ち上がった。
「こら、待ちなさい!」
母の声が飛ぶ。
だが遅かった。
妹はもう玄関を飛び出している。
外から元気な声が聞こえた。
「村長さーーーん! お姉ちゃんが神殿に選ばれたーーー!」
兄が吹き出す。
「絶対そのまま言うと思った」
姉も苦笑した。
「村中に広まるわね」
母は額に手を当て、
苦笑していた。
リリアだけが笑えなかった。
七日後。
その言葉がまだ頭から離れない。
あと七日。
たった七日。
羊皮紙を握る指に力が入る。
「リリア」
父の声だった。
顔を上げる。
「せっかくの祝いだ」
父はそう言った。
「今日は飯を食え」
それだけだった。
リリアは返事ができなかった。
考えないようにしようとしても、
考えないようにはできない。
けれど父は、
それ以上何も言わなかった。
外では、村の人たちが楽しそうに準備を進めている。
急に外から歓声が上がる。
「村長が来たぞー!」
「おお!」
「こりゃめでたい!」
窓の外が急に賑やかになる。
母が立ち上がった。
「行きましょうか」
家族も席を立つ。
リリアは最後にもう一度だけ羊皮紙を見る。
七日後。
文字は変わらない。
けれど外では、
誰かが太鼓まで持ち出していた。
七日後のことを考えているのは、
自分だけのような気がした。


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