日本酒造りの「発酵」で、何が起こっている?
酒粕が、なぜ美容素材として注目されているのでしょうか。
その理由を知るためには、まず「酒粕がどのように生まれるのか」を知る必要があります。
酒粕は、日本酒を搾ったあとに残るもの。
では、日本酒はどうやってつくられているのでしょう?
そこには、米・麹・酵母という3つの存在が大きく関わっています。
そして、この3つが働くことで、米は少しずつ姿を変えていきます。
今回は、日本酒造りの「発酵」で起こっていることを、できるだけシンプルに見ていきます。
米だけでは日本酒にならない日本酒
日本酒の主な原料は、米と水。
でも、米を水に浸しておくだけでは、日本酒にはなりません。
米の主成分であるデンプンは、そのままでは酵母がアルコール発酵に利用しにくいからです。
そこで重要な役割を果たすのが、麹(こうじ)です。
日本酒造りでは、蒸した米に麹菌を生育させて米麹をつくります。
この麹が、日本酒造りの大きな鍵になります。
麹菌の仕事は「米を分解する」
麹菌は、さまざまな酵素をつくります。
その中でも日本酒造りで重要なのが、デンプンを分解して糖をつくる酵素群です。
具体的には、デンプンをほどいて糖に変える働きを持つ「α-アミラーゼ」や「グルコアミラーゼ」など、アミラーゼと呼ばれるデンプン分解酵素です。
この酵素によって、米のデンプンが分解され、ブドウ糖などの糖になります。
つまり、
米のデンプン
↓
酵素によって分解
↓
糖
という変化が起こります。
そして、この「糖」が次の主役につながります。
次に登場するのが「酵母」
酵母は、糖を利用してアルコールをつくります。糖を取り込み、
糖
↓
酵母による発酵
↓
アルコール+二酸化炭素
という変化を起こします。
これが、アルコール発酵です。
簡単に言うと、
麹菌が「米を酵母が使える状態にする」
↓
酵母が「糖からアルコールをつくる」
という役割分担になっています。
日本酒造りの面白さは「糖化」と「発酵」が同時に進むこと
ここが、日本酒造りの特徴のひとつです。
ほかの醸造酒と比べてみますね。
ビールは、デンプンを糖に変える工程と、糖をアルコールに変える工程が別々に進む「単行複発酵」。
ワインは、果実がもともと持っている糖をそのまま酵母が発酵させる「単発酵」。
そして、日本酒造りでは、
デンプンを糖に変える「糖化」と糖をアルコールに変える「アルコール発酵」が、同じもろみの中で並行して進みます。
これを、並行複発酵と呼びます。
麹菌が次々と糖をつくり、その糖を酵母が次々と利用していく。この複雑な共同作業によって、日本酒がつくられていきます。
※なお、並行複発酵は日本酒だけの方法ではなく、焼酎や泡盛、紹興酒、マッコリなどにも見られる発酵様式です。
変化しているのはデンプンだけではない
酒粕と美容を考えるうえで興味深いところです。日本酒造りでは、米に含まれる成分が発酵の過程でさまざまな変化を受けます。
米にはデンプンだけでなく、タンパク質なども含まれています。
麹菌は、タンパク質を分解する「プロテアーゼ」や「ペプチダーゼ」といった酵素もつくります。
これらの働きによって、米のタンパク質も分解されていきます。
タンパク質は大きな分子ですが、分解されると、
タンパク質
↓
ペプチド
↓
アミノ酸
というように、より小さな成分へと変化していきます。
実際の日本酒造りはこれほど単純な一直線の反応ではありませんが、さまざまな酵素や微生物、原料、温度、時間などが複雑に関係しています。
なので、日本酒の味や香りには、それぞれの蔵の個性が生まれて、それぞれの美味しさを堪能できるのです。
酒粕の誕生
そして最後に「もろみ」を搾ると、日本酒と酒粕に分かれます。
この「搾り」のことを、醸造の現場では「上槽(じょうそう)」と呼びます。
液体として取り出されるのが日本酒。そして、固形分として残るのが酒粕です。
つまり酒粕は、
米
↓
麹菌・酵母による発酵
↓
さまざまな成分が変化
↓
もろみを搾る(上槽)
↓
酒粕
という長い工程を経て生まれます。
だから酒粕は、単純な「米の残り」ではありません。
発酵というプロセスを経たあとの、複雑な成分を含む素材で、私たちはスーパーマテリアルと考えています。
杜氏さんの手は、なぜあんなにきれいなの?
酒蔵で働く杜氏さんの手は、しっとりとしていて、きれいだと言われます。
理由は、まだ科学的には解明されていませんが、麹や酵母が生み出す「発酵のちから」が、肌に何かしらのはたらきをしているのかもしれません。
『しぜんをちからに』のスキンケアは、その発酵のちからに注目して作られました。
この記事で見てきたように、酒粕には、発酵というプロセスを経て生まれたさまざまな成分が含まれています。
米が麹菌や酵母のはたらきを受けて変化した、アミノ酸やペプチドなどの成分たち。
私たちは、そんな酒粕の恵みを、できるだけ自然のまま、そのまま肌に届けたいと考えています。
参考文献
日本酒造組合中央会「日本酒の製造工程」
独立行政法人酒類総合研究所 公式サイト・公開資料
オエノン株式会社「日本酒ができるまで」
灘の酒用語集「並行複発酵」「圧搾・上槽」
広島県「米麹の利用方法」
渡辺敏郎「健康と美容に貢献する『酒粕』の成分」『日本醸造協会誌』107巻5号、2012年、282–291頁
公益財団法人日本醸造協会編『醸造物の成分』1999年
公益財団法人日本醸造協会編『増補改訂 清酒製造技術』
※日本酒造りの工程や発酵、酒粕の成分については、上記の公的機関・学術資料をもとに整理しています。商品情報は公式オンラインショップの掲載内容を参照しています(2026年8月時点)。
