背景だけ異世界にしても、異世界の住人にはならなかった。コバンとあかりを「キャラクターシート」から作り直した
いつものコバンとあかりを、異世界へ連れていってみたくなりました。
城があって、ドラゴンがいて、強いライバルがいる世界です。
映画みたいな一場面を、この2人で見てみたかった。
最初は、もっと簡単にできると思っていました。
いつもの2人を、そのまま異世界の背景に置けばいい。
それで始められると思っていたんです。
でも、できあがった絵を見てすぐ分かりました。
そこにいたのは、異世界の住人ではなく、異世界の背景の前に立ついつもの2人でした。
背景だけ異世界にしても、2人はこの世界に生きていなかった。
そこで私は、いったん絵を作るのをやめて、先にキャラクターシートから作り直すことにしました。
まず、2人を「転生」させるところから始めた
あかりは、いつもの服をそのままファンタジー風にするのではなく、デザインから考え直しました。
黒髪は長くして、片側だけ細く編み込み、アイボリーの短いジャケットに、深い青緑のアシンメトリーな服。
背中には、動くたび大きく流れる2本の布をつけました。
武器も、ごつい大剣ではなく、細身の片刃剣です。
飾りを増やして「ファンタジーっぽく」するより、動いたときにシルエットが立つことを優先しました。

剣士が一番似合ってたので、職業は剣士に設定
コバンも同じです。
ただ鎧を着せるのではなく、丸い体型はそのまま
深紅のフードと短いマント
そして、小さな杖を一本

丸い体型と小ささを生かして、コバンは魔法使いとして立たせることにしました
並べてみると、ようやく、
「この2人なら、この世界を歩けそう」
と思えました。
ここで初めて、異世界へ出発です。

思わず壁紙にしたくなるくらい、気に入った一枚になりました
最初に変えたのは、物語より「カメラ」だった
せっかく異世界へ行くなら、
「2人が立っています。その後ろに城があります」
では、あまりにも普通です。
だから今回、ひとつルールを決めました。
人が普通に立って見る場所から、なるべく撮らない。
たとえば巨大な城。
全景を遠くから見せるのではなく、カメラを地面すれすれ、あかりの靴の横まで落としました。
一番手前にあるのは、あかりのブーツ。
そこから脚、体、視線、その先の巨大な騎士像へ。

下から上へ視線がつながります。
同じ「大きな建物を見る」でも、カメラを数十センチ動かしただけで、世界の大きさがまるで違って見えました。
ドラゴンは、全身を描かない方が大きかった
途中でドラゴンも登場させました。
最初は巨大なドラゴンなら、全身を描いた方が迫力が出ると思っていました。
でも、逆でした。
画面に入っているのは、ほとんどドラゴンの顔だけです。

ドラゴンのサイズを数字で説明する必要はありませんでした。
「全部見せない」ことで、画面の外にもまだ体が続いている。
その方が、私にはずっと巨大に感じました。
そして、異世界にはライバルが必要だった
冒険して、ドラゴンと戦うだけでは、少し物足りなくなってきました。
そこで、あかりと同じくらい強い女剣士を登場させました。

最初は高い場所から見下ろす。
そして、次の瞬間には――

もう、背景すらほとんどありません。
額と額。目と目。
歯を食いしばっているのに、2人とも少し笑っています。
敵なのに、
「やっと本気で戦える相手を見つけた」
みたいに見える。
私はこの一枚がかなり好きです。
剣や魔法を大量に描かなくても、顔を近づけるだけで戦いになるんだと分かりました。
派手な場面ほど、画面に入れるものを減らした
もちろん戦闘なので、派手な絵も作りました。
その中でも気に入っているのが、青い閃光が走る一枚です。
剣を振り切る躍動感と、空気まで切り裂くような緊張感を出したくて作りました。

空気まで凍ったような一瞬。
今度はコバンの魔法を、あかり本人ではなく剣へ。
小さなコバンの杖から出た力が、剣に集まっていきます。

ここまで作って気づいたのですが、
派手な場面ほど、
魔法陣も、
瓦礫も、
光も、
敵も、
全部入れたくなります。
でも、入れるほど「何を見ればいい絵なのか」が分からなくなる。
今回かなり意識したのは、
一枚に、一番見せたいものを一つ決めること。
でした。
「異世界を描く」より、「そこにいる2人を作る」方が先だった
今回やってみるまで、ファンタジーの絵を作るなら、大事なのは世界設定だと思っていました。
城はどうする
魔法はどうする
ドラゴンはどうする
でも実際に最後まで作ってみると、私が一番時間を使ったのはそこではありませんでした。
あかりは、この世界でどんな服を着るのか。
コバンは、この世界で何を持って歩くのか。
そこでした。
キャラクターシートを先に作ったことで、
「この場面なら、あかりはこう動く」
「怖いとき、コバンなら後ろに隠れる」
と、絵の中で2人が少しずつ勝手に動き始めた感じがしました。
背景を異世界に変えただけでは、たぶんここまでにはならなかったと思います。
最後に
今回、一番楽しかったのは、いつもの2人を捨てずに、まったく違う世界の2人へ変えていくことでした。
あかりは剣士になり、コバンは小さな魔法使いになりました。
ドラゴンに見つかり、強敵とぶつかり、とんでもない魔法まで使いました。
それでも、怖くなったコバンがあかりの後ろに隠れると、「あ、ちゃんとコバンだ」と思えます。
世界が変わっても、キャラクターまで別人にする必要はなかった。
たぶん私が今回作りたかったのは、異世界そのものではなく、
「もし、この2人が別の世界に生きていたら」
という景色だったのだと思います。
背景を変えるだけでは、異世界は始まりませんでした。
そこにいる2人を作って、はじめてこの世界は動き出しました。
おまけ


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