ロングトレイル15泊の食料計画 | なTJAR 日本アルプス縦走の記録
2025年9月、富山湾から駿河湾まで、日本アルプスを歩いて縦断した。TJAR(トランスジャパンアルプスレース)のコースを、レースではなくテント泊主体の15泊16日の縦走としてなぞる「なTJAR」という個人的な挑戦。406km、累積標高+22,314m、アルプス未経験の2人。
この記事はその記録のうち、16日分の食料をどう計画して、どこで間違えたかだけを取り出したもの。
まず反省: 計画表に、昼食の行がなかった
食料はスプレッドシートで組んだ。品目ごとに1個の重さと個数を入れて、区間ごとの総重量を出す。どこで何を買い足すかも品目単位で決めてあった。アルコール燃料の量まで「夜30ml+朝は2日に1回30ml」と置いてある。
数字の上では、よくできた計画だったと思う。
1年経ってこのシートを見返して、一番大きな穴にやっと気づいた。
ランチを考慮してなかった。行動中はすべて行動食のみでカバーしようとしていたのが甘い部分
昼食という行が、どこにもない。
朝はオーバーナイトオーツorチキンラーメン、夜は辛ラーメン、その間は歩きながら行動食でつなぐ。そういう設計だった。カロリーの計算をしていないから、その設計に穴があることに気づく機会もなかった(経験不足)。
結果的に2,3日目は10時間以上の行動時間にエネルギーが足りず、毎日午後になると大失速していた。
(4日目からはランチを食べるようになってわかりやすく終日元気だった)
何を、どう持ったか

基本設計
前半6日分の食料を全部背負ってスタート
ジェルだけは全日程分を最初から持つ(かさばらないから)
買い出しは2箇所: 6日目・木曽福島(北アルプスを抜けてロード58kmの終着点)と 9日目・駒ヶ根(中央アルプスを降りたところ)
装備込みのスタート重量は14kg (その他装備については別記事で→ https://note.com/shinsaku_toyama/n/n1906cbd1eb02 )
品目ごとに「どこで買い足すか」を決めていた
行程を 〜Day6 / 〜Day9 / Day9〜 の3区間に割り、品目ごとに補給ルールを5種類決めていた。重量を計上していたのは、このうち4つ。
最初に全部持っていく: 乾燥野菜、塩熱サプリ、マグネシウム(液・パウダー・ジェル)、カフェインジェル、半固形ジェル
Day6でのみ買い足し: 柿の種、ミックスナッツ(テント食用)
Day9でのみ買い足し: 小さめのインスタント麺(辛ラーメン)、オートミール、ドライフルーツ、アルコール燃料
補給のたびに買い足し: でかめのインスタント麺、具材(コンビーフ等)、プロテインバー、ポテチ、グミ、ミックスナッツ(行動食用)
必要に応じてDay9で買い足し: ウェットティッシュ、トイレットペーパー、日焼け止め、汗拭きシート、ライター(重量は計上していない)
軽くて日持ちするもの(サプリ・乾燥野菜)は最初に全部担ぐ。かさばるもの・重いものは現地調達。
区間ごとに消費する食料+燃料は、シート上ではこうなっていた。
スタート〜6日目: 食料3,242g+アルコール燃料315g=3,557g
6日目〜9日目: 食料2,137g+燃料45g=2,182g
9日目〜ゴール: 食料2,676g+燃料270g=2,946g
水はこれとは別で、常時2L=2,000gを持つ設計。
2区間目の燃料が45gしかないのは、6日目〜9日目が宿と小屋続きで自炊しない前提だったから。逆にアルコール燃料を9日目で足す設計にしているのは、そこから先の南アルプスがまたテント泊主体に戻るから。
そして、この3つの数字はあくまで「区間ごとに消費する量」であって、スタート時に背負った量ではない。買い足しルールを積み上げると、初日に担いだ食料+燃料は5kgを超えている。
補給ポイントの直前が一番軽く、直後が一番重い。9日目の駒ヶ根で買い出した直後のメモが正直だった。
荷物増えてやばいおもい
「9時間の壁」——エネルギー切れの正体
3日目に自覚した、この山行で一番役に立った知見。
行動9時間くらいで、必ずエネルギー切れが来る。
症状が独特だった。
脚はまだ動くのになんか力が入らない、気力がでない
筋肉が終わったのではない。燃料が終わっている。脚は動くのに、力が入らず、何より気力が出ない。この状態で悪天候の稜線に立つのが一番危ないと思う。
3日目、立山三山を越えて五色ヶ原へ向かう嵐の中でこれが来た。予定していた太郎平まで届かず、スゴ乗越小屋で行程を打ち切ることになった。直接の原因は嵐で体力を奪われたことだけど、エネルギー切れも効いていたんだと思う。
4日目から運用を変えた。行動中にちゃんとランチを食べる(シンプル)。
それまでは行動食をつまみながら歩き続けるスタイルだった。これを、太郎平小屋のような節目で腰を下ろしてカップヌードルを食べる、という形に変えた。

効果は劇的だった。4日目のメモ。
ランチ最高 カップヌードル
ちゃんと休憩とったのもよかった
黒部五郎元気、9時間経ってもめっちゃ登れた足動いた
9時間経っても登れた。 前日まで9時間で切れていたのが嘘みたい。
以降、あの独特の「気力が出ない」感覚は出ていない。
ランチの中身は、行き当たりばったり。道中の山小屋にあるご飯を楽しむ。
テント飯 (朝食) オーバーナイトオーツorインスタントラーメン
オートミール+ミックスナッツ+ドライフルーツを、前夜にジップロックで水に浸しておく。朝は火を使わず食べるだけ。

これの最大の価値は味ではなく時間だった。
3時起きの日でも、10分で食べられる。
まあ余裕のある朝はインスタントラーメン食べてた。
テント飯 (夕食) ほぼ毎回 辛ラーメン
15泊のうち、テントで寝たのは8泊。そのテント泊の夜は、ほぼ毎回 辛ラーメンだった。

飽きない。というより、疲労がすべての調味料になる。
結構いろいろ試したけど、トッピングの完成形はこれ↓
コンビーフ (あのビジュでプラスチックなのでゴミがかさばらないのが優秀)
乾燥野菜(コーン入りがよい)
ニンニクチップ
椎茸チップ
結局辛ラーメンがうまい
にんにくちっぷ、椎茸チップさいこう
調理と後片付けは徹底して簡単にしてある。洗い物は汁を全部飲んで、ウェットティッシュで拭くだけ。水も洗剤も使わない。
湯を沸かすのはアルコールストーブ。30mlで5分燃焼して400mlのお湯が沸く。風防さえあれば強風でも問題なかった——テント場では、テントに座ったまま使っていた。

山小屋と宿で食べたもの、13食
夜(5回)





昼(8回)




行動食は、後半になるほど足りなくなった
計画に対する最大の誤算はこれ。しかも後半になるほど足りない。
そこから、9日目「明らかに行動食のペースが上がった」、11日目「行動食もっとがんばりたい」、12日目「行動食が足りない」「後半は明らかにエネルギー効率が落ちてる」「ナッツ足りん」。毎日のように振り返りメモに同じことを書き続けている。
同じ距離を歩くのに必要なカロリーが、日を追うごとに増えていく感覚があった。実際に増やした量は後半で体感1.3倍くらい。7日目の「おやつ食べすぎちゃう」も、いま振り返れば食べすぎではなく「後半にかけて必要な摂取カロリーが増えただけ」だった。
ヒットしたもの
柿の種: 6日目の買い出しで300g→600gに倍増した。理由は「おいしかったから」
ハリボー: うまい。グミ色々持っていったけどハリボーが最強だった
カレーメシ: ランチにもテント飯にも使える
ミックスナッツ: 足りなくなった。多めに持つべき
合わなかったもの
スニッカーズ: 開けにくくてベタつく (まあチョコ全般そうか)
電解質だけは、別枠で厳密にやっていた
摂り方は「ALIVAL」を1時間に数滴。
汗の量が多い自覚があるので、ここだけは意識して続けた。塩熱サプリなどのタブレット類は「気軽に摂取したいとき適度に」で、頻度は決めていない。
ジェルも行動時間が長い日は適度に摂取していた。カフェインジェルは10時間以上歩く日の後半に使う、という運用。
補給地でやっていたこと
買い出しにかけた時間は、1回20〜30分。中身は流石に覚えてないけど、ほぼ計画通り。長く滞在する余裕はない。
6日目の木曽福島で入ったスーパーは**「まると」**。このエリアにはここしかない。

スーパーはTJARの聖地、みんな買うんだろうなあ
同じ6日目の夜、宿の夕飯はスーパーの惣菜パーティ。

9日目の駒ヶ根はもっと選択肢があった。「久しぶりの大きな町駒ヶ根、マックもあるしなんでもある」「セイユーもデカくてなんでもあった、しかも24時間やってる」。

計画外で助かったのが、6日目のロードで通った沢渡のドライブイン。
沢渡のドライブイン最高 店開けてくれた TJARの人もご飯食べるらしい
閉まっていた店を開けてもらった。ここでソースカツ丼を食べている。
逆に、補給が空白になった日もある。15日目。
田代温泉エリアまじでなんもない、唯一のランチもあいにくの休業日
なんとかキャンプ場でカロリー調達できた、、
水の運用
基本2Lを持ち歩く設計。ビーフリー(浄水器)+フラスク+途中で買い足したペットボトル500ml。ハイドラパック2Lは予備。
実際の消費は日によって全然違った。涼しい日は2〜3L、暑いロードの日は5〜6L。それでも水が足りなくて困った場面は一度もなかった。
浄水器は想像以上に働いた。水場で汲むときはだいたい通していたし、1Lのボトルとしても使っていた——浄水器というより、浄水機能つきの容器として運用していた。一番活躍したのは高山裏小屋で、水場が沢だったので浄水する必要があった。
水場は事前にめちゃくちゃ入念に調べていた。
山小屋があるなら営業しているかどうか、湧き水があるなら枯れていないかどうか。道中の何km地点に水場があるのか、全部メモしていた。
いろんな湧き水を飲んだ中で一番おいしかったのは、
空木岳〜駒ヶ根区間の。池山の水(9日目)

16日間、胃腸は一度も壊れなかった
なぜ大丈夫だったのかは、分からない。朝はオーツ、夜は辛ラーメンと毎日同じものを食べ続けていたので、その単調さが効いたのかもしれないと思ってるけど、比較する材料がないので推測でしかない。
後半の食欲は明らかに増えて、「毎晩2食食べたい気分」だった。
下山後も食欲止まらず、翌日には二郎訪問していた

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