ご存じでしたか?~国立女子大を巡る奈良VS京都~
5月に入り、ゴールデンウィークも明け、少しばかり落ち着いた毎日となっています。
さて、私は以前「京都生まれ京都育ちの私が感じた、奈良と京都の違いについて~ことば編~」を書きました。
京都出身で、なおかつ奈良とのつながりが多い私が、京都と奈良の「ことばの違い」についてまとめたものになります。
その時に「京都と奈良」についてあれこれ考えておりましたら、一つ疑問がわいてきました。
国立大学の東西の雄と言えば東京大学と京都大学、では国立女子大は東京がお茶の水女子大学、京都にはないのか?と。
京都女子大学は私立だなぁ、いや、奈良に国立の奈良女子大学があるじゃないか、と思いました。
どうして奈良に、全国でたった2校の国立女子大学があるのだろうと。
そこで、少し調べてみました。
そうしましたら、京都と奈良で女子大学の誘致合戦とも言うべき駆け引きがあることがわかりました。興味深い話なので、今回noteでお伝えしたいと思います。

時は1890年代、高等女学校令が公布され、文部省は、東京女子高等師範学校(後のお茶の水女子大)に続く学校を関西に、と考えていました。
ちょうどそのころ、東京美術学校(現在の東京芸術大学)の岡倉天心が、奈良に東京美術学校の分校を建てるべく用地を確保していました。
以前書いたnote「オススメの穴場スポット5選 その2~聖林寺~」にて明治初期、廃仏毀釈の危機に瀕した京都や奈良の寺社などを巡り、フェノロサや岡倉天心がその仏像などに触れ、感銘を受けたということをお伝えしました。
岡倉天心は奈良の古美術の保存に熱心であったため「西の芸術の拠点として奈良に芸術学校を!」と考え、奈良県や市に打診しました。
そして約3000坪を無償で提供しようと申し出、文部省に寄付をしていました。
狭いといわれて追加でさらに土地を用意したようですが、美術学校の設立は立ち消えとなってしまったようです。

そこで文部省は、この土地もあるのだからと、奈良に女子師範を作ると決めていたようです。
しかし、日露戦争が勃発、計画は延期となり、その後女子師範の再度計画が持ち出されたときに、京都が名乗りを上げたのです。
「関西の教育の中心は京都である」と京都新聞の前身の「京都日出新聞」が主張しました。そしてこれに同調するように京都市、府さらに国も官民一体となって京都にという主張が繰り返されます。
とうとう「鹿を相手にのんびり過ごすような寂しい田舎はふさわしくない」などと、今なら眉をしかめるような論調まであったとのことです。

一方、奈良もそれに対抗して用地が確保されていることを強調し、こちらも官僚などが一致団結し、論争は帝国議会にまで持ち込まれました。
結果、京都設置に賛成するもの131票、反対は132票。
わずか1票で、京都は否決されました。
ただその後、反対票が二重に投じられていたことが分かったのですが、議長の判断で結果は履らなかったという劇的なこともあったのです。

では、なぜ決まりかかっていたのに横やりのように、京都が名乗りをあげたのかという点では、「京都人のプライドか」という意見があります。
といいますのも、当時の京都は、明治になり天皇が東京に移り、京都人の心は打ちひしがれていました。しかし衰退するかと思いきや、革新の気風で、産業などの振興が順調に進んでいたのです。
そこで近代化に向けてきわめて重要である女子教育の学び舎を京都に誘致しよう、と意気込んだのではないかと思います。
しかし一方であの時期、芸術や美術の研究、進化のために、市の歳出と同じほどの市債を投じて用地を提供した奈良の意気込みは、京都の単なるプライドだけではない百年先を見据えていた先見の明だったのかもしれません。

そんな奈良女子大学は、発足4年後には単独で理学部を設けるなど、理系女子の育成に尽力され、つい、女子大で初めて2022年には工学部も設置されています。
工学部卒の女性エンジニアもまもなく誕生ということになるのでしょう。
国立でたった2校の女子大学、きわめてレアな奈良女子大のキャンパスは、奈良公園の北側の閑静な地域に立ち、華やかな女子大のイメージではありませんが、男女の差なく多様な社会へはばたこうと、しっかりと勉学に励みたいと思う女子たちが、数多くいると感じました。
そして、そうした学生の思いを、重要文化財指定の正門や記念館が、どっしりと受け止めている、キャンパスはそんなただずまいでした。


リニア中央新幹線の新駅のルートに際しても、
京都が誘致論争をしかけたりと、奈良に決まりかかると、意識をしてしまう「京都」。
もともと京都人には、伝統や文化を重んじるという意識とともに、新しいもの好きという進取の気風もあります。
しかし、後出しにならないよう、奈良のように地道な積み重ねが必要だと感じました。
私も今後、奈良のこの地の気風を受け止め、女性専用のシェアハウスの在り様をしっかりと入居者様と分かち合いたいと思います。
今回も最後までお読みくださいましてありがとうございました。
