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「この子、うちにくれよ。」その一言が、すべてを物語っていた。― 技能実習生と過ごした2年間の話

ともに働く現場の記録 #13

この夏で、
ミャンマーから来た技能実習生が、うちの会社に来て丸2年になる。

最初の頃は、お互いに手探りだった。

日本語はまだ十分に通じない。
こちらも、彼の考え方や文化を知らない。

仕事を教える以前に、

どう伝えれば分かってもらえるのか。

そこから始まったように思う。

それでも、2年という時間は人を変える。

今では取引先へ一緒に行くと、

「この子、うちにくれよ」

と、冗談で言われることがある。

もちろん、本気ではない。

でも、それくらい自然に現場へなじみ、
周りから信頼される存在になったということだ。

彼は器用なほうだと思う。

仕事に関しては多少の波もあるが、
任せられることは確実に増えた。

仕事をする姿を見ながら、

「成長したな」

と思う場面も多くなった。

ただ、今でも言葉の壁はある。

こちらは伝えたつもりでも、
本人が十分に理解できていないことがある。

彼は30代だ。

日本へ来る前にも、
社会人として働いてきた経験がある。

だから、分からないことがあったとき、
これまでの経験から判断して動くことがある。

その判断が、うまく合うこともある。

一方で、こちらの意図と
大きくずれてしまうこともある。

そんなとき、

「どうして伝わらないんだろう」

と思ってしまう自分がいる。

でも、そのあとで考える。

本当に理解できなかったのは、彼の問題なのだろうか。

こちらの伝え方は、十分だっただろうか。

言葉が違うということは、
単に日本語が話せるかどうかだけではない。

育ってきた環境も違う。
働いてきた文化も違う。
仕事に対する考え方も違う。

だからこそ、
伝えるということは、思っている以上に難しい。

彼とは、毎月一度、
一緒に外食する時間を作っている。

仕事中は、どうしても
目の前の作業が優先になる。

ゆっくり話をしたくても、
その時間をなかなか取ることができない。

だから、仕事を離れた時間を共有することで、
話をする時間を作るようにしている。

焼肉へ行くこともある。
ラーメンを食べに行くこともある。

彼は日本の食事が好きだ。

できるだけ多くの日本の食文化を、
彼にも知ってほしいと思っている。

そして何より、

「おいしい」


と言いながら食べている姿を見るのが、
俺は好きだ。

食事をしながら話していると、
仕事中には聞けない話も出てくる。

日本で困っていること。

家族のこと。

ミャンマーでの暮らし。

そして、

「あのときは、意味が分かっていませんでした」

という本音。

毎日一緒に仕事をしていても、
それだけで相手のことを理解できるわけではない。

同じ食卓を囲み、
仕事から少し離れた場所で話すからこそ、
分かることがある。

仕事だけでは築けない信頼もある。

彼は今でも、
仕事が終わったあとに日本語を勉強している。

それも、週6日。

オンラインで先生とつなぎ、
少しずつ日本語を身につけようとしている。

仕事で疲れている日もあるはずだ。

それでも続けている。

もし自分が海外へ行き、
慣れない言葉の中で働きながら、
仕事のあとに週6日、その国の言葉を勉強できるか。

そう聞かれたら、

「できる」

と胸を張って言える自信はない。

だからこそ、
彼の姿勢には本当に頭が下がる。

来年には、特定技能へ移行する予定だ。

そうなれば、
ほかの会社へ転職する可能性もある。

もちろん、会社としては
このまま一緒に働いてほしいと思っている。

ただ、この2年間で彼が会社に与えてくれたものは、
仕事の成果だけではない。

一生懸命に学び続ける姿勢。

慣れない環境でも前へ進もうとする姿勢。

そして、違う文化の中で
信頼を築こうとする姿勢。

それは、私たち日本人にとっても
大きな刺激になっている。

私たちは彼に仕事を教えてきたつもりだった。

でも、振り返ってみると、
こちらが教えられたことも同じくらい多い。

人を育てるということは、
仕事を教えることだけではない。

同じ時間を過ごすこと。

同じ食卓を囲むこと。

そして、
お互いを知ろうとすること。

この2年間で育ったのは、
彼の日本語や仕事の技術だけではない。

私たちの間にある信頼も、
少しずつ育ってきたのだと思う。

前回の記事はこちら👇

できるようになってからが、本番だった ― 技能実習生との現場で起きたズレの話

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