アクセスの悪い温泉地が、8月ほぼ満室だった。昼神温泉で感じた箱根の危機感
【正直、聞いたことのない温泉地でした】
長野県阿智村の昼神温泉。
全旅連青年部の「若旦那若女将密着プロジェクト」で、大学生と3日間を過ごしてきました。運営側での参加は今年が初めてです。
正直に書くと、行く前の僕は昼神温泉のことをほとんど知りませんでした。松本駅からマイクロバスで向かう道のりも、決して近くはない。アクセスがいい場所とは言えません。
その温泉地が、今年の8月はほぼ予約でいっぱいだったと聞きました。
うちはどうだったか。お盆は忙しかった。でもそれ以外の日は、正直かなり暇でした。


【日本一の星空は、伊達じゃなかった】
夜、学生たちと星空を見ました。
日本一の星空と言われているのは知っていましたが、想像以上でした。ただ、あれは「たまたま空気が澄んでいる土地だった」という話じゃない。地域の人たちが、意図してつくってきたものです。
驚いたのは客層でした。すれ違う人たちが若い。暗い中を歩いていると、自分の学祭の団体がどこかわからなくなりました。
昔は団体客で、50代、60代、70代のお客さんがたくさん来るような温泉地だったそうです。それが今は、明らかに若い人が来ている。
移住者も多い。DMOの人は、星空食堂という食堂をはじめ、いくつもの事業や店舗を自分で立ち上げて運営していました。しかも、軌道に乗ったらそれを「やりたい人に手渡す」ということをやっている。
これは仕組みとして強いです。一人が抱え込むと、その人が倒れたら終わる。手渡していけば、事業も人も増えていく。
地域おこし協力隊も、たくさん入っていました。






【関係人口に、自分たちがなるということ】
3日目、学生たちが発表をしました。
星空の話だけじゃありませんでした。地域の課題、アクセスの悪さ、そして3日間で自分たちがどう変わったか。課題の見え方がどう変わったか。ちゃんと自分たちの言葉になっていました。
発表の後、地域みらいデザインキャンプでのエピソードを学生に問い返しました。
「君たちは移住の発表をしたけど、君たち自身は本当に移住したいと思っているのか」
学生がハッとしていました。「今まで自分ごととして考えていなかったのかもしれない」と。
この話をして昼ごはんを食べたあと、1人の学生が言っていました。
「あの言葉を聞いて、私も自分ごとになっていなかったかもしれない」
あの8人は、たぶんまた昼神に行きます。ぼくも絶対行くと思います。
星空を見に行くんじゃなくて、あそこで出会った人に会いに行く。
関係人口という言葉があります。観光客として来るだけではなく、地元の人としっかりつながって、その人に会うためにまた戻ってくる人。3日間で、それが目の前で立ち上がるのを見ました。
【箱根が選ばれなくなってきている】
帰り道でずっと考えていたのは、箱根のことです。
アクセスの悪い昼神が8月ほぼ満室で、箱根はお盆以外が伸びない。これはもう、箱根が選ばれなくなってきているということだと思います。「箱根は高い」で外される。その兆しは、すでに出ている気がします。
箱根は、都心からもアクセスが良く、黙っていてもお客さんが来る場所でした。だからこそ、あぐらをかいている足元をすくわれる。
もうひとつ、構造の話もあります。
箱根町は地方交付税の不交付団体です。国からのお金が下りてこない。一方で町域は広いので、ごみ処理も消防も、行政のコストは大きい。それを回すために職員も必要になる。そして人口は1万人を切ろうとしている。
地方交付税の不交付団体には、地域おこし協力隊を呼ぶお金も国から出ません。
若い人が地域に入ってくる仕組みを、国の財源に頼ってつくりにくい町だということです。
でも昼神に習ってできることもあるかもしれません。


星空とかけて「七夕まつり」にこの竹灯籠が町中を彩るそうです。(8月中まで)
【当番制の星空鑑賞会をやってみたい】
昼神から持ち帰りたいことを、いくつかメモしました。
ひとつは、星空鑑賞会です。
日本一ではなくても仙石原の街灯のないススキ草原、ここは本当に綺麗に星空が見えます。地域の仲間で当番制にして、その日の当番が星の解説をして、場所を案内する。参加した人には何か記念になるものを渡す。イベントとして単発でやるより、当番で回すほうが続くし、地元の人の顔が見える。
もうひとつは、遊ぶ場所のことです。若い人が遊ぶ場所が少ないという話は、昼神でも聞きました。箱根も同じです。観光地なのに、地元の人が遊ぶ場所がない。
ここはずっと引っかかっています。
観光客としてではなく、地元の人とつながって、また会いに来てくれる人が増える。そういう人が増えると、面白い人が集まってくる。そうやって箱根町全体が面白くなっていったらいい。
アクセスの悪い温泉地が8月に満室だった理由は、たぶん星空だけじゃありません。手渡す人がいて、入ってくる人がいて、また来たくなる人がいた。それだけの話だと思います。
僕自身も、この3日間でもらったものと、そこでできたつながりを持って帰ってきました。
ここからまた、まちづくりを進めます。
ファシリテーター視点の記事は、こちら。



