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こんなに軍事関連銘柄造らなくっても、と思うけれど、やっぱり需要があったのでしょう

 酒造会社のラベルは、実に多様で楽しいものです。その銘柄の名前を付けた人達は、その酒にどんな思いをいたしたか、どんな地域の特徴を込めたかなど、いろいろ探索するのも面白いものです。

 そして、戦前の銘柄となりますと、やはり、軍隊絡みの銘柄も多く、そのラベルも手が込んでいました。先日紹介した「銀翼」も、あからさまに軍国時代だからこその銘柄でした。

 その後、新たにいくつかの銘柄の胴ラベルを入手しましたので、紹介させていただきます。まずこちら、長野県上田市上紺屋町「石田本店」の吟醸とあり、銘柄は「日本軍正宗」。

 偶然、長野県関連のものが入手でき、大変嬉しかったです。中央に鉄兜をデザインし、背景に行軍する兵士の影を金色で抜いています。空には飛行機も入っています。ネットで検索しましたが、現在も続いているかどうかは確認できませんでした。

 そしてこちら。千葉県佐倉町(現・佐倉市)の「藤川本店」による「金鵄正宗」です。

 「正宗」の銘柄の下に、抜群の軍功に下賜される「金鵄勲章」のデザインを入れてあります。そして、陸軍を象徴する連隊旗と、海軍を象徴する錨を桜とともにデザインしてあります。佐倉町の佐倉城址(現・佐倉城址公園)に歩兵第2連隊、後に歩兵第57連隊の兵営がありました。この銘柄は、そうした連隊での使用を見込んでいたとも考えられます。

 ところで、正宗という銘柄がこうして重なりますが、それぞれ醸造場が違うので調べたところ、2013年1月23日付日経新聞大阪夕刊の記事などによりますと、元々は現在の神戸市、灘で1717年に創業した蔵元が1840年に売り出し、これが江戸で爆発的に売れたので、あやかって「正宗」を付ける蔵元が続出し、1884年に商標条例が制定されたころには、一般的に使われている慣用商標とされ、出願できなかったということです。このため、この蔵元は「桜正宗」を登録したということです。

 実際、現在の長野県内でも松本市の「アルプス正宗」、千曲市の「姨捨正宗」、中野市の「勢正宗」、長野市の「桂正宗」、飯山市の「北光正宗」、須坂市の「養老政宗」など、さまざまな「正宗」があり、先ほどの上田市の「日本軍正宗」や、こちらの「金鵄正宗」も、その時代に合わせたネーミングでの登録商標だったのでしょう。

 そんな正宗関連で、宮城県石巻市の「鈴木源助」で醸造されていた「金兜正宗」の歳末の売り出しチラシがこちらです。最初は銘柄が「金兜、壽、喜桝」とあるのに、絵はなぜ正宗か、と思ってみていたのですが、ラベルに兜を描いているのを見つけ、これが「金兜正宗」ですが、正宗が多すぎて、正宗に冠した部分だけを出して区別していたようです。
 デザインは「軍国 非常の歳末」とあり、景品を付けて競争するほどで規制がなかったという点から、おそらく日中戦争が始まった1937(昭和12)年の年末に合わせたチラシだったと推定します。ここにも日の丸を入れて、気分を盛り上げています。

 最後にこちら、もう、軍国時代、そのものずばりの銘柄「艦長」です。絵柄は一本煙突の長門級戦艦とみられますので、満州事変後、日中戦争当時のラベルとみられます。かもめの配置にセンスがあります。「海国日本の護り」と強調を忘れていません。

 こちら、山形県山形市にあった山形醸造株式会社で出していた銘柄で、そのうちでも「金印 艦長」の胴ラベルです。
 なお、縁などの金色部分は厚みがあり、金の部分に厚みがあるのは、単なるインクではない可能性もあり、それだけこの商品が主力で、その中でも金印はまた特別なものだったとみられます。
 既に山形醸造は廃業しているため、当時の様子は知れませんが、なかなか見ることのできない戦艦、おそらく長門、陸奥の姿で、盛り上がったのではないでしょうか。

 こうした商業デザインにも、その時代が大きく影響してくるでしょう。時代が求めたのか、時代を利用したのか、今となっては確認のしようもありませんが、こうした兵器ではないもので社会が盛り上がれる雰囲気が続いてほしいと願っています。

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