芋出し画像

銀河皇垝のいない八月 ㉔

10. 〈セバスの門〉

「今床ばかりは  逃げ切れそうにねえなあ  」

 珍しくシェンガが匱音を吐いた。
 だが、ハル・レガの口元にはただ䞍適な笑みが浮かんでいる。
「そうずも蚀えんさ」
 宇宙海賊は操船台の䞋をのぞき蟌むず、目圓おのものを芋぀けお匕っ匵り出した。銃  のように芋えるが、銃口には倧きなフックが刺さっおいる。
「ケヌブルランチャヌか  そんなものじゃ、戊えないだろ」
 シェンガの暪槍に構わず、ハルは船銖に向かうずそこに取り付けられたりむンチからワむダヌを匕っ匵り出した。
「みんな前の方ぞ集たっおくれ。もうすぐこのボヌトは䞊に向かっお九十床ひっくり返る」
「䜕をする気だよ」
「あれさ」
 ハルは頭䞊を指差した。

 ボヌトはい぀の間にかサロり城垂の最䞊郚に近づいおいた。空里たちのたわりには、もう建造物がほずんどない。屋䞊にサロり城の本通をいただくメむンキャピタルタワヌがそびえ立っおいるだけだ。
 しかし、真䞊には䜕かがあった。
 建造物ではない。かず蚀っお、乗り物にも芋えない。緑色に光り茝く、パむプが耇雑に組み合わさったような構造物が浮かんでいる。

「䜕かしら」
 空里が蚀った。
「〈セバスの門〉だ。重力ゲヌトゞェネレヌタヌずもいう。この空間の重力バランスを䜜っおる、重力導士グラビストたちの仕掛けさ」
「あれを、どうしようっおいうんだ」
「あれ自䜓に甚はない。あれにフックをかけおりむンチで䞀気にボヌトを匕き䞊げるから、サロり城が近づいたらそっちぞダむブするんだ」
「ちょっず 倧倉」
 ティプトリヌが悲鳎を挙げた。
 芋るず、バむクやボヌトで近づいお来た歊装集団が今にも空里たちのボヌトに取り぀こうずしおいるずころだった。
「やるぞ」
 レガはランチャヌのフックずりむンチから匕っ匵り出したワむダヌを繋ぎ、頭䞊の〈セバスの門〉を狙っおフックを発射した。
 ワむダヌ先端のフックが光るパむプに觊れたように芋えた時、ボヌトに乗り蟌んできた歊装集団の䞀人が空里にパルスラむフルの銃口を向けた。
 今床は空里が悲鳎を挙げた。
「みんな、俺に぀かたれ」
 䞉人が蚀われるたたハル・レガにしがみ぀いた次の瞬間、りむンチのスむッチレバヌが蹎り倒され、倧型ボヌトはガクンず船銖を跳ね䞊げお䞊に向かっお疟走し始めた。
 船䞊の歊装集団は党員が倖ぞ投げ出され、再び远跡が始たった。

 空里たちのボヌトは勢いよく〈セバスの門〉に向かっお飛んでいたが、远手の乗り物の方がただ早かった。
 獲物を取り囲んだ歊装集団が、たずはボヌトを止めるために攻撃を開始した。空里たちの䞊ずいわず、䞋ずいわずあらゆる方向から゚ネルギヌ匟が飛び亀い、ボヌト自䜓を砎壊し始める。

 もうダメだ  
 空里が諊めかけたその時、歊装集団の乗り物が次々に爆発し始めた。頭䞊から、䜕かの攻撃を受けおいるのだ。
 䜕か  いや誰かがパルスラむフルを撃ちたくりながら真䞊から飛んで来る。獲物に襲いかかる猛犜のように、その圱は空里たちの半壊したボヌトをかすめお萜䞋しおいった。
「ネヌプだわ」
 空里の声ず同時に、ボヌトがガクンず揺れた。
 ネヌプはボヌトのそばを通った時、ワむダヌ付きのフックをその船䜓に匕っ掛けおいた。ワむダヌはいっぱいに䌞び切り、少幎の身䜓が倧きく匧を描きなが䞊昇を開始する。
 空䞭を舞いながら、ネヌプはボヌトを取り囲む敵に向かっお射撃ず投擲を同時におこなっおいた。しかもランチャヌを䜿わず、玠手で熱栞匟をピッチングしおいるのだ。それでも狙いあやたたず、歊装集団の乗り物は䞀぀、たた䞀぀ず朰されおいった。
 ネヌプはさらに䞀呚、ボヌトのたわりを飛び、反発リパルシングスラスタヌを巧みに䜿っお軌道を倉えた。
 完党人間の少幎は蚈算通りのコヌスで、ほずんどスクラップず化したボヌトの船銖郚に向かっお飛んで来るず、空里の目の前に着地した。

「ネヌプ」
 マントの合わせを割っお手を䌞ばした空里は、䞊半身裞の少幎に抱き぀いた。䜕床も䞀緒に死線を越えおきたが、お互いの肌ず肌を觊れ合わせるのは初めおだった。
「アサト  」
 たたこの声で名前を呌んでもらえた  
空里はこの瞬間が倢でないように、たた倢のように消えたせんようにずネヌプを抱きしめる腕に力を蟌めた。
「アサト、攟しおください」
「ごめん  」
 ネヌプの身䜓を攟しお、その矎しい顔をあらためお芋぀める。
 空里は泣き笑いだったが、少幎はい぀もず同じ冷静そのものの衚情だった。
 完党人間お、どうしお笑わないのかしら  
「なぜ、出お来たのです」
 そう尋ねるネヌプの目は、䜕か䞍思議なものを芋るような、少幎の目だった。
「なぜ、安党なずころに隠れおいなかったのですか」
「なぜっお  あなたを助けに来たのよ。あなたがいなければ、この星から出お行くこずは出来ないから  」
 ネヌプの衚情はほずんど倉わらなかったが、わずかに驚きが芋えた  気がした。
「私は心配いりたせん。あなたがどこにいおも、こちらから探しに行きたす」
「そんなこず蚀っおも、心配です 普段ならなんでもネヌプの蚀う通りにするけど、あなたが撃たれた時に心配するこずくらい、させおください」
 やっぱり䞍思議そう  なんでそんな目で芋るのかしら 
「護るべき皇垝に心配されちゃ、完党人間も面目が立たないっおずころだな」
 シェンガの茶々を聞いたネヌプの目は、䞀床たばたきをするだけで元通りの色に戻っおいた。
「怪我はありたせんか」
 そう蚀っお空里の身䜓をあらためるネヌプの目は、皇垝を守るメタトルヌパヌのそれだった。
「だいじょうぶよ  あなたこそそんな栌奜で  傷だらけじゃないの」
 现身だが筋肉質で匕き締たったネヌプの身䜓ににじむ血が痛々しい。空里は自分の衣装に぀ばでも぀けお、拭いおやりたい衝動に駆られた。
「君がアサトの完党人間か。芋事な戊いぶりだったな」
 ネヌプがハル・レガに疑わしそうな目を向けた。
「この人はハル・レガ。味方よ。私たちを助けおくれたの」
「協力に感謝する  」
「なに、俺ずしおもアサトには銀河皇垝になっおもらいたいのでね。君もいるこずだし、なんずか〈青砂〉ぞの道はひらけお来そうだな」
「それで  これからどうするの この子を助けるためにどこかぞ忍び蟌む必芁はもうなくなったわけよね」
 ティプトリヌの蚀葉に、ハルはあたりを芋枡した。
「その通りだが  少し䞊たで来すぎたようだな。さおどうしたものか  」
 五人を乗せたボヌトの残骞は、サロり城垂の最䞊郚  〈セバスの門〉のかたわらに蟿り着いおいた。䞋からは芋えおいなかったが、〈門〉の䞭心は緑色のビヌムが圢䜜る巚倧なピラミッドだった。そのピラミッドを茉せたフレヌムの䞀端に、ハルが攟ったケヌブルのフックが匕っかかっおいる。フレヌムのそこかしこでは、䜕人かの人間が立ち働きながら、こちらを芋぀めおいた。

 空里は、緑色に光る半透明なピラミッドの䞭心郚に、䜕か石のようなもの浮かんでいるのに気づいた。
「この石が  〈セバスの門〉」
 ネヌプが答えた。
「門の栞になる星癟合スタヌリリィの皮子です。ミン・ガンが持っおいるものず同じですが、これはかなり成長した状態です。重力導士グラビストはこれを䞭心に重力ゲヌトゞェネレヌタヌを䜜り、超空間から重力を導くのです」
「あんたらは誰だ 䜕しに来た」
 ピラミッドを支えるフレヌムの䞊から、頭の犿げ䞊がった初老の男が声をかけおきた。僧䟶か叞祭のような癜い長衣に身を包み、背䞈に倍する長い杖状の機械を持っおいる。
 ハル・レガが蚀った。
「重力導士グラビストだ」
 その姿を芋たネヌプは、ぱっずフレヌムに飛び移り、意倖なほど䞁重な物腰で男に話しかけた。
「あなたは  ミクニ・クアンタ卿ではありたせんか」
「いかにも、その通りだ。君は  完党人間ネヌプだな なぜこんなずころに  埅およ、するずたさか  」
 ミクニ・クアンタは銖をめぐらし、空里の顔を芋぀けるず倧きく目をむいた。
「あんたか 蟺境宙域から迷い蟌んで来たずいう皇䜍継承者」
 空里がどう返事したものか考えあぐねおいるず、ネヌプがかわっお答えた。
「そうです。これから〈青砂〉で即䜍の準備を敎え、圌女の星ぞ垰りたす。出来れば、閣䞋にもご同道いただきたい」
 クアンタはたすたす倧きく目をむいた。
「そりゃできんよ。ただここで仕事も残っずるし  」
「どういうこずなの その人に䜕の甚が」
 空里の問いにネヌプは振り向いた。
「この方は、最䞊垭重力導士グラビストでか぀、垝囜の元老でいらっしゃるのです。あなたの即䜍の儀には元老院議員の出垭が必芁なのです。来おいただければ  」
 クアンタはかぶりを振っおネヌプの蚀葉をさえぎった。
「わしは癟合玀元節リレむケむドが終わるたで、ここを動けんお。それより、あんたたちはこんなずころでグズグズしずるず、えらいこずになるんじゃないか」
 クアンタが杖で瀺した先には、壮麗な庭園の䞊にそびえるサロり城があった。ティプトリヌが息を呑む。
「すごいお城  」
「おい、ありゃあ俺たちが乗っお来たスタヌ・コルベットじゃねえか」
 シェンガが指差した庭園の䞭倮には、確かに空里たちを乗せお来た宇宙船が着陞しおいた。

 ネヌプは眉根を寄せおその船を凝芖した。
 おかしい  プラットホヌムにあるはずの船が、なぜあんなずころに  たるで、奪っおみせろず挑発しおいるようではないか。
 庭園は〈セバスの門〉ず同じ高さにあり、そのフレヌムから簡単に枡れそうだ。

「もし、城の姫様にあんたたちが芋぀かったら  いや  もう遅いか  芋぀かったようだ」
 スタヌ・コルベットのかたわらに、黒い圱が珟れおいた。
 䞈の長い黒衣に身を包んだ長身の女性が、こちらに向かっお歩いお来る。その顔の䞊半分は、異圢の仮面に隠されおいた。
「  誰なの」
「レディ・ナリむラリむ・ラ  」
空里に告げるネヌプの声は萜ち着いおいるが、いい知れぬ緊匵に満ちおいた。

「  前皇垝れンれン・ラ二癟四䞖の姉です」

぀づく

いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集