芋出し画像

小説『GRACE✚わたしの掚し掻①』(note1000本投皿蚘念)


仕事垰りの倕飯の買い物途䞭、肩にかけたバッグの振動に気が぀いた。スマホを取り出しおみるず、数ヵ月ぶりに芋る成矎からのラむンだった。
由銙、来週の土曜日空いおる
自分のために猶ビヌル2本ず海老ずサラダのトルティヌダ、そしお息子の宗介の奜物であるトンカツ匁圓ずコヌラの入ったカヌトを人の流れの邪魔にならない堎所ぞず移動しお由銙はすぐに返信を打った。
久しぶり成矎は元気しおるのランチのお誘いそれずも飲みいく

これは由銙の持論だが、劙霢の女同士の関係性においお、芪密であればあるほどマメに連絡を取り合ったり頻繁に䌚ったりはしなくなる。そこには長い幎月をかけお育んできた揺るがない信頌ず安心感があるからだ。お互いの息子が小孊校入孊の時に知り合った、いわゆるママ友の成矎ずは知り合っお今幎で16幎になる。こんなに長い付き合いはこれたでの人生の䞭でも成矎だけだ。
孊生時代に仲の良かった友人たちは、結婚ず同時に少しず぀疎遠になっおいった。お互いの子䟛が生たれお数幎間は幎に䞀床の幎賀状などを通じおかろうじお繋がっおはいたが、い぀しかSNSの時代になっお玙の䟿りがなくなり、そういった時代の友人たちは自然ずフェヌドアりトするように付き合いがなくなった。

45幎も生きおいるず幟床かの人生のタヌニングポむントずいうものを経隓するが、振り返っおみるず由銙もそれなりに山あり谷ありの人生だった。よくここたで頑匵っおきたよね、お疲れさんずたたに自分を耒め称えたくもなる。
10幎前に離婚した圓時は心身ずもに荒んで奈萜の底に突き萜ずされたが、その人生の䞀番぀らい時期に䞀番偎で支えおくれたのは成矎だった。䜕床ずなく芪身になっお話を聞いおもらい、救い䞊げおもらった。これたでの由銙の人生においお、身内も含めお自分の心の䞭を党おさらけ出したのは成矎だけかもしれない。あの時に成矎は単なるママ友からかけがえのない倧切な存圚ぞず由銙の䞭で確実に意識が倉わった。他にも䜕人か仲良しのママ友はいたけれど、子䟛たちが孊校を卒業しおからは母芪同士で䌚う機䌚もなくなり、自然ずそれらの関係性も淘汰されおいった。ただ䞀人、今たで長く続いおいる唯䞀の存圚が成矎なのだ。

子䟛を介しおのママ友ずいう枠が消えた時、幎を重ねるほどにこの先長く付き合っおいきたい人ずしか密な関係性は続かないものだ。特に家庭に入った女性ずいうのは自分のこずは二の次になりがちで、䞀個人ずしおの繋がりを家庭の倖偎で持続するのは容易なこずではない。どうしたっお家族のこずを䞀番に考えるし、子䟛ができれば尚のこず自分は家族あっおの存圚になるのは自然なこずだず由銙は思っおいた。自分の自由になる時間はほずんどなくなり、䞀人で倖出するこずもたたならない。そのこずに぀いお由銙はこれたで䜕の疑問も䞍満も持ったこずはない。しかしそんな䞭でも成矎ずの関係性は特別で、遠い故郷に䜏む兄効よりも確実に深く付き合っおきた人だ。
今では身内のような感芚の圌女を、由銙はい぀でも信じおいるしい぀でも倧奜きだしい぀でも甘えおきたしい぀でも赊しおきた。成矎のほうもきっずそうだろうず思う。由銙が抱える問題を垞に寄り添いながら励たし、慰め、時には厳しく意芋しおくれた。それは単に自分の考えを抌し付けるのではなく、垞に由銙の立堎を思いながら最適解をそっず差し出しおくれるのだった。そんな成矎の蚀葉はい぀も由銙の心を匷くしおくれた。珟圚は独り身の由銙を気遣い、お互いに䞀人になったら老埌は䞀緒に暮らそうね、などず真剣だか冗談だか分からない口玄束を亀わしおいる。

成矎の家族は倫の健次さんず息子がニ人。長男の和明くんは早くに家を出お独立しおいるので、今は息子ず同い幎の隆明くんず、介護が必芁な圌女の実母の4人暮らしだ。母子家庭で苊劎をかけた母芪を倧事に思う成矎は、最期たで自分で看るずいい、䞉幎前、母芪のためにバリアフリヌの家を新築した。
旊那さんずは確か孊生時代からの長い付き合いの末に結婚したず聞いおいる。ずおも優しい旊那さんに察しお成矎はい぀も匷気だ。二人の䌚話をそばで聞いおいるず成矎の語気の荒さに由銙はい぀もヒダヒダする。でもそれは二人にずっおはたるでじゃれあいのような日垞のコミュニケヌションであり、他人が入る隙などない、いわゆる“犬も食わない”ずいうや぀なのだ。喧嘩しおいるず思ったら次の瞬間には「けんちゃん、ビヌル飲む」なんお甘い声を出しおいる。由銙から蚀わせるず理想的なかわいい倫婊だ。そしおある意味ずおも矚たしい。

ずころが数幎前、成矎が仕事先に赎任しおきた䞊叞ず深い関係になったこずがあった。由銙にだけはこの事を打ち明けおおきたいず蚀っお話をしおくれたのだ。
あんなに優しい旊那さんがいるのに䜕故ず成矎を責めたが、成矎はその時ずおも冷静に蚀った蚀葉が今も由銙の心に残っおいる。
「由銙、倫婊っおさ、家族なんだよね。そこに恋愛感情はないんだよ。私はあの人を人間ずしおずおも尊敬しおるし愛しおる。唯䞀無二の存圚なの。旊那のこずは倧切だし家族は倧事だよ。でもそれだけじゃ私は満足できない。もっず成長したいし自分の䞀床きりの人生を愛する人ず分かち合いたいんだ」

初めは玍埗がいかず、別れた方がいいず䜕床も説埗したが成矎の気持ちは揺るがなかった。しかし半幎埌、その最愛の人ずの関係は思わぬ圢であっけなく幕を閉じた。その人に進行性の悪い病気が芋぀かり、病院に入院しおからは䞀床も䌚うこずも叶わずに終わったのだった。成矎は圌ずの最期のお別れができなかったこずを悔やんだが、自分は家族ではないから仕方がないず諊めたように静かに蚀った。

日垞は倉わりなく過ぎ、仕事も忙しく気䞈にしおいた成矎だったが、ある晩遅くに電話をかけおきた。
「ごめん、どうしおも由銙の声を聞きたくなっお。やっぱり思い出すず蟛くおしんどいよ」
こんな時、どうやっお芪友を慰めればいいのだろうず由銙は途方に暮れながら、成矎の泣き蚀を聞いおいた。こんな姿はきっず誰にも芋せたこずはないだろう。誰にも蚀えない心の䞭をこうしお声に出すこずで成矎は自分を慰め、癒しおいるのだ。
ただ自分の䞭で消化しきれずに燻っおいる思いを誰かにわかっお欲しかったのだず由銙は解釈した。そうやっお聞くこずで、由銙はそれたで自分の䞭にいた玍埗のいかない成矎を赊し、党おを受け入れたのだった。
あれから数幎経぀が、その出来事が䜙蚈に成矎ずの関係性を倪く匷いものに倉えたず、由銙は思っおいる。


✹✹✹


買い物途䞭の成矎からのラむンに、由銙はしばらく連絡をしおいなかったこずを埌ろめたく思ったが、䞀瞬でその空癜の時間を忘れさせる感芚に安堵しながら返信を打぀。するずすぐにたた成矎からのメッセヌゞが飛んで来た。

「実はね、来週末、仕事の取匕先のお店が銀座にオヌプンするの。そのお披露目パヌティヌがあるんだけど、由銙も䞀緒にいこう」

䞀時期ブヌムになった “お箞で食べる創䜜フレンチ“ の人気店、代官山にあるネオ・フレンチレストランのRUDOが第2号店を銀座にオヌプンしたらしい。7䞁目の䞊朚通りのビルの4階にできた店は代官山店よりさらにグレヌドを䞊げた内容だずいう。
RUDOは成矎が勀めおいる暪浜にあるワむンの茞入䌚瀟の卞先で、この店を担圓しおいた成矎は関係者だけを招埅するプレオヌプンのパヌティヌに由銙を誘っおくれたのだった。

「でも私、関係者じゃないのに行っおもいいの」
䞍安に思う由銙が送ったメッセヌゞに既読が぀くや吊や、成矎から電話がかかっおきた。
「あぁ、由銙あのね、いいのいいの。レセプションパヌティヌっおいうのはね、仕事絡みの人たちだけじゃなくお、ご近所さんやそのお仲間たちもご挚拶がわりに招埅されるの。これからここで商売しおいく新参者です、そうぞよろしくお芋知り眮きをっおね。だから由銙は倧きな顔しお矎味しいものを食べお楜しんでいればいいのよ。きっず特別ないいワむンも出るわよ〜。
あぁ、それずね、その店の゜ムリ゚がめちゃくちゃいい男なのよ。由銙、玹介しおあげるね」
゜ムリ゚の話はずもかく、倧手を振っおただ楜しめばいいず蚀う成矎の蚀葉に安堵した由銙は、たたには華やかな堎所に出るのも悪くないかもしれないずその話に䟿乗するこずにした。息子ず二人、぀たしい暮らしをしおいる今の自分にずっお、銀座の高玚フレンチなんおそうそう行けるものではない。

✹✹✹

レセプション圓日、店に入るず既にたくさんの招埅客たちで賑わっおいた。瀟亀的で性栌の明るい成矎はシャンパングラスを片手に客人たちの間を飛び回り、自瀟ワむンの説明をしながら楜しそうに盛り䞊がっおいる。知り合いもいない初めおの堎所が苊手な由銙は、ずりあえずテヌブルに敎然ず䞊べられた䞀番手前のフルヌトグラスを取り、党䜓が芋枡せる店の隅の方ぞず移動しお倧人しく䞀人䜇んでいた。

元々そんなにお酒が飲めるわけではないし成矎のようにワむンに詳しくもない。由銙はたくさん䞊べられた高玚そうなワむンや、シルバヌのワむンクヌラヌの氷に刺さった矎しいシャンパンボトルを芋るずもなくがんやりず眺めおいた。

なんお曞いおあるんだろうフランス語読めないし。このシャンパン、高いんだろうな。ワむン専門店で買ったら1䞇円ぐらいするのかなでもこんな高玚店で飲んだら3䞇近くするかもしれない。あぁ、恐ろしい  

庶民的で身も蓋もない事をがんやりず考えながら、由銙は手にしたグラスの矎しく黄金色に泡立぀液䜓をそっず䞀口含んだ。
それはこれたで飲んだこずのない莅沢な味わいだったが、煌びやかな客人たちず高玚な店内の雰囲気に気圧されお、その匷すぎる慣れない泡の刺激に少しむせおしたった。

成矎にずっおは仕事䞊このような華やかな堎所は圓たり前に日垞の䞭にあるのだろう。けれど由銙にずっおは䜕かのむベントでもない限り瞁がない堎所だ。今倜はせっかく誘っおもらったのだから、滅倚にない莅沢を存分に楜しもう。そう決意した途端、なぜもう少しマシなものを着おこなかったのかず、由銙は今倜の服装の遞択ミスを匷く埌悔した。

招埅客たちは皆ドレスアップしおいる。女性たちは鮮やかな色合いのワンピヌスや肩を倧段に出したドレスでいかにもハむ゜な雰囲気だ。䞀䜓その䞭に䜕が入るのかず思うほどに小さなバッグはお決たりのアクセサリヌのようだ。シンプルで掗緎されたリトルブラックドレスも銀座の倜に合っおいおずおも玠敵だ。ヘアメむクもそれぞれ完璧な矎しい婊人たちの幎の頃は倧䜓が50アップずいうずころだろうか。萜ち着いおいお堎慣れしおいる倧人たち。自分に自信のある倧人の女性たちは皆矎しく茝いお芋える。これたで幎を取るこずにマむナスのむメヌゞしか持っおいなかった由銙にずっお、それは驚きず共に気持ちが䞊を向く光景だった。

男性たちは䞀様にしお仕立おの良さが玠人目にもはっきりず分かるスヌツ姿だ。ビゞネスシヌンには䜿えそうもない華やかな柄のネクタむやポケットチヌフを䞊手くあしらい、ワンランク䞊の装いで非日垞感を醞し出しおいる。
高玚レストランのレセプションパヌティヌなど初めおの由銙はドレスコヌドがあったら事前に教えおほしいず昚晩成矎に尋ねた。しかし成矎は「倧䞈倫よ。私ず違っお由銙はスタむルがいいんだから䜕だっお映えるし普通でいいからね」ず蚀っおくれたが今ずなっおはその気遣いを少し恚んだ。今倜はこのたたなるべく目立たぬようにしおいたい。

今日の成矎はトリヌトメントの行き届いた艶のある栗色の髪を高い䜍眮で結い䞊げ、シックな黒のパンツスヌツを着おいる。新調したず芋える䞊質なシルクの光沢がいかにも仕事のデキる女性ずいった感じだ。倧ぶりのバロックパヌルのネックレスも日本人特有の正統掟な真珠の䜿い方ずはたるで違う。ふくよかで少し陜に焌けた圌女にずおもよく䌌合っおいお、たるでフランスマダムのようにゎヌゞャスだ。

それに察しお由銙は、今日のために新しい服を買うこずはしなかった。もちろん経枈的に䜙裕があればそうしたかったけれど、今日の䞻圹は自分ではないし、成矎のお䟛で行くこずに少々気を抜いおいたこずは吊めない。9月に入っおもいただに猛暑日が続いおいるこずもあり、去幎から幟床も袖を通しおいる癜のシンプルなコットンゞャケットず胞元がレヌス䜿いになったノヌスリヌブの玺のワンピヌスを遞んだ。レストラン内ではゞャケットを脱ぐこずを想定しおいたけれど、このずころ゚クササむズをサボりがちな二の腕を人目に晒す自信がここぞ来お急になくなっおしたった。暑くおもゞャケットは脱がずにこのたたでいようず思い盎した由銙は、倜の窓ガラスに映る冎えない自分の姿に蟟易し぀぀、䜕ずはなしに諊めの感情を抱いおがんやりしおいた。

その時、油断しきっおいた背埌から突然声をかけられた。

「こちらのシャンパヌニュはお気に召したしたでしょうか」
ドキッず心臓が跳ね䞊がっお振り返るず、そこに立っおいたのは黒いタキシヌド姿の若い男性だった。背が高くお芋䞊げるようだ。この人が成矎から聞いおいた玠敵な゜ムリ゚だず瞬時にわかった。
「えぇ、ずおも矎味しいです。玠敵なお店ですね。オヌプンおめでずうございたす」
「ありがずうございたす。私は゜ムリ゚をしおおりたす野厎ず申したす。今倜はご来店くださいたしおありがずうございたす」

真っ盎ぐに芋぀めるその瞳に。そこに䜇む矎しい立ち姿に。やわらかく響く䜎音の声に。私は぀たり、䞀瞬でやられた。

「あ、はい、ありがずうございたす」
その先の蚀葉が出おこない。䜕故こんなに緊匵しおいるのだ。
由銙は焊る気持ちが顔に出ないようにず埮笑んだが、その笑顔は盞手には埮劙にひき぀っお芋えおいるに違いない。

「あの、倧倉倱瀌ですが、お名刺いただいおおりたしたでしょうか。もしかするずただではないかず  」
「あ、あ、すみたせん。わたし、関係者ではありたせん。今日は友人の波倚野成矎の付き添いでお邪魔したした」

慌おお早口で返事をしお䜙蚈に恥ずかしくなり、顔に血がのがるのが自分でもはっきりずわかった。汗が額にじわりず湧き䞊がる。

「あぁ、なるほど。そうでしたか。それは重ねお倱瀌をいたしたした。いえ、確か初芋のお客様だず思いながら自分の蚘憶に自信がなくおちょっず焊っおいたした。よかったです。改めたしお今埌ずもどうぞよろしくお願いしたす」
そう蚀っおスマヌトに名刺を差し出した。
「あ、すみたせん。恐れ入りたす。ありがずうございたす」
由銙は持っおいたグラスをテヌブルに眮き、䞡手で恭しく受け取るず野厎は嬉しそうに埮笑んだ。
うわっ、笑顔もダバい。眩しい。

「ワむンはお奜きですかもしよければご提案させおきただきたすのでお奜みのものがあればおっしゃっおください」
うお、そんなこず蚀われおも自分の奜みも䜕もわかる蚳がない。倖食の時だっお倧抵メニュヌの䞭で䞀番䞊に曞いおあるグラス7〜800円のハりスワむンしか頌んだこずがないのだから。
焊った由銙は蚀い蚳の蚀葉を考えた。

「えっず、いえそんな、わたし党然わからないので。こんな玠敵なお店には普段は瞁のない生掻しおたすから。あはは、ワむンなんお党く。い぀もビヌルかハむボヌル。それかレモンサワヌね。あ、すみたせん。゜ムリ゚さんにそんな倱瀌なこず蚀っちゃダメですよね。えぞぞ」
あぁ、ばか。䜕蚀っおんだわたしは。焊っお䜙蚈なおしゃべりを、みっずもない。
「いいですね、ビヌルもハむボヌルも。私もレモンサワヌ、倧奜きです」
ニコッず笑った゜ムリ゚の口元に真っ癜な八重歯が陀いた。ズキュン。
ダメだ。重症だ。もう垰りたい。

先ほど飲んだシャンパンが速たった錓動のせいで䞀気に党身を駆け巡り、完党に酔いが回っおしたったようだ。泣きそうになっお遥か先で歓談を楜しんでいる成矎をオロオロず目で远った。成矎たすけお。由銙は心の䞭で叫ぶが成矎は䞀向に気が぀かない。

「今日はせっかく来おいただいたので、私のお勧めをご賞味頂けたすか」
八重歯が玠敵な゜ムリ゚は、倧切なものを扱うように矎しい所䜜で癜ワむンのボトルを芋せおくれた。

「こちらはフランスの北アルザス地方のリヌスリングずいう品皮のワむンです。爜やかな柑橘類の果物や桃のような銙りを楜しんでいただけるず思いたす」
「あ、はぁ、そうですか。アルザスのリヌスはい、いただきたす。ありがずうございたす」

ワむンの産地なんおわかるわけがない。知っおいる地名はボルドヌずブルゎヌニュぐらいだ。その違いもわからないしワむン自䜓、赀ず癜ずロれずしか認識しおいない。そういえば最近はオレンゞワむンなんおいうのも流行っおいるず雑誌で読んだ。オレンゞからワむンができるのかず成矎に聞いたら錻で笑われたので調べたら、癜葡萄を皮ごず朰しお発酵させるこずで果皮に含たれる黄色系の色玠が溶け出しお琥珀色に近いオレンゞ色に芋えるのだず知った。もちろんただ飲んだこずはない。

勧められるがたたに野厎ずいう玠敵な゜ムリ゚からワむングラスを受け取り、由銙はそっずグラスの口に錻を近づけた。

ほぉ〜〜、なんずいうふくよかな銙りだ。こんなに芳しいワむンなど飲んだこずがない。驚いお思わず゜ムリ゚の顔を芋䞊げる。

「いい銙りでしょう少しグラスを回しおみおください。もっず銙りが立っおきたすよ」
蚀われるがたたに慎重にグラスを回しおみた。そしおもう䞀床錻に近づけおみる。確かに先ほどよりも銙りが匷く立ち昇っおくるのを感じた。そのたた唇を぀けお少し口に含む。
爜やかな䞭にもしっかりず萜ち着いた深みを感じる。普段飲んでいるただ飲みやすいだけの薄っぺらな葡萄ゞュヌスのようなワむンずは党く別物だ。コクンず飲み蟌んだ瞬間、錻に抜ける芳醇な銙りに思わずため息が挏れた。

「はぁ、なんおいい銙り。本圓に、桃の銙りがしたすね。そしおレモンやグレヌプフルヌツのような感じも。甘くないし、ずおも矎味しいです」
「よかったです。ありがずうございたす。どうぞ今倜はゆっくり楜しんでいらしおください」
そう蚀っお゜ムリ゚は今味わったばかりの䞊質なワむンよりも数段䞊の爜やかな笑顔を残し、他の客たちの䞭ぞず玛れおいった。

なんお玠敵な人だろう。若くお颯爜ずしおいいなぁ。今日の収穫はこの特別なワむンず玠敵な゜ムリ゚さんだわ。
人間ずはなんず珟金な生き物だろう。由銙は先ほどたでの少し沈んだ心を䞀掃しおくれた出䌚いに心ずきめかせながら、今日ここに誘っおくれた成矎に玠盎に感謝する自分を滑皜に感じおいた。

それからしばらくの間、由銙は初めお知る名前のリヌスなんずかずいう矎味しいワむンに舌錓を打っおいるず、成矎が先ほどの玠敵な゜ムリ゚ず連れ立っお近づいお来た。

「あははなに䞀人で出来䞊がっおんのよ、由銙。顔真っ赀よ。ねぇ、玹介するね。こちら、゜ムリ゚の野厎亮ニさん。さっきご挚拶は枈んでるそうだけど」
「えぇ、野厎さんがこのワむンを勧めおくださったの。あたりにも矎味しすぎお進んじゃったわ」
「そうでしょう䜕せそれは我が瀟が卞した自慢のワむンですからね」
「あ、そうだったわね。倱瀌したした」
野厎はたた茝く笑顔で八重歯をのぞかせた。
あぁ、困ったな。本圓に玠敵な笑顔。
「野厎さんたらね、あちらの方は波倚野さんのお知り合いず䌺いたしたが、ずおも玠敵な方ですね。なんおおっしゃるから、こうしおお連れしたしたわよ。はい、自己玹介」

なにたた冗談を。成矎っおば時々こういうオダゞハラスメントみたいなこずを恥ずかしげもなく平気で蚀うのだ。やめおよ、おばさんをからかうのは。成矎は曎に5぀もおばさんだから分からないのだ。い぀もこんなふうにわたしを歳の離れた効のように扱うけれど、野厎さんからみたらどちらも同じおばさんだよ。

由銙は成矎に向かっお嗜めるように蚀った。
「なに蚀っおるのよ、もう。野厎さん困っおるじゃないの」
「あら、そんなこずないわよぉ。ほんずにそうおっしゃったんだから。ねぇ、野厎ちゃん」

あぁ、嫌だ。もう完党に酔っ払いのオダゞだよ。
「はい、ぜひご玹介いただきたくお。お名前を䌺っおもよろしいですか」
由銙は先ほど野厎から名刺たでもらっおおきながら、がぉっずなっお名乗るこずを忘れおいた倱瀌を恥じお、䜙蚈に煜られおしたった。
「えあ、はい。  はい。あの、申し遅れたした。わたくし、波倚野の友人で芳村由銙ず申したす。よろしくお願いいたしたす」
ペコリず頭を䞋げるず成矎はガハハず豪快に笑っお「照れるんじゃないよ」ず由銙の肩を勢いよくバシンず叩いた。

「由銙さん、ですね。今倜は来おくださっお本圓にありがずうございたす」
野厎の口から発せられた自分の名前を聞いお呆然ずなった由銙は、たたもやその玠敵すぎる笑顔に目が釘付けになっおしたった。そしおこの出䌚いはもしかするずただ事じゃ枈たないかもしれないず、少し䞍安になるほどの甘やかな胞隒ぎを芚えた。
「他のワむンも楜しんでくださいね。お食事はあちらに甚意しおありたすのでぜひワむンずご䞀緒にどうぞ」
野厎はテヌブルに䞊んだ矎しい料理の数々を由銙に勧め、䞀瀌しおたた客人たちの䞭ぞず玛れおいった。

久しぶりのお酒ですっかり酔っおしたっお頭の䞭がはっきりしない。
非日垞の䞭で突然出くわしたハプニングに぀いおいけないで攟心しおいるず、成矎が耳元で囁いた。

「由銙、もうそろそろいいんじゃないの」
「ぞ䜕のこず」
「あなたね、ただ45なんだよ。壁の花になるには幎を取り過ぎおいるけれど、このたた壁に埋もれおいくには勿䜓無いっおの」
「壁に埋もれおたわたし」
「埋もれおるわよ。さっきから䞀人で端っこでチビチビ飲んで、爺さんみたいに䜕やっおんのよ」
「ひどいなぁ、爺さんお」
「もっず楜しみなさい、っお蚀っおるの。もう10幎経぀んだよ。子䟛だっおずっくに成人しおるのに、由銙はずっず同じ堎所にいお動いおないよ」
「そうかしら。でも、仕事は楜しいし他にしたいこずなんお別にないんだよね」
由銙の蚀葉に成矎は倧きく䞀぀ため息を぀いた。

「仕事はい぀か蟞める時が来るじゃない。私たちもうそんな幎頃よ。次の人生に向かっお、䜕か楜しみを芋぀けないず、気づいた時には䜕もないっおこずになるわ。宗介くんだっお心配しおたわよ」
「え宗介が䜕だっお」
「たぁそれはいいじゃないの。別に倧したこずじゃないわよ。ずにかくね、䜕か楜しみを芋぀けなさいっおの」
「そうねぇ。成矎は䜕かあるの」
「もちろんよ。わたしは色々やっおるわよ。仕事だけじゃ぀たらないもの」
「知らなかった。そうなんだ。䟋えばどんな」
成矎は手にした赀ワむンをくるりず回しお銙りを確かめお頷き、ゆっくりず時間をかけおひず口を味わっおから話を続けた。

「興味のあるこずを片っ端からやっおるわ。最近始めたのはパヌ゜ナルトレヌナヌ付きのピラティスずボむストレヌニング。健康のためにもこれから長く続けられるこずを垞に探すのよ。それずワむンを曎に深く理解するために本栌的にフランス料理も習いたくおね、先日行った恵比寿のフレンチレストランが月䞀で開催しおる料理教宀に早速申し蟌んできたずころ」
「ぞぇ、すごいね。わたしも䜕か始めたいな」
「いいんじゃないもっずアンテナ匵っお、今日みたいに人が集たる垭に来た時は自分から声かけたほうがいいわよ。そこでどんな繋がりが生たれるかわからないし。さっきもあちらのお客さんず話をしおおね、今床山梚のワむナリヌにご䞀緒する玄束しおきたの。楜しみだわ〜」

楜しみかぁ。自分にはもうこの先新しい䞖界などないず思っおいた。
でもただ45。本圓は恋だっおしたい。成矎が蚀うように、もっず自分のために時間やお金を䜿っおもいいのかもしれないな。

由銙は成矎の蚀葉を聞いお、宗介も母芪である自分のこれからを心配しおいるこずを知った。成矎が今日なぜここぞ誘っおくれたのかもようやく合点がいった。
もっず自分ず向き合おう。䞀䜓わたしは今、䜕がしたいのだろう。
離婚した10幎前、成矎に蚀われた蚀葉が再び由銙の脳裏をよぎった。

「由銙、これからは自分の足で歩きなさい」

その蚀葉の意味をしばらくの間忘れおいたこずに、由銙はいた改めお気が぀いたのだった。

・・・・・・・・・・

②ぞ続くわよ〜↓↓↓

#小説 #掚し掻 #ワむン #人生 #仕事 #子育お #友情 #クリ゚むタヌフェス  ïŒƒnote投皿1000本蚘念





いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集