ちょっと裁判傍聴行ってきます 「56歳のオジ、とんでもない恋の勘違い」
わたしは、アメリカの大学院修士課程でポジティブ心理学を勉強している。ざっくり言うと「人がどうすれば幸せに生きられるかを考える心理学」だ。人の幸せを勉強しているわたしが、なぜか今、法廷の傍聴席に座っている。
罪状は「不同意わいせつ」。被告はふてぶてしい56歳のオジさんだった。オジさんは、自分が店長をしている飲食店のアルバイトの女の子Aさんの胸を突然揉んだ。Aさんは和解には応じず、裁判となり、このオジは法廷に不同意わいせつの被告として座っている。それだけ処罰感情が強いということだ。
オジさんは「Aさんが私のことを好きだと思った。みんなが入りたがらない土日のシフトに入ってくれるし、旅行でお店を休んだ時はお土産を買ってきてくれた」それがオジさんが両思いだと思った理由だ。
「おいおいちょっと待ってくれよ、オジさん、それはないぞ」と心の中で思っていたのは、たぶんわたしだけじゃない。裁判官、検察官、傍聴人、なんならオジを弁護する女性弁護士さえもみんな同じ気持ちだったと思う。
検察官は「土日に入るのはただ単に多くシフトを入れかったからでしょう。仕事を休んだらお土産を買ってくるのは気遣いでしょう。それであなたのことを好きって受け取るのは、ちょっと独りよがりじゃないですか?」と言いながら、すごく顔を歪ませている。イライラしているのがよくわかる。
でもオジは納得しない。
「いや、でも会話からも伝わってきたんです、ここでひとつひとつどんな言葉だったかは言えないですけど、私には好意があると感じる言動でした」
オジ反論してる〜!結構語気が強め。なにか二人だけの愛の会話があったのかもしれ……あるわけないだろう!ないよ!
検察官は「じゃあ仮にお互いに思いがあったとしましょう。あなたは、好きだとか、付き合って欲しいとか、自分のことをどう思う?という会話をAさんとはしましたか?」と聞く。
そう、わたしもそれ聞きたかった。
オジは、していないと答える。ここにいる全員が心の中で「ズコー!」とずっこけているはずだ。
検察官:「そういった話をしていないのに、突然胸を揉むんですか?あなた、ぜんぶすっ飛ばしてますよ!」
そうなの、すっ飛ばしすぎてるんだよ、いいぞ、検察官そのワードチョイス!
まぁ、そんな感じで法廷全員が苛立ち、最後に裁判官が「私から一言いいですか」と。
「あなたは56歳ですから、過去に恋愛をしたことはあると思います。その時、告白したり、手を繋いだりという段階を飛ばして、いつも胸を揉んできたんですか?」
静かな法廷で笑っちゃいそうなくらい論破パンチを喰らわしてきた裁判官。オジ、言い返す言葉なし。これにて閉廷。判決は次回。
法廷を出た後、傍聴していた男性が一言「救いようがないおっさんだな」とボソッと言っていた。そう、救いようがない。オジはどこで間違えたんだろう。そんなことを考えるために、わたしはまた傍聴に行くんだと思う。
