【第1弾】89歳の精神科医に教わった、「賢く逃げて、自分で決める」働き方の極意
再発した腰の痛みをかばいながら、整形外科へと向かう車の中。
運転しながらスマートフォンのオーディオブックアプリで聴いていたのが、『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(中村常子著)という本でした。
89歳の精神科医・中村常子先生の言葉をナレーターの方が語りかけてくれるのですが、その言葉の数々が、とても飾らなくて温かいのです。
若い頃の私は、挫折と転職を繰り返す苦しい日々を過ごしていました。
その後、ご縁があって飛び込んだ介護の世界で長年現場に立ってきたからこそ、先生の言葉がひとつひとつ深く胸に染み渡ったのです。
今日は、特に心に残った「働き方と生き方の極意」について、私の実体験も交えながらお話ししたいと思います。
1. 「逃げる」ことは、自分を守る立派な戦略
仕事で行き詰まったとき、真面目な人ほど「自分が耐えなければ」「辞めるのは敗北だ」と自分を追い込んでしまいがちです。
ですが、常子先生はこう仰います。
「会社なんていうのは、誰かが作った金儲けの箱に過ぎません。その小さな箱に、自分の大切な命や家族の幸せをかけすぎたらあかん」
「逃げたいという気持ちも、人生を変える原動力の一部。準備をして賢く上手に逃げたらええんです」
実は私自身、昔はちっとも「賢く」逃げるなんてできませんでした。
若い頃は挫折と転職を繰り返し、身体も心も限界を迎えて逃げるように会社を去った過去があります。30代後半で一度人生を諦めかけました。
けれど、絶望して自宅に閉じこもるのではなく、生活のために外へ出て、シルバー人材センターで猛暑の中、無心で草刈りをして汗を流しました。
そうやって足を止めずに外で働いていたからこそ、草刈り現場の親方が「若いんだから」と、知り合いの介護施設の事務長に話をつないでくれたのです。
そして面接を受け、介護の仕事を正社員として働けるようになりました。
本当に、これは神様が不憫に思い、助けてくれたのだなあとしか思えないほどの偶然でした。
辛い会社という箱からは離れていい。
でも、家に閉じこもってしまうのではなく、不器用でも外に出て目の前のことを愚直にこなしていれば、
思いもよらない場所から新しい道(ご縁)が開けるのだと痛感しています。
2. 「自分の意志でここにいる」と思えたら、心は軽くなる
誰かに言われたから、あるいは環境のせいで……と受け身でいると、どうしても心の中に不満や愚痴が溜まってしまいます。
常子先生は、こう背中を押してくれます。
「前の職場がひどかったから今の自分はこうなった、ではなくて、
『自分の意思で前を辞めて、自分の意思で今ここにいる』と思うこと」
たとえ逃げてたどり着いた場所であったとしても、「自分が選んでここに来たんだ」と主導権を握り直すこと。
誰のせいにすることもなく、自分の意志で決めたことなら、その先で何が起きても不思議と「まあ、なんとか対処していこう」と思えるようになります。
言葉ひとつ、捉え方ひとつで、今日立つ場所の景色はガラリと変わるのです。
3. 「自分を食べさせるため」に働けば、それだけで100点満点
「仕事には大きなやりがいや夢がなければならない」
そんな世間の空気に息苦しさを感じている人に、先生のこの言葉を届けたいです。
「お金のために働くでええやない。自分を食べさせられるようになったら、己の足で立った一人前」
「やりがいや夢なんていうのは、自分をちゃんと食べられるようになった後に、余裕があればぼちぼち考えていけばいいんです」
日々、自分の足で立ち、自分や家族の生活を支えるためにお金を稼ぐ。
これ以上に立派で、尊いことがあるでしょうか。
大きな目標や高い理想が持てなくてもいい。まずは今日一日、自分を養うために働く。
それだけで私たちは、十分すぎるほど立派に生きているのです。
おわりに
今年で61歳になる私は、今年6月、長年勤めていた特養から身体負荷の少ない「障がい者支援施設」へと異動し、新たな一歩を踏み出していました。
しかし、よしここからだ!と思った矢先の8月、腰のヘルニアが再発し、現在は思いがけず休職を余儀なくされています。
「また止まってしまった」と落胆する気持ちもありました。けれど、布団の上でこの本を聴きながら、改めて気づかされたのです。
年齢を重ねても、置かれた環境や状況が変わっても、大切な根っこは変わりません。
「自分の命や生活を一番に守ること」
「自分の意志で決めて歩むこと」
もし今、職場の人間関係や働き方に悩み、心が折れそうになっている方がいたら、どうか自分を責めないでください。
会社という「箱」に自分の大切な命を差し出す必要はありません。
嫌な環境からは離れていい。立ち止まって体を休める時期があっていい。
自分の命を一番に守りながら、自分で決めて、今日を食べていくために歩んでいく。
それだけで、あなたの人生はすでに100点満点なのですから。
