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馬の足は長く、牛の足は短く〜おばあちゃんと過ごしたお盆〜

母の実家に行くときはいつも8月だった。
夏休みに2週間近く滞在する。


毎年一緒にやっていたのが
迎え火と送り火。


おばあちゃんが、
ナスときゅうりを持ってきて
割りばしのようなものを刺している。


「おばあちゃん、これ何するの?」

『これで馬と牛を作るんだよ』

「馬と牛…??」

『ご先祖様の乗り物なんだよ』

こっちは牛


小学生だった私に、おばあちゃんは教えてくれた。


来るときは早く来てほしいから足が速い馬。
帰るときは、出来るだけ
近くにいてほしいからゆっくり歩く牛。


「やりたい、やりたい!」


馬にするきゅうりは、細いから刺すのが難しい。
下手すると貫通するし、割れちゃう。

それに比べて牛にするナスはやりやすい。


両方とも、頭が持ちがるような感じで
刺したり立つように棒を刺すバランスが難しい。


夢中になってやっていると
おばあちゃんが外から南天のような葉を持ってきた。


頭にしているところに切り込みを入れ
『これは耳ね』
と、葉っぱを刺していた。


おばあちゃんは、背が小さくて
腰がすごく曲がっていた。
日本昔話に出てきそうなくらい。

小さいけれど、歩くのがめちゃくちゃ早い。


失敗したーといって渡した
割れてしまったキュウリ。
おばあちゃんは、スッと持って台所に向かった。


私がお仏壇の前で、
馬と牛の配置を考えていると


おばあちゃんは、大きな葉っぱに
たくさんの野菜を刻んだものを乗せて
持ってきた。


蓮の葉だったのか里いもの葉だったのかは
もう思い出せない。
でも大きな葉っぱだったのは覚えている。


「これは?」

『ご先祖様のごはんだよ』


ナス、キュウリなどの野菜は
1㎝くらいの大きさ。
それをお仏壇の前に供えていた。


スタスタと違う場所へ移動する
おばあちゃんの後をついて回る。


今度は
黒くすすけたボウルのようなものに
木を入れて火をつけている。


「これは?」

『迎え火と言って、
 ここが家だよっていう目印だよ』


私は東京の家ではやったことがない
お盆の風習の数々に興味津々だった。


オレンジ色に染まる夕焼け空。
立ちのぼる黒い煙。
これが合図で、
馬に乗ってやってくるのか…


そう思いながら
星が見え始めた空を眺めた。




次の日はお墓参り。
もっと山の中にある前の家。
お墓はその近く。

杉の木や大きな木が生えている
林道のくねくね道を進む。


お墓は茶畑を見渡す
細い山道を登った場所にある。

13年前、お墓へ向かう山道。



急な山道は、草で滑りそうで
私たちは、ちょっとずつしか進めない。


それを横目におばあちゃんは
どんどん進む。
山道でもおばあちゃんは早い。




登った先の開けた場所。
そこに大きなお墓と、
小さなお地蔵さんがたくさん並んでいる。


その1つ1つに、切った野菜を供えた。


あのお墓参りは、
今でも私の中の「お盆」の風景になっている。


「おばあちゃん、山道でも
 誰よりも歩くのが早かったよね」


と今でも話題に上がる。


あの頃、一緒にお墓参りに行った
おばあちゃんとおばさん。

今年は、2人も迎えられる側だ。


馬の足は長くして
牛の足は短くしておこう。



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