迷走するWeb施策を立て直す、MVV起点のコンテンツ設計術
株式会社Lipple 取締役 根本です。
・オウンドメディアを始めたけど、だんだん書くことがなくなってきた
・記事数は増えたのに、問い合わせの質が悪い
・社内で記事の確認を回すと、「なんか違う」と言われるが、何が違うのか誰も説明できない
Webマーケティングや採用広報に取り組んでいる企業の担当者さまから、こうしたご相談をいただくことが増えています。
最初は「とにかく発信だ!」と意気込んで始めたものの、数ヶ月経つと更新が義務化し、目的が曖昧になってしまう・・・
あるいは、PV(ページビュー)という分かりやすい数字を追いかけるあまり、本来伝えたかった自社の魅力や想いが置き去りになり、どこにでもあるような「まとめ記事」ばかりが量産されてしまう・・・
もし、あなたが今、こうした状態にあるなら、その原因はライティングスキルの不足でも、SEOの知識不足でもありません。
もっと根本的な、「判断基準」の欠如にあります。
私たちはコンテンツマーケティングの支援をする際、いきなり記事の企画を出しません。
まずは徹底的に、お客さまの「ミッション・ビジョン・バリュー」について議論します。
(※以下、MVVと記載)
「Web集客の話をしているのに、企業理念の話??」
そう驚かれることもあります。
しかし、ここを飛ばして「設計」されたコンテンツは、どんなに美しい文章で書かれていても、読者の心を動かすことはありません。
本記事では、Lippleが考える「企業活動を加速させるためのMVV」の意味と、それを実務レベルのコンテンツ制作にどう落とし込むかという「設計」の技術についてじっくりと解説します。
最適なソリューションやテクノロジーを知るだけでは、課題解決や目的達成ができるとは限りません。実践的に活用できる「リテラシー」をnote記事にして提供していきます。
株式会社Lipple 取締役 根本

なぜ「MVV」が必要なのか
MVVという「軸」が曖昧なままだと、現場では次のような悲劇が起こります。
担当者が疲弊する:
「今日は何を書こう?」と毎回ゼロから悩み、判断基準がないため、上司の気分次第でリテイクされる。
ターゲットを見誤る:
本来は「信頼獲得」が必要なのに、PV狙いの記事ばかり書いてしまうなど、今の事業フェーズに適していないコンテンツを作ってしまう。
熱量が伝わらない:
表面的なスペックやメリットばかりを並べた記事になり、競合他社との違いとなる「独自性」が出せない。
逆に言えば、MVVが明確に定義され、それがコンテンツの設計図として機能していれば、これらはすべて解決します。
「川のメタファー」で理解する、MVVの構造
MVVの教科書的な定義は知っている方も多いと思いますが、Lippleではこれをより直感的に理解していただくために、「川の流れ」に例えて説明しています 。
① ミッション(Mission)= 水源
「ミッション」とは、「目的」や「使命」のこと 。
企業が社会においてどんな役割を果たすのか、なぜ存在するのかという、最も根源的な問いへの答えです。
水源の水質(企業の純粋な想い)や湧き出る場所(創業の背景)が、その後の川の性質を決定づけます。
ここが濁っていたり、枯れていたりすれば、下流(コンテンツや商品)が清流になることはあり得ません。
コンテンツを作る際、私たちは必ずこの「水源」まで遡ります。
「なぜ、この事業を始めた?」
「この商品を通じて、世の中をどう変えたい?」
そこにある熱源を確認することから、すべてのデザインは始まります。
② ビジョン(Vision)= 上流
「ビジョン」とは、「理想像」や「展望」のこと 。
ミッションを達成するために掲げる具体的な目標や、中長期的に実現したい「未来の状態」を指します。
水の勢いや、川幅、流れていく方向性がここで決まります。
コンテンツマーケティングにおいては、「このメディアを通じて、読者をどんな状態に連れて行きたいか」というゴール設定に近いかもしれません。
③ バリュー(Value)= 下流
「バリュー」とは、「価値観」や「行動指針」のこと 。
社内視点で大切にしているルールや、社員が日々「どう行動すべきか」という基準です。
川は下流に行くにつれて支流に分かれ、多様な形を作ります。
これが具体的な「記事コンテンツ」や「接客スタイル」、「UI/UXデザイン」として表現される部分です。
④ ステークホルダー(海)への到達
そして、ミッションという水源から始まった流れは、最終的に「ステークホルダー(顧客・求職者・社会)」という「海」へと注ぎます 。
ここで面白いのが、川が海に出会うとき、そこには様々な地形が生まれるということです。
ビジネスでいうところの「ブランディング」や「エンゲージメント」、「利益」などがそれに当たります。
コンテンツマーケティングとは、この「水源(ミッション)から海(顧客)までの一連の流れを、美しく、淀みなくデザインすること」に他なりません。
多くの企業が失敗するのは、水源を無視して、下流で「どうすれば水をきれいに見せられるか」ばかりを考えてしまうからなのです。
月間最大売上が“3,000%”になったとある店舗も、まさに感情やストーリーを言語化し、コンテンツとして発信することから始めました。↓
コンテンツの“迷い”を消す4つの効能
MVVをしっかりと定義し、コンテンツ制作の判断基準に据えることで、大きく分けて「4つの効能」があります 。
効能1:
制作の効率化とスピードアップ
これが最も即効性のあるメリットです。
「何を目指しているか」「どこに向かうか」が統一されていれば、現場のライターやディレクターはいちいち迷わずに済みます 。
「この記事は、当社のミッションである『〇〇』に寄与しているか?」
この問いひとつで、GoかNo Goかの判断が瞬時に下せるようになる。
意思決定が早くなれば、当然PDCAを回すスピードも上がり、結果としてコンテンツの質も量も向上します 。
効能2:
LTV(顧客生涯価値)の向上
モノやサービスが溢れる現代において、消費者が商品を選ぶ基準は「機能」だけではありません。
「共感」もまた、重要な判断軸のひとつになっています。
スペックの比較競争に巻き込まれないためには、機能の背後にあるストーリーを語る必要があります。
そのストーリーの源泉こそがMVVです。
「なぜ私たちがこれをやるのか」という水源からの物語が一貫して流れているコンテンツは、読者の深い共感を生み、長く愛されるブランド・高いLTVを築くことができます 。
効能3:
採用ミスマッチの解消
採用目的の求人原稿や情報発信などでは、これが顕著に現れます。
「給料が良い」「福利厚生が充実している」といった条件面だけでなく、会社の向かう方向性(MVV)をコンテンツとして発信することで、それに共感した人材が集まるようになります 。
「スキルはあるけど、カルチャーに合わない」
こんな不幸なミスマッチを減らし、入社後も自走してくれる良質な人材を獲得するためには、MVVの言語化が不可欠なのです。
効能4:
社内エンゲージメントの向上
意外と見落とされがちなのが、社内への効果です。
自社のMVVを対外的に発信することは、実は「社員への再教育」にもなります。
自分たちの会社が何を大切にしているのかが明文化された記事を読むことで、社員自身が会社への理解を深め、誇りを持つようになる。
会社の“在り方”に共鳴することができれば、彼らは自発的に周囲の人やSNSでシェアしてくれるようになり、最強の広報マンになってくれるのです。
実践編|Lipple流「軸」のつくり方
実際にどうやってMVVをコンテンツの「軸」として再構築していくか、具体的なTipsをお伝えします。
いきなりかっこいい言葉を作れるものでもないので・・・
以下の3ステップで進めてみてください。
STEP 1:イメージを膨らませる
まずは、既存の企業理念や経営理念を一旦置いておき、今の事業やサービスが「何を目指しているか」「何を大切にしているか」をブレインストーミングで書き出してみましょう 。
このときおすすめなのが「マインドマップ」です 。
中心に「自社サービス」や「事業名」を置き、そこから連想される言葉を枝葉のように広げていきます。
・顧客への想い:
「笑顔にしたい」「安心させたい」「驚かせたい」
・自分たちのつよみ:
「速さ」「正確さ」「泥臭さ」「親身さ」
・社会への怒り/義憤:
「不便さを解消したい」「業界の悪習を変えたい」
この段階では、言葉を選別する必要はありません。
「業界で一番になりたい」といった野望でも、「チームワークを大事にしたい」といった社内の雰囲気でも、とにかく頭の中にあるものをすべて可視化してください 。
きれいな言葉にする必要はありません。
飾らない本音こそが、強力な水源になります。
STEP 2:カテゴリー分けで整理する
出し切った言葉を、以下の「4つの視点」で色分けやグルーピングをして整理します 。
1. 社会性: 世の中に対してどうありたいか?
例:「お客さまへのおもてなし」「心に残る思い出を作る」
2. 経営的観点: 組織としてどうありたいか?
例:「業界No.1」「自社ブランドの強化」「利益率の向上」
3. エンゲージメント: 働く人にとってどうありたいか?
例:「働きやすさ」「成長できる環境」
4. 顧客価値: 顧客に何を提供するか?
例:「売上の最大化」「業務効率の改善」
こうして分類すると、「ミッション:私たちは顧客に対してはこうありたい」「バリュー:そのために組織はこうあるべき」という構造が見えてきます。
例えば・・・
「お客さまの笑顔」はミッションになり得ますし、「従業員の働きやすさ」はバリューに含まれる要素だと分かります 。
STEP 3:言語化とデザイン
最後に、整理された要素を短い言葉(コピー)に落とし込みます。
ここでのポイントは、「キャッチコピー + 説明文」のセットで作ることです 。
かっこいいキャッチコピーだけでは、その意図が伝わりきらないことがあります。
「世界を変える」と言われても、どう変えるのか分かりません。
・ミッション(水源):
抽象的で、想像の余地がある言葉にする 。あまり長くしすぎない。
・ビジョン(上流)〜バリュー(下流):
下流に行くほど、より具体的で行動に直結する言葉にする 。
Lippleのケースで言えば・・・
「リテラシーの目覚めによる、イノベーションの実現」
というミッションを掲げ、それを端的に表すスローガンとして「Sense Literacy.」という言葉をデザインしました 。
そして、ここが重要なのですが、一度決めたことは固定ではないということ。
ビジョンやバリューは、会社の成長フェーズや時代の変化に合わせて柔軟に見直しをしても良いのです 。
むしろ定期的に見直すことで、常に「生きた言葉」として機能させることができます。
テクニックの前に、水源を整えよう
コンテンツマーケティングにおいて、SEO対策やライティングテクニックはもちろん大切です。
しかし、それらはあくまで「川の下流」の話に過ぎなくて・・・
水源が枯れていたり濁っていたりすれば、下流でどんなに小手先の技術を使っても、誰の心も潤すことはできません。
もし今、コンテンツ制作に行き詰まりを感じているなら、一度チームで話し合ってみてください。
「私たちの水源(ミッション)はどこにあるのか?」
「私たちは、どんな海(景色)を目指して流れているのか?」
その答えが見つかったとき、あなたの書く記事は迷いのない力強いメッセージへと変わるはずです。
Lippleでは、こうした「MVVの再定義」や「全体戦略の設計」という最上流から伴走する支援も行っています。
「自社の水源を一緒に探してほしい」
「想いを言語化して、コンテンツに落とし込みたい」
こんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。
ちなみに、BtoB企業こそSEO記事には「感情」を乗せるべきだと思っていて・・・自社の資産となる「2層構造」のマーケ視点を記事でまとめました。↓
今後も、集客や採用につながるコンテンツマーケティングの実践的なお話は、note記事で書いていきますね。
それではまた。

