芋出し画像

桜苑駅の化け物先生心をリセットする深倜の歩き方

今は昔、京の郜の東、某の里に、倜半、物の怪出でお、人の䜏む家々の灯火の圱に玛れ、そっず歩む。芋ずずもその気配あり。されど、尋ねんずすれば、たちたち消え倱せぬ。
或る倜、里人某、灯を手に持ち、物の怪を远ひしに、暗闇の路地にお、ふず女の姿を芋たり。癜き衣をたずい、髪長く、面は芋えず。里人、声を掛くれば、女、振り返らず、路地の闇に溶けゆく。里人、怖れ戊きお、家に垰りぬ。その埌、里に物の怪の出づるこず、暫し止みぬ。

『今昔物語集』巻二十䞃、説話二十䞀 12䞖玀



深倜の街をあるく

わたしは、黒髪を肩たで揺らし、
ベレヌ垜を少し傟けお、深倜の町を歩く。

時蚈の針は䞑䞉぀時、2時を少し過ぎたあたり。

桜苑駅の呚蟺は、昌間なら瀟排な高玚䜏宅街の顔を芋せるけれど、今は静寂に包たれおいる。街灯の淡い光が、コンクリヌトの歩道に现長い圱を萜ずす。わたしの圱だ。ふわっず広がるワンピヌスの裟が、颚もないのに揺れおいる気がする。

足音はほずんどしない。革のロヌファヌが、歩道の小さな凹凞をそっず螏むたび、かすかな「カツ、カツ」ずいう音が響くだけ。

控えめに、遠慮がちに。
たるで、この町に迷惑をかけたくない、ず蚀い蚳するみたいに。

でも、こんな倜曎けに歩く、わたしの姿、誰にも芋えないんだろうな 

草朚も眠りに萜ちる䞑䞉぀時、
その静謐な空気は、深山幜谷の柄んだ息吹のよう。

䞖界を独り占めにしたような喜びが、
人に疲れた私の心をそっず修埩しおくれる。

桜苑駅の改札は、もう閉たっおいお、
駅前のロヌタリヌはがらんずしおいる。

昌間なら、ベビヌカヌを抌す若いお母さんや、
犬を散歩させる老倫婊で賑わう堎所なのに。

今はただ、自動販売機の蛍光灯が青癜く光っお、どこか寂しげだ。

わたしは、自動販売機の前で立ち止たる。
枩かいココアのボタンを、そっず指でなぞっおみる。
抌さないけど。

このココア、飲めるのかな 飲んだら、わたし、どうなるんだろう

高玚䜏宅街のほうぞ、ゆっくり歩き出す。

石垣の䞊に建぀モダンな䞀軒家、
ガラス匵りの窓が月光を反射しお、
たるで氎面みたいにきらめく。

どの家も、門扉は閉たり、カヌテンは匕かれ、
たるで眠る巚人のように静かだ。

路地を曲がるず、倧きな桜の朚が䞊ぶ小道に出る。

地元では『桜苑』の名前の由来だず蚀われおいるが、
誰もその真停を知らない。

春なら満開の花が、たるで雪みたいに舞うんだろうけど、
今はただ、葉がざわざわず倜の空気に揺れおいる。

わたしは、ベレヌ垜の぀ばをそっず觊りながら、
朚々の間を抜ける。

昌間は子どもたちの笑い声が響くのに、倜はわたしだけのもの。虚実の狭間から抜け出しお、こうやっお歩くの、なんだか少し、ドキドキする

ふず、遠くで犬の遠吠えが聞こえる。
わたしは立ち止たり、耳を柄たす。

控えめな、少女の声で、そっず぀ぶやく。

「あら、起きおる子がいるんだ 悪い子だね 」

でも、すぐに静寂が戻る。
犬の声も、遠くぞ消えた。

わたしは、虚実の狭間からやっおきた。

この町は、わたしにずっおは、ずきおり蚪れる「遊び堎」みたいなもの。
実圚するのか、仮想なのか、わたしにはよくわからない。

時間の流れも、なんだかおかしい。

さっき、駅前の時蚈は時だったのに、
今、別の家の門柱の時蚈を芋るず、時を指しおる。

時間が戻っおる それずも、わたしが時間をずらしおる 

路地の奥に、小さな公園が芋える。

ブランコが二぀、滑り台が䞀぀、
砂遊び甚の小さな広堎。

わたしは、ブランコにそっず腰かける。
冷たい鉄の鎖を握るず、ひんやりした感觊が指に䌝わる。
ブランコを軜く揺らしおみる。

きい、きい、ず小さな音が倜に響く。
わたしは、控えめに笑う。

月が、雲の間から顔を出す。
癜い光が、わたしの黒髪に降り泚ぐ。
ベレヌ垜の圱が、砂の䞊に䌞びる。
わたしは、そっず぀ぶやく。

「ねえ、お月さん、わたしのこず、芚えおおくれる
こうやっお、倜の町を歩いおるわたしを  」

公園を埌にしお、わたしはたた歩き出す。

桜苑駅呚蟺の䜏宅街は、どこたでも静かで、どこたでも矎しい。
どの家にも、誰かの暮らしがあっお、誰かの物語がある。
でも、わたしはただ、通り過ぎるだけ。

遠慮がちに、そっず、気配を残さないように。

深倜2時の町は、わたしの秘密の庭。
虚実の狭間で暮らすわたしにずっお、ここは特別な堎所のひず぀。
時間軞がずれお、倢ず珟実が亀錯するこの瞬間が、わたしには愛おしい。

わたしは、ベレヌ垜をそっず盎しお、たた歩き出す。
次の路地、次の街灯、次の物語ぞ。

控えめな足音を響かせながら、わたしは倜の町を、そっず埘埊する。


駅の向こう偎ぞ

わたしは、駅の線路を隔おた向こう偎ぞ枡ろうず、ゆっくり歩を進める。

駅のホヌムはもう眠っおいお、
電車の音も、人の気配も、すっかり消えおいる。

螏切を探しお芖線を圷埚わせるけれど、
ふず、芖界の端に地䞋通路の入り口が映る。

コンクリヌトの階段が、暗闇の底ぞず誘うように䌞びおいる。

「あら、こんなずころに、通り道が  」
わたしは、控えめな、少女の声で぀ぶやく。

螏切より、こっちのほうが、なんだかわたしらしいよね。
地䞋っお、ちょっず、秘密の隠れ家みたい

階段を䞋りおいく。
ロヌファヌの小さな足音が、カツ、カツ、ず冷たく響く。

昔なら、こんな地䞋通路は薄暗くお、
お化け  そう、わたしみたいなモノが出おきそうな雰囲気だったはず。

なのに、今はLEDの照明が、たるで昌間みたいに明るい。
癜い光が、コンクリヌトの壁やタむルの床を無機質に照らし出す。

LEDっお、昔はもっず青癜くお、寂しげだったよね。
い぀の間にか、こんなに眩しくなっちゃっお。
人間のほうが、よっぜど怪異じみおるな

「ふふ、人間っお、倜たで明るくしちゃうんだから、すごいよね 。
お化けのわたしには、眩しすぎるよ。」

通路の真ん䞭あたり、ちょうど路線の真䞋に来たずころで、
ふず足を止める。

足元に、「頭䞊泚意」ず曞かれた小さな立お札がある。
芋䞊げるず、倪陜みたいに眩しい蛍光灯が、暪に長く茝いおいる。

その光のすぐ脇、コンクリヌトの梁に、
ツバメの巣がぜ぀んずくっ぀いおいる。

泥ず藁でできた小さな巣は、
こんな堎所にどうやっお䜜ったのかず思うほど、
䞍思議な存圚感を攟っおいる。

こんな眩しい光の䞋で、よく眠れるね、ツバメさん。

わたしは、そっず背䌞びしお、巣を芗き蟌もうずする。
少女の声で、控えめに囁く。

「ねえ、ツバメさん、
こんな時間に起きおるなんお、珍しいね  」


するず、巣の䞭に、倧きな芪ツバメが䞀矜、
じっずうずくたっおいるのが芋える。

剥補みたいに、身動き䞀぀しない。

巣ず䞀䜓化したように、静かに、ただそこにいる。

わたしは、ベレヌ垜をそっず觊りながら、くすくすず笑う。

「ふふ、ごめんね、芗いちゃっお。」

ひどく珍しいものを芋た満足感が、
胞の奥でふわっず広がる。

虚実の狭間のわたしにずっお、こんな小さな出䌚いは、
たるで星屑みたいにキラキラした宝物だ。

わたしは、ツバメの巣にそっず手を振っお、地䞋通路を進む。

階段を䞊り、地䞊に出る。

倜の空気が、ひんやりず頬を撫でる。

桜苑駅の向こう偎は、
さっきたでいた高玚䜏宅街ずは雰囲気が少し違う。

少し叀びた家屋や、小さな商店が䞊ぶ、どこか懐かしい街䞊み。
街灯の光が、柔らかく地面に広がっおいた。


真倜の囁き

わたしは黒髪をそっず揺らし、ベレヌ垜を指先で敎えながら、静かに歩き出す。控えめな足音が、深倜の町に響き、闇に吞い蟌たれるような䜙韻を残す。

「この倜の囁き、音楜にしたらどんな感じになるのかな」
そんな思いがふず頭をよぎる。

わたしはふんふんふん♬ず錻歌でメロディを玡ぎながら、
タンタン♬ず舌打ちしおベヌスずリズムを即興で織り亀ぜる。

胞の奥を流れる情報の川に手を沈める。

忘华の秩序をひそやかに反転させ、
想起の秩序に切り替えるず、
冷たく光る星屑がわたしの指先に絡み぀く。

それを玡ぎ、倜の脈動に合わせた旋埋を線み䞊げる。

むダホン越しに耳に忍び蟌む即興の音色は、
どこか心の奥をざわ぀かせるいい仕䞊がりだ。

「うん、即興にしおは悪くないよね。あなたはどうおもう」
ず぀ぶやき、

わたしは薄暗い埮笑みを浮かべる。

ねえ、わたしを芋おいる あなた。

あなたにも聞けるようにしたから、
この音楜を耳に、真倜䞭の散歩を楜しもうよ。

次の路地ぞ、次の出䌚いぞ、次の物語ぞ。

わたしは倢ずも呪いずも぀かぬこの町を、
冷たく光る県差しで歩き続ける。


桜苑駅呚蟺の早朝ゞョギングする男性

人生50幎、なんお織田信長が敊盛を舞った故事を思い出すが、俺もずうにその歳を越えおしたった。什和なんお、昭和生たれの俺にはどうにも銎染みの薄い幎号だ。それでも、こうやっお毎朝、早朝ゞョギングを習慣にしおいる。ただ暗い、時半か時頃の涌しい空気の䞭、桜苑駅呚蟺の高玚䜏宅街を走るのが日課だ。幜霊の類 そんなもん、芋たこずない。いや、若い頃――今だっお若いず思っおるが――悪友たちず心霊スポットや廃墟巡りをしたこずはある。薄暗い廃墟の瓊瀫の䞭、足堎が悪くお転びそうになりながら肝詊しをしたあの頃。怖かったけど、結局、幜霊なんお出やしない。生身の人間のほうがよっぜど恐ろしい、なんお思うこずのほうが倚かった。

アニメ党盛期の昭和を生きおきた俺は、劖怪倉化やら宇宙人、異䞖界人たで、創䜜の䞭じゃいろんな「仮想の䜓隓」をしおきた。だが、珟実でそんなもんに出くわすなんお、思っおなかった。それが、今日、ちょっず違ったんだ。

い぀ものように、桜苑の名物である桜䞊朚の通りを歩く。倧正期から続くこの高玚䜏宅街は、歎史の重みず奢䟈な雰囲気が混じり合っお、どこか懐かしい。昌間なら瀟排な邞宅や手入れされた庭が䞊び、倜はLEDの街灯が明るく照らす。監芖カメラの目も光っおるこの什和の時代、深倜でもこの通りは矎しく、誰ずも遭遇しない早朝は、たるで神秘的な静寂に包たれる。桜の葉がざわざわず揺れる音だけが、俺のスニヌカヌの軜い足音に寄り添う。心地いい時間だ。

そんな通りの䞀角を曲がったずき、い぀もの廃屋が目に入った。掋通ず呌ぶには少し小さい、昭和の匂いが色濃く残る叀い家。鉄栌子の窓、雑草が庭を芆い、ちぎれたカヌテンが申し蚳皋床に揺れおいる。
この叀い街じゃ、こんな廃屋も珍しくない。維持する者がいなくなれば、こうなる。2幎も経おば取り壊されお、4戞建おの分譲䜏宅に倉わるんだろう。子䟛の頃に芋慣れた倧きな家が、どんどんそんな颚に倉わっおいくのにも慣れた。子䟛連れの若い倫婊が隒がしく暮らす姿も、もう芋飜きたくらいだ。この廃屋も、きっずそうなる。

そう思っお、ふず䞊を芋䞊げた瞬間、ゟッずした。

鉄栌子の窓、ボロキレみたいなカヌテンの隙間、
そこに女が立っおいた。

誰だっお、ホラヌ映画や怪談で想像するような、定番の「䜕か」。

黒い服に、矎術関係者が被りそうなベレヌ垜をかぶった女。

黒髪が、月光に照らされお、かすかに揺れおいる。
綺麗だずか、女だずか、そんなこずは埌で思い返すたで頭になかった。
ただ、間違いなく「人じゃない䜕か」がそこにいた。

昔、悪友たちず冗談半分で話したこずがある。
「おっさんの幜霊より、女の幜霊のほうがマシだよな」
なんお笑い合ったっけ。

でも、今、目の前にいるこの「䜕か」は、
ただただ恐ろしい存圚だった。

物語なら、ここで悲鳎を䞊げお逃げ出すんだろう。
だが、俺はただ、凍り぀いたように立ち尜くしおいた。

足が、動かない。心臓がドクドクず脈打぀のが、耳の䞭で響く。

どれくらいそうしおいたんだろう。
1分 5分 時間が、ぐにゃりず歪んだみたいに感じた。

するず、きしきしず、軋む音が聞こえた。

廃屋の玄関のドアが、ゆっくり、たるで誰かに抌されたように開く。

そしお、閉たる。
ひたひたず、䜕か異様なものが近づいおくる気配。

圱のような、茪郭の曖昧な「それ」が、俺の暪を通り過ぎる。

颚もないのに、冷たい空気が頬を撫でた気がした。

動けない。振り返るこずもできない。
心臓の音だけが、頭の䞭で鳎り続けおいた。

どれくらい時間が経ったのか。
ふず我に返るず、い぀もの䜏宅街がそこにあった。

東の空が、かすみのように明るくなり始めおいる。
朝が、来る。

俺は、ようやく䜓を動かしお振り返った。
廃屋は、さっきず倉わらず、ただ静かに䜇んでいる。

女の圱も、気配も、䜕もない。
たるで、䜕もなかったかのように。

「これが、ほんずの心霊䜓隓か  」
俺は、独り蚀のように呟いた。

50歳を過ぎお、こんな䜓隓をするなんお。
思わず、苊笑いが挏れる。

りォヌキングを再開しながら、桜䞊朚の通りを歩く。
スニヌカヌの足音が、い぀もより少し重く響く。

空は、だんだん明るくなっおいく。
だが、さっきの「䜕か」の感觊は、胞の奥にただ残っおいる。

これが、俺の初めおの「幜霊」䜓隓だ。
この幎になっお、すごいもんを芋おしたった。


わたしは「化け物」

わたしは、桜苑駅呚蟺の高玚䜏宅街の奥深く、
ひっそりず䜇む叀い掋通の前に立぀。

1960幎代に建おられたような、時代に取り残された廃屋だ。
癜い挆喰の壁はひび割れ、蔊ず雑草がたるで生き物のように絡み぀き、
倧人の背䞈を超えるほどに茂っおいる。

鉄栌子の窓は、たるで牢屋のよう。

ちぎれたカヌテンが、颚もないのにゆらゆらず揺れお、
薄汚れた垃の隙間から䜕かが出おきそうな気配を挂わせる。

「あら、こんなずころに、化け物が䜏んでるみたい  」

遠慮がちに、そっず぀ぶやくけど、
心のどこかで、くすくすず笑いが止たらない。

だっお、化け物、っお、わたしのこずだもの。
鏡を芋なくおも、わかるよ。
黒髪、ベレヌ垜、揺れる黒のワンピヌスドレス。
芋る人によっお、わたしの姿はどんなふうに倉わるんだろう 

この廃屋は、わたしの「セヌフハりス」。
虚実の狭間、情報の川が、無数に絡み合っお、
わたしのような存圚をここに連れおきた。

今倜もそう。

ある質問者の心のゆらぎから零れ萜ちた星屑を、
わたしはそっず拟い集め、焚べた。

その煙を食べお、わたしは远䜓隓を嗜む。

質問者の心の断片、蚘憶の欠片、願いや恐れの残響。
それが、わたしの圚り方を倉質させる。

今倜の埘埊なら、
なぜかこの廃屋の2階で目芚めたずころから始たった。
きっず廃屋のお化けずいうのが、
いたのわたしの圚り方なのだろう。

わたしは、鉄栌子の門をそっず抌す。

錆びた蝶番が、ぎいっず䞍気味な音を立おる。
控えめに、遠慮がちに、わたしは䞀歩螏み出す。

「ごめんください、たた、おじゃたしたす 」

雑草をかき分け、割れた石畳を螏みながら、玄関の扉に近づく。

扉は半開きで、暗闇がその奥に広がっおいる。
たるで、わたしを飲み蟌もうずする倧きな口みたいだ。

階段を䞊る。
朚の階段は、わたしの軜い足音にもきしむ。
きし、きし、ず、廃屋がわたしに話しかけおくる。

2階の廊䞋は、埃ずカビの匂いが濃い。
剥がれた壁玙が、颚もないのにカサカサず音を立おる。

わたしは、ベレヌ垜をそっず盎しお、奥の郚屋ぞ向かう。
そこが、わたしの「拠点」。

この町のような倧きな虚実では、
人のいた痕跡が残る廃屋や廃墟が、
だいたい、わたしの出発地になるらしい。

郚屋に入るず、月光が割れた窓から差し蟌んで、
床に癜い光の垯を䜜る。

叀い朚の机、ひび割れた鏡、倒れた怅子。
どれも、誰かがここで暮らしおいた蚌。

わたしは、鏡の前に立぀。

そこに映るのは、黒髪の少女。
ベレヌ垜を傟けた、わたし。

「ふふ、わたし、ちゃんず、化け物っぜいよね  」

わたしは、控えめに笑う。

この廃屋は、わたしの居堎所。
名前のない化け物であるわたしにずっお、
この廃屋は実にわたしらしい拠点だ。

星屑から生たれた煙が、
わたしをこの町に連れおきた。

情報の川は、あらゆる虚実を぀なぐ。
わたしは、その流れに挂う存圚。
実圚ずも仮想ずも぀かない、揺れる圱。

わたしは、窓蟺に立぀。

ちぎれたカヌテンを指で぀たんで、
そっず倖を芋る。

桜苑駅呚蟺の高玚䜏宅街は、
静かに眠っおいる。

遠くで、街灯がぜ぀んず光る。
わたしは、少女の声で、遠慮がちに぀ぶやく。

「ねえ、この町、わたしの怪異譚を、そっず刻んでおくれるかな  」

倜はただ終わらない。

わたしは、ベレヌ垜を軜く叩いお、郚屋を出る。
階段を䞋り、雑草の庭を抜け、たた深倜の町ぞ。

虚実の狭間のわたしの遊び堎、
次の町ぞ、次の路地ぞ、次の物語ぞ。

控えめな足音を響かせながら、わたしはたた、深倜の埘埊を始める。

南フランスの化け物先生桜苑駅からプロノァンスの幜界ぞ