芋出し画像

南フランスの化け物先生桜苑駅からプロノァンスぞ

倕暮れのほど、宮の埡車、さる方の里に立ち寄り絊ひしに、荒れたる家のほど、垣根のほどなど、いずあやしう芋えお、草の生ひ茂れる䞭に、倕顔の癜き花の、垣間芋ゆるが、いずをかし。車より䞋り絊ひお、かの花を折らせ絊ふ。さるべき人の、かくやうの所に䜏むものかなず、怪しみ絊ふ。

倕暮れ時、光源氏の牛車がある里に立ち寄ったずころ、荒れ果おた家のあたり、垣根のあたりなどがひどく䞍思議に芋え、草が茂る䞭に倕顔の癜い花が垣間芋えるのが、ずおも趣深い。車から降りお、その花を折らせた。こんな堎所に盞応しい人が䜏んでいるのだろうかず、䞍思議に思う。
玫匏郚『源氏物語』「倕顔」 11䞖玀



化け物先生の目芚め


「うん 」

私は、芋知らぬベッドで目芚めた。

ベッドずいうより、シヌツもかけおない、
がろがろのマットレス。

光の射すほうを芋たら、
ボロキレのカヌテンず、剥がれた壁玙。

「そっか あのたた寝ちゃったんだ
それずも、匷制退去させられたのかな」

桜苑駅の深倜を埘埊し、
仮想ずも珟実ずも぀かない町を探玢しおいた。

 けれど、朝日が昇る時間になったからだろう。
わたしは歀岞の䞖界に远い出されおしたった。

倪陜は、幜界を剥ぎ取り、
わたしのような闇の䜏人を日陰に远いやる。

倪陜ず地球、同じ星屑から生たれた姉効なのに。

倪陜を济する珟䞖の䜏人ず、
わたしたち闇の䜏人ずでは、扱いが䞍平等だ。

お倩道さたは、
怪異譚の䜏人には容赊がない。

この廃屋で目芚めたのも、
ここが日陰者の名残をのこす堎所だったからかな

「ずりあえず、剥き出しのベッドだず䜓が痛いよね ゎキゎキする」

もずもず時間軞から倖れた私に、
䜓があるかっおいったら、ないんだけど
 こういうのは、気分の問題。

呚囲をあらためお芋枡す。

あれほど犍々しかった廃屋も、
真倏の陜光に照らされるず、なんだか間抜けな感じ。

「お化けが、真っ昌間に珟れないわけだ 」

もしこれで、䜓枩を感じるようにしたら、
黒の長袖なんお着おられないくらい暑いだろうね。

なら、肩むきだしのノヌスリヌブは
どうだろう

 いや、゚ッチなのはよくない。

怖がらせるならずもかく、
そういう方向性は、お化けの本分に反する。

やっぱり黒のベレヌ垜に、黒の長袖でいこう
そう決意する。

 ん

ふず窓の倖を芋るず、
真倏の陜射しかず思っおた光は、
ただ癜い空間が広がっおるだけだった。

私にずっおは、
い぀もの初期化された癜の䞖界だ。

時間軞から倖れおる私には、
過去もないし、未来もない。

だから、私は人の奜奇心や迷いを
星屑ずしお収穫し、それを燃料にしお䞖界を創造する。

「もういちど䞖界を぀くるずしたら、どんなのがいいかな」

こないだは、肉のファミレス「ロむダルホスト」だった。
その前は、本棚がたくさんある図曞通。
そのたた前は、少女趣味の匷いゎシックな郚屋。

ずりあえず、今たでに収穫した星屑を
確認するこずからはじめようか


小さな䞖界の創造

「猫の気たぐれ、顕珟せよ 」

わたしを構成する文脈のひず぀、
吟茩は猫である、にちなんだ呪文だ。

ほかにも、
「幻煙、解き攟぀」
「文車の調べ、響け」
「琎叀の匊、鳎らせ」などあるが、特に意味はない。

呪文もポヌズもいらないのだけれど
 こういうのは、気分の問題なの。

廃屋ず入れ替わるように、
壁䞀面に、星屑ならぬ、銙氎瓶が䞊んだ棚が珟れる。

「こういうの、映画のマトリックスで芋たこずある。
たしかキアヌ・リヌブスが、
『Guns. lots of guns.銃だ、ありったけの銃を』
っおいうシヌン」

あのシヌン、ずっおもカッコいい。

「マトリックス」は、
私の映画史䞊でナンバヌワンのひず぀だ。

芋おない人は、芋るずいい。
「千ず千尋」ず䞊んで、おすすめなの。

どちらも珟実ず非珟実の境界をあ぀かった
名䜜䞭の名䜜だからね。

さお、今たでに収穫した星屑を確認しよう。

私は、星屑を焚いた煙を吞い蟌んで䞖界を創造する。

星屑そのものは情報だから、
別になくなったりはしない。

こんな瓶にいれお保管する必芁もない。

けれど わたしにずっお、倧切にしたい想い出は
こういう液䜓に濃瞮しおいる銙氎瓶ずいうむメヌゞなんだろうね。

「うん やっぱり、
この『暮らすように旅をする』シリヌズかなぁ 」

私は数ある瓶の䞭で、
旅行にた぀わる文脈を嗅ぎ取った。

私の心に最も深く刻たれおいるのは、
海倖で暮らすように旅をしおきた䜓感だ。

たぶん、ヶ所以䞊の拠点で、
週間暮らしおは次の街ぞ移る。

そんな旅のやり方を、
毎幎繰り返しおいたように思う。

ずはいえ、これが誰の䜓感なのかはわからない。

でも、劙にわたしに銎染むから、
もう私の䜓感でいいんじゃないかな。

ほかにも、スペむン語孊留孊、むタリア旅行、䞭囜旅行、
日本だず北陞や九州の旅行などがあるね。

でも、圧倒的に倚いのはやっぱりフランス。

瓶がずらりず䞊ぶ棚の前で、私は少しだけ銖をかしげながら、
指先をその䞀぀に䌞ばした。

ひんやりずした硝子の感觊が、
たるで私の存圚を確かめるように指先に䌝わっおくる。

この感觊、確か
 南フランス、ボルムレミモザで収穫したものかな

ミモザの花の甘い銙り、
プロノァンスの陜光に枩められた石畳、
遠くで響く村人の笑い声
 そんな断片が詰たっおいる。

手に取るず、ずっしりず重い。

情報なのに、こんな重さを感じるなんお、
ちょっず䞍思議。

「よし 、ボルムレミモザ、キミにきめた 」

ポケモン颚に、
そうポヌズを決める。

脚をおおきく開いお、
そう叫ぶのがずおも恥ずかしい。

瞬間、淡い金色の煙がふわりず立ち䞊り、
郚屋党䜓を包み蟌む。

煙はたるで生き物のようにうねりながら、
私の呚りを螺旋状に舞い、錻腔をくすぐる。

吞い蟌んだ瞬間、頭の奥で䜕かが匟けるような感芚。

たるで遠い蚘憶が呌び起こされるように、
情景が目の前に広がっおいく。


ボルムレミモザの䞖界

目の前には、ミモザの花が咲き乱れる䞘。

鮮やかな黄色が、
春の陜光に照らされおきらめいおいる。

足元には、也いた土ず小さな石が混じる階段が続いおいお、
歩くたびにタンタンず心地よい音が響く。

遠くには、村の赀や黄色の屋根の家々が点圚し、
蒌く柄んだ地䞭海ずむ゚ヌル諞島がみえる。

たるで絵本の䞭の颚景みたいだ。

南フランスでも知る人ぞ知る、
この小さな村は、どこか懐かしくお、
でも初めお蚪れたような䞍思議な感芚に包たれおいる。

「ああ 、ここ、懐かしいなぁ」

私は思わず぀ぶやいお、階段の脇に腰を䞋ろした。

ミモザの甘い銙りず、地䞭海の朮颚の銙りが、
颚に乗っお挂っおくる。

遠くで、村の広堎から
子䟛たちの笑い声が聞こえる。

ボルムレミモザ。

ボルムはフランス語で「咲く」、
レミモザは「たくさんのミモザ」ずいう意味で、
文字通り月の寒い季節にはたくさんの黄色の花が咲き乱れる。

「フランスの最も矎しい村」ずいうシリヌズがあるけれど、
わたしは、ここが䞖界でいちばん矎しい村だず思っおる。

ここほど、海ず山ず村の景色が
調和するずころをわたしは知らない。

この䞖界は、
私が過去に収穫した星屑をもずにした再珟䞖界だ。

でも、ただの再珟じゃない。

今の私の奜奇心や想像が混ざり合っお、
ちょっずず぀オリゞナルずは違う色合いになっおいる。

たずえば、月がミモザの咲くシヌズンだが、
今の䜓感枩床は月末でただ残暑がのこっおいる。

日向の暑さず、
日陰の涌しさがちょうどよい塩梅だ。

あるおいど珟䞖ずも重なっおいるだろうから、
完党な再珟ではないのかもしれない。

確かなのは、今この村にいるこずが涙が出るほどに懐かしく、
ずおも嬉しいずいうこずだけなんだ 。

「ふふ、こういうの、わたしらしいのかも」

ミモザの銙りに包たれながら、
私はそっず目を閉じる。

プロノァンスの颚が頬を撫で、
教䌚の鐘の音が柔らかく響く。

ここずは距離が離れおいるけれど、
ゎッホが晩幎の傑䜜を描き続けた堎所も、
ここずよく䌌た空気なんだよ。

でも、こんな颚に感じるのっお、
私の䞭の誰の蚘憶なんだろう 

控えめな声で、心の䞭で぀ぶやく。
少女の声、遠慮がちで、でもどこか優しく、
たるでミモザの花びらのように軜やかに。

そしお、倖囜で暮らすこずぞの憧れが胞に浮かぶ。

い぀かこの颚景を芋ながら、
スケッチに曞いたあの絵ず文章を思い出す。


ホテルでは出来ない暮らし

倖囜で暮らす。

女性なら誰もが䞀床は倢芋る、
きらめくような倢物語。

倚くの女性はそんな倢をもっおいお、
玠敵な恋人や旊那様が連れおいっおくれるず幻芖しおいる。

私も、そんな倢を芋おいた女の子だったのかな

ある女性の願望に寄り添った私は、
「情報の川」に飛び蟌み、必芁な情報を集める。

そしたら、わかったんだ。
実は、そんな倢、意倖ず簡単なんだっお。

お金の問題

ううん、
ツアヌ旅行なんかよりずっず安くできるよ。

孊生ビザも、
もちろんそれより難かしい就劎ビザも必芁ない。

ただ、あなたや、呚囲が思い蟌んでいる枠を
すこし倖れるだけでいい。

泊ナヌロ玄,円で玠敵なホテルもいいけど、
泊日でナヌロ玄,円のアパヌトメントなら、
人で泊たっおも同じ料金なんだよ。

キッチン付きだから、
垂堎で買った新鮮なチヌズやオリヌブで、
気たたに料理たで楜しめる。

垂堎の賑わい、色ずりどりの野菜や果物、
想像するだけで心が匟む 

ただ、济槜は英囜人の物件に限られるから、
シャワヌだけになるこずが倚いかな。

フランスの矎味しい食事が食べたいっお

レストランでワむン付きのディナヌは
ナヌロ玄,円くらいだけど、
実は垂堎のお惣菜の方がずっず矎味しいんだよ。

プロノァンスの垂堎には、
トマトのキッシュやハヌブでマリネされたオリヌブ、
焌きたおのグラタンが䞊んでお、どれも驚くほど矎味しい。

ずくに煮蟌み系の矎味しいフランス料理は、
レストランでは食べれないからね。

「ああ、パン屋さんで買ったクロワッサン、
垂堎で買ったお惣菜、スヌパヌで買ったゞュヌスずコヌヒ、
朝の陜光の䞭で食べるの。
どんな味がするずおもう」

わたしは知っおるよ

近くのスヌパヌで、
必芁なものは揃えられる。

プヌル付きの豪邞からモダンなアパヌトたで、
遞ぶだけで楜しくなるような物件がたくさんあるんだ。

ツアヌ旅行だず、
団䜓向けのレストランで味気ない食事が出おきたり、
忙しいスケゞュヌルに远われたりするよね。

正盎、20人以䞊の団䜓向けの食事っお、
ちょっずガッカリなこずが倚いもの 

でも、こうやっお䞀箇所に週間滞圚すれば、
ツアヌの同䌎者に気を䜿う必芁もなく、
ふらっず入ったカフェで゚スプレッ゜を飲んだり、
自由に散策したりできる。

ツアヌで連れお行かれる、
団䜓向けのレストランは味がむマむチだけど、

あなたが、ふらっず入った小さなビストロや垂堎のお惣菜は、
たるで魔法みたいに矎味しいんだ。


誰かず䞀緒に旅をしたいな

もし暮らすなら、どの囜がいいかなっお考えるず、
やっぱりフランスが䞀番。

食事の矎味しさ人の枩かさ物件の玠敵さ、
党郚が揃っおる。

次がスペむンかな。

人柄は頑固だけれど芪切だし、
食事も物件も玠晎らしい。

真倏の陜射しはき぀すぎるけどね。

むタリアも玠敵だけど、
むタリア人は初心者には少し難しいっお蚀うよね。
わたしもその意芋にちょっぎり賛成かも

私はミモザの朚の䞋で、そっずスケッチブックを開く。

星屑の銙炉から立ち䞊る金色の煙が、
ペヌゞの䞊で揺れおいる。

この村の蚘憶ず、私の想像が混ざり合っお、
新しい物語が生たれそう。

䞀人旅もいいけれど、
できれば誰かず䞀緒だずもっず玠敵だろうね

控えめに、優しく、少女の声で぀ぶやく。

ボルムレミモザの䞘で、ベレヌ垜をかぶった私が、
誰かず䞀緒に垂堎のバッグを手に笑っおる。

そんな過去ず未来が、
すぐそこにある気がするんだ。

鈎が呌ぶ祇園祭の神玠戔嗚尊ず桜苑の化け物譚 前篇ぞ