フィンランド出産記
こんにちは。S.Kumeです。
イタリアでの約半年間のマタニティ生活を経て、昨年の夏の終わりにフィンランドへ引っ越し、葉が深く色付く季節に移り変わりました。そして、引っ越して1ヶ月と少し後、無事にフィンランド ヘルシンキで出産しました。
妊娠に関してこのNoteに記したこともあり、後日談的に出産記を残しておこうと思います。
初産なので、日本とフィンランドの違いをフラットに比較できるわけではないのですが、妊娠中、見知らぬ方の海外出産記を読み漁って参考にさせてもらっていたので、私も『見知らぬ誰か』になっておこうかな〜くらいの気分で、備忘録も兼ねて、自分の出産記録を書いておきます。2025年末の話で、今後制度等はどんどん変わっていくかと思います。あしからず。
出産準備 ~ NeuvolaとParental Class
夫のフィンランドでの任期開始日と同時に保健関連の手続きを爆速で進めて、ちょうど1週間で自分の担当のネウボラナースと会うことができました。
ネウボラというのは、国際的にも有名なフィンランドの福祉システムで、妊娠発覚時から出産後の健診、そして子どもが6歳になるまで同じ1人の看護師さんが母子を担当してケアしていく仕組みだそうです。
妊娠期間は月1回、産前は週1回+医師との面談、お産直後は家に来てくれて、産後はまた週1回、しばらくすると月1回・・のようなペースでアポイントメントがあり、妊娠・出産・育児に関するあらゆる悩みを聞いてくれます。
ネウボラナースは看護師資格を持っているので、予防接種をその場で行ってもらえますし、胎児の心音や母体の状態を見て必要だとナースが判断したら医師の診察へまたアポイントメントを取ってもらえる、といった流れです。
最初の健診時に、「インフルエンザの予防接種まだならしとこうか~」的な軽い感じですぐに注射してもらえて驚きました。
私はイタリアでの最後の診察で胎児が少し小さめと診察されていたのもあり、ナースが判断して追加の超音波検査のアポイントメントが取られて産前に2回医師の診察を受けました。
医師はネウボラナースと異なり、患者に対して固定ではなく、とにかく検査し診断することが彼らの役割。「この患者はイタリアから最近フィンランドに来た」、などの背景情報はナースが事前にカルテに入れているので、診察前にそれを医師が読んでくれていて何度も同じ説明をしなくて良いのはスムーズでした。
1人の医師に通しで診てもらう環境ではないですが、いつも同じネウボラナースが見てくれていますし、医師が固定じゃなくても良いのかもしれない、と感じました。ただ、医師の診察を2回を受けただけでも、2回目のドクターは「1回目のドクターはこう言ってたかもしれないけど彼女はまだ若いからね〜」とやや異なった見解を言われたりもしたので、良い面も悪い面もある感じでしょうか。
ちなみに、ネウボラナースとの面談や定期的な診察は国民保険適用内で無料ですが、そこから必要と判断されて行う医師の超音波検査は有料でした。
余談ですが、妊娠期間中はイタリア、日本(一時帰国時)、フィンランドの3カ国で超音波検査を受けました。どの国も検査自体はたいしてやってることは変わらなくて、医学が国際的にいかに水準を合わせて(もちろんたくさん違いはあるでしょうが)行われているのかを目の当たりにできて面白かったです。妊娠期間の超音波検査を行う回数はかなり差があるみたいです。フィンランドは極端に少なく、日本は多いみたい。
検査を受けるにあたりそれぞれの国での医療制度をはじめ、予約や会計などの仕組みはかなり違っていて、それもとても興味深かった。日本は「医療」「病院に行くこと」がちょっと身近すぎるな~と感じるようになりました。(前職の影響もあり話が脱線・・)
恐らく日本で言う両親学級のような制度もフィンランドはあり、病院主催のParental Classをオンラインで受講しました。フィンランド語・スウェーデン語・英語のクラスがあり、時間になったらTeamsに入室する形で、各回3時間程度×3回のクラスが設けられていました。私は毎回集中して英語を聴き続けて脳みそが蒸発しました。
Parental Classの内容は、『親になるマインド』、『子どもが産まれて最初の1週間(とその後の生活)』、『出産時に何が起こるか』の、3回でした。
特に印象深かったフレーズは「Labor pain is your friend(陣痛は友達)」ですかね。陣痛を恐れず、リラックスしてPositiveなサイクルに入るのが大事、ということが繰り返し語られていました。
お産について、具体的な流れとともに学べたので過度な恐怖心を拭うことができたし、これから自分たちに起こる変化を事前に知識として得ることが出来たので良い時間でした。

出産記録 ~ 破水、陣痛、お産
自分は破水はじまりのお産でした。朝、お出かけしようと家で準備をしていたら、なかなか大層な尿漏れを感じ、これはもしや・・と思い病院に連絡して検査をしてもらったら破水でした。産前は尿が出やすいので、尿漏れと破水の見分けが全然つかなくてびっくりでした。
日本では破水したら感染症のリスクがあるのでそのまま入院らしいのですが、フィンランドでは翌朝のアポイントメントが取られて(それまでに陣痛が来なかったら陣痛の誘発を行うとのこと)、「Have a good day★」 ということで家に帰りました。陣痛を待ちつつ、入院準備を行い、来たるべくお産に向けてパワーを付けようとお肉とお米をたくさん食べて、ちょっとドキドキしながら過ごしておりました。
夕方ごろになると陣痛が始まり、日本の陣痛アプリで陣痛間隔を記録し、深夜に陣痛が本格化したので、病院の夜間窓口に電話して対応してもらいました。無事にヘルシンキ市の病院に割り当ててもらえたのですが、このタイミングでお産する病院が決まるので、満室で隣の市に割当られないかは少し冷や冷やでした。
「出産は子どもによるのよ、3人産んだら3通りのお産があるの」と、イタリアで大好きだった同じクラブのママさんから教えてもらっていたように、きっと私の経験は今回だけのもので、私は「これがお産」だと思わない方がいいんだろうな・・と思います。と、前置きしたくなるくらい、今回の自分のお産はスムーズで、そして「出産、楽しかったな~」という感想でした。
※という話を友達としていたら、ヒトは2人目3人目が産めるように出産の痛みの記憶を本能的に忘れるらしい。すごいな人間。
深夜に病院に到着して、担当の助産師さんがいろいろ検査をして、「これからいろいろ始まるからとりあえずトイレ行ってきてね~」と言われてトイレに行ったタイミングで陣痛が一気に進み、私のうめき声を聞いた助産師さんが「(トイレから)出てきて!始まるよ!」みたいな感じで急かされ分娩台に移動、事前にParental Classや日本語の動画(Youtubeの助産師はるかさん、Special Thanksです!)で学んだことを思い出しながら呼吸に集中していたら、どんどん自分の身体が事前に仕入れた知識通りに変化していって、その変化がそのまま誕生につながった・・という感じでした。病院に着いて2時間で産まれてくれました。Hello, baby!
自分の身体が想定通りに変化していったのも楽しかったし、助産師さんがとにかく優しく勇気づけてくれたし、夫がずっと横で助産師さんの言葉を日本語で伝え続けてくれて心強かったし、何より、我が子との対面はここに言葉で書くのはどうしてもチープになってしまいそうで憚られるくらいの・・感謝と愛に溢れた経験でした。自分の身体に人間が入ってたのが信じられなくて、涙も出ずひたすら驚きの感情が強かったなぁ。
お産はすべて担当の助産師さんと研修中の助産師さん2人の合わせて3人が担当して、トラブルがなかったので医師に会うことはなく終わりました。助産師と医師の職務範囲が日本とは少し異なるみたい。会陰切開や縫合もすべて助産師さんが担当してくれていました。異常があったら医師が出てくるシステムだとParental Classで事前に聞いていたので、会わなくて逆に良かったです。
入院記録 ~ 病院のファミリールーム2days
出産予定日よりも早めのお産だったこともあり、ベビーの体重が軽めに産まれたので、通常のルートよりはややリスクありに分類され、最初は病院のファミリールームで2日間過ごしました。
夫は簡易的なベッド、私はリクライニングが出来るベッドで、その間にアクリル製で透明なコットにベビーがちょこんと寝ている一部屋に、シャワールームが付いている1室でした。

お産自体は楽しかったものの、身体は疲労困憊で、会陰切開の傷も寝てても酷く痛く、とにかく私は寝かせてもらい、夫がせわしなく動いてくれていました。ありがとう。
おかげさまで、最初のミルクも、最初のおむつ替えも、最初の夜泣き対応も、私たちの食事を配膳エリアから取ってくるのも、全部夫にやっていただきました。本当にありがとう・・
少し動けるようになってから、夫におむつの替え方とか教えてもらいました。一緒に(むしろパパが先に)育児スタートできるのが良かったです。
3時間おきに助産師さんが部屋を訪問してくれて、そのたびにベビーのお世話の仕方を教えてくれたり、私の身体をチェックしてくれたり、ベビーの状態をチェックしてプロセスを進めていく感じでした。後述のホテル泊よりは手厚いサポートのようです。
また助産師さんとは別で、3時間おきにベビーの採血もありました。生まれたての小さな足に針をプスっとして血を取り、血糖値をチェックします。採血担当の方は助産師さんとは別の資格を持った方々でした。
他にも清掃員の方々も定期的に訪問していただくので、私達の部屋には定期的に、助産師さん、採血担当の方、清掃員さんの3職種の方々が訪問してくれます。それぞれシフト制なので違う方々が来るのですが、語学力や対応の雰囲気含めてこの国での社会階層が如実に現れているのを感じました。
ベビーと過ごす最初の夜は、ベビーが泣き、助産師さんの訪問、そして採血担当の方の訪問とイベントがほぼ1時間おきに発生し、夫も私も夜間ほとんどまともに眠れず、”育児・・始まったぞ・・感”がすごかったです。日本では助産師さんにベビーを預ける?こともあるみたいなのですが、そういうタイミングはなく、ベビーとの生活を早く家族で始められるように自分達で生活の準備をする時間でした。フィンランドは自分達の家が大事でプライベートの時間を大切にする考え方があるようなのですが、それに沿って、家に早く帰してあげよう、という方針に感じました。
私達は病院2泊+ホテル1泊の計4日で退院でしたが、リスクがなければホテル2泊(産後3日)で帰宅という流れみたいです。
病院のごはんは、マズイらしいと噂で聞いていたのですが、個人的には言うほどマズくはなく、栄養バランスが取れていて、ちゃんと食事だったので満足でした。最初の2日間なんてそんなご飯楽しむ余裕なくないですか?というのが自分の見解で、とにかく食べて身体を回復出来れば何でもいいです!と、その時は思っておりました。(この後その見解が覆ります)

お粥スイーツが美味しかった写真だけ残っていた
退院前には、助産師さんと一緒に出産時の体験を一緒に振り返り、フィードバックを行う時間が設けられていました。公的サービスだけでなく、フィンランドでは、サービスの満足度を問うアンケート調査に答える機会が多いように感じます。
助産師さんに、Good teamだったわと言ってもらえて嬉しかったです。私も彼女たちに大きな感謝の気持ちと、事前の説明でより改善したほうが良いと感じたポイントも伝え、インタラクティブなコミュニケーションでより良くなっていく社会に思いを馳せつつ、病院を後にしました。
入院記録 ~ 念願のホテル泊
これはヘルシンキ市に限るようなのですが、ヘルシンキ市の病院と大手ホテルチェーンのScandicが提携しており、病院の近くにあるホテルの1フロアが産後宿泊専用フロアになっていて、そこに助産師さんが常駐し、ホテルのそれぞれの部屋に両親と生まれたてのベビーが泊まる・・というシステムになっておりました。こちらで妊娠中に知り合ったママさんから事前に「産後はホテル泊」という話を聞いており、楽しみにしていたのですが、前述の通りリスク有り判定で私達は最初は病院泊でした。2日目にホテル泊の許可が出て、病院が手配してくれたタクシーでホテルへ移動し、最後1泊はホテルに泊まることができました。

1泊110〜150€くらいの良い感じのホテルの1部屋が割り当てられ、両親2人にふかふかのそれぞれシングルベッド、ベビーには病院と同じコット、そしてソファー、テーブル、オムツ替え台、簡易的なキッチン、シャワールームの構成でした。
ホテルではありますが、産後のベビーのケア用品(おむつ、タオル、綿棒など)はロビーに常備されていて自由にピックアップが出来て、お願いすれば電動の搾乳機も借りることができました。
母親はカルテ上で退院扱いになっているので、母親のチェックアップはなく(もちろん異常があれば助産師に相談出来ます)、そのため自分が着るものは持参したものを使っていました。
病院と同じように定期的に助産師が部屋に訪問してくれて、最初の母親の難関(?)である、授乳についても熱心にいろいろ教えてくれました。授乳、難しいし奥が深い・・
助産師の訪問はあるものの、部屋はとても静かで病院のような騒がしさがなく、プライベート空間が保たれている印象が強かったです。最初からホテルだったら少し寂しかったかも。
一方、とにかくご飯が!!美味しい!!!フィンランドに来て日が浅い私は、そもそもフィンランドのご飯もあまり詳しくなかったわけですが、ぷりっぷりのサーモンに、じゃがいもが添えられたお肉、野菜もしっかりたっぷり好きなだけ取ることが出来て、ホテル最高・・となっておりました。
私の分は医療費に含まれていましたが、夫の食事はついておらず自己負担でした。でもみんなで頑張ったから美味しいものをね、食べちゃうよね。


専用フロアのロビーには、祖父母がベビーに会いに来ていたり、第一子が遊ぶためのプレイルームがあったり(希望すれば一緒に泊まれる様子?、詳しくは分からない)、各家族がベビーとの初めての時間を楽しんでいました。
私も病院2日間で身体も少しは回復し、ホテルの食事や雰囲気を楽しむことができました。ホテル直行だったら身体が耐えられなかった気がする・・欧州の方々の骨盤にはかないません。
新生活のはじまり
そんなこんなで、昨年のある秋の深夜に陣痛が始まり、3.5日を病院とホテルで過ごし、タクシーで家に帰宅。そして新生活が始まりました。
フィンランドに引っ越して1か月と少しで出産となかなかハードな経験でした。とはいえ、助けてくれた友人夫婦のおかげもあり、何とか居住空間もほぼほぼ整い、ヘルシンキには日本人がたくさんいるのでママさんの友人もできた中での出産だったのは心強かったです。
・・・いや、なんだか少し時間が経って美化されていますが(笑)、帰宅後最初の2週間はめちゃくちゃキツかったです(笑)。
夫は、赴任後3か月は制度上育休を取れなかったので、ボスと先輩に理解を得つつも始まったばかりの仕事をこなし、私も私で会陰の傷は痛いし、胸はカチコチになるし、夜は眠れないし、育児のすべてが初めてで慣れないし、新しい家での家事も慣れてないし、フィンランド語なんも分からん中で買い物もしないといけないし。
2週間耐えると、日本から実親がヘルプに来てくれて、そこから1か月半は余裕はないながらに何とか頑張り、3か月目からようやく夫も育休が取れて、少しずつ楽しめるようになったような気がします。
ヘルシンキの冬は、思い返せばマイナス18度を初めて経験したり、15時には暗くなったり、人生で初めての雪国生活でしたが、それを上回る人生で初めての育児生活に翻弄されていたので、あまり印象になかったです(笑)次の冬はもう少し楽しめるといいな~。

今は春の訪れを感じていて、これから迎える新しい季節が楽しみです。
以前妊娠についてのNoteを書いて、特に同世代からたくさん反応をいただきました。その中には、私が記事に書いたように、妊娠が継続しているか不安な中で過ごしている友人や、また、その期間にお別れを経験した方もいました。
月並みな言葉ですが、こうやって新しい命を授かったことは奇跡のような出来事に感じます。この奇跡に感謝しながら、異国の地での子育てを楽しんで過ごしていきたいなと思っています。
お産も育児もはじめてで分からないことばかりでしたし、今も知らないことだらけで日々勉強中です。
フィンランドでの考え方を知った上で、比較として日本での考え方や方法を調べ、相談しながら自分達に合う方法や考え方を取り入れるように意識し、今もなるべくそのようにしています。
どちらが良い・悪いではなく、イタリアも含めて文化や慣習、違いを知る楽しさも感じています。
長くなりましたが、海外出産を控えたどこかの誰かの助けになったらいいな、と思いながら終わりにします。
もい!

