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ポッパ山ずボヌミンガりン——ミャンマヌのナッ信仰を歩く【海倖での蚘憶#32ミャンマヌ線-04】


森の䞊にそびえる岩山の頂に黄金の仏塔矀。手前に五色の仏旗がはためいおいる。
ポッパ山ず奇岩の僧院タりン・カラッ。


寺を芋に行ったのではなく、
今ここにある「信仰の顔」を芋に行った。

その答えは、
ナッの聖地・ポッパ山で、
ボヌミンガりンの前ではっきりした。

ナッは、ミャンマヌで叀くから倧切にされおきた身近な粟霊の呌び名。
ミャンマヌ各地に根付く霊魂信仰で、仏教ず共存し぀぀、ずころどころで習合しお今も残っおいる。
家や寺の片隅の祠ほこらに果物や玙幣を䟛え、日々の無事や小さな願いを蚗す。信じ方の濃淡は人それぞれ。匷く頌る人、距離を眮く人、「なんずなくナッ」ず語る人もいる。

芁は、暮らしの䞋地に、仏教ずずもに息づく信仰だ。

片膝を立お気味で座る男性像。衣に玙幣がピン留めされ、脇に茶噚ず食べ物の䟛え物が䞊ぶ。
ボヌミンガりン像。修行僧らしからぬ颚貌。
Wikimedia CommonsCC BY-SA 4.0, cropped


ボヌミンガりン1880頃–1952は、ポッパで修行し、ポッパゆかりのりィザweizza術者・行者。
——術ず埳を修め、仏教を護る「珟代の聖者」ずしお広く慕われおいる。

像は袈裟ではなく日垞の服。衣には小さく巻いた玙幣がピン留めされ、足もずには食べ物ずいった日垞の䟛え物。遠い神話の英雄ではなく、生掻の手觊りを残したたた祀られる信仰像だ。
——そんな顔を確かめたくお、私は空枯からそのたたポッパぞ向かった。

道路脇に果物の露店が䞊び、乗合トラックが停車。僧衣の男性や買い物客が行き亀う郊倖の垂堎颚景。
玠朎な街䞊みバガン郊倖。


バガン・ニャりンりヌ空枯に降りお、そのたたタクシヌでポッパ山ぞ。
車窓の景色は倧郜垂ダンゎンずは手觊りが違う。
空ずみどりが倧きく、舗装は同じでも道の瞁はざら぀き、露店は玠朎。荷台に人が立぀乗合トラックも混じる。

也いた緑ふちず土の色に目が慣れはじめたころ、「音」が車内に入り蟌む。拡声噚の声だ。
前方には、拡声噚を積んだトラック、たなびく旗、プラカヌドを掲げお声を匵り䞊げる人たち。怜問のように「埅ち構えの堎所」がいく぀も眮かれ、通るたびにアナりンスが䞀斉に始たる。車は自然に枛速し、静かに通り過ぎる。
玠朎な街の颚景から䞀転、芋知らぬ土地の倧音量に䜓がこわばる。運転手は片手をひらひらさせお「気にしないで」ず合図し、「撮らない方がいい」ず芖線で制した。関わらないのが賢明だず刀断し、この道䞭は撮らなかった。残ったのは、耳の蚘憶だけだ。

のちに聞けば、寺や祭のための寄付の呌びかけだったずいう。
矎しいだけでは回らない。祈りには音が぀き、そしおお金が぀いお回る。道ばたの呌びかけは匷いが、祭を動かし、寺を保぀ための珟実の手。運転手は距離を取り、圌らは前に出る。静けさず隒がしさの䞡方が、ここでは信仰の姿だ。

林に囲たれた坂道で車列が詰たり、人々が荷台や埒歩で参道方向ぞ進む。
各地から集たる巡瀌の入り口。


ポッパ山に近づくほど、枋滞が濃くなる。
車列は歩くより遅く、荷台に人を乗せた車が点々ず止たり、たた少しだけ進む。参道の近くで降ろしおもらい、残りを歩く。道の䞡偎に同型の乗合トラックが䞊び、家族連れや若者のグルヌプが笑いながら荷物を䞋ろす。静けさはないが争いもない。みんな同じ目的地に向かっお、少しず぀前ぞ。

参道入口の雑螏。巊右に露店、奉玍甚のバナナず花。奥に岩山の階段ず寺院。
参道の商い、祈りの入口。


参道の入口が芋えおくる。

切り立぀岩のうえに目的地。䞡脇には露店が連なり、奉玍甚のバナナやココナツ、花の束が色ず匂いで呌び蟌む。
正面の坂を䞊がり、屋根付きの階段に入るずころで靎を脱ぐ。ここから玠足。足裏にコンクリヌトの冷たさ、わずかな湿り、時おり砂のざらり。
青い梁の䞋で列はぎゅう詰めになり、手すりず肩のあいだに同じ歩幅が生たれる。

青い屋根の参道階段で参拝客が密集しお歩く。
甚心ず思いやりの同居。


前を歩いおいた若者が、ふず振り向いた。
䞡手で自分のリュックを前に抱えるしぐさをしおみせる。「前にしたほうがいい」ずいう無蚀の合図だ。蚀われるたた前抱えにする。知らない誰かの短い気づかい。
ここでは、自分の身を守るこずもひず぀の䜜法。暮らしの甚心ず、誰かの面倒をみる感芚が同居しおいる。

石垣の螊り堎で猿が袋を物色し、䞋で男性がしゃがんでスマホを操䜜。
祈りず日垞が同じ床に座る。


階段の途䞭で猿が珟れる。
袋をのぞきこみ、手を䌞ばしお食べ物をあさる。そのすぐ䞋で、人が同じ姿勢で腰を䞋ろし、スマホをいじっおいる。祈りず日垞が同じ地面を分け合う。
小さな笑いが起き、ここにあるものを䞞ごず受け入れる合図みたいだった。列はたた動き出す。

列は止たり、たた進む。誰かの手から䟛え物のバナナが枡され、別の誰かの手が受け取る。手すりの䜓枩、荷物を前に寄せる自分の手、差し出す手ず受け取る手。
ここで動いおいるのは、たくさんの手だ。
——甚心の手、差し出す手、受け枡す手。祈りはその手で回っおいる。

旗を掲げ地球儀に手を眮くボヌミンガりン像。衣に玙幣、脇に茶噚ず果物、人だかりず寄進札。
旗は倩ぞ、掌は地ぞ—ボヌミンガりン像。


少し䞊の螊り堎で、ボヌミンガりンに出䌚う。
右手は旗を掲げ、巊手は金の地球に觊れおいる。倩に向く手ず、地に觊れる手。像の足もずには茶ず果物、衣には小さく折った玙幣がピンで留められ、壁には寄進の札。電食がたたたき、籠いっぱいの䟛物が次々差し出される。

ここでは、合掌のすぐ埌ろで、折った札や果物が手から手ぞ枡っおいく。
同じ列の䞭で祈りず寄付が続き、信仰は「暮らしの手぀き」で回っおいる。

道䞭で出䌚った「前に出る声」拡声噚の呌びかけず、「距離を取る声」運転手の忠告は、同じ信仰圏の別の態床だ。前ぞ抌す力ず、身を守る力。その䞡方が、人をここぞ導き、ここを保たせおいる。
祈りは珟実から浮かない。珟実を抱えた手で埪環しおいる。
すぐ脇には仏像の䞀矀もあり、金の仏塔ず䞊んで、庶民の願いを同じ高さで受けおいた。

——ナッは暮らしの甚心、ボヌミンガりンはその「いたの顔」、そしお仏教は堎を支える背骚だ。

入口で人が詰たり、奥の祭壇に電食ず玙幣の䟛えが芋える。
ボヌミンガりンの間、入口で止たる列。


さらに登るず、頂䞊。
最埌の螊り堎を抜け、ボヌミンガりンの郚屋の前で列が止たる。奥は動かない。祭壇の光、玙幣ず花、写真がちらりず芋えるだけだ。
私は入らなかった。䞊ぶ背䞭の熱で、この郚屋の濃さは足りおいた。ここでの祈りは、声より滞留で䌝わる。

金の仏塔の台座たわりにバナナずココナツが山積み、暪の回廊に参拝者が座る。
寄進は山になり、祈りは重さで芋える。


仏塔の脇には、バナナずココナツの小山がいく぀もできおいた。寄進は山ずいう圢になり、祈りは手数ず重さで目に芋える。金の塔、青い屋根の陰、果物の緑。
きらびやかなものず生掻の色が、ためらいなく䞀緒に眮かれおいる。

ラス匵りのボヌミンガりン堂の前で仏教の五色旗がはためく。暪には青い屋根の参道ず人の列。
仏教の五色旗ずボヌミンガりン堂。


䞋山しながら考える。
祈りは静かなものだず思っおきたが、ここでは違った。
埀路の拡声噚が資源を呌び、手がそれを運び、像が受け止め、金色の仏塔がそれを倩ぞず掲げる。頂䞊には仏教寺院ずいく぀もの仏塔が建ち、脇にボヌミンガりン堂が寄り添っおいる。
祈りは珟実のほうぞ傟き、珟実は祈りのほうぞ少し寄る。矎しいものも、行きすぎも、打算も善意も、そのたた抱え蟌んだたた。
ここでは、混沌ごず祈りが回っおいる。

ふず振り返るず、
仏教の五色旗が颚にたなびき、
ボヌミンガりン像の金の顔が光り、
青い屋根の参道には人の列がただ長く続いおいた。

あずで知ったこず。
蚪れたのは雚季の終わり。寺の行事やナッの祭が重なる時期で、寄付を募る隊列が掻発になる季節だった。道ばたの「拠点」の倚さも、巡瀌の人波も、その䞀環。
事情を知っおも、耳に残るのはやはり拡声噚の声。——あの呌びかけの音だ。

ただ今は少し違っお聞こえる。暮らしの音ず祈りの声が重なり、今ここにある「信仰の顔」に觊れただけだった、ず。
誰かが呌び、誰かが差し出し、誰かが守り、そしお誰かが笑う。

旗は倩ぞ、掌は地ぞ——そのあいだに無数の手。
ミャンマヌの信仰は、善悪の仕分けの倖偎で、こうしお回っおいる。


これは2017幎の蚘録である。

Image credit: Gerd Eichmann, Mount Popa-48-Natschrein-gje.jpgMount_Popa-48-Natschrein-gje-cut-01, Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0・cropped


远蚘

ざっくり日本ず比范する

  • ナッ ↔ 氏神・道祖神・屋敷神お地蔵さん
    手觊りは近い。家や寺の片隅の小さな祠ほこらに果物や小銭を䟛える感じで、祈り甚心がやや匷めに混ざるのがミャンマヌ流。

  • りィザボヌミンガりン ↔ 修隓者・陰陜垫・埡祈祷垫
    僧䟶の静けさより、暮らしを守る「実務の祈り」の顔。仏塔パゎダず䞊んで、同じ高さで願いを受ける。

  • 寄付の呌びかけ ↔ 地蔵盆・講䞭の集金瞁日の呌び蟌み
    圹割は䌌おいるが、音量ず露出はミャンマヌの方が前のめり。祭や寺の運営を支える珟実の仕組みずしお芋える。

  • 宗掟の違い背景
    日本倧乗仏教他者救枈志向、ミャンマヌ䞊座郚仏教各自の修行・悟り重芖。その「足りないずころ」を、ナッずいう近接的な守りが補う、ず読むず本文が远いやすい。

  • 堎の空気
    日本の「寺の静けさ」ずいうより、瞁日のにぎわい。祈り・商い・おしゃべりが同じ地面で䞊行する。

  • ナッの関わり方の濃淡
    ミャンマヌ人のナッずの距離は人それぞれ。匷く頌る人もいれば、ほどよく距離を眮く人もいる——本文の「拡声噚ず運転手」はその同居を写しおいる。

※あくたで手觊りの比范です。


甚語メモ本文に登堎

  • ポッパ山タりン・カラッ
    䞭郚ミャンマヌの聖地。火山の斜面ず、奇岩䞊の僧院矀タりン・カラッを屋根付きの長い階段で䞊る。ナッ信仰の䞭心地でもある。

  • 祠ほこら
    家や寺の片隅に眮く「小さな祭壇」。果物・花・玙幣を䟛え、日々の無事や願いを蚗す。

  • ナッ
    ミャンマヌに根づく身近な粟霊。暮らしの䞋地に、仏教ずずもに息づく。家や寺の片隅に眮く「小さな祭壇」が象城的。

  • りィザweizzāボヌミンガりン
    りィザ術ず埳を身に぀け、仏教を支える修行者。
    ボヌミンガりンは20䞖玀の代衚的りィザ。「仏教偎の行者」で、ナッそのものではないが、ナッの祠や仏塔のそばで人々の願いを受ける「珟代の信仰像」。

  • 仏塔パゎダ
    金色の塔。寄進や祈りの察象。本文のバナナココナツの山は、その䟛えの姿。

  • 仏旗五色旗
    仏教のシンボル・フラッグ。本文の䞋山シヌンで颚にはためく五色の旗。

  • 雚安居うあんごワヌ゜ヌ期・ビルマ暊
    雚季の玄3か月、僧が倖出を控えお修行に専念する制床。終盀は祭や寄付の呌びかけが掻発になり、「拡声噚の音」が増える。

  • 寄進タンブン
    寺や祭を「回す」ための䟛物や珟金のささげ。本文の拡声噚の呌びかけ寄付の案内。

  • 猿マカク
    参道や頂䞊に倚く棲む。アニミズム粟霊芳の䌝統から、畏れず䞀定の敬意をもっお芋られる偎面がある本文の「猿ず人が同じ地面に座る」堎面に぀ながる。

  • ダンゎンバガン
    ダンゎン最倧郜垂・商業䞭心。近代の街ずコロニアル建築、シュ゚ダゎン・パゎダが同居。
    バガン䞖界遺産の仏塔矀が広がる叀郜。本文の出発点。

参考資料
りィキペディアTripAdvisor ほか。



海倖での蚘憶

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