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市政ではなく、市井の視点で考える

 昨日、このアカウントの方針変更とタイトルの変更、そして筆名を「綺世キセ」とすることをお伝えました。

 この記事では『生駒谷暮らしの研究室』について、もう少し深掘りしておきます。


行政区分ではなく、「生駒」の山域や流域を軸に

 地域にあるものを継承し、土地ならではの環境と暮らしを守ってゆく。
 ここでは「生駒市」という行政区分ではなく、生駒の山域や流域を軸に、この土地に本来あるものを大切にする視点で考えます。

 そのために必要なものは高尚な知識・技術の弁論ではなく、市井の体感と視点、そして面倒臭い実働です。都合の良さを捨てること。

 これは市政が推奨するボランティア活動とは全く次元の異なる話です。

地誌・民俗に注目する理由

 古くから人々の間で繰り返されてきた風習や信仰、暮らし方。
 それらは様々な試行錯誤の末に残り、体系化されてきた暮らしの知恵そのもの。そう易々と絶えず、細々とでも残り続けるのは、人の意識と心に響く道理がそこにあるからではないでしょうか。

 世界を見渡してみても、日本は一つの国で多様な民俗性を有する珍しい国だと思います。

 民俗に地域性をもたらすその土地の地理的条件。
 海には海の、山には山の暮らしがあり、日本は極めて国土の小さな国ながら、温帯を中心に亜熱帯〜亜寒帯と気候帯の幅も広い。それぞれの地理的条件によって植生が異なり、得られる資源が異なり、それによって暮らしぶりにオリジナリティが生まれます。それを「地域性」と呼ぶのです。

 そういった観点から、民俗だけでなく「地誌」にも注目しています。

地誌学(地域地理学, regional geography)
特定地域(国、地方、都市など)に注目し、自然環境(地理、地形、地質、水文、植生、気候など)と人文的要素(文化、歴史、経済、暮らしなど)の相互関係から地域全体を考察し、その地域の独自性を見出す地理学の一分野

 便利さや新しい刺激を求め続ける(ドーパミン過剰な)人たちの「開発」によって、変化する人の暮らしは表面的なものに過ぎず、大きく変容するのは実はその土地にしかない環境の方です。
 結果、土地特有の民俗は時の流れと共に淘汰されてゆきます。それは地域性の喪失に他ならず、今の日本はどこかで見たことのある似たような町が随分と増えたのではないでしょうか。

 そして、そのことが新しい刺激を求め続ける(ドーパミン過剰な)世の中を加速させているように見えてなりません。

かつて苗代だった下ノ畑のはなし

 ほんの小さな土地でもいいから、その区画に対する責任を持つこと。
 そしてこの地域の土に触れる機会を持つこと。
 これは『生駒谷暮らしの研究室』における基本的な姿勢・態度(アティチュード)です。

 自宅から徒歩数分の場所に、あるきっかけから手入れをすることになった2つの土地があります。
 一つはかつて苗代だった下ノ畑。今は野っ原以上畑未満。もう一つは時々猪が土を掘り返しにくる山際の土地。藪を切り拓いて造成された土台の上にある、畑よりは庭っぽい場所。
 どちらも町内の住宅地の一角にあります。

 いつの間にか人の手が離れ、草が道側へ溢れかえり、反対に土地の内側の道沿いのあたりがゴミだらけになっていました。そこは私にとって日常的に視界に入る場所で、そういう関係性の人は町内に私だけではありません。

 それで土地の持ち主の方にお話を聞くところから始め、今はその場所で地域の生態系を観察しながら、栽培と採取ができる場所へと整備を進めているところです。
 特に下ノ畑で作業している時は、道ゆく人に話しかけられることが増えました。

 私は農家ではないし、農業もしていません。バックグラウンドは環境システム工学です。自然栽培とか、不耕起とか、オーガニックとか、〇〇農法など、様々に語られる手法・思想は、ここでは取り扱いません。

 私自身が抱える身体的な問題もあり、農業をされている方達のようには振舞えませんが、できる範囲でその土地に関わり、草の手入れをし、虫の声に耳を澄ましながら、気づけば落ちているゴミを拾い続けています。

 継続的な生態系モニタリングをする研究フィールドとしての生態園、そして季節の食べ物を暮らしに還元できる場所にしたいと思っています。

流域の環境と暮らしの守り人として生きる

 あらためて考えてみても、小学生の時に感じ始めた町の違和感は今の時代にわかりやすい形で町のネガティブな変化に紐づいているように思います。

 そんな世において、あえて組織を離れ、個人で活動することを決めたのは、結局のところ本当に身近なところをなんとかしたいと思ったからです。

 つまるところ、「うちから徒歩10分くらいの世界」で自分にできることを探して実践する、という小さく地味なことを継続的に取り組むことが、人と人が顔を合わせる機会を作り、挨拶を増やし、安心して暮らせる町の未来を作ってゆくことだと考えています。



2026.09.03 Update

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