映画感想文『黒牢城』 モッくんカッコいい!武勇伝!武勇伝!ダテ様も良かったよ

荒木村重(本木雅弘)は暴虐な織田信長のやり方に反発し、籠城作戦を決行する。城は織田軍に囲まれ孤立無援に。
城内の血気盛んな家臣たちを抑えながら、村重は妻・千代保(吉高由里子)を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心していた。そんな時、城内である少年が殺される事件が発生。その後も怪事件が次々と起こる。容疑者は、密室と化した城内に居る家臣や身内の誰か。城外は敵軍。城内は裏切り者。誰もが疑心暗鬼になっていく中、村重は牢屋に囚われた危険な天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)と共に謎の解決に挑む。事件の驚きの真相とは―。
※ごく個人的な感想です。ネタバレあったらごめんなさい。
黒沢清の時代劇だって!
「黒沢清の時代劇だって!」と楽しみにしていたにもかかわらず、いざ公開してみると「言うても黒沢清だからな」と辛口思考が頭をもたげ、公開から1ヶ月も放置していました。
(以下は辛口例)
でも、結論から言うと、面白かったです。見逃さなくてよかった。
原作の面白さ!
そもそも原作が面白いのでしょう。読んでませんけど。
あまり戦国時代に詳しくはないのですが、「荒木村重の謎の謀反」「黒田官兵衛1年間の幽閉生活(その間に脚を悪くする)」そして「荒木村重謎の逃走」、全部史実なんですよね。
そうした断片的な史実の「穴」を埋めるアイディアは秀逸。
それに、推理小説的な面白さ。
一般的に「時代劇」と呼ばれる、主に江戸時代を舞台にしたテレビドラマですが、「悪を成敗する」イメージですよね。でも実は、多くが「捕物帳」。つまり「殺人事件が起きて犯人を探す」ミステリーと同じ構造なんですよ。
ま、本作の舞台は戦国時代なので、太平の江戸時代とは本質が異なるんですが、この話は「捕物帳」的要素を持ち込んでいるんです。
その上で、時代劇ではまず見ない「ミステリー要素」が出てくる。
時代劇で「密室トリック」を初めて見ましたよ。新鮮だった。
他にも、目的の錯誤、捜査錯乱、犯人不在とでも言うんですかね、専門用語は分かりませんけど、推理小説ならではの面白さ。

でも、黒沢清はホラーは撮っても「謎解き」向きの人ではないんですよね。むしろ、謎しか感じない映画ばかり撮る。
その結果、本作は「謎解きの面白さ」はないです。
菅田将暉に知恵を借りるクダリが『羊たちの沈黙』(1991年)みたいで面白かったけど。面白いと言うか、ゲラゲラ笑った。

黒沢清らしい面白さ?
冒頭、城下町から始まるんです。
一人が櫓を登っていって、カメラがそれをクレーンで追う。
すると遠くに城が見えてくる。
この「城の見せ方」に、黒沢清らしさを感じてワクワクしました。
だって、普通だったらお城ドーン!って写したくなるもん。
映画全体としては、4本の短編で一つの物語になっているような作りです。
この形式、黒沢清に向いていた気がします。
私、黒沢清作品ほぼ全部観ているので分かります。
彼、ストーリーテリング巧くない(笑)
短いくらいが丁度いい
(褒めてるんだか、けなしてるんだか)。
実際、中編『Chime』(2024年)はめちゃくちゃ面白かったし。
主演の吉岡睦雄は本作にも出てましたね。
なんかねえ、黒沢清の映画って、独特の「変な違和感」があるんです。それがいい時と悪い時があるんですけどね。今回は、この「短編集」形式と「時代劇」が、その変な違和感を中和したように感じました。
(やっぱり、褒めてるんだか、けなしてるんだか)。
そういった意味では、本来的な「黒沢清らしい面白さ」ではなかったのかもしれません。印象に残っているのは、話の面白さだったように思いますし。
あと、モッくんね。モッくんカッコいい!
役者が異常に面白かった
豪華俳優陣も良かったです。
なによりモッくんがはまり役。
まず、彼は所作が美しい。『おくりびと』(2008年)でもそうでした。
本作でお茶を点てるシーンを長々見せるんですが、まあ美しい。
しかも、武士のどことなく武骨な感じのする所作にも見える。
荒木村重が後に茶人になったというエピソードにも、かなり説得力がありました。
あと、ほら、モッくんって、掴みどころがないというか、有体に言って変な人じゃないですか(笑)
顔はいいしカリスマ性もあるけど、何考えてるか分からないし、絶対的ヒーローではない。
そういう本人のキャラクターと、荒木村重のキャラが合っていたと思うんです。もっとも、荒木村重がどんなキャラか知りませんけどね。

あと、そんなに出演作品をたくさん観ているわけではないし、普段はあまり思わないんですが、時折猛烈に思うことがあって、それをこの映画で強く再認識しました。
吉高由里子はいい役者。めっちゃいい役者。


(2026.07.18 新宿ピカデリーにて鑑賞 ★★★★☆)

