AIとopenBIM ― IFCデータがひらく、BIMの次の可能性
こんにちは!ONESTRUCTION株式会社 プロダクト本部 プロダクトマネジメントユニットの宮本鉄平です。
最近、建設業界でも「AI」や「生成AI」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
BIMに関わっていると、こんなことを考えたことがある人もいるかもしれません。
AIって、BIMと何か関係があるのだろうか
設計や確認のやり方は、将来変わっていくのだろうか
話題にはなるけれど、実務とどうつながるのかは分かりにくい
この記事では、openBIMという考え方とAIを並べて眺めたときに、何が見えてくるのかを、整理してみます。
特定の立場や理解度を前提にせず、「今分かっていること」と「まだ分からないこと」を切り分けながら書いていきます。
この記事では「これから起こりそうな話」を扱います。
この記事で触れるポイント
最初に、この記事で扱う範囲をまとめておきます。
AIとopenBIMは、どこで接点を持ちそうか
IFCというデータ形式が、なぜ文脈に出てくるのか
すぐに実現する話ではないが、考えられる方向性
openBIMが結果的にAI活用の下地になりそうな理由
あくまで「可能性の整理」であり、結論を急ぐものではありません。
AIが扱いやすいのは「整理された情報」
AIが得意とするのは、次のような性質を持つ情報です。
数値として扱えるもの
分類や区分が明確なもの
属性として整理されているもの
要素同士の関係が定義されているもの
いわゆる「構造化された情報」です。
IFCには、こうした要素が最初から含まれています。
IfcWallや IfcDoorといった明確なクラス
プロパティセットによる属性情報
要素同士の関係性
GUIDによる一意な識別(重複しないID管理)
人が直接読むには少し分かりにくい部分もありますが、機械にとっては解釈しやすい構造だと言えます。
IFCが持つ、もう一つの意味
IFCの特徴は、データ構造だけではありません。
多くのBIMデータは、特定のソフトウェアの中で完結しています。
内部構造が公開されていない
バージョンによって扱いが変わる
長期間の利用を前提にしにくい
その点、IFCは、
オープンな仕様で定義され
ISO規格として整備され
特定のベンダーに依存しない
という性質を持っています。
これは、時間をかけてデータを蓄積・活用していくAIにとって、無視できない条件です。
「こういう使い方も考えられるかもしれない」話
ここからは、現時点で一般化している話ではありません。
ただ、IFCやopenBIMの構造を前提にすると、理屈としては考えられる、というレベルの話です。
IFCモデルの品質チェックを補助する
たとえば、次のような点です。
必要なプロパティが入力されていない
過去案件と比べて数量が大きく外れている
明らかに不自然な数値が含まれている
こうした点を、ルールとAIを組み合わせて見つける、という考え方があります。
判断そのものを任せるのではなく、人が確認すべき箇所を見つける補助として使う、という位置づけです。
過去の指摘を活かしたレビュー支援
BCFには、プロジェクトごとの指摘ややり取りが残ります。
どの部位で
どんな指摘が
どの段階で多かったか
IFCとBCFがセットで蓄積されていれば、過去の傾向をもとに注意点を示す、といった使い方も考えられます。
数量や属性の違和感を見つける
AIは、「いつもと違う」を見つけるのが得意です。
同じ用途なのに壁量が多い
特定の属性だけ毎回抜けている
こうした違和感を、数値として可視化する、という方向性もあります。
維持管理フェーズでの活用
さらに先の話としては、
IFCに含まれる属性
点検や更新の履歴
維持管理の記録
を組み合わせて、「そろそろ注意が必要かもしれない」といった判断を支援する、という使い方も想像できます。
なぜopenBIMでないと話が進みにくいのか
ここまでの話には、共通する前提があります。
それは、データが集まり、意味がそろっていることです。
形式がバラバラ
用語の意味が統一されていない
プロジェクトごとに考え方が違う
この状態では、AIはうまく機能しません。
openBIMは、
IFCによる共通フォーマット
bSDDによる用語定義
IDSによる情報要件の整理
CDEによるデータの集約
といった形で、結果的にAIが扱いやすい環境を整える方向にあります。
AIが設計者の代わりになる、という話ではない
ここは誤解されやすい点なので、はっきり分けておきます。
AIは、
判断材料を増やす
見落としに気づきやすくする
作業の負担を減らす
ための道具です。
設計の意図や責任を持つものではありません。
BIMとAIの関係は、人の考えを置き換えるというより、考える余地を広げるものとして捉える方が現実的です。
未来のために、今やっていること
AIの話は、どうしても「将来の話」に聞こえがちです。
ただ、実際には、
IFCをできるだけ正しく出す
属性を丁寧に入力する
openBIMの考え方で情報を扱う
こうした日々の積み重ねが、将来の選択肢を増やすことにつながります。
まとめ
AIとBIMの関係では、「形」より「情報」が重要
IFCは、機械が解釈しやすい構造を持っている
openBIMは、結果的にAI活用の土台になり得る
すぐに答えは出ないが、方向性は少しずつ見えてきている
おわりに
AIがBIMをどう変えていくのかは、正直なところ、まだはっきりとは分かりません。
ただ、データが整っていなければ、何も始まらないという点だけは、
今の時点でも言えそうです。
IFCをどう扱い、どんな形で情報を残していくのか。
それ自体が、未来への準備になっているのかもしれません。
