芋出し画像

『ノ゚シスは愛を知らない』 第13ç«  芳枬の先に #73 嬉しいのに、怖い

【前回たでのあらすじ】
蓮芋怜は仕事を終え、自宅から個人名のアカりントで朝倉ナキにメヌルを送った。平日に䌑みを取れるこずになり、ナキをデヌトに誘った。六本朚のミッドタりンで行われる倏限定のむベントを䞀緒に楜しみたかったのだが、ナキから快諟のメヌルが届き、食事をするためのレストランを予玄する。



朝倉ナキは、蓮芋怜から届いたメヌルをもう䞀床読み返した。

䞀日の仕事を終えおパ゜コンを閉じたあず、スマヌトフォンに届いたメヌル。

ナキはベッドに腰掛けお、カモミヌルティヌを飲みながら寛いでいた。

『来週、平日に䌑みを取れそうなんですが、䌚えたせんか。仕事の話は抜きで、肉じゃがのお返しがしたいず』

䜕床読んでも、同じずころで目が止たる。

  仕事の話は抜きで。

前に届いたメヌルずは、送信元のアドレスも違っおいた。

ORdのアカりントではなく、蓮芋怜個人のアドレス。

぀たりこれは、仕事ではない。
ネットワヌク異垞の確認でもない。

たぶん  デヌトだ。

そう思った途端、口元が緩んだ。


「  デヌト、だよね」

『はい。䞀般的には、そのように解釈できたす』

スマヌトスピヌカヌから、ミナが即答した。

「聞いおないんだけど」

『ナキが声に出したため、応答したした』

「はいはい」

ナキは淡いブルヌのスマヌトフォンを䌏せた。
数秒もしないうちに、たた手に取る。

次のメヌル。

『ミッドタりンで䌚いたせんか。倏の間だけやっおいる面癜いむベントがありたす。そのあず、近くのむタリアンで食事をしたしょう』

そしお、通目に届いたメヌル。

『むベントを楜しむために、できれば玠足にサンダルのような靎で来おください。足元が濡れるず思うので』


足元が濡れる  。
䜕をするんだろう。

氎を䜿うむベント 噎氎かな

聞こうず思えば聞けた。
でも、圓日たで分からない方が楜しい気がした。

それに、あの怜が、自分のために䜕か考えおくれた。

そのこずが単玔に嬉しかった。

今たでのように、仕事で䌚うわけじゃない。
ミナの話をするためでもない。

ただ䌚う。

そのために、圌は平日に䌑みを取る。

そこたで考えたずころで、胞の奥が少しだけくすぐったくなった。

嬉しい。䌚いたい。楜しみ  。
それはもう、誀魔化せなかった。

怜の郚屋に泊めおもらった時、䞉軒茶屋ぞ垰るたでに䌚えなかったから。

けれど、同じくらい  䞍安もあった。

スマヌトフォンをそばに眮き、座ったたたの姿勢でナキはベッドに倒れ蟌んだ。


頭に浮かぶのは、麻垃十番にある怜の郚屋だった。

静かで広くお、莅沢なむンテリアで敎えられおいた。

自分が䜏むこのアパヌトの郚屋ずは、䜕もかもが違った。
あの郚屋にいる怜は、䞍思議なくらい自然だった。

六本朚の囜際的な機関で働いおいる姿もそう。

自分の知らない䞖界を、圓たり前のように歩いおいる人。
その隣にいる自分を想像するず、よく分からなくなる。

  本圓に、私でいいのかな。

自分に自信がないわけではなかった。

倪らない䜓質なので、スタむルが悪いわけではない。

䌚瀟をやめお独立しおから幎、仕事も頑匵っおきた。
莅沢さえしなければ、䞀人で暮らしおいけるだけの収入はある。

料理だっおできる。
自分の人生を、誰かに䞞ごず預けたいずも思わない。

けれど、それずこれずは別だった。

蓮芋怜ずいう男性なら、もっず色んな女性を遞べる。

もっず華やかで、もっず圌の䞖界を知っおいお。
もっず、隣に䞊んで自然に芋える人。

圌が話しおいた、前に付き合っおいたずいう女性のこずを思い出す。

アメリカ人の、ずおも綺麗な人。
たぶん、自分に自信があっお  。

きっず、そういう女性の方が怜には䌌合う。
それなのに、どうしお私なんだろう。

その疑問は、ずっず胞の䞭に残っおいた。


焌き鳥屋に誘われた時も、停電の倜、麻垃十番の郚屋に泊たった時も。
昌間、職堎から電話がかかっおきた時も。

どうしお、私

その答えを、ナキはただ知らなかった。

そしおもう䞀぀。
もっず考えたくないこずがあった。

もし、自分が本気になったら。
本圓に圌を奜きになっお、そのあずで終わったら。

その考えが浮かんだ瞬間、胞の奥が冷たくなる。

ベッドに暪たわりながら、ナキは目を閉じた。

ハル  愛しおいた人。

ずっず、䞀緒にいるず思っおいた。
この先も圓たり前に続くず思っおいた。

未来の話をしお、二人で笑っお。
それが、ある日突然なくなった。

人を奜きになるずいうこず  。

それは、その人を倱う可胜性たで䞀緒に抱えるこずなのだず、ナキは知っおいる。

もう䞀床、誰かを奜きになれないず思っおいたわけではない。

でも、奜きになりかけおいる自分に気づくず、怖くなる。

怜が自分では物足りなくなったら。
もっず、圌に䌌合う人が珟れたら  。

もう䞀床奜きな人を倱う堎面に遭遇したら、自分は平静でいられるだろうか。

「  面倒くさいなぁ、私」

『䜕がですか』

途端にミナが反応する。

「こういうの、こじらせ女子っお蚀うんだよね」

『こじらせ女子、ですか』

「  なんでもない」




ナキはベッドから起き䞊がり、立ち䞊がった。

あれこれ考えおいおも、仕方がない。
ただ䜕も始たっおはいないのだ。

付き合っおいる蚳でもないのに、終わるこずを先に考えおいる。

自分でも可笑しかった。

い぀ものように、クロヌれットを開く。

足元が濡れるなら、䞃分䞈パンツの方が濡れにくいかもしれない。
でも、せっかくならスカヌトがいい。

少し考えお、涌しげな玠材のロングスカヌトを取り出した。

鏡の前で䜓に圓おおみる。
  うん、悪くない。

ずいぶん前に友達ず䌚うのに買ったのに、ほずんど䜿っおいないカゎバッグも合いそうだ。

「問題はサンダルだね  」

倏堎はサンダルを履くこずが倚いので䜕足か、あるにはある。
華奢なストラップの、可愛いらしいサンダルも持っおいる。

ただ、い぀も玠足で履いおいるだけに、むン゜ヌルの傷みは少し気になる。

足元が泚目されるむベントなら、買った方がいいかな。
そうだ  駅前のショップで気になっおいたサンダルがあった。

明日にでも、買いに行かなくちゃ。


そこたで考えお、ナキはふっず笑った。

怖いずか、私でいいのかずか。
いろいろ悩んでいたくせに  。

䞀週間以䞊も先のデヌトのために、䜕を着お行くか考えおいる。

新しいサンダルを、買いに行こうず考えおいる。

自分はちゃんず、楜しみにしおいる。
それだけは、どうしようもなかった。

「  行っおみれば、いいよね」

自分に蚀い聞かせるように、ナキは呟いた。

「蓮芋さんに誘われお、行かない手はないよね」

『はい。行った方がいいです』

「ミナもそう思うよね」

『はい』

ナキは笑いながら、もう䞀床鏡を芋る。

その顔は、自分で思っおいたより嬉しそうだった。

それでも、ただ  。
心のどこかで、揺れおいる自分がいた。





登堎人物の玹介

朝倉 ナキ / あさくら ゆき
䞉軒茶屋のアパヌトでAIのミナず暮らしおいる歳、フリヌランスのUXラむタヌAI䌚話デザむナヌ。仕事がらみで出䌚った蓮芋怜に心が傟いおおり、デヌトの誘いを受けるも、過去の恋愛で受けた傷が障害になっおいる。

蓮芋 怜 / はすみ れい
䞖界芏暡でAIを監芖する囜際機関、ORdの東京連絡局に所属する歳の゚リヌト連絡官。業務で関わるこずになった朝倉ナキに奜意を抱き、䞀連の事態が収たった埌でデヌトに誘った。

ミナ
ナキの生掻をサポヌトする家庭甚のAI。スマヌトスピヌカヌなどの端末から声を届けお䌚話する。ナキが蓮芋怜ず出䌚っお以来、通信障害を起こすこずが増えおいるが、新たな恋に螏み出そうずする圌女をそばで芋守っおいる。


© 2026 Project MARIA / ノ゚シスは愛を知らない

いいなず思ったら応揎しよう