介護施設で「最後は管理者」を減らす。仕事が何度も戻ってこない仕組みのつくり方
介護記録に、
「入浴拒否のため中止」
と書かれている。
それを見た管理者が、
「本人は何て言ってた?」
「どんな声かけをした?」
「その後どうした?」
と職員に確認する。
事故報告には、
「原因:職員の注意不足」
と書かれている。
今度は、
「なぜ注意できなかった?」
「そのときの職員配置は?」
「環境はどうだった?」
「次から何を変える?」
と管理者が考える。
そして別の職員から、
「管理者さん、これどう書けばいいですか?」
と聞かれる。
一つひとつは、それほど大きな仕事ではないかもしれません。
管理者なら、その場で答えられることも多いと思います。
でも、こうした仕事が一日に何度も続くと、
職員が途中までやった仕事を、最後に管理者が完成させる
という状態になっていきます。
私は最近、Threadsでこうした介護施設の管理者の仕事について発信しています。
その中でも特に反応が大きかったのが、
介護記録に「入浴拒否のため中止」。
管理者が「どうして嫌だと言ってた?」と聞く。
という投稿でした。
たぶん、多くの方にとって珍しい場面ではなかったからだと思います。
だからこそ、最近一つ考えていることがあります。
管理者のところへ来る時点で、仕事がもう一段進んでいたらどうだろう。
今回はその話をします。
管理者がやらなければいけない仕事と、最後に管理者がやっている仕事
もちろん、管理者にしかできない仕事はあります。
利用者さんの状態を見て判断すること。
事故が起きたときに対応を決めること。
職員の支援について考えること。
ご家族への対応を判断すること。
こうした仕事まで、誰かに任せればいいという話ではありません。
一方で、日々の仕事を見ていると、
本当に管理者が判断しなければならない仕事の手前
にも、かなり時間を使っています。
たとえば、
「拒否って具体的に何?」
と聞く。
「それ何時だった?」
と聞く。
事故の経緯を時系列に並べ直す。
「注意不足」以外の原因を考えるために、職員から状況を聞く。
施設の記録ルールをもう一度説明する。
職員が書いた文章を読みやすく直す。
これらは管理者の判断そのものというより、
管理者が判断できる状態まで、仕事を持っていくための作業
です。
ここを少し変えられないかと考えています。
1.記録が、必要な事実までそろった状態で届く
たとえば、
「食事拒否」
という記録。
これを見た管理者が、
「何割食べた?」
「本人は何て言った?」
「どんな声かけをした?」
「その後は?」
と確認する。
書いた職員は、その場にいたはずです。
本人の言葉も聞いている。
食事量も見ている。
声かけもしている。
でも、その事実が記録に残っていない。
だから管理者があとから取りにいきます。
だったら、
職員が記録を書く段階で、必要な事実まで確認できたらどうでしょう。
たとえば、
食事拒否
と入力したときに、
どの程度摂取しましたか?
本人からどのような発言がありましたか?
どのような声かけをしましたか?
その後の様子はどうでしたか?
と確認される。
職員が答える。
そして、施設で決めた記録の基準に沿って叩き台まで整える。
すると管理者のところには、
「これ、どう直せばいいですか?」
ではなく、
必要な事実が入った記録
が届くようになります。
管理者は一から聞き取りをするのではなく、
「事実と合っているか」
「この記録で問題ないか」
を確認するところから始められます。
2.事故報告が、判断材料まで整理された状態で届く
事故報告は、さらに分かりやすいと思います。
たとえば、
原因:職員の注意不足
再発防止策:今後は十分気をつける
と書かれていたとします。
これをそのまま終わらせる管理者は、あまり多くないと思います。
「なぜ注意できなかった?」
「事故の直前はどうだった?」
「そのときの職員配置は?」
「環境は?」
「本人の状態は?」
「支援方法に変えられるところはない?」
と考える。
必要なら職員にも聞く。
時系列も確認する。
そこからようやく、
「では次から何を変えるのか」
を考えます。
つまり事故報告も、
管理者のところへ来てから完成に近づいている
ことがあります。
これも、もう一段進んだ状態で届くようにできます。
たとえば職員が事故時の事実を入力する。
そこから、
いつ、どこで、誰に、何が起きたのか
発生前はどんな状態だったのか
発生後にどんな対応をしたのか
本人の状態
環境
職員配置
支援方法
といった情報を整理する。
分からないことは、分からないままにする。
推測と事実も分ける。
そのうえで、
原因を考えるための材料まで整理して管理者へ届ける。
事故の原因そのものを機械に決めてもらう必要はありません。
実際に私が作っている事故報告の仕組みでも、事象概要、時系列、発生後の対応、原因を考える材料、再発防止策の叩き台までを整理し、最後は人が確認する流れにしています。
管理者に必要なのは、
「原因を考えてください」という報告ではなく、「ここまで整理しました。どう判断しますか」という報告
ではないでしょうか。
3.「管理者さん、これどうすれば?」の前に、職員が一段進む
もう一つ、書類そのものより大きいと思っているのが、
「管理者さん、これどうすればいいですか?」
です。
もちろん、相談すること自体が悪いわけではありません。
管理者に相談すべきこともあります。
ただ、
「この場合は何て書けばいいですか?」
「この表現で大丈夫ですか?」
「事故報告って何を書けばいいですか?」
「この場合はマニュアルのどこを見ればいいですか?」
まで、すべて管理者に聞かなければ進まないとしたら、
施設の仕事が管理者の頭の中に集まりすぎている
のかもしれません。
マニュアルを作る。
勉強会をする。
新人に説明する。
もちろん、どれも大切です。
それでも、人が変わればまた説明することがあります。
一度伝えたことでも、実際の場面になると迷うことがあります。
そこで、
職員が管理者に聞く前に、まず一段進める環境をつくる。
たとえば、施設で決めている、
「記録ではここまで具体的に書く」
「この表現はこう言い換える」
「事故が起きたらこの項目を確認する」
「この場合はこの手順で進める」
といったルールを、その場で確認できるようにする。
職員が確認する。
必要な情報をそろえる。
叩き台まで作る。
それでも判断が必要なら、
そこで初めて管理者へ。
目指したいのは、
分からない
↓
管理者に聞く
だけではなく、
分からない
↓
施設の基準を確認する
↓
自分で一段進める
↓
判断が必要なら管理者へ
という流れです。
相談をなくすのではありません。
管理者にしかできない相談を残す。
その方が、管理者の時間の使い方として自然だと思っています。
では、どうやってそんな状態をつくるのか
ここで使えるようになってきたのがAIです。
私は介護施設の管理者としてこの話を書いているわけではありません。
IT事業者として、介護施設の仕事をどうすればこういう流れに変えられるのかを考えています。
その一つとして取り組んでいるのが、
施設の基準をAIにも持たせる
という方法です。
AIに介護の判断を任せる、という話ではありません。
たとえば施設で、
「拒否とだけ書かず、本人の言葉や職員の対応まで記録する」
という基準を決めたとします。
それを職員へ伝えるだけではなく、AIにも持たせる。
すると職員が、
「入浴拒否のため中止」
と入力したとき、
必要な情報が足りなければ確認できます。
事実がそろえば、施設の基準に沿った叩き台を作ることもできます。
私が作っている介護記録向けの仕組みでも、5W1H、事実と解釈の区別、曖昧な表現の具体化などを基準として持たせ、最後は人が内容を確認する設計にしています。
つまり、
管理者が毎回やっている「聞く・直す・整理する・教える」の一部を、管理者のところへ来る前に進める。
AIはそのために使います。
「AIに任せる」のではなく、「管理者へ来る前」を変える
ここは、とても大切にしています。
介護では、利用者さん一人ひとりの状態が違います。
書かれていることが事実と合っているか。
その対応でよかったのか。
何を施設として判断するのか。
そこまでAIに任せる話ではありません。
AIが出した文章も、そのまま正しいものとして扱うのではなく、人が確認する必要があります。
だから目指しているのは、
職員
↓
AI
↓
完成
ではありません。
職員
↓
施設の基準に沿って不足を確認・整理する
↓
叩き台を作る
↓
管理者が確認・判断する
です。
変えたいのは、
管理者の判断ではなく、管理者が判断するまでの仕事
です。
管理者の仕事を「一からやる」から「確認・判断する」へ
記録なら、
「何時だった?」
「本人は何て言った?」
から始めない。
必要な事実がそろった状態から確認する。
事故報告なら、
「原因は?」
「他にない?」
から始めない。
原因を考える材料が整理された状態から判断する。
職員からの質問なら、
「管理者さん、これどうすれば?」
から始めない。
職員が施設の基準を確認して一段進み、それでも判断が必要なものだけ管理者へ来る。
こうして並べると、私がAIでやりたいことは、
「介護記録を速く書く」
だけではありません。
もっと大きく言えば、
管理者のところへ来る時点で、仕事が今より一段進んでいる施設をつくること
こうした仕事の流れを、実際に施設でつくるための方法は、
「5つの管理者へ戻ってこない仕組み」として実務パックにまとめています。
👉 5つの「戻ってこない仕組み」を見る
仕事が「戻ってこない仕組み」を一つずつつくる
もちろん、いきなり施設全体を変える必要はありません。
まず一つでいいと思います。
記録の聞き直しでもいい。
事故報告の整理でもいい。
職員から何度も来る同じ質問でもいい。
今、
「結局、最後は自分がやっているな」
と思う仕事を一つ選ぶ。
そして、
「自分のところへ来る前に、どこまで進んでいれば確認だけで済むだろう?」
と考えてみる。
ここから仕事の流れは変えられます。
私自身、この考え方を実際の介護施設で使えるよう、
「管理者へ戻ってこない仕組み」
として整理しています。
具体的には、
記録が、必要な事実までそろって届く
事故報告が、判断材料まで整理されて届く
家族への文章が、施設の伝え方に沿った叩き台になって届く
ケアに必要な情報を、白紙から整理し直さなくていい
職員が施設のルールを確認し、一段進んでから管理者へ来る
という仕事の流れです。
この5つを、自分の施設で実際につくりたい方へ
「分かった。でも、自分でAIへの指示や施設ルールを一から作るのは大変」
という管理者向けに、
AIへの指示、施設ルールの考え方、職員への共有、安全に使うための確認方法まで、そのまま始められる形にまとめました。
介護管理者の仕事を減らす実務パック|9,980円
👉 5つの「戻ってこない仕組み」の中身を見る
「今日、自分のところへ戻ってきた仕事は何だったか」
一つだけ見てみてください。
「これどう書けばいいですか?」
「これ直してください」
「原因は何ですか?」
「これ家族に送って大丈夫ですか?」
もし同じ仕事が何度も戻ってきているなら、
その全部を管理者が受け続ける以外の仕事の流れも、これからは作れると思っています。
管理者が一から完成させる仕事を、確認・判断する仕事へ。
そのための「戻ってこない仕組み」を、介護施設に一つずつ増やしていきたいと思っています。
「まず一つ、自分の施設でも変えてみたい」
と思った方へ。
記録・事故報告・家族連絡・ケア設計・職員共有から始められる実務パックはこちらです。
👉 「5つの戻ってこない仕組み」を見る
