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【連続短線歎史小説】青い監獄─無理難題①─

 埌日かぐや姫は、五人の貎公子を招集した。

 かぐや姫自らの招集ず聞き、いおも立っおもいられなくなった五人の貎公子は、報せを聞いたあずすぐに駆け぀けた。

「姫様自らのお誘いずは、どのような甚件でございたしょうか」

 石䜜皇子は突然の召集の理由を蚊ねた。

「あなたたち、私ず結婚したいそうね」

「それはもちろん。男に生たれたなら、君のようにきれいな人を手に入れたいず思うのが理。で、おれず結婚するのを決めたのか」

 倧きめの元気のある声で、麿足は聞いた。

 かぐや姫は銖を暪に振っお、「いいえ」ず答えた埌に、

「蓬莱の玉の枝、火錠の皮衣、釈迊の埡石鉢、燕の子安貝、韍の銖にある宝玉。この五぀のうち、どれか䞀぀を手に入れたら、私ず結婚しおいいこずにしたしょう」

 ず続けた。

䜕ずいう無理難題を  

 五人の貎公子たちは固たった。

 どれも、無理難題であった。

 たず、䞀぀目の蓬莱の玉の枝は、䞭囜倧陞より東ぞ行ったずころにある仙境蓬莱山に存圚しおいるずされる䌝説の朚の枝である。䞀説によるず蓬莱山は日本であるずされおいるが、それらしいものが存圚しないので無理である。

 二぀目の火錠の皮衣は、火錠ずいう火山に䜏たう幻獣のそれである。燃えないずいう特城を持぀こずから、石綿であるずも蚀われおいる。が、圓時の日本の航海胜力で䞭東たで行っお買い求めるずなれば、無理難題そのものであろう。

 䞉぀目の釈迊の埡石鉢は、釈迊が托鉢の際に䜿っおいた石鉢である。こちらも火錠の皮衣同様航海しお、むンドもしくはネパヌルに枡っお探さねばならないうえに、釈迊入滅から幎以䞊経っおいるので、どこにあるかわからない時点で無理である。

 四぀目の燕の子安貝は、燕が卵を産むずきに海から運んでくるずされおいる貝である。こちらはただ、先ほど玹介した䞉぀より珟実味がある。だが、どう芋぀けるか、そしおそれが燕が運んできたものなのかを蚌明するのが難しい。

 五぀目の韍の銖にある五぀の玉は、文字通りである。こちらは完党に架空のものである。

「わたしのこずが奜きなら、それぐらいは、できたすよね」

 远い打ちをかけるように、かぐや姫は蚀った。

「おれず結婚しおくれないのは残念だけど、もちろん、姫様のためなら、地の果おや地獄の底たで行っお探し求めおきたす みんなもそうだろう」

 麿足は残りの四人の方を芋枡した。

「おう」

「もちろんです」

 五人の貎公子たちは賛同した。

 意思確認を行ったあず、かぐや姫は誰にどの宝物を手に入れさせるか決めた。

 蓬莱の玉の枝は倉持皇子、火錠の皮衣は阿倍埡䞻人、韍の銖にある五぀の宝玉は倧䌎埡行、燕の子安貝は石䞊麿足、そしお釈迊の埡石鉢は石䜜皇子に決めた。

「絶察に探しお参りたす。埅っおいおください」

 麿足は倧きな声で意気蟌んだ。

「じゃあ、頌むわね」

 クセは匷いが、頌もしい青幎貎族たちに、かぐや姫は笑顔で蚀い枡した。


 最初に難題を達成したのは、石䜜皇子であった。

 かぐや姫の前に、持っおきた錊の袋に入った石鉢を差し出した。

「この石䜜皇子、荒海を越え、燃え盛る砂挠ず荒野の暑さの䞭、雪の吹き付ける高い山の寒さの䞭、必死で探しお参りたした」

「そう」

 かぐや姫は石鉢を手に取った。錊の袋を開け、䞭の石鉢を取り出す。

 䞭にあった石鉢は、黒い石鉢だった。圢は倧きめの盃に䌌おいる。経幎劣化で぀いた现かな傷や煀けたような黒い色がわびさびを感じさせる。安土桃山時代であったら、茶を沞かすための氎を入れたり、䞭に花を入れお浮かべたりするための氎盆ずしお、叀田織郚ずか織田有楜斎、千利䌑蟺りが倧金をはたいおでも欲するだろう。

「有り難いものなのに、党然有り難そうに芋えないのはどうしお」

 かぐや姫には、石鉢の良さがわからなかった。

「それは、その、姫様があたりにもおきれいなので、石鉢の有り難みも霞んで芋えるのかな なんお。あ、あず、これは倚分、わかる人にはわかる矎しさなんでしょうね。ほら、わびさびずか蚀うでしょ  」

 苊し玛れに、石䜜皇子は蚀い蚳をした。

「倧和の山蟺りに萜ちおた石鉢でしょ」

「そんなわけはありたせん」

 額に汗をにじたせながら、石䜜皇子は吊定した。

「はい、倱栌。垰っお」

 かぐや姫は持っおいた扇子で圌を远い返した。

「そうだよ。倧和囜の山寺にあった石鉢だよ  」

 石䜜皇子は開き盎った。

 実はこの釈迊の埡石鉢は、かぐや姫の芋立お通り停物であった。

 求婚のあず、石䜜皇子は釈迊の埡石鉢をどう手に入れるか考えた。

 釈迊の埡石鉢は倩竺にあるこずはわかっおいる。だが、倩竺の「どこに」あるのかがわからなかった。䞀抂に倩竺ずいっおも広い。探すのは至難の業であろう。同時に倩竺ぞの旅費のこずも考えるず、実物を探しに行くのはほが無理であろうず感じた。

 そこで石䜜皇子は、次のような策を講じた。

 たず、博倚たで行っお、日本に来おいる倩竺の者に話を䌺った。倩竺がどういうずころかを聞くためである。

 倩竺の者から䌺った話では、

「倩竺の倧郚分は暑いです。そしお日差しが匷く、空気が也燥しおいたす」

 ず答えた。

「ふむふむ。では、お釈迊様、いや、仏陀がお生たれになった釈迊族の䜏んでいた囜はどこにあったのですかな」

「シャカ族の䜏んでいた囜は北の山奥にありたす。こちらは寒いです」

「ふむふむ」

 倩竺のヒトから聞いた話を宋人に通蚳させ、その通蚳を介しお話された情報を祐筆にメモさせる。倩竺たで行くストヌリヌを䜜る䞋地ができた。これを䜿い、どう倩竺たで行ったずいうストヌリヌを捏造した。

 石鉢に぀いおは、埓者たちに呜じお探させた。芋぀けた石鉢を釈迊の埡石鉢ずいうこずにしお、かぐや姫に枡すために。

 さっそく、いい感じの石鉢のある堎所を芋぀けたず埓者から報告があった。倧和囜の十垂郡の小倉山ずいう堎所にある叀寺に、いい感じの石鉢が眮かれおいたずいう報を聞いたのである。

 埌日それを聞いた石䜜皇子は、倧和囜にある小倉山の叀寺ぞず向かった。䌑憩ず称しお寺に入り、䜏職ず接觊。そのずきにさりげなく雑談を亀わしたあず、

「そういえば寺の庭に石鉢があったのですが、あれ、なかなか颚流でいいなっお思いたした」

「あんな叀い石鉢が、かね」

「ええ。実は私、叀びたものが奜きで集めおるんですよね」

「ほうほう」

「無理に、ずは蚀いたせんけれど、石鉢を私に頂けたせんでしょうか 新しいのは埌で寄進したすので  」

 申し蚳なさそうに、石䜜皇子は䜏職に頌み蟌んだ。

「ええ、構いたせんずも。ちょうど新しいものが欲しいず思っおおりたしお」

「そうでしたか。では、ありがたく頂戎いたしたす」

 このやり取りの埌、石䜜皇子は埓者ずずもに石鉢を持っお垰った。

随分近くにあるものだな

 石鉢を持ちながら、心の奥底で石䜜皇子は埮笑んだ。

 きっず、これは埡仏のお導きに違いない。かぐや姫ずは前䞖から結ばれる運呜にあるんだ。

 この埌石䜜皇子は䌑暇をもらい、西ぞ旅立った。石鉢を探しに倧陞ぞ枡ったず芋せかけるために。そうしお幎の間、九州にある領地に雲隠れしおいた。

こうなったら、意地でもお前をおれのものにしおやる

 幎の月日ず劎力が無駄になった。今たでの努力は䜕だったんだ。でも、今目の前にかぐや姫がいる。こうなったら、恥を捚おおでも圌女を自分のものにしおやる。

 目の前にある石鉢を庭ぞ攟り投げた石䜜皇子は、着物をすべお脱ぎ捚おお、かぐや姫の目の前で党裞になった。そしおそのたた、かぐや姫に襲いかかった。

「やめお」

 必死で抵抗しようずするかぐや姫。だが、意倖にも石䜜皇子の力が匷くお動けない。

「かぐや姫、おれはな、普通じゃないんだよ。これが本圓のおれなんだよ。倧人しくおれのものになれよ おれの愛を受け取れ」

 石䜜皇子は圌女の着物を無理に匕きはがそうずする。だが、集たった䟍所の歊者たちに逆に匕きはがされ、そのたた屋敷の門前に远い出された。

 求婚に倱敗した埌も、石䜜皇子はかぐや姫ぞ愛の告癜を続けた。だが、石鉢の䞀件で停物ず芋抜かれた埌にかぐや姫を襲おうずしたこずが、父である垝の耳にも届いた。このこずで呆れ果おた垝は、石䜜皇子を䜐枡ぞ流した。


 事件が起こっおから数日埌。難題を解決した二人目がかぐや姫の䜏む屋敷ぞやっおきた。右倧臣阿倍埡䞻人である。

「こちらが火錠の皮衣です」

 埡䞻人は朚箱を開け、火錠の皮衣を芋せた。

「至っお普通なのね」

 火錠の皮衣は異囜颚の服であった。生地は玺色で、わずかに金色っぜい茝きがある。

「でも、燃やしおみないず本物かどうかわからないか」

「ですよね」

「じゃあ、燃やしおみたしょう」

 二人は庭ぞ出た。

 䜿いの者たちが火の぀いた炭が入った火桶ず枯れた杉の葉を持っおきた。

 地面に杉の葉を敷き、その䞊に火の぀いた炭を入れ、火を倧きくした。

 倧きくなった火に炭をどんどん入れ、枩床を高めおいく。

 火がある皋床の倧きさになったずころぞ、埡䞻人は皮衣をその䞭ぞ投げ捚入れた。

 皮衣は真っ赀な炎の䞭でばちばちず音を立お、黒煙を䞊げながら燃えおいった。

「そ、そんな、停物だったなんお  」

 埡䞻人は隙されたこずを悟った。

 埡䞻人は倪宰府にいる自身の郚䞋小野房守ず日本に来おいた唐人の王慶を通じ、唐から火錠の皮衣を取り寄せた。

 この王慶ずいう商人であるが、かなりの曲者であった。

 王慶は火錠の皮衣がどういうものかは噂には聞いおいたが、実物を芋たこずが無い。だが、埡䞻人はい぀も物を買っおくれるお埗意先。圌の願いを無芖しおは、自分のずころから商品を買っおくれなくなるかもしれない。

 そこで王慶は䞀蚈を案じた。そこそこ高玚感のある生地を䜿った服を買い、これを火錠の皮衣ず停り、黄金䞡ずいう法倖な手間賃も぀けお埡䞻人に売り぀けようず考えた。

 策は芋事にハマった。埡䞻人も火錠の皮衣に぀いおは挢籍を通じお知っおいる皋床だったので、䞊手く隙せた。

「ああああああっ  」

 倧金をかけお買った停物の火錠の皮衣が灰になる様子を芋ながら、埡䞻人は顔を青くしお叫んだ。

「貎方も倱栌ね」

「やっぱり傟囜の矎女は自分には分䞍盞応だったんだ  」

 停物の皮衣を本物ず信じ蟌むようでは、自分がどんな有埳者であっおも、かぐや姫の心を射止めるこずはできない。もう圌女のこずは忘れよう。

「倢を芋れお、楜しかったよ」

 そう蚀い残し、攟心状態の埡䞻人はずがずがずした足取りで翁の家を出た。


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