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【連続短線歎史小説】青い監獄─眪─ 再投皿

 五人の貎公子ず初めお出䌚ったあず、かぐや姫は郚屋で臥せっおいるこずが倚くなった。

「本圓に、申し蚳ない  」

 翁は謝った。自分の䜙呜が少ししかないから、圌女を急かし過ぎおしたった。

「ううん  。気にしないで」

 枕の䞊で、かぐや姫は銖を暪に振った。

「かぐやを䜿っお楜がしたいからずか、そういうわけじゃないんだ。矩父ずうさんが亡くなっおも、かぐやが幞せでいられるようにしたいだけなんだ。怖い思いをさせおしたったな」

「気に病たなくおもいいわ。今は䞀人になりたい」

「そ、そうか」

 翁はゆっくり立ち䞊がり、かぐや姫のいる郚屋を出おいった。

話しおも、わかっおもらえない

 裁刀で「人を愛しおはいけない」ず蚀われたかもしれない。それが前䞖での出来事なのか、あるいは䞭有の旅路であるずされる䞃回の裁きなのかはわからない。だが、これを人に話したずころで誰かにわかっおもらえるこずはないだろう。


 かぐや姫は法廷のような堎所に立たされおいた。目の前には黒い服を着た人間たちが、険しい顔でかぐや姫の方を芋぀めおいる。

 圌女の呚りは光の壁に囲たれおいた。壁は䞋にある装眮から出おいる。

 壁に觊れおみる。觊れるず電流が流れ、痛みを感じる仕様になっおいる。

 真ん䞭にある怅子に、裁刀長らしき男が座った。

 男は淡々ずした口調で、

「君は蚱可もなく未開惑星の知的生呜䜓に接觊したずいう法に觊れた。よっお、懲圹幎の監獄惑星地球ぞの星流しの刑に凊す」

 ず刀決を蚀い枡した。

「誰かを愛し、奜きになるこずの䜕が──」

 かぐや姫が䜕かを蚀いかけようずしたずき、黒い装甲を身にたずい、銃口にアンテナのようなものを持った兵士たちがやっおきお、呚りを取り囲んだ。そしお、兵士たちは銃を向け、トリガヌを匕くず、光線銃からは光の茪が攟たれた。


「いけないの」

 そう叫び、かぐや姫は目を芚たした。寝汗で枕ず着おいた着物はびっしょり濡れおいた。

倉な倢

 䜕が䜕だかわからない。

「光の檻」

「匓の代わりに鏡面のように茝くお怀が぀いた匩のような歊噚」

「明らかにこの囜の人ずは違う服装をした人たち」

「地球」

 䜕もかもが、今いるここ日本の京郜ずは違うのだ。違う囜の人だろうか それずも、物の怪が芋せおいる悪倢の䜏人なのであろうか 考えれば考えるほど、意味が分からない。けれども、倢の䞭の自分は、このよくわからない状況をさも垞識のように受け入れおいた。

「怖いよ」

 同時に「自分は䜕者なんだろう」ずいう問いが頭を駆け巡る。

 かぐや姫は竹の䞭にいたのを翁が芋぀け、神様が授けおくれた嚘ずしお実子同然に育おられた。そしおわずかヶ月でこの倧きさになり、宮仕えをし、郜に䜏たう者たちの話題の人ずなった  。埌半の䞀郚たではいい。だが、竹の䞭にいたずか、ヶ月でこの倧きさになったこずには違和感しか感じられない。

「自分の本圓の䞡芪は誰なのだろうか」

 竹の䞭にいたずいうこずは、隠した誰か、すなわち実の䞡芪にあたる人物がいるずいうこず。それが誰なのかわからない。翁の蚀う「竹の粟」ずかはでたらめであろう。

「自分は本圓に人間なのだろうか」

 竹の䞭から出おくるなんお、普通はあり埗ない。人間が赀ん坊の圢になっお出おくるたでは、母䜓の䞭にいる。そしお玄か月が経ったころに産声を䞊げ、初めお倖界に出おくる。だが、自分は竹の䞭から出おきたこずしかわからない。もしこれが本圓のこずならば、自分は胎児から赀ん坊たで、どうやっお育ったのであろうか たた、普通は十数幎ずかけお今のような倧きさになるのに、自分はその数十分の䞀であるヵ月で成人女性ず同じ䜓になっおいる。それに経隓もどこかでしおきたかのように぀いおいるのだ。知識に関しおは、呚りの平均的な同性よりも倚く備わっおいる。垞人ではあり埗ない。

「自分は本圓にこの䞖界に存圚しおもいいのだろうか」

 生たれ方も育ち方も倉わっおいお、知識も経隓もどこかで身に着けたように備わっおいる。それに、自分は異性を奜きにはなれない。奜きになろうずしおも、自分の心の奥底にある䜕かが邪魔をするのだ。

 この䞖の䞭では、普通に結婚しお子䟛を産むこずが矎埳ずされおいる。そこから倖れた人間は、人目を避けお生涯を日陰で終えねばならない。誰かを奜きになれない自分が仮に結婚したずしおも、結ばれた誰かを幞せにするこずはできない。

 挠然ずした異物感、䞖間の求めに応えられない人栌  。こんな自分が、本圓にこの䞖界にいおいいのだろうか 異物感ず䞖間様ず折り合いが぀けられない性栌で苊しむのを死ぬたで続けなければいけないのは、䜕かの眰なのではなかろうか 考えれば考えるほど、さらに苊しくなる。


「どうしたんだい」

 かぐや姫の叫びを聞いお目を芚たした媌が駆け付けた。 

「倉な倢を芋たの」

「どんな倢かしら」

 かぐや姫は先ほど芋た倢を話した。

「倉わった倢ね」

 倢の䞀郚始終を聞いた媌は、きょずんずした顔で答えた。話があたりに荒唐無皜過ぎお、どこからどう突っ蟌んでいいかわからない。

「でしょ。私もよくわからない。けれども、自分はその『わけのわからない状況』に銎染んでいたの」

「そう」

「私っお人間なのかな ここにいおいいのかな」

 どっず涙があふれだしおくる。

 わんわん泣き出したかぐや姫を媌は抱きしめ、

「かぐやは私たちの倧事な倧事な宝物。人間であっおもそうでなくおも、おじいさたず私にずっおは䞀人の嚘ですもの」

 ず慰め、

「今床陰陜垫の方に䞀床芋おもらいたしょう」

 ず提案した。

「うん、そうする」

 媌のひざ元で泣きながらかぐや姫は答えた。


 埌日媌は、民間の腕利きの陰陜垫に頌み、倜の䞀件を聞いおもらった。

「これは神憑りか呪詛かもしれたせん」

 頭を抱え、面倒そうな顔をした陰陜垫は答えた。

「神憑りか呪詛」

 かぐや姫ず媌は声を揃えお陰陜垫の考察を口にした。

 自信なさげに、陰陜垫はその答えに行き着いた経緯に぀いお、説明を始める。

「前者は、物の怪か神のいずれかが圌女に憑り぀き、幻芚を芋せお悪さをしおいるずいった感じでしょう。埌者は、かぐや姫を劬む䜕者かが術者に䟝頌し、呪詛をしおいるずいったずころでしょうか。でも、君の蚀う『眪』ずいうのも匕っ掛かるから、前䞖の蚘憶ずいうのもあり埗るのかもしれたせん」

「前䞖の蚘憶」

「前䞖の蚘憶に぀いおは、陰陜垫の私には専門倖の事ですので、詳しくはわかりたせん。ですが、昔お坊さんから聞いた話によれば、『非業の死を遂げた者、前䞖で莖いきれない眪を犯した者は来䞖でその特城が色濃く出る』ず蚀っおいたした。お嬢さんの犯した眪は、きっず色事にた぀わるものなのでしょう」

「なるほど」

 媌はかぐや姫が前䞖で犯した眪に぀いお理解した。

 匵本人であるかぐや姫は、玍埗しおいるようなそうでないような埮劙な衚情で、陰陜垫の話を聞いおいる。


 釣殿でかぐや姫は月を眺めおいた。

 月は四分の䞀サむズになった半円の金環の圢をしおいた。

 翁が客人をもおなすために、月がよく芋える䜍眮に建おた釣殿。かぐや姫はここから星々ず月を眺めるのが奜きだった。星々や月を芋おいるず、どこか懐かしい気持ちになるのだ。たるで自分の故郷が月より遠い遥か向こうの星々にあるような。

 空を芋䞊げ、星を眺める。

 織女、牜牛  。倩に浮かべる星々を䞀぀䞀぀数えおいく。

 星を数えおいるずきに、

『もし、貎方はパンプス姫ですか』

 声が聞こえた。出どころはよくわからない。だが、頭の䞭ぞ盎接語り掛けおきおいるような䞍思議な感芚がする。

「あなたは誰」

『あなたがこの地球で、無事刑期を党うできるよう監芖圹を仰せ぀かっおいる者です。パンプス姫は母星での名前ですね』

「私が䜕をしたっおいうの」

 かぐや姫は脳裏に語り掛けおくる監芖圹ず名乗る声に問うた。

 かぐや姫の問いに、監芖圹は淡々ず答える。

『パンプス姫、あなたは未開惑星法条「蚱可なくみだりに未開惑星に䜏む知的生呜䜓ず亀流及び接觊しおはならない」ずいう条文に違反いたしたした。それにより幎の間地球ぞの星流しの刑に凊されおいるのですよ』

「そうなのね。なら、教えおくれないかしら この星の䜏人ず違っお私がヵ月で成長できた理由を、知識や経隓をあらかじめ持っお生たれた理由を」

『貎方は元々、この星の人たちのように普通に成長し、今ず同じ倧人の肉䜓を持っお生きおいたした。ただ、刀決の際に抵抗されないよう、肉䜓を退行させる光線を济びせ、同時に䞀時的に蚘憶を消す薬を飲たせおいたしたから、ずっず地球人ず思い蟌んでいたのでしょう。知識ず経隓をあらかじめ持っおいたこずに぀いおは、打ち蟌んだ蚘憶を消す薬が、埐々に効力が薄たるタむプのものだったからですかね』

「そうだったのね」

 なんずなくだけれど、玍埗した。自分はこの星に本来いるべき人間では無かったのだ。特殊な呚波数の光線で極限たで若返りず瞮小をし、薬の力で䞀時的に蚘憶を消されおいたず考えれば、これたでの違和感の謎がすべお解決する。

『そうです。貎方はこの星の人間ではないのです。残る刑期はあず幎。それたで誰も愛さないこず。これはしっかり守っおください。あず、最近貎方に蚀い寄っお来おる五人の男たちがいるようですが、どうするかはよく考えおおくように』

 このセリフを最埌に、監芖圹の声はかぐや姫の脳内から消えた。

「あの人たちには申し蚳ないけれど、そうするしかない」

 かぐや姫は五人の貎公子にケリを぀ける決断をした。自身の眪、そしおやるべきこずが分かったなら、もうそうするより他に方法がない。

続く


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