成瀬講義録 “Style—Toward Clarity and Grace”(26)英語の歴史:「超洗練文体」嗜好の過剰な高まり
(↑のつづき)
By the middle of the seventeenth century, this impulse toward “over-fine” prose had infected scholarly writing. Shortly after the Royal Society was established in 1660, Thomas Spratt, one of its historians, complained that scientific writing suffered from a “vicious abundance of phrase, [a] trick of metaphors, [a] volubility of tongue which makes so great a noise in the world.”
17世紀中頃になると、この「超洗練」文体に対する嗜好は、学問的な著作にまで広がっていった。
イギリスでは1660年にロンドン王立協会が創設されたが、そのすぐ後に『王立協会の歴史』を書いた歴史学者Thomas Sprattは、次のように不平を述べている。
「次々と発せられる下らない言い回し、ペテンのような比喩、ぺらぺらとよく舌のまわる調子のよさ――これらは要するに天下に騒音を撒き散らしているだけのことである」。
Better to reject all the amplification, digressions, and swellings of style: to return back to the primitive purity, and shortness, when men deliver’d so many things, almost in an equal number of words … [to prefer] the language of Artizans, Countrymen, and Merchants, before that, of Wits, or Scholars.
-- From The History of the Royal Society
文体の誇張や脱線や膨張を排するという決意を常にもち、多くの事柄について語る際もほとんど同じ語数で、素朴に簡潔な言い方をする。(略)才人や学者の言い方ではなく、職人や田舎の人や商人の言い方を優先する。
(『王立協会史』より)
この王立協会とThomas Sprattという人物について少しご説明しましょう。
いつもいうように翻訳をするということは、それを書いた人物の「分身」になることです。なので、わたしたちはここではWilliamsさんの分身にならなければなりません。
とすると、この博学博識かつ意地悪な学者さんが知っていることについては、わたしたちも出来る限り知識を仕入れなければなりませんね。
では、具体的にはどうすのか。

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昔は――といってもほんの10年ほど前まですが――たいへんでした。なにしろインターネットなどというものは存在しなかったので、「王立協会」「Thomas Spratt」を調べるにはまずは百科辞典にお世話になり、それから図書館、それもきわめて大きな図書館、たとえば広尾にある東京都立図書館などにいって文献を漁るしかなかったんです。わたしもかなり通いつめました。このごろは足が遠のいていてちょっと反省気味です。
しかしいまは、なにしろインターネットがあります。それから大型書店の品揃えも圧倒的によくなりました(ジュンク堂のおかげが大きい)。ですから、少なくともネット検索だけは絶対に忘れないようにしてください。
たとえば、王立協会は「ウィキペディア」でかなり詳しい情報が得られます。ニュートンが会員だったなんてこともわかりますね。
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それからスプラットだって、たとえばベーコン主義者だったということがわかるはずです。
このベーコン主義者だったという情報は、この文章をちゃんと読むうえでは本当に大事なバックグランド情報なんです。なぜかというとベーコンの文体に対する考え方というのは……というふうに、知識の幅がどんどん広がっていきます。
翻訳者はそうした知識に幅を身につけていかなければなりません。なぜかというと、たとえばこのテキストでいえば、著者であるWilliamsさんはそうしたことを知っているわけですから、翻訳者だって知らないわけにはいかない。そういうことです。
(つづきは↓)
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