【🎨展覧会レポ】北海道立旭川美術館「魂の風景 山口正城と難波田龍起」「道内公募展と<道北の美術>コレクション」
【#322、約4,400文字、写真約25枚】
初めて北海道立旭川美術館に行き「魂の風景 山口正城と難波田龍起」「道内公募展と<道北の美術>コレクション」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
※ 会期はともに終了しています。
▼ 同日に訪問した美術館の感想
▶︎ 結論
アートに興味が薄い旅行者は、訪問を見送っていいと思いました。それは主に、旭川美術館は、オープンして40年以上たつ小ぶりな美術館であるにもかかわらず、アートを広める取り組みが十分に見えなかったためです。中長期に客数を増やす工夫をしないと、危機的な状況だと感じました。なお、旭川に所縁があるアーティスト、山口正城と難波田龍起の作品を見ることができて良かったです。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★☆☆☆☆
展覧会名:①魂の風景 山口正城と難波田龍起、②道内公募展と「道北の美術」コレクション
場所:北海道立旭川美術館
会期:①②2025.06.28(土) - 2025.08.24(日)
休館日:年末年始
開館時間:9:30 -17:00
住所:北海道旭川市常磐公園4046−1
アクセス:旭川駅から徒歩約20分
入場料(一般):①510円、②260円
事前予約:ー
所要時間:約1時間
撮影:展示室内はすべて不可
巡回:ー
URL:①こちら、②こちら
▶︎ アクセス

北海道立旭川美術館(以下、旭川美術館)へは、最寄りのバス停「4条4丁目」から徒歩約5分。旭川駅からは、徒歩で約20分です。
美術館は常磐公園の中に位置しています。公園の中には、美術館の他に、大きな池や、テニスコート、プール、図書館なども同居しています。




行幸があると石碑を建てがち



彼の作品は神奈川県立近代美術館にもあるそう




ザッキンの作品はいろんな美術館で見ます
なお、旭川美術館の近くのバス停「トーヨーホテル」から、旭川空港行きのバスが出ています。1時間に1本なので、お帰りの際は時間に注意!


▶︎ 旭川美術館とは?

旭川美術館は、1982年にオープン。特色として、木の造形作品の収集(砂澤ビッキの作品など)があるそうです。建物の設計は、北海道を代表する田上義也によります。

フロアは、少し広めの第1展示室、その隣の小さい第2展示室のみ。2階はありません。当日の合同料金は620円と安価でした。開館からすでに40年以上たつため、内装はシャビーな印象を受けました。アートに興味がない旅行者の場合、訪問の優先順位は下げた方がいいかもしれません。



▶︎ 「魂の風景 山口正城と難波田龍起」感想

旭川美術館の展示室内では、写真撮影はできるものの、それをSNSに掲載できません。

山口正城(1903~1959)と難波田龍起(1905~1997)は、いずれも旭川に生まれ、戦後日本で抽象を手がけて独自の表現を追求した画家です。工業デザイナーでもあった山口は、製図に用いる烏口や紙製のヘラを使って、シャープな線描や絵の具のにじみを生かした絵画を生み、自由美術家協会展などで発表しました。(略)難波田は、作風を変化させながらも一貫して自己の内面と向き合い、詩情豊かな抽象表現を切り拓いた画家です。
山口正城、難波田龍起はともに旭川生まれ。お互いの生まれは2年違い。今年で生誕約120年にあたります。全体の展示作品数は76。私は、お2人とも存じ上げませんでした。
✔️ 山口正城
山口正城の初期の作品は、フランク・ステラのような線だけの作品で、かなり抽象度の高かったです。その後、ヘラを使ったシミのようなものも画面に現れるようになります。
山口曰く「わかりにくいといわれる純粋抽象作品への親しみを増すきづなともなれば」として作成した「鬼」シリーズは、山口歴作品のような格好良さを何となく感じるものの、「どこをどう親しめばええんや…」と思える作風でした。
▼ 「鬼」シリーズ
【#山口正城と難波田龍起展】
— 北海道立旭川美術館 (@Asahikawa_Art) July 3, 2025
2025年7月3日 曇 29℃
本日も大変蒸し暑いですね💦
画像は、#山口正城 の《鬼の変心》です。
監視員さんOさんの推しの1作品を選んでもらいました。
「かっこいい!」とのこと。#旭川美術館 の展示室はひんやりとしています😄
ぜひご来館ください。 pic.twitter.com/mjfyXF1EsU
むしろ、その後に登場する、子ども向けの「紙の工作シリーズ」の方が、可愛くてほのぼのしており、親しみをもちました。
1950年代、このような抽象画は、どのくらい評価されたのでしょうか。現代アートには、作者のメッセージや問いがあります。翻って、当時の抽象画化たちにも、何か深い考えがあったのでしょうか。陶冶した上で、自分の作品の推しポイントを論理的に説明できたのかな?と気になりました。
✔️ 難波田龍起
難波田龍起の作風は、山口正城と大きく異なっていました。「どちらの作品を部屋に置きたい?」と聞かれたら、私は難波田の方かな、と思いました。
難波田の作品は、色が多いため、見ていると明るい気持ちになります。パウル・クレーとピカソを足して2で割った印象でした。そして、途中からポロックの影響も見えてきます。
【ギャラリーツアー】
— 北海道立旭川美術館 (@Asahikawa_Art) July 15, 2025
7/25(金)14時より #山口正城と難波田龍起 展を紹介するギャラリーツアーを開催します! 担当学芸員が主な出品作品について解説し展覧会の見どころを30分で分かりやすく紹介します。
先着20名様まで、申込不要です。皆様のお越しをお待ちしています。#旭川美術館 pic.twitter.com/UV6azgtCY6
その後、モノクロの版画を挟み、最後は、淡い色を使った不思議な抽象画に落ち着きます。柔らかい赤や緑、青など、東山魁夷のような淡い色が多かったです。そこからは、北海道の自然のイメージが伝わってきました。《不思議な国》シリーズが、比較的気に入りました。

2人の作品を見て、あまりピンとくるものはなかったものの、旭川出身の抽象画家を知る機会をもてて良かったです。なお、難波田の展覧会は、東京オペラシティ アートギャラリーでも開催していました(2025.07.11〜 10.02)。私が知らないだけで、人口に膾炙した作家だったようです。
▶︎ 「道内公募展と<道北の美術>コレクション」感想

明治末期から大正にかけて、北海道では主要都市を中心に小規模の美術団体が組織され、各々が勉強会や展覧会を開催していました。(略)2025年、純生美術会と新ロマン派美術協会はともに80回展を数えます。また、道展や全道展も節目の年を迎えることから、道内と旭川の公募展に関わった作家の作品を、当館の「道北の美術」コレクションから紹介します。
コレクション展の展示空間は1つ。第1展示室の1/3くらいの広さで、作品数は、22と小ぶりです。展示室内には、北海道生まれや、北海道で生活をしていた人の作品が並びます。
部屋の中央に展示されていた一ノ戸ヨシノリ《朝の食卓》は、オラファー・エリアソンのように鏡を使った作品で、若い人にウケそうでした。
北海道=寒い冬。作品からは「冷たい」「保守的」という印象を受けました。この感覚は、ストックホルム近代美術館でも感じました。寒い地方の作品では、共通の性格なのでしょうか。
この展示に並んでいる作品の多くは「⚫︎⚫︎協会」などに所属しているようでした。現代でも、画家は特定のギャラリーと提携していることが多いです(蜷川実花は小山登美夫ギャラリーなど)。
そこからは、体制的な印象を受けますが、そうしないと画家としての活動ができないのでしょうか(海外も同様の構造があるのかな)。

コレクション展の中では、佐藤道雄《夏の丘》が気に入りました。モネのように、絵の具の盛り上がりがあるマチエールの作品です。彼の作品には、実物を見ないと伝わらない良さがあると感じました。
▶︎ これでいいのか、旭川美術館
当時の展覧会は、撮影はOK、SNS投稿は禁止でした。同日に訪問した、中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館も同じでした(私は年間80〜100の展覧会に行きますが、この運用は少数派です)。
撮影に関しては、著作権法の複製権。SNS投稿に関しては、公衆送信権(送信可能化権)が該当します。複製権については認めるものの、送信可能化権は認めないという決まりを各著作権者と結んでいるのでしょうか?権利関係が面倒なので、一緒くたに禁止しているのでしょうか?
看視員は、作品を撮っている人を注意する必要がないから運営はスムーズになりそうです。それがSNSに掲載されても後の祭り。「やるべきことはやった、仕方がなかった」と主張できます。
東京オペラシティ アートギャラリーで実施された「難波田龍起展」は作品の撮影が可能でした。この差は何でしょうか?(noteで検索すると、会場内の写真が多く見られます)
旭川美術館はアクセスも悪いし、規模も小さい。観覧者は、1日平均203名(2023年)と少ないです。Twitter(X)の運用は、2023年11月からと遅め。開館から40年以上が経過し、今後も魅力的な施策を行わないと、児童数が減少し続ける旭川美術館に未来はありません。

Xにおいては「返信等は行いませんのでご了承ください。また、X上でのご質問等はご遠慮願います」と記載があり、来館者とコミュニケーションを拒絶しているように読めるネガティブな書きぶりです。

窓口を一本化したいなら「お問い合わせは、公式HPかお電話でお願いいたします」で良いのではないでしょうか。もしくは、客数を増やしたい危機感があれば、Xを使って積極的に来館者と交流した方が正解だと感じます。
また、私が訪れた当日は、来館者の半分以上が外国人でした。それにもかかわらず、会場内で展覧会の情報はすべて日本語のみ。AIを使えば、英語併記は可能です(現在は来館者が少ないため、素人の英語校正でも炎上リスクは低いでしょう)。
北海道には、道立の美術館がたくさんあります。それらと旭川美術館の違いは何なのか?コンセプトも工夫も見えないため、新規顧客もリピーターも生まれづらいと思いました。
美術館協議会の議事録を見ると、インバウンド対応や「若年層をどう取り込んでいくのか、周知するためにどのようにストーリーを作り上げていくか、長期的に見たとき重要になるのではないか」と問われています。
私は、マスマーケティングに加えて、アートや旭川美術館のファンがSNSやクチコミで情報を拡散することが、美術館存続に重要だと思いました。その危機感ややる気が、当日訪問した限り、感じられませんでした。
SNSで継続的な発信は行っているものの、今後は、一部でも作品をSNS投稿可能にする、フォトブースを設置するなど、今の時代に即した取り組みを実施しないと、ハコモノ過ぎて、存在意義が問われる美術館だと感じました(小言幸兵衛かもしれませんが)。
▶︎ まとめ

難波田龍起《生の交響詩》
いかがだったでしょうか。旭川出身のアーティストである山口正城、難波田龍起を知ることができて、良い機会になりました。ただし、現況を鑑みると、美術館の運営面で、さらに工夫する余地があると感じました。
▶︎ 今日の美術館飯

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