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『芳枬倖―譊芖庁A皮事案シュレディンガヌの叛逆―』 ◆芳枬者城厎の執着 【】

◆ 芳枬者城厎の執着 【】

 朝の光が、カヌテンの隙間から郚屋の奥ぞず差し蟌む時間になっおいた。
现い光が床を暪切り、ベッドの端にかかっおいる。
 顔色は昚倜より戻っおいるが、ただただ完党ではない。

 郚屋にはい぀もの静かな時間が流れおいた。
 灰瀬は今日もキッチンに立ち、湯を沞かしおいる。
 小さく鳎るケトルの音が、なぜかやけに倧きく感じられた。

「  俺は、ただここにいる必芁があるのか」

 背埌から目芚めた橘が灰瀬に声をかけた。

「そこは俺のベッドで、ここは俺の家だ。それにお前が出おいく理由がないだろ 」

 灰瀬は振り返らずに答える。橘は䞀瞬黙る。自分から助けを求めたずはいえ、このたたここに居続ければ確実に灰瀬も察象になっおしたうこずは明らかだ。

「あるだろ。俺は远われおる」
「なら䜙蚈ここにいた方がいい」

 しばらくの沈黙の埌に、灰瀬は小さくため息を぀く。䜕床このやり取りをするのか  ず。
 䞀切ブレないその頑固な意志に䞇策尜きた衚情で橘は俯く。
 灰瀬は火を止めるず、たしなめるように橘に蚀い聞かせた。

「倖の方が危険だ」

 ココアの粉を入れるず、ゆっくりずかき混ぜる。
 底に圓たるスプヌンがだす芏則的な音が郚屋に溶ける。

「  あんた」
「なんだ」
「なんでそこたで関わる 」

 䌏し目がちに灰瀬はスプヌンを片手に曎に砂糖を远加しおいく。チョコレヌトのような甘い銙りが蟺りに挂う。

「気になるからだ」

 あたりにも簡朔な答えだった。
 橘は半ば呆れた顔で小さく息を吐く。

「刑事の理由じゃないな」
「俺はだいたいい぀もそんな感じだ」

 灰瀬はカップを二぀持ち、机に眮いた。
 その時だった。

――コツッ

 小さな靎音が、玄関の方から聞こえた。
 二人の動きが止たる。
 芖線が同時に音の方ぞず向いた。

「  聞こえたか 」
「ああ」

 灰瀬はゆっくりずカップを眮く。次の音はない。だが確実に、䜕かが觊れた音だった。橘はすでに立ち䞊がっおいる。

「お前は隠れろ」

 囁くほどの小さな声で蚀ったあず、顎で指瀺する。
橘は䞀瞬だけ迷ったが、小さく頷くず郚屋の奥――死角ぞず身を滑り蟌たせた。そのこずを確認した灰瀬は玄関ぞ向かう。
 足音を消し、ドアの前に立぀。

《ピンポヌン》

 無機質な音。
 灰瀬の指がわずかに揺れる。

「  誰だ」
「  」

 しばしの間のあずに返っおきたのは、聞き芚えのある声だった。

「譊芖庁鑑識課の城厎です」

 灰瀬の目が现く鋭くなる。

城厎  

“Case-A17”。
 あの少女の件で、䞀ノ瀬参事官から玹介された男。
 冷静で、合理的で――そしおどこか、人間からずれおいる。気に入らない男だ。

「䟋の爆砎事件に぀いお、少しお話を――」

  このタむミングで来るか 

 違和感が、静かに積み䞊がる。灰瀬は数秒考え――ドアを開けた。
廊䞋の光の䞭に、城厎は立っおいた。以前ず倉わらない、敎った身なり。穏やかな衚情。だがその目だけが、やはり違う。

「突然すみたせんね、灰瀬さん」

 軜く頭を䞋げる。
 灰瀬も最小限に応じた。

「  仕事熱心だな」
「興味深い事案には、どうしおも」

 その蚀葉に、灰瀬の脳裏に過るあの蚀葉。
――“芳枬察象”
Case-A17で聞いた冷めた蚀葉だった。人を人ずも思っおいない男。

「少しだけなら  」

 灰瀬は䞀歩匕き、城厎は軜い䌚釈をするず静かに宀内ぞ入る。
その瞬間、ほんの僅かに――芖線が動いた。郚屋の死角の䜍眮に、䞀秒にも満たない芖線が確かに捉えおいた。城厎は宀内を䞀床だけ、静かに芋枡した。たるで暙本箱の䞭を確認するように  。
 灰瀬の神経が鋭く反応する。

  芋たな

 しかし城厎は䜕も蚀わない。敢えお蚀わないのか  。どちらにせよ、機嫌は良さそうだ。
 ふず、空気を確かめるように城厎は息を吞う。

「この郚屋、少し枩床が高いようですね」
「  そうかさっきたで湯を沞かしおたからな」
「ええ。倖気ずの乖離かいりがある」

 蚀葉の端々にわざずわかるような単語を散りばめおいる。

「そうですね  䟋えば、人が“もう䞀人いる皋床”の差異ですが」

 空気が䞀瞬匵り詰める。
 だが城厎は䞍気味な埮笑みを浮かべたたた、やはりそれ以䞊觊れない。

「おっず、倱瀌したした。些现なこずですね」

 䜕事もなかったように、資料を取り出すず机に写真を䞊べる。
 灰瀬は爆砎珟堎に芖線をおずす。

「䟋の事件ですが、爆薬の痕跡はありたせん」
「だろうな」
「ええ」

 城厎はその写真を愛おしそうに指でなぞる。

「――にもかかわらず、この砎壊芏暡」

――呌吞おくず口角を少しあげ満足げに小さく笑った。

「非垞に興味深い珟象●●です」

 そう蚀い攟った城厎を䞍快な衚情で灰瀬は睚んだ。
 人の生死より自分の興味を優先する、欲望に忠実なこの男の存圚が腹立たしい。
 
「これは事件だ」
「ええ、なのに譊察庁も譊芖庁もそれを捜査しないのはなぜでしょう」

 城厎はわずかに目を现め、埮笑む。

「ですから――䜙蚈興味深い」

 蚀葉は正しいが、どこずなく嚙み合わない䌚話だった。
 そしお、決定的に䜕かが違う。
 城厎は続ける。

「もしこれが胜力によるものだずすれば  」
「どうする 」
「芳枬したす」

だろうな  それでこそあんただ

 迷うこずなく即答する城厎に䞍快感を感じる。

「再珟性、制埡性、拡匵性――すべおを確認する必芁がありたす」

 たるで人間ではなく、あの時ず同じように察象ずしかみおいない答えだった。
 
なぜそれをわざわざ俺に  いや、橘にわざず聞かせおいるのか 

 やがお城厎は資料を閉じるず、軜く頭をさげた。

「本日はこれで」

 結局のずころ、爆砎事件は単なる理由付けの建前で、本音は芳枬察象ぞの興味だったのだろう。城厎は玄関ぞ向かうずドアの前で䞀床足を止める。そしお振り返らないたた灰瀬に問いかけた。

「灰瀬さん」
「なんだ」
「人は、どこたで壊れるず思いたすか 」

 突然の意味䞍明な問い。だが、答えを埅たずに続ける。

「壊れる過皋は、  ずおも矎しい」

 背筋に冷たいものが走った。穏やかで静かな声。そしお、䜕かに心酔しおいるような声だった。城厎はいたどんな顔をしおそれを語っおいるのだろうか  。

「――安心しおください。ただ、壊れおはいない」

 城厎の、この蚀葉の真意はわからないたた、開かれおいた扉は静かに閉たっおいった。

 郚屋の奥から橘が姿を珟す。
 い぀もの飄々ずした気配が、どこかに消えおいた。その目は、明らかに倉わっおいた。

「  あの男、知っおる」

 灰瀬は橘をみ぀めるず、次に出おくる蚀葉を埅った。

「公安の資料にあった。城厎  あい぀、ただの鑑識じゃない」
 
 灰瀬は黙ったたた䜕も蚀わなかった。
ただ、城厎が出お行ったドアの方を芋぀める。
 あの男は知っおいる●●●●●。橘●のこずを。
そしお――それを䞀切“問題にしおいない”。

俺たちは芋られおいる。そう  芳枬されおいる

 この感芚が、確信ぞず倉わる瞬間だった。
 城厎●●ず公安の関係。そしお、城厎●●ず䞀ノ瀬参事官。
 さらには蚘憶の曖昧な橘ず灰瀬を芳枬する城厎●●。
 觊れなくおも解るこずがある  。それが今は、少しだけ怖い。


次回金曜日21時数分誀差有曎新

『蟲は眠っおいた  今は、ただ』

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※ #創䜜倧賞2026  応募䜜品です



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䞃曜  PSYCHIC  MEDIUM サポヌトをありがずうございたす