連載小説「オボステルラ」 【第三章】18話「彼方星の向こうから」(1)
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18話 「彼方星の向こうから」(1)
「例の排水溝の殺人鬼の件だが…」
翌朝。
リカルドの拠点に皆が集まっている。ゴナンも元気になってリビングにいるため、さらに狭苦しくなる室内。ディルムッドが警察に話を聞きに行ったらしく、昨晩の報告をしている。
「…捕まった犯人は、いろんな街を渡り歩いては強盗殺人を繰り返していた男らしい。普段なら1つの街に長居することはないそうだが、この飲み屋街ではいいカモが多く、次々に犯罪を犯してしまったと…」
「いいカモ?」
リカルドが尋ねる。
「ああ…。『何らかの原因』で体がマヒして動けず倒れている者に何度も遭遇して、犯人にとっては強盗してくださいといわんばかりだったそうだ。だからといって殺す必要はないはずなのだがな…」
「何らかの原因…」
リカルドはナイフとエレーネの方を見る。ナイフがさらに尋ねた。
「…昨日、襲われていた人は、もしかして、卵を追っていたのではない?」
「……ああ、そうだ。願いを叶えるという巨大鳥の卵の噂に惹かれて、探し回っていたそうだ。そして途中で手足が動かなくなり倒れていたら、強盗犯に襲われたと。付近を調べたら、被害者に刺さっていたらしい吹き矢が落ちていた」
「……」
卵男が全くの無関係というわけではなかったようだ。
「卵男の毒吹き矢と強盗殺人鬼とが、同時期に同じ街に揃ってしまった不運ね…」
「不運…」
その言葉を聞き、ミリアが暗い表情になる。それに気づき、リカルドは声をかける。
「ミリア、君は強盗殺人犯の仲間だったのだろうか?」
「…えっ、わたくしが? そんなわけないじゃない」
「…だったら、殺人鬼がこの街にいたことと、君がこの街にいることとは、何の関わりもないことだよ、ね」
微笑みそう言い聞かせるリカルドに、ミリアは小さく頷く。
「……まあ、犯人は捕まったのだから、これ以上死人が出ることはないだろう。卵の吹き矢の被害の方は分からないが」
ディルムッドは腕を組み、ふうと息をついた。
「で、今日は、今後の予定を立てるのだったな?」
「ああ、そうだね。正直、ちょっと迷っていて……」
と、リカルドが話を切り出そうとしたとき、コンコン、と玄関のドアをノックする音がした。リカルドが玄関の扉を開くと、そこにはタイキが立っている。部屋の中の人数の多さに驚くタイキ。
「あ、すみません、皆さんおそろいで……。お邪魔してしまったかな?」
「タイキさん、大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
「ああ、その…」
タイキが少し困ったような笑顔で、自身の背後に目をやる。そこには、タイキの娘が父に隠れるように立っていた。手には、何かの袋を持っている。
「…ゴナン君が戻ってきたけどケガをしているって聞いて、この子がお見舞いに来たいとずっと言っていたんですが、でも、恥ずかしがってなかなか来ることができずにいて、今日、いよいよ…」
「……」
(おや…)
モジモジする娘の様子に、ピンと来るリカルドとナイフ、エレーネ。
「…ディル、ちょっと立って。胸を大きく張って」
「ん?」
ナイフは体の大きなディルムッドを立たせて自分も並び立ち、ゴナンを隠した。よく状況が分かっていないディルムッドの影で、エレーネが恐ろしく素早い動きでゴナンを寝室へと引き込み、バンダナとベストを剥ぎ取る。

「えっ? エレーネ、さん……?」
すこし顔を赤らめるゴナン。いまだエレーネに対しては緊張モードだ。
「…ゴナン、あなた、まだ寝ていた方がいいわね」
「え? いや、俺、もう大丈夫、ですけど……」
「寝なさい」
そう言ってベッドの布団の中にゴナンを押し倒す。そして、玄関のリカルドへ目配せで合図した。
「……ああ、今、ちょうど、寝室でゴナンが寝ているから、さあ、どうぞ、奥へ」
「あ、はい…」
タイキの娘はペコリとお辞儀して、寝室へと向かう。案内する途中、リカルドはハッとして、彼女に小声で声をかけた。
「ゴメン。ケガなんかがあったから、ゴナンにまだ寝袋を渡していないんだ」
「あ…、そうなんですね。……大丈夫です…」
娘はそう頷き、寝室に入っていく。タイキも続こうとしたが、リカルドが笑顔でそれを止めた。
「リカルドさん? 何を…」
「せっかくのお見舞いですよ、タイキさんまで入っては野暮では?」
「でも、個室に二人きりだなんて…」
しかし、ナイフが寝室の扉を閉じてしまう。その上で、扉に聞き耳を立てる大人達。また人が増えて、さらにリビングがぎゅうぎゅうだ。事情を察したミリアもワクワク顔で、皆と同じように聞き耳を立てた。
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