連載小説「オボステルラ」 【第五章 巨きなものの声】 9話「不自然な自然」(4)
9話「不自然な自然」(4)
マリアーナの薬が効いたのか、翌日にはゴナンの熱はほぼ下がった。4人も同じ宿に泊まり、翌朝、食堂でそろって朝食を取る。
「ふふ、久々に皆そろうと、いいものだな。大体、2ヵ月近くぶりか」
ディルムッドがゴナンを見ながら、そうしみじみ口にした。ゴナンは瞳を輝かせてディルムッドを見る。
「俺、1人のときもちゃんと鍛錬、続けてたから。剣も持ってたし、弓も。明日からまた、ディルと朝の鍛錬したい」
「ああ、もちろんだ。どれだけ鍛錬を積んだかしっかり見てやろう」
「でも、ゴナン、完全に熱が下がってからよ。無理しないのよ」
ナイフがストイックコンビに釘を刺す。少しシュンとするゴナン。そして白状する。
「……俺、熱もだけど、なんか、身体がずっと痛くて…。何かまた、違う病気なのかも……」
「えっ、そうなの?」
リカルドが心配そうにゴナンにまとわりつく。
「どんな風に痛い? 筋の故障かな? 鍛錬のしすぎじゃないの?」
「わかんないけど…。膝が特にジクジク痛くて、関節が疼くっていうか…。我慢できない程じゃないんだけど…」
「一体、何の病気だろう…、聞いたことがないな…。ゴナン、もう休もう。寝ていた方がいいよ。痛み止めを飲もうか」
リカルドがまた過保護にゴナンに構っている。しかし、その症状を聞いたナイフとディルムッドは、目を見合わせてふふっと笑った。
「……リカルド…。それは病気などではなく、ただの『成長痛』のような気がするのだが…」
「えっ?」
「それに、どうにもゴナンの背が少し伸びた気がしていたのよ、さっきから」
そう口にするナイフに、「ほんと?」とゴナンが嬉しそうに瞳を光らせる。リカルドはまじまじとゴナンを見た。
「ああ、そう言われてみれば…。成長痛……、僕は特になかったから……」
「私も少年時代はひどく悩まされたよ。なにせ、1週間で何センチも伸びていたときもあったからな」
そう思い返すディルムッドに、ゴナンが「すごい」と目を輝かせる。
「本当はもう少し早い年齢で出ることが多いけど、栄養状況がよくなったり、鍛錬を始めて身体が刺激されたりして、急に育ち始めたのかもね。ゴナン、ちょっと立って」
ナイフのその指示にゴナンは椅子から立ち、なぜかリカルドもソワソワと一緒に立ち上がる。改めて目線の位置を確認すると、確かに以前より少し高いようだ。
「ほんとだ、少し背が伸びてる…。すごいね、ゴナン、やっぱりお兄さん達くらい大きくなるんだよ。僕も追い越されちゃうかもなあ」
そう、ちやほやとゴナンを褒めそやすリカルドを邪魔そうにしながら、ナイフはゴナンの身体に触れて筋肉の具合を見る。
「……幅もちょっと太くなっている気がするわね。きちんと鍛錬と食べたものが身になっているわよ、ゴナン。さすが成長期ね」
「うん」
嬉しそうな瞳の光を弾けさせるゴナン。そして、泉での出来事を思い出した。
「……そういえば、ルチカに会ったんだけど、立ったとき、あいつ、俺のことをちょっと見上げてた…。『フローラ』にいた頃はほとんど同じ身長、ていうか、俺の方が低いくらいだったのに…」
「…! ルチカに会ったのか? もしや、奴が保護してくれていたのか?」
ディルムッドが尋ねるが、ゴナンは首を横に振る。
「いや…。邪魔だから連れて行かないって…。でも、薬と発光石の機械をくれたから、それですごく助かったんだけど…。あと、先生の書斎から借りてた書類を返してくれて……」
「……いや、それは盗んだものだろう……」
やはり、期待するだけ無駄だったか、とディルムッドはため息をつく。と、ずっと話を聞いていたエレーネが切り出す。
「…できれば、ゴナンが鳥に乗っていたときの情報を聞きたいんだけど。それで、これからの動きも検討できるのではないかしら?」
「そうだね。あとでどこかの部屋に集まって、情報交換をしようか」
リカルドがそう締めて、朝食を終わらせ皆は立ち上がる。その間、ミリアはずっとゴナンの方を見ていた。その目線の熱に気付いているのは、ナイフだけだった。

↓次の話↓
#小説
#オリジナル小説
#ファンタジー小説
#いつか見た夢
#いつか夢見た物語
#連載小説
#長編小説
#長編連載小説
#オボステルラ
#イラスト
#私の作品紹介
#眠れない夜に
