連載小説「オボステルラ」【幕章】番外編1「アドルフへの手紙」(2)
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番外編1「アドルフへの手紙」(2)
翌日。
「ゴナン。僕もアドルフさんに手紙を書いたから、一緒に出すね」
リカルドはゴナンにそう告げた。ゴナンはこくりと頷くが、リカルドの手紙の内容についてはあまり気にしていないようだった。
「…俺の手紙、大丈夫だった?」
「うん、よく書けていたよ。字もキレイだし、すごいね」
そのリカルドの評価に、ゴナンは無表情ながらも、薄い琥珀色の瞳を嬉しそうに輝かせる。
「…でも、手紙、どうやって届けるの?」
「ああ。ストネについてからね、北の村に支援物資を送れないか各所に交渉していたんだよ。で、1ヵ所、キャラバン隊が支援物資の輸送を委託されることになりそうらしいから、彼らに託そうと思って」
「へえ…」
「まあ、準備もこれかららしいから、手紙が届くまで結構時間はかかるかも知れないけどね」
リカルドはこの街界隈の有力者に手紙を書いて協力を仰いでいた。地方の豊かな貴族には、自らの名を上げるために、このような慈善活動に積極的な者も多い。彼らの協力を取り付けられるよう交渉をしていた。
「あと、試しに伝書鳩と巣箱も託してみようかなと思って。北の村に鳩の巣箱を作れればいいんだけど、干ばつの地だから少し難しいかな…」
「巣ができれば、手紙を送れるの?」
「そうだね、うまくストネと北の村の両方を覚えてくれれば、手紙のやり取りが楽になるな。アドルフさんからの返事ももらえるようになるかもしれないよ。これは向こう次第だけど…」
「伝書鳩…。でも、村にいたら、食べられちゃうかもしれないな…」
「……」
それは決して冗談などでない。それほどまでに飢えていた北の村。まだ、雨は降っていないのだろうか。
「……そうなったらそうなったで仕方が無いよ。僕はそれを責めることはないから。新鮮な鶏肉を1羽分届けたってことになってもね」
「……」
「さあ、キャラバン隊の所へ行こう。伝書鳩も見せてあげるよ。全国を旅して回っている隊だから、何か珍しい物も持ってるかもしれないよ」
「…うん…!」
ゴナンが好奇心に少しだけ頬を紅潮させ、元気にうなずいた。そして、出かける身支度を始めた。
+++++++++++++++++
さて、時は進み、一行はツマルタの街にいる。ゴナンがミリアを守るため、帝国男共から受けた傷が治りつつあるとき。ゴナンはリカルドの拠点にあるデスクを借りて、また手紙を書き始めた。リカルドはその様子を後ろから覗き込む。
「アドルフさんへの手紙?」
「うん。全然書けなかったから…」
ツマルタに着いた途端に攫われて鉱山で働かされ、無事戻るも高熱で寝込み、そして帝国人との格闘で傷を負い入院し…、と、手紙どころではない日々だった。
「ストネに送れば、届くかな?」
「そうだね。ロベリアさん宛に送って、北の村への支援物資の便が出てそうだったら託してもらえるようにお願いしよう。前の手紙が無事に届いているといいけどね。伝書鳩はストネに戻っていないかなあ…」
「うん…」
ゴナンは少し祈るような表情になって、また便せんへと視線を落とす。内容をまとめるのに少し時間がかかっているようだ。
(…今回のあれこれは、ゴナンはなんて書くんだろうな…)
ストネであった出来事の比ではないくらい大変な目に遭ったゴナン。アドルフに心配を掛けたくない彼が書く手紙が、どのようなものになるのか、リカルドは好奇心に襲われる。
(…手紙を読みたいけど、でも、いや、ゴナンのプライバシーは尊重しないと…)

脳内で葛藤するリカルド。ゴナンはその様子を不思議そうに見遣りつつも、手紙の続きに机へ視線を落とした。
そのまま2時間後、ゴナンは書き終わる。
「終わった?」
「うん、書けた。長くなっちゃった」
「へえ…」
リカルドは少しそわっとして、デスクにある数枚の便せんを見る。
(……ダメだ。いくらゴナンと僕の仲でも、手紙を勝手にのぞき見るのは…)
葛藤するリカルド。そして、ゴナンに薄く微笑んだ。
「…ゴナン。その、また、手紙をチェックしてあげようか? まあ、ゴナンは文章が上手だから大丈夫だとは思うけど、念のため、ね。きちんとした手紙を、送りたいもんね」
「うん、お願い」
勝手にのぞき見るのではなく、ちゃんと了承を得るなら良いだろう、との理論である。やましい気持ちから、つい言葉を重ねてしまったリカルドだが、ゴナンはやはりリカルドに内容を知られることをあまり気にしていないようだ。
「…じゃあ、今夜見ておくよ。僕もアドルフさんに手紙を書きたいしね」
「うん」
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