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連載小説「オボステルラ」 【第五章 巨きなものの声】  10話「みたび、遺跡のリカルド」(1)


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10話「みたび、遺跡のリカルド」(1)


 巨大樹探索を満喫したが、結局、リカルドの呪いの何かにつながるようなヒントは見つからなかった。

 巨大樹観光から戻ると、リカルドは客室でボーッとしていた。やはり、こんなに何もしないリカルドは珍しい。ガイドに聞いた話を教えたかったが、あまり巨大樹の話題に触れすぎると、またリカルドが体調を崩してしまうかもしれない。ゴナンがそう迷っていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。ナイフである。

「ナイフちゃん、どうしたの?」

「ゴナン、ごめんなさい、渡さないといけないものがあったのを、すっかり忘れてて」

 そう言いながら部屋に入ってくるナイフ。ぼんやり椅子に佇んでいるリカルドを一瞥した後、手に持っていた包みを開く。

「まずはマリアーナ先生から、ゴナン用に処方してくれた薬ね。熱冷ましと、ゼイゼイ息用…。あと、痛み止めと、小傷と打ち身の軟膏も全員分作ってくれてて、これはゴナンの分ね」

「わ……」

「と、これはジョージ先生から、薬草と植物と動物の図鑑よ。あなたが興味を持っていたから、旅に役立ててって。それと、上昇気流?について書いてある本。あの日、あなたが勉強するはずだったものだって」

「……!」

「……そしてこっちは、エドくんから」

「エド?」

 ゴナンは渡されたものを開いてみる。ゴナンが今、身に付けているものよりは少し大きいサイズの、焦げ茶色のベストだった。

「エドくんがひいお祖父さんから受け継いだ、とてもよい織物のベストなんですって。それで、この裏地にお母さんがお守りの刺繍をしてくれたって」

「………」



 ゴナンは、少し瞳を潤ませ無言でそれらの贈り物を見ている。その様子を見守っていたリカルドは、ゴナンに声をかけた。

「ゴナン。1回、ウキに戻ろうか? 先生達やエドくんにきちんとお別れを言いたいだろう? ……あ、そのまま君をウキに置いていこうなんてことではないからね」

「……」

 そうリカルドに尋ねられて、ゴナンの心は少し動いた。しかし、首を横に振る。

「……大丈夫…。巨大鳥に追いつけなくなっちゃうから…」

「…無理しなくていいんだよ?」

「……すぐじゃなくても、いつかまた、ウキに戻れるから…。最後の別れってわけじゃ、ないよね」

「……」

 リカルドはナイフと目を合わせて微笑む。そして立ち上がり、ゴナンの頭をクシャッと撫でた。

「だったら、先生達とエドワードくんに手紙を書くといいよ。無事だってことと、贈り物のお礼と、いつかまた会いに行くってことを。きっと心配してるから」

「……うん」

「ひとまずは伝書鳩で送れる短文の手紙を速達で送って、そして馬便でしっかりした手紙を送るといい。書きたいこと、たくさんあるだろう?」

「うん!」

 ゴナンは目を輝かせる。リカルドは自分の荷物から便せんとペンを出して渡すと、すぐに手紙に取りかかり始めるゴナン。リカルドはまたニコニコとその様子を見守っている。そんなやり取りを見て、この2人がきちんと話ができていることがわかり、ナイフもホッとしていた。

*  *  *

 翌日。

 結局、一緒にアドルフ宛の手紙も綴り、一晩かけて書いた手紙を伝書鳩便と馬便に託した。アドルフ宛はストネのロベリア経由だ。ちゃんと北の村に届いているのかは分からないが、ひとまず出し続ける。

 そしてついでに原っぱでウサギを捕まえて、食材屋に納品してきたゴナン。もう街には長く滞在しないであろうことを伝えると、食材屋の主人は残念がってくれた。帰り道に小腹が空いて、屋台の割高な焼きたてパンをつい買い食いした。

 最初にこの街に着いたときは、こんなに自分を取り巻く環境が好転するとは思いもしていなかった。ただそれは、大人達と合流できて、そしてお金があるからそうなっただけかもしれないが。

(早くちゃんと、1人でも一人前に振る舞えるようになりたいな。リカルドみたいに)

 と、後ろからポンと肩を叩かれた。振り向くと……。

「あ、お医者さんの先生……」

「やあ、もう熱は治っているようだね」

 ゴナンが発熱したとき、そしてリカルドが倒れたときに往診してくれた医者だった。ゴナンはペコリと頭を下げる。

「はい……。ありがとうございました。もう、元気です」

「そうか、よかったよ。とても高い熱だったからね」

 医者はニコニコと微笑む。そして、さらに尋ねてきた。

「あの、君のお兄さんかな? 黒髪の。彼も元気になった?」

「……?」

「それとも、もしかしてもっと具合が悪くなっていたりするんじゃないかな? 何か重い病気を負っていたり」

「……」

 なぜ医者がそのような訊き方をしてくるのか、ゴナンは少し違和感を感じた。医者は続ける。

「あのお兄さん。身体にたくさんアザがあるようだったけど……」

「……!」

 ゴナンはハッと医師の顔を見た。もしや、この医者は…。



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