なぜ、つばきの現場にはおじいちゃんが多いのか
つばき現場には、おじいちゃんが多い。
つばきファクトリーの現場に行ったことがある人なら、一度は思ったことがあるのではないか。
「つばき現場、他のグループより年齢層高くない?」
「あのおじいちゃん、めちゃくちゃ声出てない?」
もちろん、アップフロントが客層データを公開しているわけではない。だから、何歳以上の男性が何割いる、という正確な数字はわからない。
でも、その数字が手元にないからといって、現場で見えているものを何も語れない、というわけではないはずだ。
ファンも、現場にいる人も、たぶんメンバー側も、つばき現場には年齢層高めの男性ファンが多いことを、ある程度共通認識として持っている。
なのに、その理由や背景に関してはあまり見かけない。
だから、いったん考えてみたい。
なぜ、つばき現場にはおじいちゃんが多いのか。
初めてのつばき現場で見た光景
初めてつばきファクトリーの現場に行ったのは、「つばきファクトリー 10th Anniversary Concert Tour 2025 Autumn」。
2025年10月4日、J:COMホール八王子の公演だった。
つばきファンは年齢層が高い、という話は聞いていた。
でも、現地で見ると本当に驚いた。
開演前や終演後に、会場前で客が輪になって話している光景はよくある。友達同士で集まっていたり、グッズを見せ合ったり、感想を話していたりする。
ただ、つばき現場では、その輪を作っているのが、見た感じ60代、70代の男性だったりする。
しかも、それが数組だけではない。
自分は音楽ライブやフェス、アイドル現場にもそれなりに行ってきた。
その経験のなかでも、あれほど高齢男性が目立つ現場は記憶にない。
もちろん、印象に残りすぎているだけの可能性もある。
でも、少なくとも初めて見た自分には、はっきりと「おじいちゃんが多い現場」に見えた。
ファミリー席にいる、家族連れではない人たち
最近行ったつばき現場では、ファミリー席に座った。
2026年5月2日の「つばきファクトリー LIVE TOUR 2026 SPRING ~HEAT IT UP~」だった。
ファミリー席に座ると、客層がさらに見えやすくなる。
近くに座っている人を見ると、白髪、もしくは髪が薄くなっている60代以上に見える男性が多かった。もちろん若い人もいる。女性ファンもいる。20代くらいの女性も目立つ。
おもしろいのは、その両者があまり交わらず、でも同じ空間に自然に共存していることだった。
若い女性ファンは、グッズや服装も含めていわゆる「推し活」の雰囲気がある。一方で、年齢層高めの男性ファンは、もっと静かに、淡々と席に座って開演を待っている。
普通なら、この二つの客層が同じアイドル現場でここまで近くにいること自体、少し不思議に見える。でも、つばき現場ではそれが普通の風景になっている。
「ファミリー席」という名前だけ見ると、親子連れや家族連れが多い席のように思える。でも実際には、静かに座って観たい単独男性ファンも多い。
この名前と実態のズレも、みんなわかっているけれど、あえて言わないことのひとつだと思う。
強火のおじいちゃん、静かなおじいちゃん
ただ、「おじいちゃんファン」といっても、見え方はひとつではない。
会場前で顔見知り同士で輪になっている、強火のおじいちゃんオタがいる。
遠征やメンバーの話をしていて、長く現場に通っていることが一目でわかるタイプの人たちだ。
一方で、ファミリー席には、もっと静かなおじいちゃんオタもいる。
大きな声を出すわけでもなく、周囲と群れるわけでもなく、座席で落ち着いてステージを見ている。
自分がつばき現場で感じた「おじいちゃんが多い」は、この両方が重なっている。
会場前では常連感として見え、ファミリー席では年齢層の高さとして見える。
その両方があるから、つばき現場のおじいちゃん感はより強く残る。
つばきが引き受けている女性像
では、なぜつばきに年齢層高めの男性ファンが多いのか。
ひとつは、つばきファクトリーというグループの持っている女性像が関係していると思う。
ハロプロの他のグループは、元気さ、強さ、明るさ、自由さ、パフォーマンスの迫力を前面に出していることが多い。
そのなかで、つばきファクトリーは少し違う。
女性らしさ、儚さ、しなやかさ、湿度のある恋愛感情。
そういうものを、かなり正面から引き受けているグループに見える。
「今夜だけ浮かれたかった」や「低温火傷」のような曲にある、かわいいけど少し重い、明るいけどどこか切ない感じは、ハロプロのなかでも独特だ。
これは、年齢層高めの男性ファンが昔から見てきたアイドル歌謡や女性歌手のイメージと重なりやすいのではないだろうか。
健気さ。
切なさ。
恋に揺れる感じ。
守ってあげたくなるような儚さ。
もちろん、つばきが単に古い男性目線に都合のよい女性像を演じている、という話ではない。
昔ながらの恋愛歌謡的とも言える情緒を、現代のハロプロのメンバーたちが引き受けているところに、つばきの独特さがある。
ハロプロには昔から「オヤジ」がいた
ただ、年齢層高めの男性ファンが目立つこと自体は、つばきだけの現象ではない。
2014年には、Juice=Juiceのリリースイベントにプロレスラーの蝶野正洋さんが登場し、客席を見て「オヤジだらけ」とイジる場面があった。
つまり、ハロプロ現場には昔からそういう空気があった。
ただ、つばきではそれがファミリー席、石井泉羽さん周辺などで、より濃く、わかりやすく可視化されているのだと思う。
おじいちゃんが浮かない現場
もうひとつ大きいのは、ハロプロ現場、とくにつばき現場には、年齢層の高い男性ファンがいても浮きにくい空気があることだと思う。
他の事務所の女性アイドル現場では、客層が若かったり、女性ファンが多かったりして、自分の年齢との差を強く感じる人もいるはずだ。
でも、つばき現場では、会場に行くと普通に年齢層高めの男性がいる。
会場前で輪になっている人もいるし、ファミリー席で静かに見ている人もいる。
そういう環境では、「自分がここにいてもいい」と感じやすい。
つまり、つばきにおじいちゃんファンが多いのは、つばきが高齢男性を惹きつけるからだけではない。
高齢男性が現場に居続けやすい場所になっているからでもある。
客層が客層を呼んでいる。
つばき現場におじいちゃんが多いから、さらにおじいちゃんが来やすくなる。
そして、それがまた「つばき現場にはおじいちゃんが多い」という見え方を強めていく。
石井泉羽さんの客席で見えるもの
つばき現場のおじいちゃんファンについて考えるうえで、石井泉羽さんは重要だと思う。
石井さんのバーイベでは、客席に高齢男性が多いことがネット上でたびたび話題になっている。前回のイベントでは、客席のスクショが「おじいちゃんが多い」と話題になっていた。
さらに、先日のライブでは、石井さん本人も客席の年齢層に触れて笑いにしていた。
ただ、それは高齢男性ファンを雑にイジるようなものではなかった。
「皆さんのことが家族に見えてきました~!お兄ちゃん、お姉ちゃん、お父さん、お母さん……おじいちゃんもいますね♡」
というようなことを言ったそうだ。
これが嫌な感じにならないのは、石井さんの距離感がうまいからだと思う。
高齢男性ファンを外側から笑いものにするのではなく、自分のファンを大きな家族のように捉えたうえで、そのなかの存在として自然に置いている。だから客席も笑えるし、温かい空気になる。
つまり、少なくとも石井さん周辺では、「おじいちゃんファンがいる」という見え方が現場のなかで共有されている。
それを本人が嫌な感じにせず、笑いに変えられること自体が、石井さんの強さだと思う。
石井さんはなぜ刺さるのか
石井泉羽さんは、ファンサービスが強いメンバーとして見られている。
おそらく個別イベント人気も高い。目線をくれる。反応がわかりやすい。ファンに対して、自分が応援している実感を返してくれるタイプに見える。
これは高齢男性に限らず、アイドルファン全般に強い。
ただ、つばき現場にもともと年齢層の高い男性ファンが多いとすると、石井さんのようなタイプは、特にその層に刺さりやすいだろう。
認知される。
目を合わせてもらえる。
自分に向けた反応を返してもらえる。
しかも、それを本人が重くしすぎず、笑いにも変えられる。
そのバランスこそが、石井さんの強さだと思う。
同期の土居楓奏さん、村田結生さんについては、少なくとも石井さんほど「おじいちゃんファンが多い」という文脈では語られていない印象がある。
これは単に「新メンバーだから高齢男性ファンがつく」という話ではない。
つばき現場にもともといる年齢層高めの男性ファンと、石井さんのファンサービスの強さ、親しみやすさ、本人がそれを笑いに変えられるキャラクターが噛み合って、特に可視化されているように思う。
現場のおじいちゃんは氷山の一角かもしれない
現場にこれだけおじいちゃんオタがいるなら、在宅のおじいちゃんオタはもっといるのではないか。
現場に来るには、チケットを取る必要がある。
スマホを使う必要がある。
電子チケットを表示する必要がある。
電車に乗って会場まで行く必要がある。
夜公演なら帰りも遅くなる。
年齢を重ねるほど、そのハードルは高くなる。
それでも現場に来ている人があれだけいる。
だとしたら、その手前で、YouTubeを見たり、配信を見たり、Blu-rayを買ったり、まとめサイトを読んだりしている年齢層高めのファンも、もっといるのではないか。
そういえば、つばきのファミリー席で近くに座っていた年齢層高めの男性ファンが、スマホでハロプロまとめサイトを見ていたことがある。
これは印象に残っている。
つばき現場のおじいちゃんオタは、ただ昔から現場に来ているだけではない。
スマホを使い、まとめサイトを読み、ネット上のハロプロ情報圏にも普通に参加している。
チケットを取り、電子チケットを扱い、会場まで来て、ファミリー席で静かにステージを見て、開演前にはまとめサイトを読む。
その行動力と情報収集力は、普通にすごい。
現場のおじいちゃんオタは、氷山の一角なのかもしれない。
普段は見えない人たちが、現場で見える
現場で感じる強い印象には、「普段は見えない人たちが、現場で急に見えるようになる」ということも関係していると思う。
年齢層の高い男性ファンほど、普段の生活では自分がアイドルオタクであることをおおっぴらには言わないはずだ。
家族や職場、地域の人間関係のなかで、つばきファクトリーを追っていることを自然に話せる人は多くないと思う。
つまり、日常生活では隠れている。
でも、そのなかの精鋭たちが、ライブの日になると会場に集まる。
チケットを取り、電子チケットを表示し、電車に乗って、ファミリー席に座る。
普段は見えない高齢男性オタクが、現場で一気に顕在化する。
だから、つばき現場で見るおじいちゃんファンの存在は、実数以上に強く印象に残るのかもしれない。
その歳で夢中になれるものがある
ここまで「おじいちゃん」と書いてきたが、もちろんバカにしたいわけではない。
アイドルに興味がない人から見れば、60代、70代の男性が若い女性アイドルを追いかけていることを、「その歳で何をやっているんだ」と見るかもしれない。
でも、逆の見方もできる。
その歳になっても、チケットを取り、スマホを使い、電車に乗り、現場まで来る。
グッズを買い、ペンライトを振り、個別イベントに申し込み、SNSやブログも追う。
これはすごいことだと思う。
人を家から出すことは簡単ではない。
まして、年齢を重ねた人を動かし、ネットを使わせ、現場に来させ、消費行動まで起こさせるのは、普通のエンタメではなかなかできない。
それをやってしまうアイドルの力は、すごい。
つばき現場のおじいちゃんファンを見ていると、最初はその光景の特殊さに驚く。
でも同時に、「この人たちは楽しんでいるな」と思う。
年齢を重ねても、夢中で追いかけられるものがある。
それは素敵なことだと思う。
なぜ自分はこんなに考えているのか
ここまで書いていて、正直、自分でも不思議だ。
なんで自分は、つばき現場のおじいちゃんオタについて、こんなに一生懸命考えているのだろう。
証明して何になるのか。
たぶん、何にもならない。
でも、気になる。
現場に行けばみんな見ているはずなのに、あまり言葉にされない。
ファンもメンバーも認識を共有しているのに、きちんと書かれたものは少ない。
ハロオタは、こういうことを当たり前のこととして受け入れている。
つばき現場にはおじいちゃんが多い。
石井泉羽さんにはおじいちゃんファンが多い。
高齢男性ファンを本人が嫌な感じにせず笑いにする。
客席も笑う。
外から見れば特殊なことだけど、なんの変哲もないこととして処理されてしまう。
自分が書きたいのは、たぶんそういうことだと思う。
ハロプロのなかで当たり前になっているけれど、よく考えると変なこと。
誰もが見ているのに、あまり言葉にされていないこと。
そういうものを、いったん文章にしてみたい。
つばき現場のおじいちゃんファンの存在も、そのひとつだと思う。
アンケートを作りました
とはいえ、自分の体感だけで書いていても限界がある。
そこで、つばき現場の客層について、簡単なアンケートを作りました。
「つばき現場におじいちゃんが多い」というのは自分の体感でもあるのですが、ほかの人にはどう見えているのかも知りたいです。
つばき現場に行ったことがある方、他のハロプロ現場と比較できる方は、よければ回答していただけないでしょうか。
ついでに、あなたが見た「おじいちゃん伝説」も募集します。個人が特定できない範囲で、印象的なエピソードがあれば教えてください。
回答時間は1、2分ほどです。
どれくらい回答いただけるかは未知数ですが、集まった回答は、後日あらためて記事にするか、この記事に追記する予定です。
【2026年5月31日 追記】
この記事でアンケートを実施したところ、最終的に280件を超える回答をいただきました。
回答結果と自由記述をもとに、続編を書きました。
女子トイレが空いている話、50代でも若手に感じる現場、突然踊りだす紳士、そして「何と比べて多いのか」という4つの見え方について整理しています。
続編はこちらです。
