「災害ボランティア」のススメ
熊本地震の発災から2週間になりますが、
猛暑の中、未だ6千人以上が避難生活を余儀なくされ、10万戸で断水が続いています。
復興は、まだ始まったばかりですが、これまで、多くの方から、大変、暖かい励ましや共感のお言葉を賜ったことに、心からの御礼申し上げます。

私自身は、これまで災害が起こるたびに、組織の中で「自分の持ち場」に徹することで、復興支援に尽力してきましたが、
此度は、「個人として、故郷・熊本の復興に手を尽くしたい」という強い想いに駆られ、

(Photo by ISSA)
災害ボランティアの募集開始直後から、被害が大きかった宇城市(注1) のサイトに登録し、早速、ボランティア活動に従事して参りました。

(注1) 宇城市(うきし)は、2005年に、宇土郡の三角町・不知火町と下益城郡の松橋町・小川町・豊野町が合併して新設され、市名の「宇城」は、宇土市・宇土郡・下益城郡を合わせた地域の呼称に由来している
という訳で、今回は、熊本の復興支援はもとより、災害ボランティアの啓発・促進という観点から、そのノウハウについてご紹介していきたいと思います。

1 事前の準備
(1) ボランティア活動保険への加入
先ず、ボランティア活動保険に加入して下さい。保険料は、基本プランで350円と格安で、WEB上で簡単に加入できます。

(全社協ホームページ)
(2) 災害ボランティアの事前登録
次に、社会福祉協議会(注2) のホームページから、災害ボランティアの事前登録が必要です。
(注2) 1995年の阪神・淡路大震災では、約137万人のボランティアが活動し、「ボランティア元年」と呼ばれた。その後、組織的な活動や合理性の必要性から、社会福祉協議会が中心的な役割を担うようになり、段階的に被災者支援の体制が整えられていった
熊本の場合、県への登録はあまり意味がなさそうでしたので、市区町村レベルから直接申し込みを行った方が早いと思いました。

(3) 必要なアイテム
個人の持ち物は、被災地の状況や、天候・気温、立地、被災者のニーズに応じて追加・変更が必要ですが、一般的には、次のとおりです。

(Created by ISSA)
※1 派手な色柄や、半袖・半ズボンはNG
※2 強風で粉塵が舞うことも多いので、マスクは必要(特に水害時は、乾いた汚泥が粉塵化して、ばい菌が舞いやすい)
※3 現地でも借りられる。実際には持っていかない人が殆どだが、作業中に屋根瓦などが落ちてきた事例もある
※4 高価だが、熱中症対策としてかなり有効。バッテリーは満充電のこと

(Generated by Gemini, Inspired by ISSA)
(4) 宿泊先の確保
ホテルなどの宿泊先は、被災地から十分離れた場所に確保し、被災地に近い場所は、住む場所を失った被災者のために空けておきましょう。

《熊本県菊池郡大津町室》
(Photo by ISSA)
(5) 移動手段の確保
レンタカーを使うなら、同様の理由から、被災地から十分に離れているところで借りるようにしましょう。
ボランティア同士で乗り合わせて、狭い道路や、倒壊物の一部が路上に散乱した場所に分け入っていくことになるので、
車種は「コンパクトカー」が良いと思います(各種用具や支援品、廃棄物の運搬を重視するなら軽トラが便利)。

いずれにせよ、平素の運転と異なり、車体が損傷を受けるリスクもあるので、「NOC補償」には加入した方が良いでしょう。
(6) 天候予察
活動期間中の長期予報に加えて、短時間予報もこまめにチェックし、雨、雪、暑さ、寒さ、強風等に備えることが必要です(活動自体が、中止になることも)。
(7) 被災地への進出
買い物、給油、トイレは出発地で済ませておく等、「出来るだけ、被災地に負担をかけない」という心がけが大事です。
被災地に近づくにつれ、道路の分断等により、必ず渋滞が発生するので、早め早めの前進を心がけましょう。
被災地に近い高速道路では、最寄の出口から数キロ~十数キロも手前から渋滞が発生します。
そのような場合、右側の追い越し車線は、被災地に向かう緊急車両や支援車両のために空けておくのが鉄則です。

くれぐれも、ごぼう抜きをしないこと😤
(Photo by ISSA)
2 一連の流れ
現地の災害ボランティアセンターに到着したら、先ず、受付を済ませて名札の作成を行います。

(Photo by ISSA)
次に、オリエンテーションに進み、職員から注意事項等の説明を受けてください。
続いて、マッチングでは、職員が支援団体や被災者から届いたニーズ票(注3) に基づき、活動内容を読み上げますので、自分に出来そうな活動があれば、手を挙げて当該作業グループに加わります。
(注3) 活動内容は、瓦礫の撤去や泥出し等の力仕事から、炊き出し、物資搬入・配布、ベッドの組み上げ、被災者の心のケアと、多岐にわたる

《熊本県博物館ネットワークセンター》
(Photo by ISSA)
グループ内では、簡単に自己紹介するとともに、リーダーからのブリーフィングを受けてください。
その際、誰が車を出すのかを決め、行先(注4) 及び作業内容を再確認し、携行すべき資材等を借り受けた後、センター出発となります。
(注4) 行先については、QRコードも配られるので、スマホで読み取れば、簡単にGoogle Mapのナビゲーション機能が利用できる

(Created by ISSA)
現場に到着後、もし、現場を仕切っている人がいるなら、その人にボランティアが到着した旨を知らせるとともに、
個人宅であれば、家主さん等にお見舞いの言葉を述べた上で、「お手伝いさせていただきます」などと挨拶をしておきましょう。

作業中は、こまめに休憩をとり、決して無理はしないことが鉄則です。また、安全面には十分留意してください。
活動終了後は、進捗状況や被災者の様子、その他、気づいたことがあればリーダーに話しておきましょう。
作業後にセンターに戻ったあと、リーダーが担当者に報告し、今後の活動や支援の改善に活かされます。

《熊本県博物館ネットワークセンター》
(Photo by ISSA)
3 ボランティア・リーダーになる
ボランティア・リーダーは、マッチングによってグループが編成されたあと、グループ内での志願制で決まります。
私は、当初から「自分がリーダーを務める」と心に決めていたので、毎回、リーダーに志願しました。
「熊本出身の海上〇〇官です。
本日はリーダーを
務めさせて頂きますので、
皆さん、宜しくお願い致します。」

外見的には40代に見られる事も多く、そこそこ身長もあるので、「心強い」といった声が寄せられました。
ただ、どちらかと言えば技能系で頭脳派だし、定年退官やアラ還も見えてきて、体力に衰えを感じる今日この頃。
「勝手なイメージが一人歩きして、体力面で変に期待されるのも良くないなあ」と思いつつも、自分を追い込むことで、かえって覚悟が決まったように思います。

《熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽》
(Photo by ISSA)
4 リーダーの心得
リーダーは、常に全体を見渡し、機転を効かせ、人の気持ちを汲み取ることが大事です。
(1) 適時・適切な作業指示
実際に動かれる方々は、「次はどんな作業があるんだろう」、「そろそろ休憩かなあ」などと、常に、様々な思いを抱えています。
「確認するので、少しお待ち下さい」
「休憩しましょう」
「作業を再開します」
「(こういう)作業を行います」
「2~3人、私に付いて来て下さい」
等々、次々にテンポよく、具体的かつ端的に指示を出していきましょう。
知りたい、働きたい、という欲求に、先手を打ってタイムリーに応えていくことが、ボランティアの皆さんの集中力を保つ秘訣になります。

(2) 声掛け
また、声掛けも大事です。
「少し人数を増やしましょうか」
「お身体は大丈夫ですか」
「適宜、休憩なさって下さい」
などと、一人一人と真摯に向き合う姿勢も大事です。
自分の存在に気づき、認めてもらったという安心感が、ボランティアの方々の満足感や意欲につながります。

(3) 行政の一員として立ち振る舞う
一方、被災者の方々と接する場合、リーダーは、行政側の人間として立ち振舞う必要があります。
何故なら、リーダーのビブスには、「〇〇市社会福祉協議会」などと書いてあるからです。
被災者から困りごと相談を持ち掛けられたときは、先ずは、その方の正面で膝をついて、真摯に傾聴してあげることが大事です。
相談内容が、その場で解決できないようであれば、センターに取り次ぐなどして、しっかりと「バトン」をつないであげて下さい。

(4) 事故防止には万全を期す
災害ボランティアでは、皆さん、奉仕の精神に溢れている反面、かなり「前のめり」(注5) になっていて、事故が起きやすい条件が整っているようにも見受けられます。
(注5) 大半の方は、休暇を取り、宿泊・交通費を払って遠方から来ているので、「一つでも、二つでも、人の役に立つことをやり遂げたい」「片時も無駄にしたくない」という強い思いを秘めている
「決して、慌てる必要はないので、
周りの状況をよく見ながら、
作業を進めて下さい」
予め、この一言を発し、各人の安全意識にスイッチを入れておけば、ある程度、事故防止につなげることができます。

(5) リーダーとしての自覚
私自身は、休憩時間も気を抜くことなく周囲に目を配り続けるとともに、
食事は誰よりも質素に
休憩場所は片隅の地べたで
ということを心がけました。
ちなみに、この日の私の昼飯👇️
長くても6時間程度の作業ですし、リーダーは、食事や休みもそこそこに、昼休みも細々と動き回っているくらいで丁度良いのかもしれません…。

5 貴重な経験を共にした仲間たち
初日は、地元の小学校教師、長崎から来た消防士と高校生の娘さん、そして、遥々、下関から軽トラで駆け付けた若者と私の5人で、
2軒のお宅にうかがって、倒壊したブロック塀の撤去・集積という、猛暑下での過酷な重労働から始まりました。

更に、この5人に加えて、愛知を拠点に全国で活動されている「愛知人」という災害ボランティアの方々が、
ドリルや重機などを使ってブロック塀の解体を担当され、
まさにボランティア・マスターとしての知識・技術や心得など、たくさんのことを学ばせていただきました。
短い時間でしたが、本当に素晴らしい「ご縁」に恵まれたと思います。

2日目は、再びボランティア・リーダーとなって、24名を率いて避難所となっている小野部田小学校の体育館へ。
手際の良さで定評のある引っ越しのサカイさんをはじめ、日本赤十字、大学、病院機構等からのボランティアの皆さんと共に、
一丸となって、避難所での段ボールベッドの組み上げや清掃、その他のご支援をさせていただきました。
大人数での作業でしたので、リーダーとしても十分遣り甲斐を感じました。

《熊本県宇城市小川町・小野部田小学校》
(Photo by ISSA)
この日も、元・航空局員の方、陸自OBの方、更には、広島交響楽団のヴァイオリン奏者の方など、
様々なバックグラウンドをお持ちの方と交流があり、
関西各県、島根、広島、山口等、とにかく「熊本県外」からの参加者が多かったことに驚かされました。
「遠路遥々、県外からお越し下さって、
本当にありがとうございます!」
皆さんとの別れ際、自分が関東から来た県外者であることを忘れて、すっかり「熊本県民」になっている自分が居ました。
振り返れば、幾つかの反省点はあるものの、皆様のおかげで、「手際が良い」、「さすが〇〇隊さん」、「指示が分かりやすかった」などと、一定の評価をいただくことができたと思います。

おわりに
阪神・淡路大震災に端を発した災害ボランティアは、回を重ねるごとにシステマチックになっていて、「その敷居は、どんどん低くなっている」ように思います。
活動が始まった後も、誰からも無理を強要されることはありません。

これまで、災害ボランティアに関心があっても、年齢・体力・経験等を理由に参加を見送ってきた方は、さほど構える必要はありませんので、
是非、気楽な気持ちで、難易度の低いところからチャレンジしてみてください。何人かでまとまって参加してもいいと思います。
ボランティア活動に従事すれば、ハイヤーセルフが目覚め、「如何に生きるか」、「何のために働くのか」というビジョンが鮮明になりますので。

「自分探し」とやらで、当てのない旅に出るくらいなら、ボランティアに身を捧げた方が、手っ取り早く、自分の中にあるダイヤの原石を見つけることができます。
或いは、いつも口先だけの評論家になってしまっている方は、実際に自ら動いてみたら、新たな発見があるかもしれません。

《熊本地震震災ミュージアムKIOKU》
(Photo by ISSA)
そして、災害ボランティアの経験者が増えれば、副次的に「この国を守りたい」という国民の意識が自発的に促され、
それは、すなわち「心の守り」を高めることにも繋がるのです。
先述の「愛知人」さんは、〇〇官の私からみても、とても頼りになる存在でした。
国防に対する理解もあり、こういう方々が増えていけば、日本の「民間防衛」も変えて行けるように思えました。
最後に一言だけ申し上げますと、
災害ボランティアで一番注意したいことは、「人の役に立ちたい」という欲求が前面に出過ぎると、途端に「被災者の気持ちが置き去りにされる」ということです。
常に「被災者ファースト」

その原点だけは、いつも
忘れないようにしたいですね🌼
後 記
熊本滞在中は、生前、両親祖父母と縁が深かった神社仏閣を巡り、「もうこれ以上、熊本で地震が起きませんように」と祈願してきました。

左下:木原不動尊 右下:六殿神社
(Photo by ISSA)
我が故郷・熊本に、一日も早く、平穏で幸福な日常が戻ることを、切に願っております🍀
