地方創生をやりたいなら”地理学部”に行け!――“困ってない課題”を見つけろ!
少し前に「地理学部に行け」という記事を書きました。
ありがたいことに多くの反響をいただいたが、その中で一番多かったのは「そもそも日本に地理学部は存在しない」というツッコミでした・・・
ごもっともです!!! だけど、懲りずに続編を書くことにしました。
なぜなら、地理学という学問が地方創生において、これからますます重要になると感じているから。
1.“困っていない不便さ”にこそ、地域の課題がある
地方の現場にいると、地元の人にも気づかれていない課題に出会うことがある。
たとえば、バスが一日数本しか走っていなくても、みんな「車があるから大丈夫」と言う。
買い物先が片道10キロ離れていても、「昔からそうだから」と苦にしない。
外から見ると「なぜそんな生活を強いられているのか」と思うが、当事者はもうそれを“課題”として感じていない。
いわば、地域の暮らしは、その土地に合わせて最適化されすぎている。
だからこそ、外から見れば明らかな不便が、内側では“困っていない不便さ”として定着してしまう。
こうした「慣れ」の中にこそ、まちづくりの出発点が隠れている。
誰も困っていないから放置される。
でも、人口構成や交通、産業構造が変化したとき、その不便さが一気に表面化する。
“困っていない不便さ”を見つけ出すことが、地方創生の最初の仕事だと私は思う。
そして、それを明らかにするには、構造的に物事を見る視点が欠かせない。
地理学は、まさにその力を持っている。
地理学は、地形や土地利用といった「空間」だけを扱う学問ではない。
地域の“かたち”がどのように生まれたのかを、時間と空間の両面から読み解く学問だ。
土地や地形、交通や産業、そして人の営みを重ね合わせて「なぜ今の形になっているのか」を読み解く。
この構造を見抜く力こそ、地方創生の出発点に近いと私は感じている。
2.成功や失敗の外側に立つ地理学
地理学者の関心は、成功や失敗の評価にないように見える。
彼らはむしろ、「なぜこのような構造が生まれたのか」を明らかにすることに純粋な興味を持っている。
良し悪しを判断するのではなく、現象を丁寧に観察し、その背後にある因果を探る。
その理学的な態度はとても誠実で、社会の変化を冷静に理解するための重要な姿勢だと思う。
ただ、地方創生のような実践の場にいると、その“価値判断の外側に立つまなざし”が、もう少し課題発見の方向へ伸びてくれたらと感じることがある。
何が問題で、どこに改善の余地があるのか――
誰も気づいていない課題を、構造として明らかにできるのが地理学だと感じている。
3.地理学者が増えつつある、地方創生の現場
近年、地域計画や構想づくりの場に地理学者が関わる機会が増えてきた。
座長として議論を整理する人もいれば、GISを活用して地域構造を可視化する研究者もいる。そうした動き自体は非常に心強い。
一方で、地方創生の現場から見ると、少しジレンマもある。
地理学者の多くは「街を良くすること」よりも、「なぜそうなったのか」を解き明かすことに関心を置いているように見える。
理学としての純粋さを大切にしているからこそ、社会の変化に直接コミットすることには慎重なのかもしれない。
私は、その姿勢を否定するつもりはない。
むしろ、だからこそ地理学は信頼できる。
けれど、もしその観察の目を少しだけ“課題発見”に向けてくれたら、地方創生の議論はより実りあるものになると思う。
構造を見抜く力が、政策や計画の出発点としてもっと活かされるはずだ。
4.地理学が見つけ、工学が解く
地方創生の現場で最も難しいのは、「何を課題とするか」を見定めることだ。
課題の定義が曖昧なままでは、どんなに立派な解決策も効果を発揮しない。
地理学は、課題を解決する学問ではない。
けれど、何が課題なのかを発見し、構造として言葉にできる。
その後の制度設計や技術的な解決は、工学や行政の領域が担えばいい。
地理学が見つけ、工学が解く。私は、そういう関係が理想だと思っている。
地理学の分析と観察が社会の基礎を整え、その上に他の専門が重なっていく。
地理学は“出発点の学問”なのだ。
5.課題を見つける地理学者へ
地理学の本質は、世界をありのままに観察し、構造を明らかにすることだ。
その態度は、まちづくりや政策に直接的な解を出すものではない。
けれど、もしあなたが「地方を変えたい」「地域の未来に関わりたい」と思うなら、
その観察の目を“課題発見”へ少しだけ向けてみてほしい。
地理学者がその視点を持てば、社会のどんな専門家よりも、まちづくりの出発点を描ける人になれる。
地方創生を本気でやりたいなら、地理学部に行け。
そして、課題を見つける地理学者になってほしい。
最後に この記事の教訓
“困っていない不便さ”を疑え
地域の課題は、当事者が困っていないところに潜んでいる。地理学は構造を読む学問
地形や人の営みを重ね、地域の“かたち”の理由を明らかにする。課題は作るものではなく、見つけるもの
誰も気づいていない構造を可視化することで、課題が浮かび上がる。地理学が見つけ、工学が解く
解決より前に、正しい問いを見つけることが社会を動かす。観察の目を、未来へ
地理学者が“課題発見”に目を向ければ、地方創生の出発点を描ける。
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