地方創生をやりたいなら ”地理学部” に行け!

「地域創生」という言葉が世間に広まり、多くの自治体や企業が取り組みを打ち出してきた。しかし現場で感じるのは、どこも似たような施設、イベント、商業開発ばかり。“地域らしさ”よりも“都会っぽさ”や“便利さ”を模倣した施策が目立ち、「プチ東京化」「東京の劣化コピー」の波が各地を覆っている。
なぜ、本来その土地にしかない個性や物語が見えなくなるのか?
「東京的」価値観や国の補助金頼みの政策、横並び志向が、現場の創造性や多様性を圧迫している。そして、表層的な“賑わい”を追求した結果、地域の魅力や誇りが埋もれていくという本末転倒な現象が続いている。
1.「文理選択」と地理必修化──学びの多様性と進路の壁
日本の高校教育では、多くの生徒が高校1〜2年で「文系・理系」という二者択一の進路選択を迫られる。
この“文理選択”が、実は子どもたちの興味や才能の伸びしろを大きく狭めていることは、教育現場や親世代の間でも近年強く指摘されている。
本来、社会や地域の課題は「文系」「理系」の枠を超えて横断的な視点が必要だ。しかし進学・受験制度の都合で、「理系なら数学と理科中心、文系なら国語と社会中心」という科目配分や受験準備が決まってしまう。その結果、「自分は理系だから地理は不要」「文系だから数学は関係ない」といった固定観念が刷り込まれることになる。
こうした構造のなかで、「地域を知る」「まちづくりに関わる」ような学びは、本来は“文理融合”の総合知が不可欠だが、どちらの進路からも選ばれにくい“隙間”の位置に置かれてきた。
一方、ここ数年で「地理」が高校で必修化されたことは大きな前進だ。
地域・社会・自然のつながりやグローバルな視点を育てる地理教育は、まさに今の社会に必要とされている力だといえる。
だが、その一方で「地理」が一部の生徒にとって“受験の逃げ道”になっている現実も見逃せない。
受験戦略として「地理は暗記でなんとかなる」「数学や歴史より点が取りやすい」といった理由で選択され、「なぜ地理を学ぶのか」「どんな力が身につくのか」という本質的な問いが置き去りにされる傾向がある。
文理選択がもたらす進路の壁、そして地理必修化の光と影。
「地域創生やまちづくりに本当に必要なのは、“受験のため”ではなく、“社会を多面的に読み解くための地理学”だ」というメッセージを、今こそ現場や子どもたちに届けたい。
2.地理学とは何か──“地域らしさ”を知るための学問
地理学は、人間・自然・空間・社会の関係を総合的に読み解く学問だ。
中でも地誌学は、地域ごとの歴史・文化・産業・風景など“その土地ならでは”の個性や物語を多角的に掘り下げる。
また、系統地理学は、人口や産業、都市・環境といったテーマごとに一般性や法則性を明らかにする。
現場を歩き、地図を作り、住民の話に耳を傾け、多様なデータや歴史資料を組み合わせて「なぜ今こうなっているのか?」を解き明かす。
「地理学=“地域を読む力”」であり、それは“まちづくり”の原点でもある。
3.地理学の強みと他分野との関係性──“ハブ”になる力
まちづくりや地域創生の現場で本当に求められるのは、「地域の特徴や潜在力を発見し、他分野と連携して形にする」能力だ。
地理学は「地域を読む」ことを専門とするが、単独で地域を変革できるわけではない。
実際にプロジェクトを動かすには、
その土地の特徴や課題を地理学・地誌学で“発見”し、
その資源や課題をどう設計・インフラに落とし込むかは都市工学・土木工学の出番、
住民の合意形成や政策づくりは政策学・法学の力、
ビッグデータや住民の移動解析、観光の需要予測などにはデータサイエンスの手法も不可欠となる。
地理学的な視点を持つ人材は、地域のリアルな現場で「まだ誰も言葉にしていない課題」や「見過ごされてきた地域資源」をいち早く発見し、現実のデータや物語として“見える化”できる。
その上で、都市工学や政策学、データサイエンスの専門家と住民の間に立ち、「みんなが納得し共感できる“まちの未来像”を具体化する推進役=エンジン」となる。 地理学出身者は、プロジェクトを“動かす起点”になれる存在なのだ。
4.地域創生やりたいなら、まず地理学を!
「まちづくりをしたい」「地域に貢献したい」――そう思うなら、まず“地域を読む力”を鍛えるのが一番の近道だ。
地理学は、地域創生に取り組むための基礎体力となる。
「なぜこの町は今こうなっているのか?」「ここにしかない価値とは何か?」を徹底的に問い続けよう。
そのうえで、都市工学や政策学、データサイエンスといった他分野と協力し、課題を“かたち”にし、未来を切り拓いていけばいい。
日本の主要な大学では、人文地理・地誌学・地域調査の実践的な経験が積める。
「まちづくり=地理学だけ」ではないが、「地理学から始めれば、必ず他分野と連携する力もつく」と胸を張って言いたい。
5.進路選択の壁を越えて
今の受験制度や社会構造のなかで、「手堅い進学先」「わかりやすい職業」ばかりが重視されているが、
本当にこれからの日本社会に必要なのは、“地域らしさ”を読み解き、現場で多分野をつなげる“地理学的人材”だ。
地域創生を志す人、地理好きな人へ――
まずは地理学という扉を叩いてみてほしい。
“地域を知ること”が、日本の新しい未来をつくる最初の一歩になる。
最後に この記事の教訓
「地域創生」は“東京的価値観”や横並びの模倣では成功しない
本当に必要なのは、その土地ならではの物語や価値を見出す「地域を読む力」である。
日本の進路選択や受験制度の構造が、学びの多様性と本質を損なっている
「文理選択」の早期化や「受験のための地理学」は、社会の現場で本当に求められる力を育みにくくしている。
地理学は“まちづくり・地域創生”の基礎体力
地理学は、現場を歩き、課題や価値を見抜き、地域独自の可能性を言語化できる唯一無二の学問分野である。
実践には他分野との連携が不可欠
地域を知る(地理学)、カタチにする(都市工学・土木工学)、社会制度にする(政策学)、データで分析する(データサイエンス)など、多様な専門家と力を合わせてこそ現実の地域創生が動き出す。
「地域創生を志すなら地理学部へ」は挑発的なメッセージ
“地理学だけ”に閉じず、「地理学的視点を持った人材こそ、まちづくりの現場で他分野を巻き込むエンジンになれる」という新しいキャリア像・学びの意義を社会に問い直している。
社会を変える第一歩は、「地域を本気で知る」ことから
「進路の壁」「受験の壁」を乗り越えて、自分の“知りたい”“変えたい”を原動力に、現場で挑戦する人材こそ、未来を切り拓く力となる。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップは執筆時のコーヒー代に使わせていただきます!