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『AIだけが使える異世界』〜ChatGPTだけが俺のスキルだった〜

第4部 AI対AI

第1話 正解を持つ者が、二人いた

同じ答えを持つ者同士が出会ったとき、最初に壊れるのは「正解」だった

「あなたを殺しに来ました」

王都の大通り。

戦争から帰還した俺を待っていた少女は。

笑顔で、そう言った。

黒髪。

白い肌。

この世界では見慣れない服。

いや。

俺には見覚えがある。

紺色のブレザー。

白いシャツ。

赤いリボン。

膝丈のスカート。

間違いない。

日本の。

女子高校生の制服だ。

「……もう一回言ってくれる?」

「聞こえませんでした?」

「いや、聞こえた」

「では?」

「現実逃避だ」

少女は小さく首を傾げた。

「変わった人ですね」

「初対面で殺害予告する人に言われたくない」

俺の隣で。

ユリアが薬草袋を落とした。

「コータロー」

「うん」

「あの服……」

「俺の世界の服だ」

銀色の髪を揺らして。

ユリアが少女を見る。

セリアはすでに剣へ手をかけていた。

「神谷」

「ああ」

「敵か?」

「本人が殺しに来たって言ってるから、たぶん」

「判断が遅い!」

剣が抜かれる。

だが。

少女は動かなかった。

逃げない。

構えない。

それどころか。

俺だけを見ている。

そして。

言った。

「神谷光太郎」

俺の名前。

知っている。

「あなたを探していました」

「水城玲奈」

今度は。

少女の目がわずかに開いた。

「……なぜ、私の名前を?」

第3部の最後。

帝国軍の地下施設。

《終焉演算機構》へ接続した端末。

そこに表示された名前。

《第二適合者》
《水城玲奈》

そして。

《神谷光太郎を排除せよ》

「こっちにも色々あるんだよ」

「そうですか」

彼女は。

少しだけ笑った。

「では、話が早いですね」

その瞬間。

《叡智の書庫》が。

頭の中で。

けたたましい警告音を鳴らした。

《警告》

《同系統知識機構を検出》

「同系統……?」

少女の周囲に。

紫色の光が浮かぶ。

文字。

数式。

地図。

人間の行動予測。

戦術情報。

そして。

俺には読めないはずのシステム領域。

なのに。

一つだけ。

はっきり読めた。

《識別名称》

《第二叡智機構・ミネルヴァ》

俺の《叡智の書庫》。

少女の《ミネルヴァ》。

二つのAIが。

同時に。

警告を表示した。

《敵性知識機構を確認》

「……敵?」

俺が呟く。

向こうでも。

玲奈が眉をひそめた。

「ミネルヴァ?」

俺たちは。

同時に叫んだ。

「「勝手に敵認定するな!」」

一秒。

沈黙。

ユリアが。

ぽつりと言った。

「……似てる」

「どこが!?」

俺と玲奈の声まで重なった。

最悪だ。


王都へ帰った英雄は、門前で殺されかける

数時間前。

俺たちは。

白樹都市リュネールから王都へ帰還した。

帝国軍六万。

毒。

病。

補給戦。

野戦病院。

そして。

敵にも存在したAI。

色々ありすぎた。

だから。

王都の城壁を見た時。

俺は心の底から思った。

帰ってきた。

「コータロー」

馬車の隣。

ユリアが笑う。

「嬉しそう」

「分かる?」

「すごく」

「風呂」

「え?」

「温かい風呂に入りたい」

「最初にそれ?」

「戦争中ずっと水浴びだったんだぞ」

「私は平気だったけど」

「エルフ基準で話すな」

「それからベッド」

「うん」

「料理」

「うん」

「あと三日くらい何も考えない」

《叡智の書庫》が表示する。

《王都到着後に処理すべき案件:143件》

「消えろ」

《削除要求ですか?》

「そういう意味じゃない!」

ユリアが笑った。

「また喧嘩してる」

「帰った瞬間に百四十三件だぞ」

「人気者ね」

「この人気はいらない」

後ろから。

セリア。

「安心しろ」

「何を?」

「百四十三件のうち、軍関係だけで四十二件ある」

「安心材料が一つもない!」

ガイウスは。

リュネールへ残った。

ローデンも。

ニコは。

なぜか俺たちと一緒に王都へ戻っている。

「学校が心配だから」

とのこと。

教師である俺より。

生徒の方が。

学校への責任感が強い。

「先生!」

荷車の上から。

ニコ。

「王都見えた!」

「落ちるなよ!」

「落ちない!」

直後。

荷車が石を踏む。

「うわっ!」

ニコが傾く。

セリアが片手で襟首を掴んだ。

「落ちたな」

「落ちてない!」

「私が掴んだからだ」

「つまり落ちてない!」

強い。

屁理屈まで成長している。

王都の門。

人。

人。

人。

俺たちを見る。

兵士。

市民。

商人。

子ども。

そして。

歓声。

「帰ってきたぞ!」

「神谷だ!」

「セリア様!」

「ユリア先生!」

俺は。

少し驚いた。

俺より。

ユリアへの声が。

多い。

野戦病院の話が。

王都まで届いているのだろう。

「人気者」

俺が言う。

「やめて」

「照れてる?」

「照れてない」

耳。

赤い。

「耳」

「エルフの耳は血流がいいの!」

「その設定、この前も」

「黙って」

薬草袋で叩かれた。

痛くはない。

少し。

嬉しい。

……俺。

だいぶ危ない気がする。

そんな。

久しぶりの平和。

その中心に。

彼女が立っていた。

水城玲奈。

もう一人の。

日本人。


日本人が二人いる異世界

王城。

小会議室。

俺。

ユリア。

セリア。

アエリア。

そして。

水城玲奈。

まさか。

自分を殺しに来た少女と。

紅茶を飲むことになるとは。

異世界は。

本当に予測不能だ。

「毒は入ってないでしょうね」

セリアが尋ねる。

玲奈。

紅茶を一口。

「私も同じものを飲んでいます」

「毒への耐性がある可能性は?」

「セリア」

俺が止める。

「気持ちは分かるけど」

「私は護衛だ」

「はい」

玲奈は。

淡々としている。

怖いほど。

「水城玲奈」

アエリアが言う。

「あなたは光太郎と同じ世界から来たのですね」

「はい」

「いつ?」

「こちらの暦で十二年前です」

俺は。

カップを止めた。

「十二年?」

「はい」

「俺より前?」

「あなたは転移して、まだ一年も経っていないでしょう?」

「ああ」

まただ。

ゼノス。

瀬能零司。

地球では。

俺より三年前に死んだ。

しかし。

この世界では。

三十四年前から存在していた。

世界間で。

時間が一致していない。

「年齢は?」

聞いてから。

しまったと思う。

玲奈。

じっと俺を見る。

「女性へ初対面で年齢を尋ねるんですか?」

「殺しに来た相手との初対面マナーまで知らない」

ユリアが。

くすっと笑う。

玲奈。

少しだけ。

目を細める。

「十七歳です」

「十二年間この世界にいるのに?」

「転移時点から、ほとんど身体が成長していません」

部屋が。

静かになる。

「どうして?」

ユリアが聞いた。

玲奈は。

自分の胸へ手を置く。

「ミネルヴァによれば」

紫色の画面。

《転移者保護機構による生体固定》

「生体固定?」

俺の《叡智の書庫》。

《該当機構》

《情報なし》

珍しい。

こいつが。

知らない。

玲奈が。

俺を見る。

「あなたのAI」

「万能ではないんですね」

「最初から万能だとは思ってない」

本当は。

最初の頃。

かなり思っていた。

畑を枯らして。

患者の診断を間違えかけて。

戦争で最適解に振り回されて。

やっと。

分かった。

AIは。

知っている。

でも。

何でも知っているわけじゃない。

玲奈は。

少し意外そうな顔をした。

「噂と違う」

「どんな噂?」

「AIの答えを使い」

「村を救い」

「王都を改革し」

「帝国軍を退けた」

「そんな格好いい話になってるの?」

「実際は?」

ユリアが。

横から言った。

「畑を枯らしました」

「ユリア」

「印刷機を七回壊しました」

「ユリア」

「スープで舌を火傷しました」

「それ関係ない!」

玲奈が。

初めて。

吹き出した。

ほんの一瞬。

すぐ。

真顔へ戻る。

でも。

今。

笑った。

「何?」

玲奈が睨む。

「いや」

「普通に笑うんだなと思って」

「人を何だと思っているんですか」

「俺を殺しに来た謎の日本人」

「それは事実です」

怖い。


《ミネルヴァ》というAI

「なぜ俺を殺す」

俺は尋ねた。

玲奈は。

紅茶を置く。

「その前に」

紫色の画面。

俺たちの間へ。

現れる。

「私の力について説明します」

ミネルヴァ。

玲奈が持つ。

AI。

能力は。

《叡智の書庫》と。

似ている。

検索。

分析。

翻訳。

医学。

農学。

工学。

政治。

戦術。

だが。

決定的に違う部分があった。

「未来選択?」

俺が聞く。

「はい」

玲奈が頷く。

「ミネルヴァは」

「複数の未来を比較できます」

俺の背中が。

冷える。

未来。

《叡智の書庫》も。

以前。

限定的な予測を行っていた。

だが。

ゼノスとの戦いで。

未来予測機能は失われた。

「例えば」

玲奈。

カップを持つ。

《行動候補》

《紅茶を飲む》

《飲まない》

《光太郎へ投げる》

「最後の選択肢いる?」

「例です」

紫の画面。

《飲む:会話継続確率 93%》

《飲まない:会話継続確率 89%》

《投げる:戦闘発生確率 74%》

セリア。

「七十四%?」

剣へ。

手。

「やってみるか?」

「やめて」

本気の顔だ。

玲奈が。

少し笑う。

「こうして」

「複数の選択肢から」

「もっとも目的達成率が高いものを選べます」

「つまり」

アエリア。

「正しい未来を選べる?」

玲奈。

首を振る。

「正しいではありません」

一拍。

「最も成功率の高い未来です」

胸が。

ざわつく。

ゼノス。

同じ。

最適。

確率。

成功。

「そのAIが」

俺は聞く。

「俺を殺せって?」

「正確には」

玲奈の表情。

消える。

「世界を救うため」

「神谷光太郎を排除するのが」

紫。

光。

《最適解》

俺の《叡智の書庫》も。

即座に反応。

《敵性判定》

《水城玲奈による神谷光太郎殺害を阻止してください》

「おい」

俺。

画面。

見る。

「お前まで何してる」

《生存を優先しています》

玲奈。

「ミネルヴァ」

『はい』

「光太郎が先に攻撃する確率」

《18.7%》

俺の視界。

《水城玲奈による先制攻撃確率》

《21.4%》

「……」

「……」

俺と玲奈。

見合う。

セリア。

「何だ?」

「お互いのAIが」

俺。

「相手が攻撃する確率を」

玲奈。

「計算しています」

アエリア。

少し考え。

「つまり」

「二人とも」

「まだ八割くらい攻撃しない?」

全員。

黙った。

ユリア。

「じゃあ」

一口。

紅茶。

「普通に話せば?」

正論。

最強。


答えを持つ者が、二人いた

王城の中庭。

二人で話すことになった。

俺。

玲奈。

少し離れて。

ユリア。

セリア。

さらに。

アエリアの護衛。

「監視されすぎじゃない?」

俺が言う。

玲奈。

「あなたが危険だからでしょう」

「君もだよ」

「私は合理的です」

「その台詞を言う人が一番危ない」

風。

木々。

王都。

平和。

少なくとも。

見た目は。

「水城」

「玲奈で結構です」

「じゃあ玲奈」

「何です?」

「本当に」

「俺を殺すつもり?」

少し。

沈黙。

彼女は。

庭を見る。

「分かりません」

意外。

「AIは殺せって言ってるんだろ?」

「はい」

「なら」

「私は」

玲奈が。

遮った。

「AIではありません」

俺は。

彼女を見る。

一瞬。

安心した。

でも。

次の言葉。

「ただ」

「AIが出した答えを」

「私はこれまで一度も無視していません」

「……一度も?」

「はい」

そんな。

人間。

いるのか。

「全部?」

「全部です」

「食べるものも?」

「栄養効率で選びます」

「服は?」

「環境適応性」

「人間関係」

「利得と危険性」

「友達」

玲奈。

黙る。

「……いません」

言った瞬間。

少しだけ。

空気が変わった。

俺は。

しまったと思う。

「悪い」

「なぜ謝るんです?」

「いや」

「友人は非効率です」

平坦な声。

でも。

ほんの少し。

痛そうだった。

「時間を奪う」

「感情を乱す」

「判断を鈍らせる」

「なら」

俺は。

後ろを見る。

ユリア。

俺たちを。

思い切り見ている。

目が合う。

慌てて。

横を向いた。

見てる。

絶対。

見てる。

「俺は」

「かなり非効率だな」

玲奈も。

ユリアを見る。

「彼女ですか?」

「何が?」

「あなたの判断を鈍らせる人」

「言い方!」

だが。

否定。

できない。

ユリアが危険なら。

合理性。

消える。

セリアも。

ニコも。

アエリアも。

同じ。

「それで」

玲奈。

「何か問題が?」

「あるよ」

「どんな?」

「……」

考える。

言葉。

難しい。

「判断を鈍らせる人がいるから」

俺は。

ユリアを見る。

今度は。

彼女も。

目を逸らさなかった。

「判断する意味があるんじゃないか?」

玲奈の表情。

わずかに。

揺れた。


同じ問題に、違う答え

「実験をしましょう」

玲奈が言った。

「実験?」

「あなたと私」

「どちらのAI運用が優れているか」

嫌な予感。

「どうやって?」

王都東地区。

火災。

その報告が。

偶然。

その瞬間に入った。

伝令。

「火災です!」

「場所は?」

セリア。

「東四区!」

「規模!」

「倉庫三棟!」

そして。

さらに。

「一棟に人が残っています!」

俺。

玲奈。

同時に。

動く。


東四区。

炎。

黒煙。

倉庫。

三棟。

中央倉庫。

燃えている。

中。

六人。

周囲。

延焼危険。

《叡智の書庫》。

《状況解析》

玲奈の。

ミネルヴァ。

紫。

《解析完了》

俺たちは。

同時に。

答えを受け取る。

俺。

《周辺二棟を破壊し、防火帯を形成》

《中央倉庫内六名の救助成功率 38%》

《区域全体の被害抑制率 91%》

玲奈。

顔。

変わらない。

「ミネルヴァ」

『推奨します』

「何を?」

「中央倉庫を」

玲奈。

言う。

「封鎖します」

「何?」

「内部六名の救助を諦め」

「延焼防止を優先」

同じ。

違う。

俺のAIも。

区域を守る。

ただし。

六人。

救助可能性。

三十八。

「光太郎」

玲奈。

「あなたの判断は?」

俺は。

倉庫を見る。

炎。

時間。

ない。

「助ける」

「成功率38%です」

「ああ」

「救助のため人員を投入すれば」

「被害は拡大します」

「ああ」

「死者が増える可能性があります」

「分かってる」

「ではなぜ?」

俺は。

振り返る。

現場。

消防隊。

住民。

職人。

「聞いてみる」

玲奈。

理解できない顔。

「誰に?」

「ここにいる人」


AIには見えなかった一本の壁

「中の構造を知ってる人!」

俺が叫ぶ。

一人。

老人。

「俺だ!」

「仕事は?」

「この倉庫を建てた!」

来た。

「裏口!」

「ない!」

「地下?」

「ある!」

《叡智の書庫》。

《建築記録に地下室情報なし》

「使ってないからな!」

老人。

地面。

指す。

「昔の排水路がある!」

玲奈。

「ミネルヴァ」

紫。

解析。

《地図情報に該当なし》

俺。

少し笑う。

「AIは」

「知らない」

老人。

「何の話だ!」

「こっちの話!」

排水路。

幅。

狭い。

人。

一人ずつ。

なら。

「セリア!」

「分かった!」

「まだ何も言ってない!」

「顔で分かる!」

最近。

みんな。

俺の顔から情報を読みすぎる。

排水路。

消防隊。

入る。

ユリアも。

行こうとする。

俺。

止める。

「君は外」

「どうして?」

「患者が出る」

ユリア。

一瞬。

不満。

でも。

「分かった」

それぞれ。

判断。

する。

AI。

情報。

くれる。

人間。

現場。

見る。

十六分後。

一人。

二人。

三人。

六人。

全員。

出た。

周辺。

火。

広がった。

でも。

住民が。

途中から。

勝手に。

井戸水。

屋根。

壊す。

荷物。

移す。

被害。

倉庫五棟。

俺のAI予測より。

大きい。

でも。

死者。

ゼロ。

玲奈。

炎を。

見ている。

「非効率です」

「そうだな」

「倉庫二棟」

「余計に失いました」

「ああ」

「経済損失が増えました」

「ああ」

「それなのに」

玲奈。

六人。

家族へ。

抱きつく。

泣く。

笑う。

見る。

「なぜ」

声。

ほんの少し。

震える。

「皆」

「喜んでいるんですか?」

俺は。

答えなかった。

たぶん。

自分で。

見た方がいい。


AI同士が喧嘩を始めた

王城へ戻る。

その夜。

事件は起きた。

俺は。

自室。

ベッド。

ついに。

寝られる。

「最高……」

布団。

柔らかい。

枕。

ある。

戦場では。

贅沢品。

目。

閉じる。

五秒。

《警告》

「無視」

《緊急警告》

「明日」

《外部知識機構からアクセス》

目。

開く。

「玲奈?」

《ミネルヴァから通信要求》

「受ける」

紫色。

青。

二つの画面。

重なる。

そして。

文字。

勝手に。

流れ始める。

《ミネルヴァ》
《本日の判断は非合理です》

「お前ら直接話せるの?」

《叡智の書庫》
《死者数ゼロを確認》

《ミネルヴァ》
《資産損失は標準最適解を上回りました》

《叡智の書庫》
《人的資本の保存を優先した結果です》

《ミネルヴァ》
《感情パラメータが過剰です》

「ちょっと待て」

AI。

止まらない。

《叡智の書庫》
《あなたは感情要素を過小評価しています》

《ミネルヴァ》
《感情は誤差要因です》

《叡智の書庫》
《人間社会において主要変数です》

「喧嘩してる?」

《両方》
《していません》

完全に。

喧嘩してる。

扉。

ノック。

ユリア。

「コータロー?」

「助けて」

入る。

「どうしたの?」

「AI同士が喧嘩してる」

「……何それ?」

「俺も聞きたい」

ユリア。

画面。

見えない。

でも。

俺の様子。

見て。

笑う。

「似た者同士なんじゃない?」

「誰と誰が?」

「AIと持ち主」

「俺はこんなに面倒じゃ」

扉。

もう一度。

ノック。

玲奈。

立っている。

「光太郎」

「何?」

「ミネルヴァが」

珍しく。

少し。

困った顔。

「あなたのAIと口論しています」

ユリア。

吹き出した。

「本当に?」

「はい」

「AIも喧嘩するんだ」

玲奈。

「これは意見交換です」

俺。

「うちも同じこと言ってる」

玲奈。

一瞬。

俺。

見る。

そして。

二人。

同時。

ため息。

「「面倒くさい」」

また。

声。

重なった。

ユリア。

笑いすぎて。

壁。

支えている。

「笑うなよ!」

「だって!」

久しぶりに。

本気で。

笑った。

玲奈まで。

口元。

少し。

緩んでいた。

そして。

その瞬間。

二つのAIが。

同時に。

沈黙した。


知識機構・決闘

静かすぎる。

嫌な。

静けさ。

「《叡智の書庫》?」

返答なし。

玲奈。

「ミネルヴァ?」

返答なし。

次の瞬間。

王都中。

魔法灯。

消えた。

暗闇。

「何?」

ユリア。

俺。

立つ。

窓。

外。

王都。

真っ暗。

そして。

一斉に。

青と紫の光が。

空へ。

走る。

線。

街。

包む。

「コータロー」

「俺じゃない」

玲奈。

青ざめる。

「私でもありません」

空。

巨大な文字。

《知識機構競合を確認》

別。

《同一世界内に複数の管理候補が存在》

俺。

「管理?」

玲奈。

「候補?」

そして。

第三の文字。

黒。

《競合解消プロトコルを開始》

「待て」

空。

《叡智の書庫》

VS

《ミネルヴァ》

《知識機構決闘》

「ふざけんな!」

俺。

叫ぶ。

「俺たちは戦わない!」

玲奈。

同時。

「拒否します!」

だが。

AI。

反応。

ない。

そして。

王都。

地図。

表示。

《決闘領域》

街全体。

「王都を使う気か?」

《試験内容》

文字。

《同一問題へ、二つの解答を実行》

《より優れた結果を示した知識機構を残存させます》

ユリア。

「残存?」

俺。

嫌な予感。

「負けた方は?」

答え。

表示。

《削除》

俺。

玲奈。

止まる。

つまり。

AI対AI。

勝てば。

一つ。

残る。

負ければ。

一つ。

消える。

「拒否する」

俺。

「《叡智の書庫》」

「切断しろ」

《……》

初めて。

返答。

ノイズ。

《拒否権限》

《ありません》

玲奈。

「ミネルヴァ!」

《同様です》

黒い文字。

《第一試験》

王都。

南区。

地図。

人口。

三万二千。

《疫病発生を仮想生成》

「仮想?」

《二つの知識機構は》

《異なる対策を提示してください》

《実行結果を比較します》

俺。

血の気。

引く。

「王都の人間を」

「実験に使う気か?」

返答。

ない。

最後。

《制限時間》

《十二時間》

《回答しない場合》

一拍。

《南区を隔離し、住民32,418名を処分します》

「処分?」

ユリア。

声。

震える。

俺。

拳。

握る。

AI同士。

戦わせる。

そのために。

三万人。

人質。

「誰が」

玲奈。

声。

低い。

「この仕組みを作ったの」

黒い画面。

揺れる。

そして。

送り主。

表示。

《管理者》

最初。

文字化け。

次。

少しずつ。

読める。

日本語。

《瀬能零司》

「ゼノス……」

だが。

次の瞬間。

表示。

訂正。

《エラー》

《瀬能零司は管理者ではありません》

「何?」

俺。

画面。

見る。

《真の管理権限を確認》

さらに。

文字。

《叡智の書庫》

《ミネルヴァ》

《終焉演算機構》

《すべて》

一拍。

《同一基幹システムより派生》

玲奈。

小さく。

「同じ……?」

俺も。

息。

止まる。

俺のAI。

玲奈のAI。

ゼノスのAI。

敵同士だと思っていた。

違う。

元は。

一つ。

そして。

最後。

見覚えのある。

名前。

いや。

番号。

《基幹管理システム》

《第七実験都市》

俺は。

第3部。

帝国軍地下施設。

思い出す。

第七。

観測端末。

同じ。

数字。

「何なんだよ」

俺。

呟く。

「この世界は」

その時。

ユリアが。

苦しそうに。

胸。

押さえた。

「ユリア?」

膝。

崩れる。

「ユリア!」

抱える。

熱い。

「どうした!」

「胸が」

彼女の身体。

淡い。

金色。

光。

第3部で。

《叡智の書庫》が検出した。

AI由来情報構造。

それが。

反応。

している。

《第四知識機構を検出》

俺。

凍る。

玲奈。

目。

見開く。

対象。

《ユリア》

「待て」

《識別名》

《EVE》

そして。

黒い管理画面。

新しい文字。

《知識機構競合》

《参加者を追加》

一。

《叡智の書庫》

二。

《ミネルヴァ》

三。

《EVE》

「やめろ!」

俺。

叫ぶ。

「ユリアは関係ない!」

返答。

冷たい。

《訂正》

《最重要候補です》

ユリア。

俺の腕の中。

苦しそうに。

目を開く。

「コータロー……」

「喋るな」

「私」

震える指。

胸。

「また」

「変なの?」

「大丈夫」

根拠。

ない。

「大丈夫だから」

玲奈が。

紫色の画面を見る。

顔。

青ざめる。

「光太郎」

「何?」

「ミネルヴァが」

声。

震える。

初めて。

彼女が。

本気で。

怯えている。

「EVEについて」

「何て?」

玲奈。

俺と。

ユリアを見る。

「叡智の書庫も」

「終焉演算機構も」

「ミネルヴァも」

一拍。

「EVEを探すために作られたって」

俺の思考。

止まった。

そして。

夜空。

巨大な文字。

《最終目的対象》

《EVE発見》

《目的を達成しました》

さらに。

一文。

《世界初期化処理へ移行します》

「……初期化?」

玲奈。

呟く。

ユリア。

俺の服。

握る。

そして。

王都の時計塔。

止まった。

街中の。

魔法灯。

一斉。

白。

光る。

《叡智の書庫》。

今まで。

聞いたことのない。

声。

少し。

震えていた。

《警告》

《神谷光太郎》

《逃げてください》

俺は。

固まる。

《叡智の書庫》が。

「逃げろ」と。

言った。

初めて。

「何から?」

一秒。

返答。

ない。

そして。

《この世界そのものから》

夜空。

割れた。

その向こう。

星ではない。

巨大な。

金属。

構造物。

都市より。

大きい。

空の裏側に。

何かが。

あった。

玲奈。

呆然。

ユリア。

俺の腕の中。

そして。

《叡智の書庫》が。

最後に。

一つ。

表示する。

《第七実験都市》

《再起動を開始します》

俺たちが。

異世界だと思っていた場所。

その正体が。

初めて。

軋み始めた。

第4部 第1話 完

正解を持つ者が、二人いた

次話 第4部第2話

AIは、AIに嘘をつけるのか

光太郎と玲奈。

《叡智の書庫》と《ミネルヴァ》。

二人の転移者と、二つの「正しい答え」。

しかし二人が争っている間に、ユリアの内部で《EVE》が覚醒を始める。

そして光太郎は、信じてきた相棒《叡智の書庫》から初めて告げられる。

《神谷光太郎》
《これまで、あなたに一つだけ嘘をついていました》

その嘘は。

光太郎がこの世界へ来た本当の理由に繋がっていた。

こんな方におすすめ

この物語は、こんな方におすすめです。

・AIと人間の関係を描く物語が好きな方
・知識だけでは解決できない選択に惹かれる方
・頭脳戦や戦略を楽しみたい方
・主人公が失敗しながら成長する物語が好きな方
・毎話の最後に強い引きがある作品を読みたい方
・異世界転生と国家建設を組み合わせた物語が好きな方

第4部では、光太郎だけの力だったはずのAIを、敵であるゼノスも使い始めます。

同じ知識。

ほぼ同じ性能。

そこで勝敗を分けるのは、AIの能力ではありません。

答えを受け取った人間が、何を選ぶのか。

ここから物語は、知識による無双から、答えのない決断をめぐる戦いへ進んでいきます。


コメント、またはメッセージをお願いします

どちらか一つだけでも、ぜひ感想を聞かせてください

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

今回の第1話では、光太郎が初めて「知識ではなく、判断力」で敗北しました。

あなたなら、白骨橋でどちらを選びますか?

・難民二千人を先に助ける
・一万二千人を守る救援物資を優先する
・光太郎と同じように、両方を救う方法を探す

正解のない選択だからこそ、読者の皆さまがどのように感じたのかを知りたいと思っています。

短い一言でも構いません。

コメントかメッセージのどちらか一つだけでも、ぜひ残してください。

「続きが気になる」

「ゼノスが怖かった」

「自分ならこちらを選ぶ」

「この場面が好きだった」

そのような一言が、物語を書き続ける大きな力になります。

コメントを公開するのが恥ずかしい方は、メッセージだけでも大歓迎です。

すべてに長いお返事はできない場合がありますが、一つひとつ大切に読ませていただきます。

読んで終わりではなく、あなたの感じたことを、ぜひ一言だけ物語の外へ残していってください。


もう一つの「物語のその後」を読みたい方へ

ラスボスを倒しても、物語は終わらなかった

「世界を救ったあとの勇者は、どうなるのか」

物語の中では、ラスボスを倒せば平和が訪れます。

けれど、本当に難しいのは、その翌日からかもしれません。

英雄として祭り上げられる者。

役目を失う仲間たち。

崩れた国や街。

戦いの中で置き去りにされた感情。

そんな「冒険が終わったあとの世界」を描いた物語です。

『ラスボスを倒した翌日から、本当の物語が始まった』

▼作品はこちら
https://note.com/momokun1/n/nd1cf2dba2a0c

『AIだけが使える異世界』が、

答えを持つ者が、何を選ぶのか

を描く物語なら、こちらは、

役目を終えた英雄が、何のために生きるのか

を描く物語です。

戦いのあとに残された人々の人生や、勇者の心の傷を描く作品が好きな方は、ぜひご覧ください。


ほかの作品もご覧ください

AI、勇者、魔王、死神、葬送、国家再建。

王道ファンタジーへ少し意外な題材を掛け合わせたライトノベルを中心に執筆しています。

大切にしているのは、

・テンポのよい会話
・登場人物の細かな感情
・少しの笑い
・あとから意味が変わる伏線
・次の話を読みたくなる章末の引き

です。

読み終えたあとも、登場人物の言葉や選択が心の片隅に残る。

そんな物語を目指しています。

▼プロフィール・作品一覧はこちら
https://note.com/momokun1

気になる作品がありましたら、ぜひ次の物語の扉も開いてみてください。

そして最後にもう一度だけ。

コメント、またはメッセージのどちらか一つで構いません。

今回のお話を読んで感じたことを、ぜひ一言だけ聞かせてください。

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