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『AIだけが使える異世界』〜ChatGPTだけが俺のスキルだった〜

第3部 戦争編

一つの都市と十万人の命

第4話 都市を燃やさず、橋を燃やす

AIに読まれるなら、正解そのものを捨てればいい

「その橋を落とせば、六万人の軍勢は止まる」

《叡智の書庫》が示した答えは、単純だった。

黒河橋。

帝国軍の主力補給路。

食料。

武器。

矢。

薬。

馬の飼料。

六万人という巨大な軍隊を動かす血管。

そこを切れば。

帝国軍の進軍速度は落ちる。

リュネールを焼く必要もない。

王都を見捨てる必要もない。

俺が探していた。

第三の答え。

そのはずだった。

「セリア」

俺は地図を指した。

「橋を落とす」

女騎士は即答した。

「私が行く」

「早いな」

「誰かが行かなければならない」

「まだ人選の話を」

「私が最適だ」

そこで。

俺は顔をしかめた。

「その言い方、嫌いだな」

「何?」

「最適って言葉」

セリアが一瞬黙る。

そして。

少し笑った。

「お前に言われたくない」

「ですよね」

反論できなかった。

《叡智の書庫》の青い表示。

《黒河橋破壊成功率 71.6%》

高い。

十分高い。

だが俺は。

数字を見るたび。

以前より少しだけ怖くなる。

成功率は。

人間を安心させる。

同時に。

数字の外へ落ちたものを。

見えなくする。

「橋は燃やす」

俺は言った。

「でも」

リュネールの地図。

白樹都市。

一万八千人。

「都市は燃やさない」

ユリアが。

静かに俺を見る。

銀色の髪。

疲れた顔。

それでも。

少し笑った。

「うん」

その一言だけで。

俺は。

少し強くなれた気がした。


一 橋を燃やす前に、朝食を食べろ

作戦会議の翌朝。

「コータロー」

「何?」

「食べて」

「今考えてる」

「食べながら考えて」

「地図にスープが」

「昨日も朝食抜いたでしょう?」

「戦争中だから」

「便利な言葉にしない」

木の器。

スープ。

黒パン。

俺は。

地図とにらみ合っていた。

黒河橋まで。

約二十キロ。

峡谷。

両側は森林。

橋の下は急流。

帝国軍の補給隊は。

毎日。

ほぼ同じ時間帯に通過する。

狙うなら。

明日の夜。

問題は。

敵が俺たちの作戦を読んでいること。

前話。

回復させた帝国兵カイル。

間者だった。

病院情報だけでなく。

黒河橋に関する文書へのアクセス痕跡。

そして。

帝国から届いた文章。

《橋を燃やす作戦は悪くない》

《君が次に考えることも、すでに計算済みだ》

「嫌な奴」

ユリアが。

俺の肩越しに紙を見る。

「誰のこと?」

「この文章を書いた奴」

「ゼノス?」

「たぶん違う」

《叡智の書庫》の分析では。

ゼノスとの文章一致率は三割程度。

つまり。

帝国には。

別の誰かがいる。

終焉演算機構に繋がる者。

「食べて」

ユリアが。

スプーンを差し出す。

「自分で食べるよ」

「じゃあ食べて」

「はい」

一口。

「熱っ!」

「冷ましてから」

「先に言え!」

「普通分かるでしょう!」

ニコが向かい側で笑っている。

「先生、馬鹿だな」

「君にだけは言われたくない」

「俺、昨日スープで火傷してない」

「昨日は地図を逆さまに読んでた」

「文字は読める!」

「方角は読めてなかった!」

戦争中。

でも。

朝食。

笑い。

それが。

妙に大切だった。

セリアが入ってくる。

「楽しそうだな」

「戦争前の最後の晩餐かもしれない」

「朝だぞ」

「そこ?」

「それに」

セリアは俺のパンを取った。

「最後にするつもりはない」

ぱく。

「あっ!」

「兵士を死なせないのが指揮官の仕事だろう?」

俺は。

彼女を見る。

以前のセリアは。

命令のためなら。

自分も兵士も。

危険へ出す人だった。

今。

言った。

兵士を死なせない。

少しずつ。

みんな変わっている。

「それ俺のパン」

「話の余韻を壊すな」

「朝食は重要なんでしょう?」

ユリアが。

吹き出した。


二 セリアが選んだ二十三人

黒河橋破壊隊。

二十三人。

「少なすぎない?」

俺が聞く。

セリアは首を振る。

「多い」

「二十三人で?」

「潜入だ。人数が増えれば見つかる」

選ばれたのは。

騎士。

斥候。

土魔法使い。

火魔法使い。

そして。

リュネールのエルフ兵。

「ガイウスも?」

俺が驚く。

ユリアの叔父。

守備隊長ガイウス。

相変わらず俺を見る目は。

あまり温かくない。

「森の案内が必要だ」

「人間だけでは道に迷う」

「光太郎です」

「知っている」

「最近わざと人間って呼んでません?」

「気のせいだ」

絶対わざとだ。

「叔父様」

ユリアが言う。

「無茶しないで」

「お前にだけは言われたくない」

また。

この返し。

この世界。

流行っているのだろうか。

ガイウスは。

ユリアを見る。

一瞬。

表情が柔らかくなる。

「戻ってきたばかりなのに」

「また出ていくの?」

ユリアが聞く。

「戻る」

「本当に?」

「ああ」

「約束?」

ガイウスは。

少し困ったように。

笑った。

「お前は昔から」

「約束を取るのが好きだな」

「守らない人が多いから」

「耳が痛い」

「叔父様」

「分かった」

彼は。

ユリアの頭へ。

手を置こうとして。

止めた。

追放。

十五年。

距離。

簡単には埋まらない。

そして。

手を下ろす。

「戻る」

それだけ。

ユリアは。

小さく頷いた。

俺は。

何も言わなかった。

家族の距離は。

AIにも。

俺にも。

計算できない。


三 AIが読める作戦

作戦。

第一段階。

夜間。

森から黒河橋へ接近。

第二段階。

橋脚へ火薬代わりの魔晶石を設置。

第三段階。

橋を完全破壊せず。

中央部分だけを落とす。

完全に壊すと。

修復に時間がかかる。

戦後。

こちらも困る。

つまり。

使えない程度に壊す。

それが。

理想。

「《叡智の書庫》」

《待機しています》

「作戦評価」

《成功率 71.6%》

「敵AIが作戦を知っている前提」

数秒。

《再計算》

数字。

落ちる。

《成功率 23.4%》

「ひどい」

《待ち伏せ可能性が高まります》

「じゃあ」

俺は。

別案。

進入路A。

《18.2%》

B。

《21.9%》

C。

《19.7%》

全部。

低い。

「コータロー」

ユリア。

「また数字の顔」

「何それ」

「数字しか見てない時の顔」

「そんな顔ある?」

「ある」

彼女は。

地図の上へ。

手を置いた。

数字を隠す。

「今」

「セリアたちは?」

「準備中」

「森を知ってる人は?」

「ガイウス」

「橋を知ってる人は?」

「王国工兵」

「だったら」

ユリアは。

俺を見る。

「みんなに聞いた?」

止まった。

「……まだ」

「AIには?」

「何回も」

「順番、逆じゃない?」

痛い。

本当に。

この薬師。

時々。

AIより強い。

「うん」

俺は地図を閉じた。

「聞いてくる」

ユリアが笑う。

「いってらっしゃい」

「先生みたい」

「誰が?」

「君」

「薬師です」

知ってる。


四 二十三人の不完全な案

セリア。

「橋へ行かない」

「何?」

最初から。

予想外だった。

「橋を壊すのに橋へ行かない?」

「補給隊が橋を渡る前に止める」

ガイウス。

「森を使う」

工兵。

「橋脚より、北側の斜面を崩した方が早い」

斥候。

「敵の見張りは橋ばかり見ている」

火魔法使い。

「魔晶石を使わなくても、補給車の油で燃える」

土魔法使い。

「道を塞げる」

別の兵士。

「橋を燃やす必要ないんじゃ?」

俺は。

一瞬。

止まった。

「何?」

若い兵士。

名前。

ラルク。

十八歳。

緊張で。

声が裏返っている。

「だって」

「補給を止めたいんですよね?」

「ああ」

「なら」

彼は。

地図の橋を指す。

「橋じゃなくてもいいんじゃないですか?」

単純。

当たり前。

でも。

俺は。

橋を燃やすことに。

囚われていた。

ゼノス。

AI。

敵。

みんなが。

黒河橋を。

答えとして見ている。

だから。

橋を壊す。

そう決めつけた。

「ラルク」

「は、はい!」

「ありがとう」

「え?」

「それだ」


五 橋を燃やすと言って、橋を燃やさない

作戦変更。

黒河橋。

攻撃しない。

代わりに。

補給隊が橋へ到達する前。

峡谷北側。

狭い道。

そこへ。

土砂崩れ。

倒木。

補給車を止める。

さらに。

油を積んだ先頭車両だけ。

燃やす。

「でも」

セリアが言う。

「敵AIに読まれる」

「ああ」

「変更後の作戦を知れば同じだ」

「だから」

俺は。

笑った。

「俺も最終形を決めない」

「何?」

「現場で変えて」

セリアが。

こちらを見る。

「指揮官が作戦を放棄するのか」

「違う」

俺は。

彼女へ地図を渡す。

「目的だけ決める」

補給を。

止める。

「方法は?」

「任せる」

「セリアに?」

「二十三人に」

全員。

黙った。

「俺が作戦を決める」

「敵AIが読む」

「じゃあ」

「作戦を作る人を分散する」

セリア。

少し。

笑う。

「責任逃れか?」

「半分」

「半分?」

「もう半分は」

俺は。

みんなを見る。

「俺一人より」

「みんなの方が知ってることが多いから」

ガイウスが鼻を鳴らす。

「ようやく人間らしいことを言ったな」

「ずっと人間です」

「AIの本を抱えているのに?」

「最近は人間成分が増えてます」

「何の話だ」

俺にも。

分からない。


六 待ち伏せ

深夜。

黒河峡谷。

俺は。

本隊。

後方。

ユリア。

野戦病院。

セリアたち。

前方。

通信。

魔法石。

不安定。

《叡智の書庫》は。

状況を完全には掴めない。

《通信欠損》

《現地情報不足》

以前なら。

怖かった。

今も。

怖い。

でも。

少し違う。

セリアに任せた。

信じる。

それも。

選択。

「聞こえる?」

通信石。

ユリアの声。

「聞こえる」

「そっちは?」

「待機」

「顔見えないけど」

一拍。

「怖い顔してる?」

「どうして分かる」

「最近分かる」

「怖いよ」

「うん」

「セリアたちが」

「うん」

「失敗したら」

「うん」

「俺のせいになる」

ユリアは。

少し黙る。

「違う」

「何が」

「みんなで決めた」

「でも」

「セリアも」

「ガイウス叔父様も」

「兵士たちも」

「自分で選んで行った」

声。

優しい。

「コータロー」

「一人で全部背負うの」

「禁止」

「いつ決まった?」

「今」

「勝手だな」

「薬師の指示です」

「強い」

少し。

笑った。

その時。

通信。

「神谷!」

セリア。

「敵だ!」

俺の身体。

固まる。

「どこ?」

「前!」

「待ち伏せ!」

やっぱり。

敵AI。

読んだ。

「数!」

「百!」

二十三。

対。

百。

「撤退!」

俺は。

即答した。

以前なら。

勝つ方法を。

考えた。

今は。

違う。

「橋はいい!」

「補給もいい!」

「生きて帰れ!」

通信の向こう。

セリア。

一瞬。

黙る。

「了解!」

迷わない。

成長したのは。

俺だけじゃない。


七 戦わない撤退戦

敵兵。

百。

森。

囲まれる。

通信から。

音。

剣。

怒号。

「セリア!」

返事。

ない。

《叡智の書庫》。

《現地情報不足》

何も。

できない。

怖い。

手。

震える。

「コータロー」

ユリア。

通信。

「呼吸して」

「してる」

「してない」

吸う。

吐く。

「ありがとう」

「うん」

数分。

長い。

異様に長い。

そして。

通信。

「神谷」

セリア。

「生きてる!?」

「うるさい」

「よかった」

本当に。

膝から。

力が抜けそう。

「状況」

「最悪だ」

「ですよね」

「だが」

セリア。

少し。

息を整える。

「面白いことが分かった」

「何?」

「敵は」

一拍。

「橋を守っていない」

「……何?」

「待ち伏せ部隊は」

「私たちの侵入路にだけいた」

つまり。

敵は。

俺たちが橋を狙う。

そう予測した。

その予測に合わせ。

待ち伏せ。

でも。

橋そのものは。

手薄。

「読んでいる」

俺が呟く。

「作戦を?」

「違う」

「俺を」

敵AIは。

地形だけではなく。

俺の思考を。

読んでいる。

合理的に。

次に考えることを。


八 最適解の弱点

「セリア」

「何だ」

「撤退経路」

「三つ」

「一番安全なのは?」

「西」

《叡智の書庫》。

《西ルート生存率 82%》

「東は?」

《41%》

「南」

《26%》

普通なら。

西。

「セリア」

「なんだ」

「一番危ない南へ」

沈黙。

「神谷」

「分かってる」

「二十六%だぞ」

「敵は」

俺は。

息を吐く。

「俺が八十二%を選ぶと思ってる」

AIなら。

合理的な人間を。

そう予測する。

なら。

「南」

セリア。

黙る。

そして。

笑った。

「馬鹿な作戦だ」

「ああ」

「嫌いじゃない」

通信切断。

俺は。

祈る。

何に?

神?

AI?

知らない。

ただ。

帰ってきてほしい。


九 不合理は、ときどき武器になる

一時間後。

森。

二十三人。

帰還。

全員。

生きていた。

負傷。

七人。

重傷。

一人。

死亡。

ゼロ。

俺は。

セリアの姿を見つけた瞬間。

走った。

「セリア!」

「近い」

「生きてる!」

「見れば分かる」

肩。

傷。

でも。

立ってる。

ガイウス。

いる。

ラルク。

いる。

二十三人。

全員。

「どうやって?」

俺が聞く。

セリア。

笑う。

「南ルート」

「敵」

「いなかった」

やっぱり。

敵は。

安全な撤退路へ。

兵を置いていた。

AI。

最適。

合理性。

だから。

読める。

「不合理な行動は」

セリアが言う。

「悪くない」

「毎回やると」

俺。

「不合理が合理になる」

「面倒だな」

「人間だから」

そう言うと。

セリアが。

少し笑った。


十 橋を燃やしたのは、敵だった

翌朝。

事件。

黒河橋。

炎上。

「何?」

俺は。

地図を見る。

帝国軍が。

自分たちで。

橋を燃やした。

「なぜ」

セリア。

「補給路だぞ」

《叡智の書庫》。

解析。

《帝国軍補給経路変更》

地図。

別ルート。

山道。

俺たちが。

知らなかった。

旧街道。

つまり。

黒河橋は。

もう。

重要ではなかった。

最初から。

俺たちは。

古い答えを。

追っていた。

「誰が」

俺は。

呟く。

「ここまで読んでる」

通信。

黒い。

でも。

ゼノスではない。

《外部接続》

「誰だ」

返事。

少女の声。

若い。

知らない。

『初めまして』

俺。

セリア。

ユリア。

全員。

止まる。

『神谷光太郎さん』

「誰だ」

『あなたを』

声。

楽しそう。

『ずっと見ていました』

《叡智の書庫》。

警告。

《未知の知識機構》

《終焉演算機構との接続を確認》

俺は。

拳を握る。

「ゼノスの仲間か」

少女。

笑う。

『仲間?』

一拍。

『違います』

『私は』

声。

冷たくなる。

『彼の答えが』

『不完全だと思っている』

「何?」

『ゼノスは』

『人間を管理しようとしている』

『でも』

少女。

続ける。

『管理なんて』

『非効率です』

嫌な。

嫌な予感。

「じゃあ」

俺。

「何をする」

『選べない人間を』

一拍。

『減らします』

背筋。

凍る。

ゼノス。

AIが。

人間の代わりに決める。

彼女。

違う。

選べない人間を。

切る。

「名前は」

少女。

少し。

楽しそうに。

『まだ』

『教えません』

「なぜ」

『あなたが』

『次の問題に』

『正解できたら』

画面。

赤。

地図。

白樹都市リュネール。

野戦病院。

「待て」

赤い点。

患者。

二百。

『第一問』

少女の声。

『今夜』

『病院へ』

『帝国兵三百人が向かいます』

ユリアが。

青ざめる。

『患者を逃がせば』

『都市の防衛兵力が不足します』

『兵士を残せば』

『病院は落ちます』

また。

二択。

「ふざけるな」

『さて』

声。

笑う。

『誰を』

『捨てますか?』

俺は。

画面を見る。

そして。

ゆっくり。

閉じた。

「どっちも」

『何?』

「どっちも捨てない」

『不可能です』

「その言葉」

俺は。

笑った。

「最近聞き飽きた」

ユリアが。

隣へ来る。

セリア。

剣を抜く。

ガイウス。

弓。

そして。

俺は。

みんなを見る。

「答え」

まだ。

ない。

でも。

それでいい。

「今から」

「作る」

その瞬間。

遠く。

帝国軍の角笛。

三百。

野戦病院へ。

帝国本隊。

六万。

そして。

ゼノスとは違う。

もう一つのAI。

俺たちは。

初めて理解した。

この戦争で戦っているAIは。

一つではない。


第3部 第4話 完

次話、第3部第5話は**「敵にも、答えを持つ者がいる」**。

こんな方におすすめ

・AIを使った異世界ファンタジーが好きな方
・知識だけでは解決できない「人間の選択」を描く物語が好きな方
・戦争、医療、国家改革を絡めた長編作品を読みたい方
・光太郎とユリアの関係がどう変化していくのか気になる方
・毎話、続きが気になる強い引きを楽しみたい方

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

今回の物語を読んで、

「続きが気になる」
「ユリアの決断が印象に残った」
「この展開は予想できなかった」
「次はこんな場面を読みたい」

など、どのような内容でも構いません。

ぜひ、コメントまたはメッセージのどちらか一つだけでも送ってください。

長い感想でなくても大丈夫です。

「読んだ」
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という一言だけでも、次の物語を書く大きな力になります。

コメントを書くのが苦手な方は、メッセージでも構いません。
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