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楽々古事記【46】霊剣あらたか

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⑨熊野村(くまののむら)

ひとりぼっちになった末っ子のイワレビコでしたが、半島を大きく廻って紀伊国(きいのくに)の熊野村に着きました。

イワレビコ(神倭伊波礼毘古命)
(カムヤマトイワレビコ)
=のちの神武天皇

「さぁ、これからは西に向かって進もう」

船を下りたイワレビコと部下たちが次の地を求めて西へ歩いていると、茂みの奥から、

カサカサッ カサカサッ

という音が聞こえ、影が動くのが見えました。

「あれはなんか?…おい、チョット見て来い」

「ラジャー」

チラリと見えた黒い影が気になったイワレビコは、部下に指示を出して静かに待ちました。

「イワレビコさま、どうやら熊のようです」

「熊?」

「はい、結構大きな熊みたいやったとです」

「そうか」

カサカサッ カサカサッ

大熊がイワレビコの周りを円を描くように移動すると、

ビビビッ ビビビッ

「ううッ、なんだコレは…」

「め、めまいが…」

と言ったっきりイワレビコと部下たちは、大熊の霊気にヤラれてバタバタと倒れ込んで気絶してしまいました。

実はこの大熊の正体は、この熊野村に根付いた荒ぶる魂のことで、イワレビコたちを警戒してのことだったようです。

髙倉下(タカクラジ)

イワレビコが気絶して倒れているところへ、熊野に住むタカクラジ(髙倉下)が現れました。

タカクラジは、持ってきた剣を倒れているイワレビコにかざすと、

「うう、どこかここは?…ああ、そうか熊で…」

と、イワレビコが薄っすらと目を開けました。

「大丈夫ですか? イワレビコさま」

「お前は?」

「私はタカクラジっち言います。ご気分は?」

「ああ、少しクラクラするな…。どうやら長く眠っちょったようやな」

そう言ってイワレビコが体を起こすと、

「イワレビコさま、この剣をお納めください」

タカクラジが霊剣を差し出しました。

イワレビコがその霊剣をむんずと掴むと、気力が漲るだけでなく部下たちも次々と起き上がり、さらには体に残っていた大熊の荒ぶる霊力も粉々に砕いてしまいました。

「(オ、オレ…、ただ握っちょっただけなんに…)」

「お見事です。イワレビコさま」

「タカクラジ、いったいこの剣はなんなんか? 説明しちゃらんやか?」

「はい、それはですね…カクカクシカジカ」

※タカクラジは不器用な男なので、ここからは高天原での会話で説明します。


佐士布都神(サジフツノカミ)

- 高天原にて -

「ねぇ、タカミムスヒ?」

「どげんしましたか? アマテラスさま」

「葦原中国が騒々しくて、私の子孫が困っちょるみたいやん…。どげんかならんやか?」

「そうですね…。では、タケミカヅチでも使わしましょうか?」

※剣先に胡坐をかいていた、あの男神です。

「・・・(私、アイツ苦手なんよねぇ…)」

「どげんかしましたか?」

「い、いや、タケミカヅチでいきましょう」

「おい、タケミカヅチ、こっちに来てん」

「はい、タカミムスヒさま、なんでしょうか?」

「お前、地上に降りてアマテラスさまの子孫を助けちゃらんやか?」

「私がですか?」

「そうたい。お前、大国主命(オオクニヌシ)の国譲りを成功させちょろーが」

「あ、はい…」

タケミカヅチ(建御雷之男神)が横目でアマテラスをチラッと見ると、先ほどから目をつぶって、フムフムと頷いているだけでしたので、

「(オレ、嫌われちょるんやろな…)」

そう思ったタケミカヅチは、少し不貞腐れてしまいました。

「どげんしたんか、タケミカヅチ?」

「い、いえ、あのですね、タカミムスヒさま…」

「なんか言いたそうな顔しちょるのぉ。お前、断るんか?」

そのタカミムスヒ(高御産巣日神)の問いかけにアマテラスが目を開けて、タケミカヅチに目をやりました。

アマテラスと一瞬目が合ったタケミカヅチは、目をそらして横を向いて言いました。

「べ、別にオレが地上に行かんでもよかっちゃないとですか? タカミムスヒさま」

「きさん、なんで口を尖らせてモノを言よるとか? はらかいとるんかお前…子どもか?」

【はらかく】
北九州地方(北部九州)の方言で「怒る」の意。

「いや、そげんとじゃなくて、適任者がおるっち言いたいとです」

「適任者? 誰が行くとか?」

「佐士布都神(サジフツノカミ)っす」

「あの霊剣か?」

「はい。自信をもって推薦します」

「どげんやって使わすとか?」

「熊野村に住むタカクラジ(高倉下)っちゅうモン(者)の家ん中に放り込んで、あとは夢で内容を伝えときます」

「ん、わかった。これでいいですか? アマテラスさま」

「うん、わかった(やっぱ面倒くさいのぉコイツは…)」

図① サジフツノカミ


ー 地上に戻ります ー

「というワケなんです。イワレビコさま」

「おおッ! タケミカヅチさまやろ! 知っちょる知っちょる。そうか、これがタケミカヅチさまが胡坐をかいちょった霊剣か、すげー!」

「はい」

「んでも、なんもしちょらんのに、みんなを元気にするし、大熊の霊気を祓い除けるし、やっぱ、聞きしに勝る名剣やねぇ」

喜んだイワレビコと部下たちは、ひと息ついて次の地へと西に向かって進むことにしました。


石上神宮(いそのかみじんぐう)

佐士布都神(サジフツノカミ)が御祭神ですので下記ウェブサイトで確認してくださいね。
佐士布都神(サジフツノカミ)の別名は「布都御魂・甕布都神」で、石上神宮では布都御魂大神(フツノミタマノオオカミ)としてお祀りされています。
七支刀でも有名な神社です。


今回はこれでおしまいです。
東征図とタケミカヅチの系図を貼って終わりますね。

図② 東征図

図③ 系図 タケミカヅチ

北九州市で飲食店などをやっています。
気になる方は下記のプロフィールをご覧くださいませ。

ではでは。。。


次回:【47】ヤタガラス
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