楽々古事記【45】イツセ 散る
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血沼海(ちぬのうみ)
⑦白肩津(しろかたのつ)を出港し、次の地へと向かう途中のことでした。
「イツセ兄ちゃん、大丈夫?」
「うッ…血が止まらん…チョット血を洗おう」
みんなで長男イツセ(五瀬命)の服や体に着いた血のりを洗うと、イツセの血で海が真っ赤に染まったので、このあたりの海を血沼海と呼ぶようになりました。
「みんな、聞いてくれ、うぐッ…」
「無理して喋んなくていいよ、イツセ兄ちゃん」
「ああ、でもな…思うところがあるんよ」
「なん?」
「オレたちは日の御子(ひのみこ)だよな?」
「うん、そうだよ。天照大御神さまの子孫だよ」
「だから、日に向かって進んだのがダメやったんやなかろーか?…っち思うんよ。うぐッ」
「日に向かって?」
「そうだよ、オレたち日の御子は、日を背負って進むべきなんだよ…きっと…ぐッ」
「兄ちゃん・・・」
五瀬命(イツセ)のその言葉に、兄弟みんな静かに頷きました。
⑧男之水門(おのみなと)
兄弟を乗せた船が男之水門まで来ると、
「み、みんな…元気でな…」
と、イツセが別れを告げるように言いました。
「イツセ兄ちゃん! 弱気にならんで! 大丈夫やけん!」
兄弟みんなで励ましましたが、イツセは最後の力を振り絞ると、
「天孫族に栄光あれーーーッ!」
という雄叫びをあげ、とうとう息絶えてしまいました。
嵐の海で
残された兄弟が船で半島を廻っていると、何やら生暖かい風が吹きてきて、どんよりとした雲で覆われました。
「嵐が来るみたいやけん、早よ進路を陸へ」
そう指示をしたのも束の間、激しい雨が強風とともに降り出しました。
「こりゃ、いかん。転覆するかもしれんぞ!」
ピカッ!
ドッカーーーン!
激しい音と共に、船の帆の先に雷が落ちました。
稲氷命(イナヒ)
「母は海の神ワタツミの娘タマヨリビメやぞ…。なんで海の嵐で、こげん苦しまんといけんのか?」
そう嘆いた次男イナヒは船を降り、嵐が吹き荒れる海原の白波の瀬を歩いて渡り、そのまま海の中へと消えて行きました。
御毛沼命(ミケヌ)
三男ミケヌもまた船を降り、白波の瀬を飛ぶように渡って、常世の国へと行ってしまいました。
【※ご注意※】
前々回でも触れましたが再度述べておきます。
次男:稲氷命(イナヒ)
三男:御毛沼命(ミケヌ)
の二人は、古事記では上つ巻の最後でいなくなってしまいます。
(文字数で云えば30文字未満の扱いで古事記からは姿を消すほど、呆気ない終わり方です。原文はこんな感じです👉故御毛沼命者 跳波穗 渡坐于常世國。稻氷命者 爲妣國而 入坐海原也)
ですが、この楽々古事記では今回でいなくなるので、何卒ご了承くださいませ。
ー 数時間後 ー
嵐がやむと嘘のように晴れ上がりました。
「(兄ちゃん・・・)」
ひとり残され悲しみに暮れる末っ子のイワレビコは、晴れ渡った空のなかで遠くに見える次の地を、甲板の上でじっと見つめ続けました。
「(日に向かわず、日を背負って…)」
と思いながら・・・
今回はここまで。
東征図と系図を貼って終わりますね。
図① 東征図

図② 系図

北九州市で飲食店などをやっています。
気になる方は下記のプロフィールをご覧くださいませ。
ではでは。。。
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