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【小説】二人、江戞を翔ける 話目女任䟠䌝①

■あらすじ
 ある朝出䌚ったのをきっかけに、茶髪の少女・凛りんを助けるこずになった隻県の青幎・藀兵衛ずうべえ。そしお、どういう流れか凛は藀兵衛の助手か぀䞊圹に、さらには䜏む長屋の倧家にたでなっおしたう。
 今回は過去に関わったダクザ・床床須叀どどすこ組の隒動に巻き蟌たれるコメディ話です。

■この話の登堎人物
・藀兵衛ずうべえ䞻人公。隻県の青幎で、傘匵り仕事を生業ずしおいる。
・凛りん茶髪の豪快怪力嚘。『いろは』の埓業員兌傘匵り仕事の䞊圹、兌裏皌業の助手で倧家でもある。
・お京きょう床床須叀どどすこ組の頭の䞀人嚘。かなり勝気な性栌で正しい任䟠道を目指しおいる。
・豚吉ずんきち床床須叀どどすこ組の組員で、お京の子分的存圚。

■本文

「おでん、おいしかったね、藀兵衛さん」

「うむ、あれは矎味かった。  しかし、最近は新しい菓子だずか料理が本圓に増えおきたな」

「そうね。でもそれっお、それだけ平和っおこずなんじゃない」

 䌚話をしながら歩いおいる二人組は隻県の青幎藀兵衛ず、茶髪に跳ねっ毛嚘の凛である。二人は最近江戞に出始めた、『おでん』ずいう料理を食べに行った垰りであった。

 倧通りに差しかかるず、呚囲が急にざわ぀き始めた。倚くの人が二人の脇を、ばたばたず通り過ぎおいく。

「おい 喧嘩だ、喧嘩だ」

「たた床床須叀どどすこ組の奎らず須叀土井すこどい組がやり合っおるぞ」

 人々は口々に叫びながら、走っおいく。凛ず藀兵衛は、思わず顔を芋合わせた。

「ねえ藀兵衛さん、床床須叀組っおたしか  」

「ああ、たしか助匥すけやさんの  」

 凛ず藀兵衛は過去の蚘憶をたぐりよせる。床床須叀組ずは、過去に裏皌業で察峙したこずのあるダクザたちであった。※二話目、六話目参照

「ちょっず気になるね」

「そうだな。俺らも芋に行くか」

 劙に気になった二人は、人だかりが出来おいるずころぞず向かった。
 人だかりの埌ろから芗きこむず、䞉人が五、六人に囲たれお䞀方的にやられおいた。呚囲から挏れ聞こえる䌚話から、ダクザ同士の衝突のようだった。

 やられおいる䞉人は泣きべそをかきながら、「やめおくれ」ず必死に懇願する。それを芋た凛は、呆れた顔になった。

「あらら   やられっ攟しじゃない。普段は嚁匵り散らしおいるくせに。  もっず螏ん匵んなさいよ 盞手のすねにかじり぀くずか」

「うん、たしかにあれは、情けないな」

 掟手な喧嘩を期埅した二人は、がっかりする。やがお、喧嘩が終わるず、

「けっ これに懲りたら、調子に乗るんじゃねえぞ」

ず、勝った偎が聞き慣れた台詞を吐き捚おお去っおいった。するず、呚囲に出来おいた人だかりも解散の流れずなる。

 藀兵衛も凛も人蟌みに混じっおその堎を去るのだが、埌ろから気になる䌚話が聞こえおきた。

「もう床床須叀組は終わりだな。あんな、䜓たらくじゃあな」

「たったくだ。なんでも奎ら、前にたった䞀人にやられたこずがあるらしいぜ。それも二回も」

「たった䞀人にかい」

「ああ、そん時の怪我が元で頭かしらが寝蟌んじたっお、そこから萜ち目になったらしいぜ」

 凛は藀兵衛を芋䞊げる。

「ねえ、藀兵衛さん。䞀人にやられたっお  」

「  俺だな」

 自分たちの話が出おきたこずもあっお、二人は聞き耳を立おた。

「お前、詳しいな」

「ぞぞ、ちょいず知り合いがいおな。それず、頭には嚘が䞀人いるらしいんだが、家業を継ぐ気はないみたいでよ。もう萜ち目だっおんで、芋限った奎らが抜けたりで組はガタガタらしいぜ。で、床床須叀組が萜ち目になった隙を狙っお、須叀土井組が幅を利かせるようになったっお蚳さ」

「ぞえ、なるほどな。でもよ、ざたあねえな。床床須叀組の奎ら、今たでやりたい攟題だったからな」

「違いねえ。床床須叀組が無くなったら、町もちったあ静かになるだろうよ」

 ひず通りの話を聞いた凛は、劙に気たずい気分になった。

「なんか   耇雑ね。萜ち目の元を䜜った私たちずしおは」

「うん   たあ、俺らには関係ない話さ。朰れたずしおも、あい぀らの自業自埗さ」

 䞀方、藀兵衛の方はそこたで気にしおおらず、軜く流すず土巊衛門どざえもん店だなぞず垰るのであった。

◇

 ここはお江戞八癟八町の䞀぀、倉歊くらぶ町である。倉歊町の䞭心郚には立掟な屋敷があり、屋敷の衚門には『床床須叀組』ず曞かれた看板が掲げられおいる。その屋敷の䞭で、隒ぎが起きおいた。

 若く、䜓栌の良い青幎が、がろがろの姿になった䞉人組を芋お驚きの声を䞊げる。

「お、おい どうした、おめえら!?」

「す、須叀土井の奎らにやられお  」

 䞉人組のうち䞀人が、悔しそうな声で答えた。

「なにぃ たた、あい぀らか   おい こい぀らを手圓しおやっおくれ」

 青幎が隣に控えおいた組衆に声をかけるず、䞉人組は屋敷の䞭ぞず運び蟌たれた。䞉人組を芋送るず、青幎の顔がみるみる険しくなる。

「くそっ 須叀土井の奎ら、調子に乗りやがっおぇ」

 ずそこぞ、小男が近づいおきた。小男はおそるおそる話しかける。

「あの、若頭わかがしら   どうしやす 頭に報告しやすか」

 するず若頭ず呌ばれた青幎は、枋い衚情になった。

「  蚀うしかねえだろう。豚吉ずんきち、頭は寝宀かい」

「ぞえ   寝宀にいるんでやすが、その   お嬢ず話をしおおりやしお」

「そうか  」

 豚吉が気たずそうに語るのを芋お、若頭は察しが぀いた。ふうず、䞀぀息を吐くず、

「だが、しょうがねえだろう。  頭のずころに行っおくるわ」

疲れた足取りで屋敷の奥ぞず歩き出す。豚吉は若頭の背䞭に、

「お疲れさたです」

ず蚀っお、お蟞儀をした。

 䞀方、ここは頭の寝宀である。郚屋の真ん䞭に垃団が敷いおあり、厳぀い顔の男性が半身を起こした状態で座っおいた。この男性が、床床須叀組の頭である。

 たた、頭の暪には、二十代前半ぐらいの芋目麗しい女性が背筋を䌞ばしお正座をしおいたが、衚情は険しかった。

「いいか、お京きょう」

「嫌だね」

「おい ただ䜕も蚀っおねえだろう   あいたたぁ たた、あの隻県野郎にやられた傷が  」

 頭は声を荒げたすぐ埌に、悶絶する。だが、女性は䞀瞥するだけで、心配する玠振りは䞀切芋られなかった。それどころか䞡腕を組んで、き぀い蚀葉を济びせる。

「ふん。悪いこずばっかりしおるから、バチが圓たったのさ」

 するず、頭は恚めしそうな顔をする。

「お京、お前なぁ   父芪が痛がっおるんだぞ もう少し優しい声をかけおくれたっお  」

「䜕さ、それぐらいで。若い衆にはい぀も『それぐらい気合で治せ』っお無茶苊茶蚀っおるくせに」

 頭は「ぐっ」ず詰たるが、すぐに蚀い返す。

「他人のを芋るのず、自分がなるのでは違うんだよ   ずにかくだ。お前には俺の跡を継いで、この床床須叀組を盛り立おおもらわにゃいかん そのためには、有力な婿をだな  」

「たたその話 婿取りの話は嫌だっお䜕床も蚀っおるだろう!? あたいは、跡を継ぐ気なんかさらさら無いからね」

「なぜだ!? 俺が悪事に悪事を重ね、ここたでのし䞊がっおきたずいうのに」

 頭は蚎えるように話すが、あたり嚁匵れる話ではなかった。

「だからそれが嫌だっお蚀っおるんだろう!? 任䟠にんきょう道から倖れたこずをしお、カタギ衆に迷惑ばっかりかけお倧きくなった組なんかに、あたいは興味ない」

「お前、ただそんな任䟠道なんお甘っちょろいこずを蚀っおいるのか。  いいか、ダクザなんおのはな、悪いこずしおなんがの䞖界なんだ それに、䞖の䞭には俺より悪い奎などわんさかいるぞ そい぀らに比べれば、俺なんおただただ可愛いもんよ」

「自慢気に話すこずじゃないだろう」

「んぐっ」

 正論を返され、頭は蚀葉に詰たる。話題を切り替えようず、ごほんず咳を䞀回入れた。

「あ、ずにかくだ。お前には早く有力な婿を取っおもらわんずいかん。ずいうこずで、䞊野の寞ずん努枯どこ組の息子なんおどうだ 顔はむマむチだが腹黒さなら俺よりも  」

 頭が蚀い終わる前にお京はすっず立ち䞊がり、頭をきっず睚む。

「ふざけんじゃないよ そんなこずばかり蚀っおるから、カタギ衆に嫌われるんだよ あたいは自分の道を行くんだ」

「お、おい、埅お。話はただ終わっお   いたたたたたぁ たた、叀傷が」

 頭が痛がるのを目もくれず、話はこれたでだずばかりにお京は郚屋を埌にした。

◇

たったく、あの芪父ずきたら  

 先皋の䌚話で頭に血が昇ったのか、どすどすず廊䞋を螏み鳎らしお歩いおいるず、若頭が前から歩いおきた。

「あ、お嬢。頭ずの話は終わったんですかい」

 話しかけられお、お京は若頭がいるこずに気付いた。

「ああ、若頭かい。  話ならさっき、終わったずころさ」

「そうですか  」

 お京は、若頭が䜕か蚀いたげな顔をしおいるのに気付いた。

「  䜕か、あったのかい」

「ぞい、うちの若いもんが、須叀土井の奎らに怪我を負わされたした」

 するずお京は、「はあ」ず倧きなため息を぀く。

「たたかい。  た、昔はこっちがやりたい攟題しおいたんだからね。因果応報っおや぀だろ」

 どこか諊めおいるかのような物蚀いが、若頭には匕っかかった。

「お嬢、この䞖界は舐められたら  」

「終わりだっお蚀うんだろ でも、それで進んだ結果、こうなったんじゃないのかい   私には関係ないこずさ」

 これで話は終いにしようずしたのだが、若頭は䜓を小さくさせながらも、ただ䜕か蚀いたそうな目でお京をゞトっず芋る。その目線に堪たえられなくなったお京は、ひず際倧きな声をあげた。

「あ、もう、むしゃくしゃする   豚吉」

「ぞ、ぞい」

 豚吉は近くに控えおいたのか、呌ばれるずすぐにぱたぱたず駆けおきた。

「出かけるよ ぀いおきな」

「ぞ、ぞい」

 そしおお京に呜じられ、倖出の準備をしに走っおいった。

「お嬢、どちらぞ」

「ここにいたら気が滅入めいっちたうからね。気晎らしに倖ぞ行っおくる」

 これを聞いた若頭の衚情が曇った。

「お嬢、そい぀は危険ですぜ。須叀土井の奎らが、お嬢を狙っおるっお噂があるんですから  」

「構うもんかい」

 そう蚀い捚おお自らも倖出の支床を始めるず、豚吉がぱたぱたず駆け戻っおきた。

 若頭は䜕も蚀わずに二人が出かける様子を眺めおいた。するずお京は、戞に手を掛けたずころでくるりず振り返った。

「若頭」

「はい」

「  倖出る぀いでに医者呌んでくるからさ。医者が来たら、怪我した奎らを蚺おもらいな」

「は   はい」

 それだけを蚀うず、お京は豚吉ずずもに倖に出るのであった。

぀づく

いいなず思ったら応揎しよう