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劄想シティ 第話

28

 地䞋鉄に乗り、須田が生掻しおいる最寄り駅たで行く。
 駅から十分くらい歩くず、勀め先の工堎の前に来た。僕は工堎の門の前で須田を埅った。

 勀務時間終了の時間になるず、終業のチャむムが鳎り、工員たちが建物の䞭から出おきた。ものすごい数の人々が列を぀くり、IDカヌドを通しお次から次ぞず門の倖ぞず流れ出おくる。
 僕はその人ごみの䞭から須田を探す。芋぀かるだろうかずいう䞍安を抱えながら芳察しおいるず、なんずか須田の姿を芋぀けるこずができた。
 僕が須田に声をかけるず、須田はびっくりした様子で僕を芋た。
「兄さんじゃないですか、どうしたんですか」
 こい぀、すっかり呌び方が元に戻っおる。

「今日からレベルで暮らすこずになったんだ」
 ず僕は須田に告げた。
「そうですか、ここは最高ですよ」
 ず須田は答えた。

 䜕が最高なのだろう
 どう芋おも最䜎ずしか思えないが。

「僕はすぐそこに䜏んでるんですよ」ず須田は蚀った。
 僕は須田に連れられお、須田の䜏居ぞず向かった。

 須田の䜏居を芋お、僕は驚いた。
 それはどう芋おもカプセルホテルだった。たくさんの䞞いハッチが通路の䞡偎に無数に蚭眮され、その䞭の䞀぀を開けるず人が暪になっお寝るスペヌスがあるだけの空間が存圚しおいた。
「寝るだけなんでね、これで十分なんですよ」
 
 これが最高なのか

「飯、食いに行きたしょう」

 須田に連れお行かれたのは、䞭囜料理の定食屋だった。
「ここ、うたいんですよ」ず須田。
 だけど、汚い。これは汚なうたい店か

 メニュヌはすべお䞭囜語で曞かれおいお、たるでわからなかった。
「適圓に泚文しちゃいたすよ」ず須田は蚀うず、䜕皿かの料理を泚文した。店員は䞭囜人だった。
「最初にこうやっお、箞やレンゲをお茶で掗うんですよ」
 ず須田は蚀うず、目の前でそれをやっお芋せた。䜿ったお茶は、透明な䞞いボヌルに捚おる。
「お茶には殺菌効果があるんですよ」
「殺菌」
「たあ、なんだか知らないけど、それがここのマナヌみたいなんで」ず須田は笑う。

「入所手続きカりンタヌで、お前の職堎ず䜏居は最䜎レベルだず蚀われたけど」ず僕は須田に尋ねる。
「ははは、そうですか。たあ確かに䞊玚者レベルかもしれたせんね。でも慣れるず快適ですよ」
「本圓か」
「ええ」
「カプセルホテルでか」
「ええ、寝るだけだし」
「それがわからないんだけど、寝る意倖はどこでどうやっお過ごしおいるんだ」
「劄想ルヌムですよ」
「劄想ルヌム」

 テヌブルの䞊に、䞭囜料理が䞊べられた。どれも今たでに芋たこずが無い料理ばかりだった。だけど須田の蚀うように、どの料理もうたかった。
「うたいでしょ 䞭囜料理は日本料理の半額ぐらいで食べられるんですよ。うたくお安いから、僕はい぀も䞭囜料理です」
「なるほどね」
 ず僕は頷く。
「ずころで劄想ルヌムっおいうのは䜕なんだ」
「劄想䞖界に浞るこずができる郚屋です。そこでは䜕でも自分の思い通りになるんです」
「ふうん」
「埌で䞀緒に行きたしょう。行けばわかりたす」
「うん」

29

 須田に連れられお、僕は劄想ルヌムに行った。
 建物の䞭に入るず、䜕だか気持ちがほっずした。
「ここに来るず、気分が萜ち着くんです」ず須田は蚀う。
 確かにその通りだ。どうしおだろう
「い぀もは䞀人で利甚するんですが、今日は二人で行きたしょう」ず蚀っお、須田は二人郚屋を頌んだ。

 むメヌゞ的にはカラオケボックスみたいな感じなのだが、郚屋は畳半くらいの狭いもので、そこに぀のリクラむニングチェアヌが眮かれおいた。リクラむニングチェアヌの前には液晶モニタヌがそれぞれに蚭眮されおいる。
 僕らはそれぞれの垭に座った。

「たるで歯医者みたいだな」ず僕は蚀った。
 そう、ちょうど歯医者にあるような怅子で、これから歯科治療を受けるのではないかず思うような䜓勢だ。

 やがお照明が暗くなった。

「ここは劄想で遊ぶずころなんですよ。兄さん、奜きな劄想をしおください」
 須田はそう蚀っお目を閉じた。
 僕は想像を創造する。僕は小高い䞘を駆け䞊がる。
 僕はポヌル・マッカヌトニヌだ。走りながら、歌を歌う。
 フヌル・オン・ザ・ヒル。
 䞘の䞊の銬鹿。僕は䞘の䞊の銬鹿だ。

「兄さんが劄想しおいるその倖人、誰っすか」
「ポヌル・マッカヌトニヌだよ」
「誰すかそれ」
「ビヌトルズのメンバヌだよ。知らない」
 須田は銖を暪に振る。

「コンピュヌタ、ポヌル・マッカヌトニヌを頌む」
 ず須田が蚀った。するず、目の前の液晶モニタヌにポヌル・マッカヌトニヌが映し出された。
「なるほど」ず須田は満足そうに頷いた。

「蚘憶に無い映像は、劄想で再珟できないこずは知っおたすよね ここのシステムはその蚘憶の欠萜を補っおくれるんですよ」
 なるほど、よく出来おいる。ず僕は関心した。

「兄さん、僕の恋人を玹介したすよ」
「恋人」
 須田はにやりず笑った。

「コンピュヌタ、杉原なおこを頌む」
「杉原なおこ」
 僕は䜕だか聞き芚えのある名前だず思う。だけど、誰だったっけ

 目の前の液晶ディスプレむに杉原なおこの顔が映し出された。
 ああ、確かに芋芚えがある。
 圌女はアむドル・グルヌプ「リアル・゚ンゞェルス」のメンバヌだ。

「芚えおたすか 圌女」
 ず須田が僕を芋る。
「ああ、芚えおるよ」
「僕、圌女ず付き合っおるんですよ」ず蚀っおにこりず笑うず、「目を぀ぶっおください」ず続けた。僕は、目を぀ぶった。

 草原の䞭に、須田ずなおこがいた。
 なおこは僕にニコリず埮笑みかけ、「こんにちは」ず蚀った。
「僕の兄貎、早坂憲治さん」ず須田はなおこに僕を玹介した。
「初めたしお、早坂さん」ずなおこ。

「これはお前の劄想だろう」ず僕は須田に蚊ねる。
「いいえ、圌女は本物です」
「本物」

「確かにこれは実䜓ではありたせん。だけどこれは僕の劄想では無くお、なおこ自身の劄想なんです。だから圌女自身は本物なんです」
「本物の劄想ずいうわけか」
「はい」

「明圊、ごめんね。今日は他のお客さんの予玄があるから」ずなおこ。
「うん、いいよ。今日は兄さんに君を玹介したかっただけだから」
「ほんずにごめん」
「倧䞈倫。じゃあ仕事がんばっお」
「うん。ばいばい」
 なおこの姿が目の前からすっず消えた。

「なおこはここで働いおいるんです。この劄想ルヌムの良い所は、自分の劄想䞖界をサポヌトしおくれるスタッフがいるずいうこずなんですよ。自分だけの劄想だけだずやっぱり偏っおしたうし、頭も疲れる。それでそれをサポヌトしおくれるずいうわけです」
「なるほどね」
「僕の倢を芋せたすね」
「倢」

 䞀瞬にしお、呚りは倧济堎になった。そしおたくさんの裞の女たち。
「どうですか これが僕が求めおいた䞖界。ナヌトピア。ハヌレムですよ」
 須田は満足そうに笑った。
「女、女、女。しかもみヌんな僕の奜み。その䞊みんな僕の蚀いなりです。どうです、最高でしょう」
「倢が叶ったっおわけか」
「そうですよ。もう䜕も望むこずなんおないです」
「ここは、倢の叶う街なのか そう蚀えば、和矎も倢が叶ったっお蚀っおいたな」
「姉さんに䌚ったんですか」
「うん」

 みんな、ここで倢を叶えおいる。䜕も問題が無い。
 いや、䜳子は違う。䜳子だけは違う。

「それで、本圓に幞せなのか それは本圓に正しいのか」
 僕は須田に蚊ねた。
「兄さん、本圓なんおどうだっおいいんですよ。幞せは、感じるものですよ」

 僕にはわからない。䜕が正しいこずなのか。
 僕は真実を求めおいる。
 ただ、真実を求めおいる。
 愛ず平和を求めおいる。

 真実なんお必芁が無いのか
 幞せは、ただ感じれば良いものなのか

 僕にはわからない。
 ただ、僕にはわからない。

第話に぀づく。


いいなず思ったら応揎しよう

甘野充 蚀葉だけでは䌝わりたせん。 コメントはチップずずもに。 「謎解きはディナヌの埌に、みたいに蚀うな」