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イーストを起こすって、どういうこと?酵母菌についてまとめました。

パン作りやピザ作りのレシピでよく出てくる
「イーストを起こす」「予備発酵」という工程。
ぬるま湯に砂糖とイーストを溶かしておくと、
数分でぼこぼこ泡が出てくる——あの現象です。

「起こす」って何を?
なぜ砂糖やはちみつを入れるの?
今日はこれを、酵母菌の目線で解説してみます。

「起こす」の正体は、もう発酵が始まっているということ

結論から言うと、「イーストを起こす」は特別な準備段階ではなく、
その時点ですでに小さな発酵がスタートしている状態です。

酵母菌は生き物なので、糖というエネルギー源に出会うと、
すぐにそれを使い始めます。
ぬるま湯に溶かした瞬間から、
酵母は糖を取り込み、エネルギーを作り出す代謝をスタートさせる。
その過程で二酸化炭素が発生し、ぼこぼこと泡立って見える
——これが「起きた」証拠なんです。

つまり「起こす」=「酵母のスイッチが入ったのを目で確認する工程」というわけです。

なぜ砂糖やはちみつを入れるのか

ここに、酵母菌が使える糖と使えない糖の違いが関わってきます。

糖にはいくつか種類があり、
分子の大きさによって酵母の扱いやすさが変わります。

糖の種類代表例
酵母がすぐ使えるか
単糖類ブドウ糖・果糖(はちみつの主成分)◎
→そのまま取り込んですぐ発酵開始
二糖類砂糖(スクロース)・麦芽糖○
→酵母自身が持つ酵素で瞬時に分解してから使う
多糖類デンプン(小麦粉の主成分)△
→別の酵素でじっくり糖化されるまで使えない

パン生地には小麦粉のデンプンが含まれているので、
時間をかければ酵母は発酵できます。
でも「起こす」段階では、もっと即効性のある糖
——砂糖やはちみつ——
を使うことで、
酵母がすぐに元気に働き始めているかを短時間で確認できるんです。

面白いのは、砂糖(スクロース)は
分子としては二糖類で、
本来はそのまま取り込めないものなのですが、
酵母は「インベルターゼ」という分解酵素を
自分の細胞の外側に出していて、
これがスクロースを一瞬でブドウ糖と果糖に分解してしまいます。
だから砂糖でも、はちみつとほぼ同じスピードで
ぼこぼこが始まるわけです。

デンプンだけだとどうなる?

もし小麦粉を溶いたお湯だけでこの実験をすると、ぼこぼこが始まるまでに明らかに時間がかかります。

理由は、小麦粉のデンプンは多糖類で、酵母がそのまま取り込める形をしていないから。小麦粉自身が持つアミラーゼという酵素が、デンプンを少しずつブドウ糖や麦芽糖に分解していくのを待たなければいけません。

これは日本酒造りにも通じる話です。
お米のデンプンは、麹菌が作る酵素によって糖に分解され(糖化)、
その糖を今度は酵母が発酵に使う。
麹菌が下ごしらえ担当、酵母が発酵担当という、
2種類の菌によるリレー方式になっています。
パン作りで砂糖を足すのは、
いわばこの「下ごしらえ」を人間が代わりに
やってあげているようなものなんですね。

酵母と人間、実は仕組みは同じ

酵母菌が糖からエネルギーを取り出す最初のステップ(解糖系)は、
私たち人間の細胞とまったく同じ経路です。
生き物である以上、糖(正確には分解された糖)がないと動けないのは酵母も人間も共通しています。

違うのはその先。
人間は酸素を使って効率よくエネルギーを取り出しますが、
酵母は酸素が少ない環境に置かれると、
糖をエタノールと二酸化炭素に変えながら
エネルギーを得る「アルコール発酵」というモードに切り替わります。
ぬるま湯に溶かしたイーストが酸欠状態になり、
まさにこの発酵モードでぼこぼこと泡(CO2)を出しているというわけです。

まとめ

  • 「イーストを起こす」とは、酵母がすでに発酵を始めた状態を目で確認する工程

  • 酵母が使えるのは「分解された糖」だけ。デンプンのような多糖類はそのままでは使えない

  • 砂糖やはちみつは分解の手間が少ない(または不要な)ため、すぐに反応が見える

  • デンプンだけの場合は、酵素による糖化を待つ必要があるぶん反応が遅い

  • 酵母も人間も、エネルギーを得る仕組みの入り口は同じ

今度パンを焼くとき、ぬるま湯の中でぼこぼこしているあの泡を見たら「あ、酵母菌がごはん(糖)を食べてエネルギーを作ってる瞬間なんだ」
と思い出してもらえたら嬉しいです。

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