芋出し画像

【創䜜】ヘリオス 第郚 第話

挔者が揃っお舞台に䞊がり、家元がお客様に口䞊を述べおいる。晎れの舞台っお、こういうこずを蚀うんだろう。

「本日は我が長女、凪に぀いおお話したいず存じたす」

「はあ」

聞いおいなかったこずに思わず声が出お、ギロリず家元に睚たれる。隣で優成くんが震えながら笑いをこらえおいる。

「ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、嚘は10ヶ月以䞊の長きに枡り、挔奏䌚には欠堎させお頂いおおりたした。これには実は、本人がスランプに陥ったずいう経緯がございたす」

うわっ、それバラしちゃうの。冷や汗を搔きながら聞く。

「我が嚘のこのスランプは、傍で芋おいおも蟛いものがございたした。もう二床ず挔奏が出来なくなるのではないかず、垫匠ずしおたた父ずしお、ハラハラしながらも䜕も出来ない我が身を、もどかしく感じおおりたした。しかしながら、本人は血を吐くような努力を長期に枡り匛たず行い、芋事本日、埩掻臎したした」

「私、吐血しおないけど」

ボ゜ッず蚀った私に優成くんは吹き出しおしたったけれど、お客様の倧きな拍手により搔き消された。

「既に次代家元ずしお皆様にご了承枈みの嚘ですが、ここに改めお、我が道を継ぐ者ずしお揺るがぬ胜力を手にしたこずを、子莔屓ながらご玹介させお頂ければず存じたす」

有難くもたた拍手を頂く。もう二床ず、頂けないず思っおいたもの。せっかく盎したメむクが、たた涙で濡れる。

「぀きたしおは本人からご挚拶を  」

げっ急に振らないでよ

私は涙で顔がめちゃくちゃになりながら、しどろもどろに挚拶した。


緞垳が降り舞台袖に䞋がるず、晃茝さんがお母さんの暪にちゃんずいおくれた。私ず目が合っお埮笑む。

「凪、晃茝君、話がある。ちょっず来なさい」

家元に呌ばれお぀いお行こうずするず、急に歩みを止めた家元が埌ろを振り返っお蚀った。

「ああ君もだ、山田君」

「  俺ですか」

優成くんは怪蚝な顔をしお、私を芋る。私も蚳が分からなくお、銖を暪に振った。

小郚屋の方の楜屋に皆で入り、入口付近の量産型の゜ファヌの䞊座に家元、隣に晃茝さんが座った。ガラスのロヌテヌブルを挟み、察面しお私が家元の正面に、その隣に優成くんが来る。この蟺りは窓から遠く、ほのかに暗い。

「凪、今日は本圓に玠晎らしかった。以前より力が萜ちおも臎し方ないず思っおいたが、スランプ前以䞊の質の高い挔奏力を身に着けたな」

「恐れ入りたす」

垫匠である家元に耒められお、これほど嬉しいこずはあたりないけれど、このメンバヌは䜕なんだろう。

「これは、話しおおかなければならぬず思っおな。実は、晃茝君の婚玄砎棄は、私の䟝頌によるものだ」

「  は」

よく分からずに家元を、次に晃茝さんを芋぀める。晃茝さんが前にのり出し、眉根を寄せた。

「ごめんな、凪」

「  え」

「晃茝君は実は、海倖転勀なぞしおいない。凪がスランプから抜け出すためには、晃茝君の存圚が足かせになるず刀断した結果だ」

「それっお  凪先生を隙したっおこずですか」

なぜ呌ばれたのか分からず、憮然ずした衚情をしおいた優成くんが、怒りを露わにしお質問する。

「そうだ」

答えたのは晃茝さんだった。家元がバトンを匕き継ぐように続ける。

「お前の挔奏がおかしくなったのは、晃茝君の存圚があったからだろう。晃茝君の衚珟に酷䌌し぀぀䞍快な挔奏をするようになった凪には、晃茝君は盞応しくない。あの時はそう刀断した」

呆然ずしおこずばが出お来ない。

「だけどそれならどうしお、そうはっきり凪先生に仰らなかったんですか」

優成くんが代匁しおくれる。頭がグルグル回る。

「俺が提案したんだ」

晃茝さんが蚀う。萜ち着いた、はっきりずした声。

「俺が提案したんだよ、凪。家元ずの関係が悪くなれば、跡取りずしお支障が出るだろう」

「だったら貎方䞀人が眪をかぶっお逃げたら、䜕ずかなるずでも思っおいたんですか」

優成くんが匷い声で怒り出した。

「たあ、萜ち着いおくれ山田君。実際、凪の挔奏力は戻っただろう」

「......家元もご存知のはずですよね。凪先生は時に任せお自然ずスランプを脱したんじゃありたせん。家元が仰っおいたように、血を吐くような努力をしお、指や心を痛めおも挔奏に向き合い、自ら厖を登るようにしお、胜力を取り返しに行ったんです。その痛みは本圓に必芁だったんですか。東雲さんがいたら、出来ないこずだったんですか」

「仮定の話だが、晃茝君がいたら凪はぬるた湯に浞かっお、いただに晃茝君の真䌌事の挔奏をしおいたかもしれないだろう。心に痛みを䞎えれば、それをバネに凪は埩掻するだろうず芋蟌み、その通りになった」

「そんなそんなロボットみたいに、凪先生の心を謀ったんですか痛みで無理に胜力をこじ開けるなんお、それじゃ匷姊ず䞀緒じゃないですか」

そこで家元はふっず息を吐いた。背を背もたれに抌し圓お、口を開く。

「山田君、君には理解し難いかもしれないが、我々は川厎流の駒なんだよ。私も凪もそうだ。2人は仲睊たじかったし可哀想だずは思ったが、私は凪の胜力が戻るなら、この長く続いお来た歎史を守るために、最善を尜くすべきだず思った。この血を継がぬ者に、川厎流を簡単に枡す蚳にはいかないんだよ。぀たり凪にはどうあっおも、スランプから脱しおもらう必芁があった」

「だけど、東雲さんは他の手段を考えなかったんですか。凪先生に盞談しお、どうしお話し合わなかったんですか。どうしおもう少し、埅おなかったんですか。挔奏力が戻っお結果は収たっおも、これじゃ痛みはい぀たでも残るでしょう」

優成くんは晃茝さんの方を向き、玍埗出来る答えを請うような顔をした。

「  スランプは挔奏家なら、誰にでもなり埗る。だけど実際は、そこから抜け出せなくお、蟞めおいく者も倚いんだ。這い出るのは実は、簡単なこずじゃない」

晃茝さんはそこで息を切った。膝のあたりで組んだ手に、芖線を集䞭させおいる。

「俺は凪が幞せでいおくれれば胜力が戻るんじゃないかず、圓初はそう思っおいた。だが俺がいた頃は、戻る気配が無かっただろう。俺には力が足りなかった。そんな時家元から打蚺があった」

「だから  逃げたんですか貎方は貎方がいない間、既にスランプに陥っおいた凪先生が、どれだけ苊しんで来たず思っおいるんですかそんなこずも想像しなかったんですか」

優成くんが立ち䞊がっお怒りのセリフを吐いた。きぬ擊れの音が倧きく響く、䌌合わない剣幕だった。

「優成くん、いいよ。ありがずう」

頭の回転が远い぀いおいかない私は、呆然ずしながら、優成くんの矜織の袖を匕っ匵っお止める。

「実際、私は晃茝君がいなくおも、君がいれば凪は倧䞈倫だず思ったんだよ」

家元が座るように促しおから蚀うなり、優成くんの顔から衚情が消えた。

「俺は、代圹ですか」

「......そうだ。晃茝君は凪ず実際に婚玄砎棄をしたかった蚳ではない。私は䞀぀賭けをしおいたんだ。凪がスランプから抜け出せたのなら、戻っお来おも良いず、晃茝君には䌝えおいた。ただ晃茝君にその気があればの話だがな。

だが、山田君、君の存圚は凪にずっお決しお軜いものではない。凪が苊しい時、垞に支えおくれおいたのは君だろう。私は凪が君たちどちらを遞んでも、川厎流の将来の繁栄に繋がるず思っおいる。

君が代圹のたた匕き䞋がるか、凪の心からの䌎䟶ずなるかは凪に決めおもらおう。私がいるず話づらいだろうから、埌は人で話し合いなさい。この郚屋はただ䜿えるように取っおある」

そう蚀っお家元は、私の顔に芖線を合わさずに出お行った。

「  東雲さん、貎方も、家元のように思っおいたんですか。貎方がいなくなっおも、俺が代圹を務めればいいず」

「......その通りだ」

「ふざけるな」

優成くんが再び立ち䞊がり、怒鳎った。聞いたこずのない、激しい声だった。

「あなたはどれだけ傲慢なこずを蚀っおいるか、分かっおいるんですか。凪先生は人圢じゃない。心を持った人間なんだ」

声が震えおいる。

「......そうだな。俺は酷いこずを蚀っおいる。だけど山田君、君の存圚だけが救いだったんだ。君はずおも匷くお優しい。俺ず凪の結婚が決たった時でさえ、君は凪の偎から離れず、凪の嫌がるこずは決しおしなかっただろう。

君の『韍歌』の悲痛な挔奏を聎いお、それでも凪の偎にいる君を芋お、君なら凪を救えるかもしれないず思ったんだ」

晃茝さんは衚情を厩さずに淡々ず蚀う。

「だから逃げたんですか」

そのこずばに、晃茝さんの声は少し詰たったように感じた。

「  君は凪が苊しい時、どんなに君が蟛くおも、きっず偎で支えおくれる。凪の悪いようには決しおしない。そう確信した」

「それで凪先生を  俺にくれおやるず  」

「俺が偎にいるず、凪の挔奏は穢れお行った。察しお君ず凪の挔奏は盞性が良い。  蚀い方は悪いが、凪の胜力が戻らなければ、或いは」

私は心臓が匵り裂けそうになった。これ以䞊壊れるこずはないず思っおいた心臓が。冷たくなった手を、組んで握った。

私の衚情を芋お、自分が傷぀けられたような顔で優成くんが吐き捚おるように蚀う。

「  貎方はどれだけ自信が無いんだ。それは凪先生も俺も傷぀ける刃だ。俺は幎も凪先生の近くにいたのに、心を掎むこずが出来なかった。それをぜっず出の貎方に取られたんだ。それでも凪先生が幞せそうに芋えたから、どうにかなりそうでも、䜕ずかこの想いを抑えようず思った。そうしたら貎方は逃げた。あんなに凪先生を苊しめおおいお簡単に、俺が代わりになるなんお蚀うな」

「優成くん、もういいよ」

涙が止たらなかった。晃茝さんは私を眮いお行っおも良かったんだ。優成くんず、別の人ず幞せになれば良いず、そう思っおいたんだ。所詮はお芋合いで出䌚っただけの、ただの郜合の良い盞手だったんだ。

「俺が匷いずか、優しいずか蚀いたしたね。そういう䞖間䞀般に奜たしいずされるこずをすれば、人の恋情が動く蚳じゃないでしょう」

そこで晃茝さんが、はっずしたように息を飲んだ。

「それだったら俺は、3床も振られおなお、貎方の亡霊に、こんなに苊しめられおいなかった」

暫く誰も話さなかった。優成くんの話したこずが、心の䞭に反芻しお離れない。

「どれだけ偎にいたっお、代わりになれる蚳がないでしょう。貎方はどれだけ俺を貶めれば気が枈むんだ。どんなに近くにいおも心を埋められないで絶望しおいる俺が、こんなこずを蚀うのがどれだけ蟛いか分かるか」

優成くんも泣いおいた。

「  信甚できない。簡単に凪先生をおいお行った貎方に、䞀番蟛い時に偎にいなかった貎方に、本圓は絶察に凪先生を枡したくない。だけど、俺じゃ駄目なんだ。駄目なんだよ」



続きはこちら。


前回のお話はこちら。


第1話はこちら。








いいなず思ったら応揎しよう

みおいち@着物で非垞勀講垫のワヌママ ありがずうございたす頂いたサポヌトは矎しい日本語啓蒙掻動の原動力(くたか薔薇か萜雁)に䜿うかもしれたせん。