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【創䜜】ヘリオス 第郚 第10話


優成くんの震える声が続ける。

「貎方は銬鹿だ。肝心なずころで間違えお、凪先生を地獄に远いやった。凪先生の心に぀けた傷は、すぐに癒えるものじゃないでしょう。スランプから救い出したいんだったら、家元の意芋に逆らっおでも、䜕か別の方法があったはずだ」

「優成くん  」

息を吐いお優成くんは私に蚀った。

「倧きい声ばかり出しおすみたせん。みんなしお駒だの、代圹だの、凪先生の心を蔑ろにする発蚀は蚱せない。  俺の蚀いたいこずはこれだけです。埌は、2人でよく話し合っおください」

そう蚀っお額に手をやり、息を぀いた埌、出お行った。

暫く、晃茝さんも私も、話が出来なかった。しんず静たり返った楜屋で、ただグルグルず頭の䞭が回るのを萜ち着かせるのに時間が必芁だった。

「晃茝さん  今たでどこにいたの」

「か月ほどはオヌストリアにいた。転勀はしなくおも長期出匵はしおいた。その埌はオヌストリアず日本を行ったり来たりしおいた」

「私がいなくおも、晃茝さんは平気だったの」

晃茝さんが私の手を取っお、自分の頬に寄せる。

「そんな蚳がない。胞が粉々に砕かれたようで、凪を傷぀けた眪悪感で眠れなかった。ずっず  苊しかった」

「......じゃあどうしお」

「凪、君は俺がいなくおも生きおいけるけど、箏がなければ、生きおいけないだろう」

「そんな  」

そう蚀っお口を぀ぐんだ。お箏がない生掻なんお、確かに考えられない。だけど、晃茝さんがいなくお、こんなに苊しかったのに。そんな簡単にどちらかを遞べるこずじゃないのに。

「俺は銬鹿だな。山田君に蚀われお気づいたよ。凪、俺は、自信が無かったんだ。凪はい぀も茝いおいお、困難に立ち向かっおいたから、凪が苊しい時、こんな俺じゃ支えられないんじゃないかっお、そう思っおしたった」

「じゃあどうしお、話しおくれなかったの」

「それが俺の匱いずころだ。凪の前では、虚勢を匵りたかったんだ」

「私......分からない。......頭がいっぱいで」

「そうだな、凪には考える時間が必芁だ。たた話し合おう。明日家に行く」

晃茝さんは垭を立ち、私の偎に来お抱き締める。
私は身䜓を固くしお、震える声で泣きながら拒吊をした。

「嫌」

晃茝さんはそれでも、空気を抱くように優しく私を抱き締め続けた。

「......凪。酷い男だず思っおいるだろう。本圓に悪かった。だけど、凪。今でも君を愛しおいる。心から。勝手なこずばかり蚀っおいるが、君がいなくおずっず苊しかった」





゚アコンの効いた皜叀堎で、緎習をしおいる。心ず身䜓は䌎わない。こんなにぐちゃぐちゃなのに、挔奏は完党に元に戻った。むしろ珟圚の方が衚珟力が身に぀いたず自負できる。無心になっお匟いおいたら、かすかな音をさせお、背の高いシル゚ットが近づいお来た。

「凪先生、東雲さんに䌚っおいないんですか」

透明感のある声は、今日もやわらかい。私を芋぀めお、お箏を挟んで正面に座る。

「そうだね」

私はお箏で遊びながら返事をする。

「どれだけ䌚っおいないんですか」

「10日くらいかな」

「毎日来おくれおいるみたいですよ」

「うん、そうだね」

ポン、ポン、ずお箏の䞊で手が動く。

晃茝さんは毎日、お花を持っお来おくれる。だけど私は、家に䞊げないように蚀っおいる。届けおくれおいるお花に眪はないから食っおいるけれど、郚屋に食りきれないので皜叀堎にも食るようにしたら、家䞭が花でいっぱいになっおしたった。心に反比䟋しお、鮮やかな色がそこかしこに溢れおいる。

「せっかく䌚えたのに、どうしお䌚わないんですか。もう嫌いになったんですか」

「違うの。ただ頭の䞭がぐちゃぐちゃで」

晃茝さんを嫌いになれるはずがない。でも、簡単に私を捚おた圌に、どうやっお䌚ったらいいんだろう。

晃茝さんがしたこずは、垞々から私が望んでいたこずに過ぎない。晃茝さんがいなくなっおからの、い぀もの堂々巡りの思考に陥る。川厎流の駒である私のために、私のお箏の胜力を最優先させた。それなのに䜕を今さら、捚おたなんお蚀うんだろう。私の長幎こだわっおいた信念なんお、こんなに軜かったんだ。

優成くんが駒だっお怒っおいた気持ちが、今なら痛いほど分かる。お箏がなくおも晃茝さんを匕き止める魅力が、自分になかっただけの話だ。䜕も䞎えるこずが出来ないのに、貎方に偎にいお欲しかったず、子どもみたいに心が癇癪を起こしおいる。

情けなさず矞恥、匷い恋情が入り混じっお、感情が無秩序でどうしたら良いか分からない。悪いのは自分だっお分かっおいる。だけど心が、やっず挔奏胜力が戻ったのにたた滅茶苊茶で、ただもう少しだけ、時間の猶予が欲しい。

次に䌚ったら晃茝さんは、私に別れを告げるのかもしれない。このたたでも私たちはもう駄目なんだろう。だけどもう少し、このたた、もう少しだけ。





すっかり涌しく過ごしやすくなった週末のこずだった。私が皜叀堎で片付けをしおいたら、たた優成くんが入っお来た。

「優成くん、来おたの」

それには答えずに、䜎い声で蚀った。

「来おください」

そうしお私の手を取っお、無理に䜕凊かぞ連れお行こうずする。

「優成くん、どうしたの優成くん」

早足で手を匕かれお着いた応接宀の゜ファヌに晃茝さんが座っおいた。通すなず蚀っおおいたのに、どうしお。

「俺が䞭に入れたした」

「凪」

ハスキヌな声で呌ばれお、パニックする。慌おお逃げようずするず、優成くんに二の腕を掎たれ匕き戻された。

「優成くん」

離しお、ず蚀おうずするも、たた悲しみに溶けおしたいそうな顔をしおいたので、䜕も蚀えなくなる。晃茝さんず向かい合った゜ファヌに無理やり座らされたかず思ったら、䞡肩を埌ろから抌さえられ告げられた。

「凪先生、先生には先生の思いがあるのかもしれないけれど、これ以䞊は手遅れになりたす。ここで東雲さんに、心の内を掗いざらいぶ぀けおください。そうするたでここから出したせん。いいですね」

そう蚀うず、出お行っお匕き戞を閉めた。

出さないず蚀ったっお、鍵もないのに、ず思っおいたら、すぐにガタガタず扉の方で音がする。

「扉に现工をされたな。山田君は本気だよ、凪」

ぜかんず扉を芋぀める。晃茝さんは少し笑っお私の目を芋た埌、青磁のお茶碗に芖線を移した。

「生殺しだからな......。その割にお茶が2人分、既に甚意しおあるずころが圌らしい。山田君のためにも、話をしよう。党郚話すよ、凪」

この人の声も、芋぀める瞳も、近くにいるだけで、心が震える。それなのにどうしお逃げたくなるんだろう。私の晃茝さんぞの想いず晃茝さんの想いを䞡倩秀にかけお、私の想いの方がずっず重いから。それだけで、蚱せないんだろうか。

今でも愛しおるず楜屋で蚀っおくれたのに、どうしお信じられないんだろう。信じた途端、たた捚おられそうで怖い。震える手が芋えないように、力を入れた。

「凪、俺が信じられないのは分かるよ。だけど君を愛しおいるのは本圓だ。

俺が君を知ったのは、本圓はもうずっず前のこずだ。凪、君は䞭孊生の頃、東京゜ラマチの音楜祭に出ただろう。君はたくさん䞭傷を受けおいた」

そう蚀えば昔、抌䞊にあるその商業斜蚭に呌ばれお新春音楜祭に出たこずがある。

「お子様は垰れ」

「ここはお遊戯䌚じゃないんだぞ」

「色気がねえ」

新春を祝う屋台で酒気を垯びたお客様から、あの時はひっきりなしにダゞが飛んできお、銬鹿にされ笑われお、震えが止たらなかった。

晃茝さんが萜ち着いお話を続ける。

「それなのに毅然ずしおいた、ず蚀うのが話の筋だが、凪は怖がっおいた。初めお俺に䌚ったずきのように、怯えおいお、それを隠そうず必死に取り繕っおいた。凪がずおも小さく芋えお、ダゞを飛ばす倧人にうんざりしたよ」

晃茝さんは私の目を芋た。倧奜きな、濁りのない瞳。

「だけど凪、君は挔奏し始めた。あんなに怖がっおいるように芋えたのに、隒がしい䞭で、綺麗なお蟞儀をしお匟き始めたんだ。

君が纏う空気は、い぀も挔奏する盎前に倉わるんだ。隒音も気にせず挔奏に熱䞭しおいた。こんなにも矎しい挔奏があるのかず胞が震えた。やがお呚りも静かになっお、最埌は拍手喝采だっただろう」

思い出した。あの時はダゞを飛ばしおいたおじさん達にも、最埌に耒められたんだ。

「俺はその頃、挔奏家ずしおも䜜曲家ずしおも䞡芪の血に及ばないず気づいお、やさぐれおいた。音楜から遠ざかっお遊んでばかりいたよ。そんな時だったんだ」

晃茝さんはその倧きな手を䌞ばしお、私の手に重ねた。もう戻っお来ないず思っおいたものが返っおきたような気がしお、喉が詰たった感芚になる。

「凪の挔奏を聎いお涙が出た。君はただ14歳だった。それなのに自分のスタむルを確立した、唯䞀無二の挔奏を披露しおいた。この子はどれだけ緎習したんだろうっお、自分を恥じた」

そこで晃茝さんは話を切った。

「そんな前のこず、芚えおいたの」

14歳なんお、ニキビもあっただろうし、足元がぜっちゃりしおいたし、恥ずかしすぎる。

「俺を救っおくれた時のこずだから、忘れないよ」

䜕か倧切なものを芋せた埌のようにそう蚀っお、晃茝さんは埮笑んだ。

「凪はりィヌンで挔奏したこずもあるだろう。俺はその時、珟地に留孊しおいたんだ。あの時のあの子が来るず知っお、䜕ずかチケットを取っお聎きに行った。倖囜の舞台で、君はたた怖がっおいお、必死にそれを隠そうずしおいるように芋えた。それから埌は同じだ。凪は既に確立された、枅涌ずした挔奏をし始めた」

りィヌンでの挔奏も、よく芚えおいる。オヌストリア人は背が高くお恰幅も良く、圓時私はそれだけで怖さを感じおしたった。

「䜕ずか守りたいず思ったんだ。こんなに恐怖に立ち向かっおさえ、真摯に挔奏に向き合う音楜家を、支えられるようになりたいず。

俺が挔奏を続けお来たのは、挔奏家になるためじゃない。経隓を通し挔奏家の思いを真に理解した䞊で、的確な支揎が出来るようになるためだず、その時自然に思えた。凪、君が道を照らしおくれたんだ」

晃茝さんは私の手を取っお、䜕か祈るように力を蟌めた埌、長いキスをした。

「それから俺は箏も習ったし、凪の挔奏䌚は幟぀も聎きに行った。その床に綺麗になっお、質の高い挔奏をする凪を憧れの気持ちで芋おいた。俺も負けたくないず、俺なりの道を真摯に進もうず、その床に思っおいた。だから凪、俺のヘリオスは君なんだよ」



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みおいち@着物で非垞勀講垫のワヌママ ありがずうございたす頂いたサポヌトは矎しい日本語啓蒙掻動の原動力(くたか薔薇か萜雁)に䜿うかもしれたせん。