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MVP OBSERVATIONS | Inception Spin-off vol.3 : Why Did Ariadne Go Deeper? / アリアドネはなぜ迷宮の奥へ進んだのか

割引あり

『 - 映画 Inception - アリアドネ をきっかけに、主体性と現実を考える 』

Why Did Ariadne Go Deeper? / アリアドネはなぜ迷宮の奥へ進んだのか

初めて読む方は「 Inception 」をご覧ください。
作品の紹介やシリーズ構成が確認できます。

※本記事は『「 Inception 」 何が世界を現実にするのか 』後に生まれたスピンオフ考察です。

第一章

彼女は何を見ていたのか

Inception を語る時、多くの人はコブモルに注目する。
それは自然なことだと思う。
物語の中心にいるのは間違いなく二人だからだ。

しかし脇役ならざる存在感を放つ人物が一人いる、アリアドネである。

彼女は観客の視点として登場する。
夢の仕組みを学び、質問をし、私たちを物語の中へ導いてくれる。
初めて見た時は、単なる説明役のように見えなくもない。

しかし何度も見返しているうちに、私は少し違う印象を持つようになった。
なぜ彼女はそこまでコブを追い続けたのだろう。
なぜ危険を承知で、彼の深層へ入り続けたのだろう。

仕事だから、仲間だから、どうも違う感覚を覚える。
アリアドネは、コブの中にある何かに、惹かれているようにも見える。
モルコブの感情とかではない。もっと「 構造的な何か 」のような気がしている。

彼女は迷宮を設計する建築家。
人を見る時も、表面ではなく構造を見る。

コブの中にある歪み。
何度も現れるモル
閉じた記憶。
繰り返される風景。

それらは彼女にとって、何か惹きつけられる構造だったのかもしれない。
アリアドネは、その迷宮の奥に何があるのかを見ずにはいられなかった。

第二章

設計者は構造を見る

アリアドネを考える時、彼女の資質と探究心が大事な鍵となる。
彼女は建築を学ぶ学生であり、迷宮の設計者。
作中では夢の構造を設計する役割として描かれている。

しかし私は、この設定そのものが重要だったと思っている。
なぜなら設計者とは、物を見る人ではなく、構造を見る人だからだ。

例えば街を見る時、多くの人は建物の外観を見る。
しかし設計者は違う。
なぜその形になったのか。
何が支えているのか。
どのような力が流れているのか。

目に見えるものの奥にある構造を見ようとする。
私はアリアドネコブに興味を持った理由も、そこにあったのではないかと思う。

最初に彼女が見たのは、優秀なインセプションの実行者ではなく、彼の中にある奇妙な歪みだった。
コブの夢の中には、説明のつかない存在がいる、モルである。

彼女は何度も現れ、計画を破壊し、予測できない行動を取る。
しかもコブ自身が、それを制御できていない。

一般的な感覚からすれば、そこに危険を感じ、距離を置くことを選ぶだろう、しかしアリアドネは違った。

彼女は危険そのものではなく、その構造に惹かれてしまった。
なぜモルはそこに居続け、コブも彼女を手放せないのか。
しかもこの歪みは、更に大きくなり続けている。

壁に亀裂があれば、設計者は亀裂そのものではなく原因を見る。
建物が傾いていれば、その奥にある構造を調べる。

設計者として自然な反応ではないか、アリアドネも同じだった。
彼女はモルをきっかけとして、本当に見ていたのはコブの中の迷宮だったようだ。

物語が進むほど、更にその迷宮は複雑になっていく。
夢の中に隠された記憶、閉ざされた部屋、繰り返される風景。
そして、コブ自身も理解できなくなってしまった最愛の妻モルの存在。

私はここで面白いことに気付く。
アリアドネは、モルを理解しようとしていたわけではない。
まして、コブを救おうとしていたわけでもない。
彼女が追い続けていたのは、コブの中にある、構造そのものだったのではないか。

いつどのようにして迷宮は作られ、更に深くなり続けたのか。
そして、その先には何があるのか。
彼女はその先を見てみたいと思わずにはいられなかった。

迷宮の奥へ、危険だという感覚の前に、迷宮の設計者として、至極当たり前の選択をしたのである。

Why Did Ariadne Go Deeper? / アリアドネはなぜ迷宮の奥へ進んだのか

第三章

コブという迷宮

私はこの考察を書きながら、一つのことに気付いた。
アリアドネが迷宮の奥へ進んだ理由は、モルコブへの興味からではない。
もっと正確に言うなら、コブという迷宮の構造そのものを理解しようとしていたと思う。

作中でアリアドネは何度もコブの深層へ入る。
閉ざされた記憶の中へ入り、モルの存在を目撃し、コブ自身が隠そうとしている場所へ近づいていく。
ここで興味深いのは、コブ自身ですら、その迷宮を完全には理解していないことだ。

罪悪感、そして後悔、コブから見たモルについてを語る。
しかし語られる度に何かがずれていく、何かがおかしい。
まるで自身の迷宮の地図を持ちながら、その地図が正しいかどうか分からなくなっているように。

アリアドネはその歪みを見落とさなかった、そして気付いていた。
コブが抱えている深い闇は、モルの死でも失った事でもないのではないかということ。
コブが本当に向き合えずにいるものは、もっと別の場所にあるのではないかと。

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