働くシニアは10年で29.2%増。データから見える「日本の働き手」の大きな変化
研修講師、手話通訳士の横山熊太郎です。
AIを活用しながら、シニア向けの情報や、書籍やガジェットの紹介などをしています。
少子高齢化によって、働き手が減っている——。
そんなイメージを持つ人は多いかもしれません。しかし、2015年から2025年までのデータを見ると、少し意外な変化が起きています。
15~64歳の生産年齢人口が減少する一方で、日本の就業者数は増加。その増加を支えているのが、女性、65歳以上のシニア、そして海外から来た働き手です。
なかでも65歳以上の就業者は、10年間で29.2%増えました。
この数字は、高齢者が働くことが一部の例外ではなく、日本の労働市場を支える重要な要素になったことを示しています。
生産年齢人口は391万人減、それでも就業者は452万人増
ヒューマンリソシアが公表した「主要15産業の人材動向レポート」は、総務省や厚生労働省などのデータをもとに、2015年から2025年までの変化を分析しています。
この10年間で、15~64歳の生産年齢人口は7742万人から7351万人へ減少しました。その差は391万人です。
一方、総就業者数は6376万人から6828万人へ増加。10年間で452万人、割合にして7.1%増えています。
働く年齢の中心とされてきた人口が減っているにもかかわらず、実際に働く人は増えているのです。
背景には、これまで労働市場で十分に力を発揮できていなかった層の就業拡大があります。
女性就業者:10年間で13.5%増
65歳以上の就業者:29.2%増
海外人材:約2.8倍
日本の職場は、人数だけでなく、その顔ぶれも大きく変わり始めています。
シニア就業者は730万人から943万人へ
65歳以上の就業者数は、2015年の730万人から2025年には943万人へ増加しました。
10年間で213万人、29.2%の増加です。
さらに注目したいのは、特定の業界だけで増えたわけではないことです。調査対象となったすべての産業で、就業者に占めるシニアの割合が上昇しました。
特に上昇幅が大きかったのは、次の分野です。
不動産・物品賃貸:5.6ポイント増
医療・福祉:5.5ポイント増
複合サービス:5.1ポイント増
定年後も働く人が増え、再雇用や短時間勤務など、働き方の選択肢も広がっています。シニアの就業は、もはや限られた業種だけの話ではありません。
働く場所も変化している
この10年間では、働き手が集まる産業にも大きな変化がありました。
就業者数の増加率が最も高かったのは「情報通信業」で、44.5%増。続いて「学術研究、専門・技術サービス」が26.2%増、「不動産・物品賃貸」と「医療・福祉」がそれぞれ20.8%増となっています。
一方、減少した産業もあります。
郵便局や農業協同組合などを含む「複合サービス」は25.4%減。「建設業」は4.4%減、「卸売・小売業」は2.4%減となりました。
日本全体の就業者数は増えていますが、すべての業界が同じように成長しているわけではありません。デジタル化や高齢化、サービス需要の変化に応じて、働き手の移動が進んでいることが分かります。
若者の比率には産業ごとの差
29歳以下の若年層を見ると、業界による違いがより鮮明です。
「宿泊・飲食業」では、就業者に占める若年層の割合が10年間で9.4ポイント増加。「情報通信業」でも4.4ポイント増えました。
その一方で、「医療・福祉」では3.0ポイント低下しています。
高齢化によって今後も需要の拡大が見込まれる医療・福祉分野で、若い担い手の割合が低下していることは見過ごせません。
シニアや海外人材の活躍を支えるだけでなく、若い世代が入り、働き続けられる環境を整えることも重要です。
海外人材は約2.8倍に
日本で働く海外人材は、2015年の90.8万人から2025年には257.1万人へ増えました。10年間で約2.8倍です。
特に伸びが大きかったのは「医療・福祉」と「建設業」。医療・福祉では約10.6倍、建設業では約7.1倍に増加しています。
また、就業者全体に占める海外人材の割合も、1.4%から3.8%へ上昇しました。
シニア、女性、若者、海外人材。異なる背景を持つ人が同じ職場で働くことが、これからはますます日常になっていきます。
大切なのは「人数の確保」だけではない
シニア就業者の増加は、人手不足を補うという面では心強い変化です。
しかし、人数さえ確保できればよいわけではありません。
年齢とともに体力や視力、聴力などが変化する人もいます。デジタル機器の操作や新しい業務手順に、不安を感じる人もいるでしょう。一方で、長年培ってきた知識、判断力、顧客との関係など、経験があるからこそ発揮できる力もあります。
企業には、年齢だけで仕事を一律に決めるのではなく、一人ひとりの能力や希望に応じて役割を設計する姿勢が求められます。
具体的には、次のような取り組みが考えられます。
体力に配慮した勤務時間や業務内容の調整
分かりやすいデジタル研修の実施
経験や技能を若手へ伝える役割の設置
年齢に関係なく学び直せる機会の提供
公平で納得感のある評価・賃金制度
安全に働くための設備や作業手順の見直し
必要なのは、シニアを単なる人手として扱うことではなく、その人の強みが生きる仕事をつくることです。
「何歳まで働くか」から「どう働き続けるか」へ
働くシニアが増えている背景には、健康寿命の延伸や定年制度の変化だけでなく、生活費の確保、社会とのつながり、仕事へのやりがいなど、さまざまな理由があります。
だからこそ、「高齢者も働くべきだ」と一括りにすることはできません。
働きたい人が無理なく働けること。働く必要がある人が、不利な条件を受け入れざるを得ない状況を減らすこと。そして、働かない選択も尊重されること。
シニア就業者の増加を前向きな変化にするには、こうした多様な選択を支える制度と職場づくりが欠かせません。
これからの職場は、多世代でつくる
この10年間で、日本の働き手は大きく変わりました。
中心的な労働年齢の人口が減るなか、女性やシニア、海外人材の参加が広がり、総就業者数を押し上げています。
これは、一時的な人手不足対策ではなく、職場の前提そのものが変わりつつあるということです。
年齢や国籍にかかわらず、それぞれの経験と能力を生かせる仕事をどう設計するか。異なる世代が知識を渡し合い、無理なく働ける環境をどう整えるか。
シニア就業者29.2%増という数字は、私たちに「何歳まで働くのか」だけでなく、「誰もがどう働き続けられる社会をつくるのか」を問いかけています。
調査結果の詳細は、ヒューマンリソシアの発表および紹介されたニュース記事で確認できます。
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